【シリーズ】国内外で同時多発的に強行される日米共同軍事演習−−
イラクでの虐殺部隊=海兵隊・陸軍に訓練受け自衛隊を侵略軍化(上) |
着々と進む尖閣諸島を想定した軍事対応============
中国を挑発する、島嶼敵前上陸訓練
−−このままでは自衛隊が対中挑発の“先兵”になる危険−− |
日米同盟、とりわけ日米共同軍事演習の面で新しい異変、いや異常事態が起きている。小泉政府は昨年、日米安保協議会中間合意「未来のための変革と再編」で、横須賀、横田、座間に海、空、陸の日米の共同の司令部を置くこと、その下で日米両軍は両国における共同軍事訓練の拡大、自衛隊の基地・演習場の共同使用の拡大を行うことを確認した。
年が明けるや、それは直ちに全国での、さらには米国での同時多発的な日米共同演習になって現れたのである。熊本(米陸軍第1軍団と日米共同指揮所演習:1/28−2/3)、日本原と饗場野(海兵隊と、2/19−3/3)、日出生台(海兵隊1/30−2/7)。さらに、国内にとどまらずイラクで虐殺を行った殺人部隊である海兵隊の米本土の本拠地で陸自が島嶼敵前上陸訓練(1/9−27)、米陸軍ストライカー旅団とのイラク市街戦訓練(昨年10月)など、上陸侵攻作戦・市街戦の教えを請うまでに至っている。
明らかに日米両軍は「対テロ戦争」を口実にした米軍事覇権への加担、海外派兵と対中国を念頭においた共同の軍事態勢を強化し、自衛隊の実戦能力を高めるために軍事協力、軍事一体化を新たな段階に引き上げようとしている。その下で進行する日米共同軍事演習の実態と目的を3回シリーズで取り上げていく。
2006年2月8日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
(1) 陸上自衛隊は、今年1月9日から1月27日まで、米本土の海兵隊基地キャンプ・ペンドルトン(カリフォルニア州サンディエゴ)で、日米共同上作戦演習を実施した。作戦名「鉄の拳(Iron
Fist)」と呼ばれるこの共同軍事演習は、他国への侵略の先兵・切り込み隊としての強襲上陸を主任務とする米海兵隊との侵略軍事演習であり、米海兵隊が持つ侵略=敵前上陸、交戦と制圧、占拠に関するノウハウを獲得するための第一歩となるものである。
※離島防衛の陸自部隊、米海兵隊と初の共同訓練へ
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060103STXKC006703012006.html
※Japanese soldiers to train in region 'Iron
Fist' to focus on beach landings
http://www.signonsandiego.com/uniontrib/20060109/news_1m9japan.html
※1 MEF, Japanese to train
http://www.marinetimes.com/story.php?f=1-292925-1443548.php
陸上自衛隊を米基地に派遣しての合同実動訓練は、それほど古いものではない。「本土防衛」を主任務とするはずの陸上自衛隊が米国内で合同演習を行う必要などなかったからである。しかし小泉政権になってから、この数年で一変した。アフガン戦争が始まり、イラク戦争が日程に上り始めた2002年度から陸自と米陸軍との間で開始され、これまでにハワイ、グアム、ワシントン州で行われた。それらは、露骨にイラク戦争を想定した、市街地戦闘訓練であった。また、海兵隊とはすでに2004年度にグアムで市街地戦闘訓練を行い、今回は2回目である。私たちは、このような、世界中で血生臭い侵略と虐殺を繰り返す米軍に侵略と虐殺の仕方の訓練を受けること自体に反対である。
それでも、上陸作戦という、最も侵略的な演習はこれまでなかった。離島への上陸作戦を目的とした日米共同軍事訓練が行われたのは今回がはじめてである。なぜマスコミは、この危険極まりない戦争挑発的な訓練を批判しないのか。
(2) 今回の離島への上陸演習が、一般的な軍事訓練ではないことは明らかである。演習は明確に中国との国境紛争を想定し、尖閣諸島などをめぐる領土権争いに対して、自衛隊が周辺の情報を収集しいつでも島を奪取できる能力を獲得し、それを中国に対して見せつけることを狙っている。小泉首相自身、今回の演習を露骨に「琉球列島を防御する演習だ」と言い切っているのである。
今回の演習は、小泉首相の靖国参拝強行と重ね合わせて捉えねばならない。小泉は自らの靖国参拝強行で対中関係を最悪の状態にさせてきた。もしも中国と「領土紛争」が起こった場合、本当に軍事力と戦争で決着を付けるつもりなのか。離島の領有権を巡って軍事紛争が起こるとすれば、それだけにとどまるはずがない。より大きな軍事対決・戦争へと向かわざるを得ない。小泉首相は、本当にそんな覚悟を持って尖閣諸島を想定した上陸演習に乗り出したのか。この演習が中国を挑発し、日中関係を一層悪化させるとは考えなかったのか。それともアメリカと組んで軍事力を誇示すれば、中国がひれ伏すとでも考えているのか。小泉首相がすべきなのは、そんなことではない。自らが靖国参拝でぶちこわした外交関係を修復し、日中間に安定と平和をもたらすことであるはずだ。
(3) 演習地キャンプ・ペンドルトンは日本の四国の面積と同じくらいの広さがあり、海兵隊の西海岸最大の遠征訓練基地である。橋口隊長は、「日本は北海道の北方の島々を除いてはこの種の訓練をするための実際のモデルを持っておらず、これは、海兵隊の経験から学ぶすばらしい機会だ」と語り、その演習の目的を隠さなかった。この演習は、何と昨年夏に日本側から要請し実現したものだという。米側は、日本が要請してくれて光栄だ、と語っている。
米側はコロナド基地の米海軍・海兵隊の共同教育機関「太平洋機動展開戦闘訓練グループ(EWTGPAC)」の海兵隊訓練コース「N8」の訓練主任監督官ピート・オーウェン中佐以下、第1海兵師団(ペンデルトン基地)などから約30人の海兵隊員が参加している。
※Japanese army to train in Coronado
http://www.msnbc.msn.com/id/10717692/from/RL.4/
一方、陸上自衛隊の参加部隊は、西部方面隊普通科連隊(長崎県佐世保)の一個普通化中隊125人である。この西方普連第2中隊(中隊長・浜崎幸一3佐)を基幹とした約80人がN8コースに・入校・する形で行われた。
この西方普通連隊は、05年度予算で新設された「島嶼防衛」と「ゲリラ・コマンド」対策専門部隊である。この対ゲリラ・コマンド部隊は、中国や北朝鮮を想定した「武装ゲリラの襲撃」に備えるために創設された。来年度予算では、陸自部隊が対ゲリラ戦の訓練を効果的に実施するための交戦訓練用装置が追加されるなど、現実の訓練が重視される段階に入っている。日本へのゲリラコマンド潜入、特に南西諸島に対するゲリラ攻撃とそれへの対抗が念頭に置かれているのである。これらは明白に中国や北朝鮮(朝鮮民主主義人民挙和国)との紛争、特に中国との国境付近、島嶼地域での小規模軍事紛争対策を想定している。潜水艦領海通過、資源争奪戦と相まって領土紛争があり得ると判断し、そういう局面でも日米安保を背景に中国と軍事的に対抗する体制を築こうとしているのである。
※離島防衛へ本格始動 西方普連など派米訓練 ボート操舵、偵察泳法修得(朝雲新聞社)
http://www.asagumo-news.com/news.html
(4) 行われた共同演習の詳細は明らかにはされていないが、伝えられている限りでも「鉄の拳」という文字通りの強襲上陸作戦のための演習である。自衛隊員らは、戦闘服に防弾チョッキやライフジャケットを着け、銃を持ったまま、遠泳したり小型ボートを操るといった基本を教えられた。これまでの訓練は皆無のため、ゴムボートの基本的な動かし方や、音を立てずに長時間泳ぐ偵察泳法など初歩的な技術を習得することに主眼が置かれたという。今回は応用訓練や共同作戦までは踏み込まれなかったが、敵に察知されずに離島を取り巻く情報を正確に把握し、島に接近し、強襲上陸、敵との交戦、奪取するというシナリオに基づいている。
1月12日のマスコミ公開では、陸自隊員がボートに乗って行動する様子や銃を海面に浮かせて泳ぐ演習する姿が報道された。そこでは、陸自隊員と米海兵隊員が一緒になって、ゴムボートの操舵や乗・下船を繰り返し様子が映し出されている。
※Japanese soldiers train on U.S. shores
http://seattletimes.nwsource.com/html/nationworld/2002741136_japandiego15.html
同時に、部隊の指揮官は攻撃を組織する方法を教えられたという。図上演習で、天候など複雑な条件が絡む陸上作戦の立案のノウハウを習得するのである。海兵隊は通常、配備の前に12週間のトレーニングを経験するが、今回は陸上自衛隊の入門用に21日間に短縮されている。しかし、海兵隊が学習する「強襲上陸メニュー」と全く同じ訓練の縮小版が施されたのである。
※Japanese Army Trains with U.S. Marines
http://www.cpf.navy.mil/news_images/0601/060120c.htm
[2]小泉政権の危険な対中挑発のエスカレーションと日本軍国主義
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(1) 日本政府は、中国が、あるいは中国の活動家がいつ尖閣諸島に上陸するかわからないという危機意識を煽り、「中国の脅威」に対抗する「国民的合意」を作りだそうとしている。しかし、私たちがここで確認しなければならないのは、一貫して危機を煽っているのは誰か、挑発を繰り返しているのは誰かという問題である。小泉首相は今年に入っても、年頭から「靖国参拝に異議を唱えるのは理解できない」などと挑発的発言を繰り返し、日本の軍国主義復活に危機感をもつ中国政府や中国市民の感情を逆撫でした。
マスコミもこのような小泉政権に迎合し、かつて朝鮮総連の送金や北朝鮮への「軍事物資」輸出をやり玉に挙げたように、ヤマハの対中国「無人ヘリ不正輸出」をあげつらい、中国脅威の流布に加担している。
※ヤマハ発動機のヘリ不正輸出、中国軍系企業にも
http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY200601280318.html
※ヤマハ事件:「中国脅威論を誇張」中国紙が反発
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0126&f=national_0126_006.shtml
※ヤマハ発動機・不正輸出疑惑:中国の企業が声明、「軍事転用できぬ」
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060126dde041040023000c.html
(2) しかし、小泉政権の軍国主義化・反動化は異常なほど急ピッチであり全面的である。靖国神社参拝の強行、過去の侵略戦争と植民地支配の美化、戦後初めての海外派兵、有事法制と戦争動員体制整備、日米軍事一体化のエスカレーション等々。それだけではない。憲法や教育基本法を破棄しようとしているのである。中国、韓国や北朝鮮のみならず、かつて天皇制日本の侵略と植民地支配を受けたアジア・太平洋諸国の人々が、小泉軍国主義の台頭に危機感を抱くのは当然のことである。
−−日本は2004年末、新「防衛大綱」おいて、対処の必要な脅威として「弾道ミサイル攻撃」、「ゲリラや特殊部隊による攻撃」を掲げ、「島嶼部に対する侵略」と、「周辺空域に対する領空侵犯」、さらに「領海内で潜没航行する外国潜水艦」の存在を特筆した。ここで島嶼部が尖閣諸島近辺、潜水艦と航空機が昨今日本周辺への出没が目立つとされる中国のそれを指すのは明らかである。上記の演習対応はまさに、新防衛大綱の具体化である。
−−陸上自衛隊ではこうした脅威認識の変化を受け、大再編を進めている。それは「部隊の地理的重点正面」を「北から南へ、東から西へ」移し、北海道の勢力を削って「日本海側及び南西諸島正面の配備を強化」するものである。「重装備から軽装備へ」との方針が同時に示され、「中国からの脅威」に対抗する布陣を敷こうとしているのである。
※新「防衛大綱」「中期防」閣議決定批判:シリーズその1
血まみれのブッシュの侵略戦争と軍事覇権に全面奉仕する愚挙 (署名事務局)
−−2005年3月には、日本政府は、戦争に対する準備を広範な国民に強制する「国民保護基本指針」を閣議決定した。この中で政府は、「有事」として中国の核攻撃をも想定し、国民に対して中国の脅威を植え付けようとしたのである。
※戦争への国民総動員と“銃後”体制確立を図る「国民保護基本指針」に反対する (署名事務局)
−−同時期に、島根県議会による「竹島の日」条例の制定を容認し、侵略戦争を賛美し民族主義をあおる「つくる会」の歴史・公民教科書の採択を、自民党が直接主導する形で進めた。、
これに対して、韓国、中国では大規模な反日行動がわき起こった。特に今年4月に中国全土、特に上海から北京で席巻した反日デモは、日本の常任理事国入り要求に対する怒りに端を発し、「つくる会」教科書問題、小泉首相の靖国参拝強行発言など恥知らずな日本の報復主義的・軍国主義的政治に対する中国人民の激しい怒りを表現した。呉儀副首相の小泉総理との会談キャンセルと帰国にまで発展した外交的決裂をもたらした。
※【投稿】いわゆる「竹島(独島)問題」と日本の戦争責任 (署名事務局)
−−2005年7月に出された「防衛白書」では初めて中国の軍事力の拡大について警戒感を示した。
−−さらに2005年10月に小泉首相は、内外の反対意見、憂慮する声を押し切って、靖国神社への参拝を強行した。。
※小泉首相の靖国参拝を糾弾する! (署名事務局)
−−また2005年10月に出された日米安保協議委員会の「中間報告」では、日米の「共通の戦略目標」を確認し、グローバルなレベルの共通目標として、テロ防止、大量破壊兵器不拡散での軍事的協力を通じて、米の対テロ戦争への参加、先制攻撃戦略をとるアメリカの軍事戦略への支持を明らかにするとともに、地域レベルでは、北朝鮮への対応と並んで、初めて中国の軍拡を取り上げ、日米同盟が対抗する対象として確認した。日米政府の公式文書で中国を事実上の「仮想敵」と位置付けたのは初めてのことである。
これに基づく米軍再編、基地移転と司令部移転も、本格的な中国との軍事的政治的対立への対処を大きな目的の一つとして立案されている。
−−そして、今年に入って2006年2月6日に公表された「4年ごとの国防計画見直しQDR」で中国は「将来ライバルになる可能性がある」と中国脅威論をとなえ事実上の仮想敵として軍事的な発展を封じ込める戦略を公にした。これと日本が進めている対中での軍事態勢の強化は全く軌を一にしたものである。
[3]日本と自衛隊が対中挑発の“先兵”に−−米軍の対中戦略と一体となった対中軍事対応の強化
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(1) 陸上自衛隊が今回行った島嶼敵前上陸演習は、日本がエスカレートさせている対中敵視・軍事挑発政策の一環であり、新しい段階を示している。防衛庁・自衛隊は、「領空侵犯」対処におけいて、パイロットが武器使用する事を「自主判断」ではなく「任務」と位置づける航空自衛隊の部隊行動規定の見直しを進めている。また、これまで法的に「日本有事」に限るとされてきた非常措置を、朝鮮半島や東シナ海有事にまで拡大する周辺事態法の改悪に着手し始めた。これらは2004年に閣議決定した「新防衛計画大綱」の具体化であり、そこで中国、北朝鮮を念頭に想定した「ゲリラ・コマンド」対策に本格的に乗り出すことを意味する。
防衛庁は、1月3日、東シナ海での領空侵犯対処を強化する方針を明らかにした。現行では,戦闘機による武器使用は「正当防衛」などに限定され、その判断はパイロットに委ねられている。防衛庁は、交戦規定(ROE、部隊行動規定)に、武器使用を明確に「任務」と明記し、指揮官の命令などに基づき、応戦できる状況や手順の規定や艦艇と連携しての共同対処の検討にも着手した。これには、自衛隊法95条の「武器などの防護」を適用し、戦闘機という「武器」を守るため、航空方面司令官など指揮官が状況に応じて、パイロットに武器使用を命令できるようにしようとしている。しかし武器の防御を口実に発砲に道を開くのはでたらめな論理である。何よりも国境付近での領空侵犯や領海侵犯などの小規模紛争では、事件を大規模な軍事衝突や戦闘に拡大させないこと、自制が第一なのである。これらの措置は自らエスカレートに道を開き相手を威嚇しようとする危険な動きである。すでに、内閣法制局の審査を終了させ、関連規定改正などの検討や発射命令できるケースの検討にも着手しているという。
※東シナ海領空侵犯 武器使用の「任務」明記 防衛庁、戦闘機応戦を強化
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060104-00000003-san-pol
(2) それだけではない。航空自衛隊は、ヘリに給油できる機能をC130輸送機に追加し、哨戒に当たるヘリが現場海域で長時間、作戦を継続できるように能力を向上させようとしている。さらに海上自衛隊は、中国の潜水艦対処能力向上として、新型短魚雷の開発やP3C対戦哨戒機の処理能力強化に着手している。
(3) また、政府は、台湾海峡など日本周辺で紛争が起きた場合、日本有事と同様に、国内の空港・港湾を米軍に優先的に使用させる強制措置を取ることができるよう、周辺事態法を改悪する検討に入ったという。
「日本有事」では、特定公共施設利用法に基づき、首相の権限で自衛隊や米軍に民間の空港・港湾を優先使用させることができることが定められている。しかし、「米軍からの強い要請」で、「周辺事態法が適用される紛争」すなわち、台湾海峡などへの武力攻撃時に、日本の民間空港などを強制使用するよう改定しようとしているのである。米は、在日米軍再編協議でも、「台湾海峡有事が起きた時は、九州のすべての民間空港を使って対処する必要がある」などと日本側に改善を要請したという。
※周辺事態の空港・港湾使用も米軍優先…法改正検討(読売)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060111-00000105-yom-pol
(4) 小泉首相は靖国参拝を繰り返し、麻生外相など政府要人は中国脅威論を振りかざし、中国へ政治的挑発を繰り返している。自衛隊による対中国を前面に出した軍事力、軍事行動の強化はこれらの発言とつながっている。
しかし、対中国での強硬姿勢と挑発的姿勢は一人日本政府だけのものではない。いや、日本政府が対中の強行姿勢を誇示しようとするのも、米国が中国を脅威になると捉え、対中での軍事態勢再編を進めているからに他ならない。いわば日本は米国の威を借りて中国に対抗しようとしているのであり、米の対中軍事態勢強化に全面的に協力するつもりである。日米両国が共同して役割分担と軍事協力の再編に踏み出そうとしていることこそが一層の危険をもたらしている。
もちろん、ブッシュ政権の対中政策は「二面政策」である。対中政策を巡る米政権内部の権力抗争の側面も残されている。いずれにしても、米は六カ国協議や経済面での協力関係と併せて軍事的対抗関係の構築を同時に推し進めているのである。この対中軍事的対抗関係の構築の中で、日本とその軍事力を「忠実な手駒」として利用する、それが米の戦略である。
(5) 2月6日に米議会に提出された米軍事戦略(QDR)では、対テロでの長期戦争と並んで、中国を将来のライバル、脅威になる可能性があると位置づけ、いまからそれを押さえ込むための軍事体制を取ることに主眼の一つが置かれている。
現在日米両国間で話し合われている米軍再編もその見地からアメリカが、アジア・太平洋において、中国を事実上の仮想敵として軍事力、兵力の増強と近代化を急速に進め、それに日本の自衛隊を全面的に組み込むことに目的がある。沖縄の米軍基地の再編、特に辺野古への海兵隊基地の新設は、対中国で近代化した基地建設と米軍の配置を再調整することに目的がある。太平洋方面での米軍の戦力増強、横須賀への原子力空母母港化、太平洋からインド洋までを責任範囲とする陸軍第1軍団司令部の座間移転なども機動・即応展開戦力の増強の一環であるが、同時にそれは中国を常に意識しそれとの対抗を目的としている。
今年初めから日本各地で同時多発的に日米軍事演習が行われていることは、対中国の軍事ネットワークに日本全土の基地と自衛隊部隊を組み込むものに他ならない。米軍再編の狙いには、在沖・在日米軍基地を総動員して中国を牽制すること、台湾海峡の軍事的緊張、日中関の軍事的政治的緊張を扇動するために日本を対中軍事対決の“拠点”“道具”として利用することも含まれている。
(6) このような脈絡でみる場合、今回行われた島嶼上陸演習や防空識別圏での軍用機パイロットの武器使用の「任務化」は、アメリカが軍事対抗関係を強める中国との関係において、日本の自衛隊が、一触即発の緊張関係から、現実の紛争へとエスカレートさせるための先兵の役割を担うことになる危険性がますます高まることを意味する。なぜなら、2001年11月の北朝鮮「不審船」事件にしても、2004年9月のノドン発射騒ぎにしても、2004年11月の「中国原潜領海侵犯」事件にしても、すべて情報は米当局からもたらされ、それに日本の自衛隊が反応し、日本の世論が踊らされたからである。そのような能力と決意を日本の自衛隊が保有することを内外に知らせることが、極東アジアの緊張をいかに高めるか、このことを小泉首相は真剣に考え、危険な火遊びをやめるべきである。
※突如の「ノドン発射準備」騒ぎは何を意味するのか? (署名事務局)
※小泉政権による公海での不法な武力行使、北朝鮮敵視政策を糾弾する! (署名事務局)
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