小泉政権による公海での不法な武力行使、 北朝鮮敵視政策を糾弾する! ● 政府・海上保安庁による武力行使、「不審船」撃沈は明らかな 不法行為。何の法的根拠もない。 ● 公海での更なる露骨な先制武器使用、武力行使のエスカレーション、 戦争挑発につながる一切の法整備反対。有事立法反対。 ● 政府・マスコミは、ウソと歪曲で塗り固めた意図的な報道、 国民を扇動する排外主義的な世論誘導をやめろ。 2001年12月26日 アメリカの「報復戦争」に反対し日本の参戦に反対する署名 事務局 |
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(1)国民に好戦的・排外主義的感情を植え付ける政府・マスコミ一体となった扇動。
突然の臨時ニュース、特別報道番組、定時ニュースの異例の延長、「事件」が起こってから1週間足らず、今なおその異常さは続いています。私たちは何よりもまず、その政府・マスコミの異常さに政治臭さ、きな臭さをぷんぷん感じるのです。TVも新聞もそんなことを十分承知していながら、排外主義的扇動に悪乗りしています。国民を好戦的にさせ、排外主義を植え付ける意図が見え見えです。批判・異論は一切聞くことができず、翼賛的雰囲気が蔓延しているのです。恐ろしいことです。
アメリカがアフガニスタンに戦争をしかけて一つの山を越し、ブッシュ政権は次の侵略対象を狙っています。先にロイターとのインタビューでブッシュ大統領は「来年は戦争の年になる」と凄んで見せました。まさにその最中で起こったことなのです。
(2)普通のやり方ではない。戦時体制・戦争状態にある軍国主義国家の、しかも最も好戦的な対応。
事態の推移は皆さんもご承知の通り、日本政府・海上保安庁が東シナ海の公海上(経済水域)で国籍不明の「不審船」に対して停戦を命じ、これに従わないという理由で既に中国の経済水域に入っていた同船に対し威嚇射撃、船体射撃を行なった、そして銃撃戦となるや集中的な攻撃を行い撃沈したというものです。軍事用語で言う「臨検」とは、戦時下の公海上で他国の船を停船させ武装部隊を乗り移らせて行き先や積み荷を規制する戦闘行為のことで、厳密には今回の事例と違うのですが、武力でムリヤリ停船させ「検査」をやるというのは準「臨検」行為、戦闘行為に他なりません。
小泉首相は「なぜ長時間に渡り追跡しながら捕らえられなかったのか」と怒りをぶちまけ、「次はそんな甘い対応はしない」と言います。皆さんは、これが通常のやり方のように思い込まされていますが、実はこのような対応は異常なやり方なのです。戦争が大好きな小泉首相らしい発言です。戦時体制、あるいは準戦時体制にある軍国主義国家の好戦的で戦争挑発的なやり方なのです。最初から「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)船籍」であることを知りながら、同船籍なら、アメリカも周辺諸国もマスコミも、国民も何をやっても許されるだろうという傲慢かつ安易な判断の下に「事件」を作り上げたのです。
(3)沈黙する野党。排外主義煽るマスコミ。
民主党の菅幹事長は「後の射撃は正当防衛だが、最初の威嚇射撃は問題」として異論を唱えてはいるのですが、尻込みしながらの異論であり、全体の法的根拠を全く批判していません。社民党の土井党首は「武器使用拡大は慎むべきだ」として事件に乗じて有事法制を進めることに警戒感を示しはしましたが、事柄そのものを批判していません。共産党も事実報道が中心で、三面記事では「巡視船の被害」を伝えるのみです。政府・マスコミの好戦的報道に対抗するどころか、鳴かず飛ばず、腰砕けの状況です。
私たちは、自分の頭で考えるしかありません。政府やマスコミの排外主義的な煽動に踊らされてはなりません。事柄を冷静に捉え、マスコミや政府が隠したり触れるのを避けている真実を捉えなければなりません。以下に、その法的、政治的側面を、今分かっている範囲内で批判しておきたいと思います。
(4)警戒と批判を強める韓国と中国。
北朝鮮の朝鮮中央通信は26日、「重大な謀略劇」と報道しました。「不審船は国籍不明」だったと強調、「自国の水域でもない他国の水域をも侵犯して行った日本の犯罪行為は、国際法も知らない日本のサムライ集団の海賊行為で現代版テロ」と断言しました。
韓国のハンギョレ新聞は25日、社説で「日本は過剰対応を慎むべき」と日本の軍国主義化に懸念を表明しました。朝鮮日報も24日、「日本の"過剰"と"傲慢"」と題する社説を掲げ「日本は米国の9・11テロ事件以降、戦後56年間タブーとなってきた自衛隊の海外派兵を行っただけでなく、最近に入ってから軍事力行使に足かせになってきた要素の取り除き作業を始めている。その延長線上で出たのが今回の日本の行為である」と批判しています。中央日報も25日の社説「日本の過剰防衛を憂慮」で「経済水域では船舶の無害通航が保障されている。無害通航が保障された他国船舶に対し、日本当局が国内法のいかなる規定違反を根拠に停船命令を勧告し、追撃したのかがまず釈然としない。経済水域での追跡権は認めることができるが、その条件として自国の法令を違反したという明白な理由がなければならない。今回のように死亡者が出た場合は発砲した本人が刑事責任を負う。日本はこれに対して明確な説明をしなければならない。そうしてこそ、日本側の行為が不可避の正当防衛だったと関連国に説得できるだろう。そうではなく、日本政府が第3国から事前に情報を入手し、不審船の進入を待機していたという説が事実ならば、日本の行為は軍国主義復活の可能性を警戒する周辺国の疑いを晴らすのは難しいだろう」として軍国主義復活に警戒感を示しています。
中国の人民日報は、23日の外交部報道官の会見で「我々は日本が東海海域(東シナ海海域)で武力行使をしたことに関心を寄せている」と警戒感を示しました。
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(1)不法行為を働いたのは「不審船」ではなく、政府・海上保安庁の側。撃沈後に「法整備」で大騒ぎすること自体、船体射撃・撃沈の法的根拠がないことの証明。
問題の根本は、その法的根拠です。撃沈させてから慌てて「国内法整備」を声高に叫ばれていること自体、法的根拠が全くなかったことを示しているのです。12月24日の福田官房長官は記者会見で、今回の法的根拠は何かと問われて窮しました。あたりをきょろきょろ見回しながら、しどろもどろで、「前回も今回も同じでね」(もちろん同じ訳がありません)「そのー、あのー、前回はねぇー」。記者達もそれ以上追及しなかったことも異例です。
公海上で「大砲」をぶっ放せば、周辺諸国は黙っていないはず。少なくとも政権の中枢にいる責任者が国際法や国内法のしっかりとした議論、周辺諸国の警戒に対してきちっとした法理に基づく説明が大前提なのです。でなければ法治国家とは言えないでしょう。明らかに、首相も官房長官も、こうした厳密な議論抜きに「北朝鮮だからやってしまえ」と暴走したことが窺えるわけです。国内外の政治力学を理解しないで、感情論で暴走する戦後初めての内閣ではないでしょうか。国民を戦争の道へ引きずり込む極めて危険な小泉政権をストップしなければ、戦争好きの小泉首相と道連れということになりかねません。
経緯を振り返りましょう。
@12月22日、午前6時頃、奄美大島北西224kmの「公海上」で、海上保安庁は「不審船」に「検査」のための停船を命じました。
−−「日本の排他的経済水域」ですが、これはれっきとした公海です。新聞やTVの地図は完全に操作されています。国民が「経済水域」をまるで「領海」と思い込むように線引きをしているのです。領海は12カイリ、わずか20kmに過ぎません。これは非常に重大な点なので間違わないようにして下さい。
−−「検査」のための「停船」要求は、上述したように「臨検」であり、準戦闘行為です。
A「不審船」は、停船命令を無視して航行し、既に中国の経済水域(公海)に入っていた同船に対して巡視船は、上空への20ミリ砲の威嚇射撃、2度にわたる船体前部への射撃を繰り返しました。しかも先制的な危害射撃です。
−−自由航行が原則の公海上での武力行使です。法的根拠は、こじつけで「漁業法」「警察官職務執行法」の2つです。そのデタラメさの詳細は後で批判します。
Bさらに直接乗り込もうとして火器で反撃され銃撃戦になったので、船体全体への射撃を浴びせ沈没させました。そして、海に飛び込んだ乗組員を救助せず、全員死亡させたのです。
−−政府・マスコミは、異様なほど「正当防衛」を強調していますが、TVでの映像も含めてAの先制射撃は無視し、専らBだけを垂れ流しているのです。
(2)「漁船でない」と言いながら、なぜ「漁業法」違反を根拠にできるのか。こじつけも甚だしい。
小泉政権が言う、今回の「臨検」に対する唯一の法的根拠は国内法「漁業法違反」です。そして「威嚇射撃」の根拠は「警察官職務執行法」にあると主張しています。しかし以下で述べるように、これらの法律の適用自体がデタラメであり、不法行為を働いたのは日本側なのです。
前提として混同して欲しくないのですが、今回の「事件」は「領海侵犯」でないことです。領海内での船体や人体に対する「危害射撃」を認めた、先の「テロ対策特措法」と一緒に改悪されたばかりの「海上保安庁法」は今回は適用されていません。
@漁業法は適用できない。
最初から「漁業をやっている形跡がない」「漁網がない」と政府・海上保安庁自身が言っているではありませんか。なぜ「漁業法」(立ち入り検査忌避)が適用されるのでしょうか。強引なこじつけでしかありません。まず「攻撃ありき」だったことがバレバレです。日本政府の側こそが明らかに不法行為を働いたのです。マスコミ、TVも新聞もなぜこの法的根拠の薄弱さ、不法性を一言も問題にしないのでしょうか。私たちは何よりもこの点に、恐ろしさを感じるのです。ブッシュ大統領の対アフガン戦争が国際法を無視した不法な侵略戦争であることを、アメリカのマスコミが沈黙して批判しないこととダブって見えるのは私たちだけでしょうか。
本来、「排他的経済水域」は「公海」、つまり船籍に関係なく航行の自由を保障された領域です。漁業・水産資源・鉱物資源に対する主権とそれに限定した法律の適用を認めているだけであり、例えば、不法に漁業を行い経済主権を侵害する船に対して停船、検査を認めているだけなのです。「排他的経済水域」での「主権」の範囲が厳密に限定されていると言えるでしょう。でなければ国境紛争や国際紛争が頻発し戦争が頻発するからです。
A警察官職務執行法では船体射撃は許されない。
政府が威嚇射撃の唯一の法的根拠にしているのが、この警察官職務執行法第7条です。もちろん上記漁業法違反が前提になって、その犯人に威嚇射撃できるのですが、それを別としても、そもそもこの法律では相手に危害を加えることを禁じられているのです。ところが今回はまず最初に巡視艇側が先に危害を加えています。しかも本来なら船首先の海上へ、あるいはマストなど致命傷にならない部分への威嚇しかできないはずなのに、前方エンジン部にまともに射撃しているのです。これは警察官職務執行法の濫用に他なりません。これだけからしても、今回の射撃が「犯人」逮捕の警察行動ではなく、相手の殲滅を狙った軍事行為であることが明白なのです。
(3)日本側の不法行為は中国に対しても行われた。
海上保安庁が同船に停船を命じたのは経済水域の日中の境界線近くでした。そしてここが大問題なのですが、威嚇射撃を始めたのは中国側の経済水域に入ってからであり、船体射撃、銃撃戦を行ったのは全面的に中国の経済水域の中での話なのです。政府・マスコミは、経済水域には「日本の法律が適用される」と宣伝しています。しかし、もしそうなら中国側の経済水域では中国の法律が適用されるのであり、違法行為の何の証拠もない「不審船」の取り締まりは中国当局の仕事ということになります。もし日本側が強引に解釈したのと同じ論法で中国の法律が適用されるならば、そこで他国の武装船が勝手に武力行使を行い攻撃することは違法行為そのもの、海賊行為ですらあり得るのです。中国が「東シナ海で武力行使したことに対して重大な関心を寄せる」と批判したのは当然です。
(4)政府・マスコミのもう一つのウソ。武力行使の異常な大きさ、戦争行為に匹敵。
今回の武力行使の規模の異常さ、大きさ、そして周到さです。皆さんは偶然追跡したように思われているかも知れません。また海上保安庁と聞いて海上自衛隊とは違う、ちょっとした捕物帖と錯覚しているかも知れません。しかしこれらは大間違いです。このことをマスコミは意図的に取り上げていません。今回の「事件」は、事実上戦後初めての本格的な武力行使、軍事力の行使なのです。場合によっては戦闘行為や戦争につながりかねない超危険な行為なのです。しかも米軍とともに数日前から、捕捉準備に入っていたのです。
@まず海上保安庁はわずか100dクラスの1隻の小型船を捕捉するために25隻もの船を動員しました。海上自衛隊の艦艇も多数出撃しています。報道によれば、米軍が18日に偵察衛星で発見し通報、19日から防衛庁が無線を傍受し、21日午前4時半には不審船を発見したと言います。その間、日本側は相当周到に準備し不審船を包囲し袋のネズミ状態にしていたのです。
A使用された武器も重火器です。船体に向かって発射されたのは20ミリ機関砲ですが、この20ミリ機関砲は小銃や自動小銃とは訳が違うのです。命中すれば船体に大穴があき、装甲板でもぶち抜く威力があります。「不審船」が発射した小型ロケットについて「戦車を打ち抜ける」などと大騒ぎしていますが、自分の方が撃った機関砲も「戦車を打ち抜ける」ような重火器であり、従来の警察行動とは根本的に異なるあからさまな武力行使であったことには一言も触れていないのです。船体に命中すれば、船体には大穴があき沈没は時間の問題となっていたのです。
Bここから不可避的に出てくる結論は、撃沈が前提になった「臨検」であったということです。自分の「正当防衛」だけを宣伝していますが、こんな機関砲を何百発も撃ち込めばどうなるか、分かっていたはずです。日本側が不法に攻撃を仕掛け撃沈するというのは、戦争行為以外の何物でもありません。
Cもう一つの重大な疑問はなぜ助けなかったのかということです。巡視船の船長の一人は自分の船の攻撃が爆発を起こし沈めたことを認めています。乗組員全体が海に飛び込んだといいます。報道されていませんが、20ミリ機関砲を200発近く受けた後で生存者がそれだけいたかどうか大いに疑問なのです。船体中が穴だらけでかなり死んでいた可能性があります。海上保安庁は「自爆の危険がある」、「500メートル離れていろと命令し現場に救助させなかった」と述べています。「身柄の確保ができなくて残念」などとコメントをしていますが白々しい限りです。実際には死なせろと命令し、現場では死体になるのを待っていたのです。生存者がいると後で日本側の不法性が問われ裁判ざたになり、国際問題にるのが厄介だから見殺しにしたとの観測さえささやかれているのです。冬の海に飛び込めば何時間も生きていられないことは誰でも知っています。わざと助けずに放置した−−冷酷の限りという他ありません。
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(1)北朝鮮なら何をしても良い−−露骨な北朝鮮敵視政策。
この「不審船」は奄美沖で偶然見つけたのではありません。政府の説明では自衛隊のP3Cが発見し、漁船でなく北朝鮮の工作船に似ていると確認してから保安庁に通報しました。26日の各紙には「暗号電波数日前に傍受」とか「今月に入って米軍から工作船が北朝鮮から複数出航との情報を受けて集中的な探知活動を続けていた」など、最初から北朝鮮船籍であることを承知の上で対応していたことが報道されています。
前述のように保安庁は予め誘き寄せ、大包囲網を敷いて捕まえにかかったのです。漁船でないことは初めから分かっていました。通常の漁船と異なりエンジンが前部にあることも分かっていました(だから巡視船は普通にエンジンのある後部ではなく前部を狙って撃ったのです)。海上保安庁は何が何でも拿捕し身柄確保をする、抵抗すればきちっと反撃する(撃沈はシナリオには入っていなかったかも知れませんが)と初めから決断していたようです。だから根こそぎ巡視船25隻も出動させたのです。有り体に言えば適用する法律などどうでも良かったのでしょう。後で何とか丸め込めると考えていたに違いありません。とりわけ海上保安庁の現場の司令者達は「メンツ」と99年の「敵討ち」が衝動力だったのでしょう。「今回は逃すわけには行かない」と。だから威嚇射撃で追い払うのではなく、異常なまで執拗に追跡し、危険な夜になっても追跡し攻撃したのです。
もっと重要なことは、海上自衛隊の幹部が言うように「領海侵犯なんかいくらでもある」のになぜ今回のまさにこの船が今問題にされて徹底的に攻撃されたのかということです。そこにこの「事件」の秘密があります。
(2)ブッシュ政権の対北朝鮮強硬政策の一環。米軍の関与もささやかれる謀略のにおい。
私たちは今回の異常極まりない「事件」を、我が国とアメリカの一連の北朝鮮封じ込め政策の一環として位置付けなければなりません。今回の「不審船」が日本の経済水域に行って来たのも含めて、最近の我が国の北朝鮮に対する緊張激化政策に深く関係することは明らかです。
そして小泉政権は、今回の「不審船」を最大限利用して意図的に北朝鮮非難、排外主義の大キャンペーンをしているのです。
−−まずアメリカによる「反テロ戦争」キャンペーンは、対アフガン作戦がヤマを越え、最近はイラクと並んで「大量破壊兵器」の「国際査察」を口実に使って、再び北朝鮮に対する強硬政策に焦点が移りつつありました。
−−米財務省筋から、「テロ支援国家」と決めつけられた北朝鮮に対するマネー・ロンダリングを摘発するよう日本政府金融当局に圧力がかかりました。朝銀事件摘発による北朝鮮への資金切断です。−−そして日本政府によるコメ援助の拒絶と北朝鮮による行方不明者調査打ち切りへの非難キャンペーン。等々。
これら一連の出来事の直後に今回の「事件」は起こりました。初めから北朝鮮をやり玉にあげて利用するチャンスを待っていたとしか思えません。
−−先に紹介した26日の報道にもあるように、今回の情報の出所も、前回99年の「不審船」事件と同じく米軍です。「不審船」はスパイ衛星によって出航時点から監視され、わざと「泳がされ」た後に、海上保安庁に包囲させた可能性が濃厚なのです。もしそうならば政治謀略そのものです。
(3)「もっと毅然たる対応を」「なぜ拿捕できなかったのか」「なぜ正当防衛以外反撃できないのか」等々、小泉政権とマスコミは、調子に乗って武力行使のエスカレーションを企て始めた。
今回の事件を契機に、小泉首相と政府は「現実的対応」という名の危険極まりない冒険主義的政策を主張しています。「不審船」が小銃で撃ち返し小型ロケット弾RPG7で武装していたことを取り上げて「こんな武装船が周辺をうろうろしているのを許していいのか」「撃たれて負傷するまで撃ち返せなくていいのか」という小泉首相の金切り声に合わせて大合唱が起こっているのです。
そしてもっと露骨な武力行使のエスカレーションを可能にする以下のような法整備が叫ばれています。海上保安庁法再改悪、領海警備法制定等、要するに経済水域をまるで領海であるかのように拡大解釈して、軍事力行使の領域を拡大することです。
@公海(経済水域)で、先制攻撃をできるようにする。もっと大規模な武力行使を行い相手に危害を加える。
A領海内の「領域警備」だけでなく、公海(経済水域)でも自衛隊が前に出て警備・武力行使ができるようにする。
B不審船問題を「テロ攻撃」にすり替え、更にそれを「日本への直接侵略」にすり替え、「テロ攻撃に備えた有事立法」制定につなげる。
もうメチャクチャ、国境や国際紛争を無視したとんでもない議論です。これらの法整備が問題にしている場所は経済水域とは言うものの、自由航行権が保障されているれっきとした公海なのです。それをあたかも領海のように扱うこと自体が何よりもまず戦争挑発なのです。意図的に国際紛争を扇動しようと言うのでしょうか。公海での武力行使、軍事力行使を自由にできるようにしようと言うのでしょうか。
思い出して下さい。あの「周辺事態法」(船舶検査活動法)でも、公海上で相手船舶を射撃して検査することを認めていないのです。小泉首相が今、この「事件」を利用してやろうとする「法整備」とは、同法に風穴を開け、「周辺事態法」でできなかった武力行使を可能にして正真正銘の軍事的「臨検」に向けて突破口を開こうとするものなのです。危険な火遊びとしか言いようがありません。
(4)武力行使第一主義を前に出した公海上での紛争をめぐる外交政策の大転換。
日本が「怪しい」と決めつけたら、法的根拠もなしに一方的先制的に攻撃し撃沈しても良い−−今こんな議論をする国家は、領土拡張主義を露わにする軍事国家のやること、戦争体制にある国か、準戦時体制にある国のやり方なのです。このことをどこまで自覚しているか。国民はもう目を覚まさなくては大変なことになります。純ちゃんと言ってる場合じゃありません。
従来日本政府はたとえ他国の領海内の違法操業であっても、民間の漁船に対し発砲し拿捕する行為を野蛮行為だと非難してきたのです。過去にソ連・ロシア、北朝鮮による拿捕をそういう理屈で非難してきたのです。そんなことも忘れて今度は自分がもっと野蛮な行為をやろうとしているのです。日本は他国と戦争している戦争当事国ではありません。戦争の危険に直ちに曝されているわけでもありません。経済水域における「不審船」や違法漁船などは、従来通り通常の警察行動の範囲で取り締まることが可能な状況なのです。たとえ停船しなくても領域外に退去させることで殆どの場合、国家として何の実害もなく済ませられるのです。
要するに小泉政権は公海と国境をめぐる外交政策を大転換するというのです。国境紛争、経済水域をめぐる紛争やトラブル、違法漁船への対応、「スパイ事件」等を、全て武力・軍事力を前に立てて「力で解決」するやり方に全面的に移行することを意味しているのです。この武力行使第一主義のやり方が、今回のマスコミの排外主義的な扇動と結びつけば、周辺諸国との紛争は簡単に戦争へと拡大することでしょう。それほど危険なことなのです。経済水域での問題は違法漁船の問題だけではありません。日本政府は経済水域内での中国海洋調査船の行動に対して、無許可であることを非難し、退去をたびたび求めてきました。尖閣列島領有権をめぐる中国、台湾漁船とのトラブルもありました。漁業をめぐる韓国漁船とのトラブルもたびたび起こっています。これらを全て武力行使を前に立ててやるという方針への転換は、全く常軌を逸した行為と言わざるを得ません。例えば中国の海洋観測船が経済水域から退去命令に従わない場合、警告しても退去しないとして機関砲をぶっ放せば日中関係が一気に緊張し場合によっては戦争になります。そこまで覚悟しているのでしょうか。政府だけではありません。マスコミもそうですし、踊らされている国民もそうです。しかしそれが政府が次にやろうとしていることなのです。中国政府や韓国政府が今回の事件で日本が更に武力行使の範囲を拡大するのではないかと警戒しているのも当然のことです。
あるいは中国や韓国は対象ではないと言うのでしょうか。それなら尚更、今回の「事件」を初めから反北朝鮮キャンペーンの道具立てに使ったことが露呈します。今回の「不審船」が北朝鮮船籍である証拠は何もありませんが、北朝鮮の船であれば何も証拠がなくても、日本政府・海上保安庁が「怪しい」と決めつけたら何をしても良い、攻撃し沈め殺しても良いというのでしょうか。
国境紛争、経済水域をめぐる紛争は、国家が直接対峙する形になるがゆえに武力や軍事力が前に出ることを避けねばならないというのが国際的な鉄則なのです。世界各国で、国境警備が軍隊ではなく海上保安庁や国境警備隊の警察行動の対象にされているのも、そうした軍事的エスカレーションから直ちに戦争に発展していくことを防ぐためなのです。こうした国境紛争をめぐる過去の苦い経験を全く無視して、武力行使第一主義に転換することは戦争挑発政策そのものです。絶対やめさせなければなりません。
(5)政府・マスコミ一体となった根拠のない反北朝鮮キャンペーンに反対する。
今回の事件に対するマスコミの対応は異様です。「こんな対応でテロが防げるか」(読売社説)、「国家主権を守った措置だ」(産経社説)はいつものことですが、「巡視船が最終局面で正当防衛を根拠に射撃したのはやむを得ない措置」「違法行為の疑いがあれば法律の枠内で取り得る限りの措置を取るのは当然である」(朝日社説)、「毅然とした姿勢は理解する」(毎日社説)など、これまで慎重姿勢をとってきた新聞も大興奮しています。毎日のように大見出しで「海保の2人重傷」「負傷の2人、責任感ある人」「不審船、ロケット弾発射」「政府、対応に甘さ」「自衛隊出るべきの声も」「救命胴衣にハングル」「海自と海保、連携お粗末」「不審船が数百発発射」「不審船、北朝鮮船籍か」等々、ひどいものです。整理するとざっと以下のようになります。
−−何の証拠もない段階から事実上「北朝鮮船籍」と決めてかかる。
−−「北朝鮮」を理由に、あたかも不法行為をしていたかのように扱う。だからそれに発砲するのは当たり前であり、あたかもそれが国際的な基準であるかのように報道する。
−−「臨検」と「威嚇射撃」に関する今回の「事件」の法的根拠を全く問題にしない。従って我が国の対応が不法であることを全く批判しない。
−−船体射撃に対する攻撃についての不法性を全く批判しない。
−−今回の射撃が公海上での「公然たる武力行使」であることを問題にもしない。
−−自らの先制攻撃的な武力行使は不問に付し、反撃を受けたことだけを「正当防衛」として大宣伝をする。国民が見れば、突然「不審船」から反撃され日本の巡視船は応戦しただけであるかのように錯覚させる。
−−日本側の不法行為の結果、先制攻撃と応戦の結果、撃沈させ多数の乗組員を殺害したことを全く問題にしない。等々。等々。あまりの翼賛ぶりに反吐が出るくらいです。報道人としての倫理観、公平性、客観性、批判精神は雲散霧消してしまったかのようです。
今回の「事件」は、政府とマスコミによって徹頭徹尾政治的意図を持って扱われています。「事件」を最大限政治的に利用しようとしていることは明らかです。小泉首相により直ちに検討が指示された「現実的措置」「法的整備」は、来年の通常国会での有事立法、PKO法再改悪などと並んで、新しい軍国主義強化の口実にされるのは明らかです。
私たちは、署名運動を進めてきた皆さんと一緒に、今回の「事件」の真実を捉え、政府・マスコミの排外主義的キャンペーン、北朝鮮敵視政策に抗して、しっかりとした批判精神を持ちたいと思います。
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