チャベス政権、コロンビア準軍事組織を摘発。米国が裏で糸を引くクーデターを未然に阻止
○米の軍事介入に対抗し「市民防衛軍」組織化を提言。
○前進するベネズエラの“ボリーバル革命”。石油収入を人民のための医療・教育事業に振り向ける。 |
「ボリーバル革命は反帝国主義的段階に入った」
(5月17日集会での演説で チャベス大統領)
ベネズエラで“クーデター未遂事件”が発覚した。5月初めのこと、世界中がイラク情勢の緊迫化、米軍によるアブグレイブの拷問事件スキャンダルに釘付けになっている中でのことだ。折しも現地では「4・11クーデター」阻止の2周年を祝っている真っ只中のことであった。捕らえられたコロンビアの準軍事組織グループの最大の狙いの一つはチャベス大統領自身の殺害であった。幸い、事件はベネズエラ警察によって未然に摘発、阻止された。そして今回も再びブッシュのアメリカが背後で暗躍したことが明らかになった。米=コロンビアの右翼勢力=反チャベス勢力が結び付き政権転覆を企てたのである。チャベス政権は、反米・反帝を前に出してアメリカによる軍事干渉への備えを訴え、ベネズエラ人民の団結を呼びかけている。
「イラクだけではない。米国はハイチに続きベネズエラへの介入を狙っている。」−−私たちはイラク・中東情勢を注視するとともに、中南米情勢にも注意を払うよう訴えてきた。特に今年2月29日、米が突如、血塗れのハイチ旧軍部=殺人集団にクーデターを起こさせハイチ情勢に介入、アリスティド大統領を拉致・追放して以降、ブッシュ政権の介入・干渉政策は際立ってきていた。イラク情勢のどさくさ紛れに米はハイチに米軍を侵攻させ、ベネズエラとキューバをにらんでいる。これに対抗して米国内や中南米を中心に、「米国はベネズエラから手を引け!HANDS OFF VENEZUELA!」を掲げて民衆が抗議行動に立ち上がっている。
※「米国はベネズエラから手を引け!HANDS OFF VENEZUELA!」(署名事務局)
以下、日本のメディアでは全く報道されないこの事件とチャベス政権の対応について、現地のオンライン・サイト「ベネズエラ・アナリシス」や米のリベラル系サイトの報道を翻訳紹介しながら、米国の干渉政策と対決するベネズエラ「ボリーバル革命」の最新状況を概観することにする。
■カラカス近郊の農場で何が起こったか。
2004年5月9日未明、コロンビア人の準軍事組織(paramilitary)のメンバー、つまり正規の軍組織には属さずに軍事行動に携わる準軍事組織が、首都カラカス郊外の農場でチャベス政権転覆のクーデターを起こす準備をしているところを、ベネズエラ警察・情報機関によって逮捕された。この時逮捕された者は55人にのぼり、その後の捜索で、合計約130人のメンバーのほとんどが逮捕されている。残りのメンバーの逮捕に向けてさらなる捜索が継続されている(5月23日現在)。
(AFP/Juan Barreto)
この逮捕された者のうち約100名はコロンビア軍の予備役に属している。これに加えて、農場で仕事をすると騙されて連れてこられた者もおり、その中には未成年者も混じっていた。彼らは秘密を守らなければ家族を殺すと言って脅され、逃げようとした者には懲罰が加えられた。このグループが集まっていた場所に一人の男性の遺体が埋められていたのが発見されている。
現場で発見された文書や逮捕された者たちの複数の証言によれば、これらの準軍事組織は首都カラカス郊外の農場で、家屋を襲撃して殺人を行う訓練をさせられていた。そして、カラカスのベネズエラ軍の武器庫を襲撃し、そこから武器を奪い、後続の三、四千人の準軍事組織にその武器を手渡す手はずになっていたという。
(Credit: Venpres)
※ベネズエラ政府は、逮捕したベネズエラ準軍事組織メンバーの人権は尊重され、米国がアブグレイブで行った拷問・虐待・殺害の心配をする必要は全くないということを保証した。
■ベネズエラ国内の背後関係−−2年前のクーデターの首謀者が、今度は暴力に訴えようと準備。
今回は2年前、2002年4月の反革命クーデターとは違い、未然に阻止された。野党勢力の一部は、「国民投票」でチャベスを政権の座から引きずり降ろす策略が事実上失敗に終わろうとする中で、今度は直接、武力でチャベス自身を殺害したり、政権を倒す方向へ動き始めたのである。現在「国民投票」は、不正投票などが発覚し、国家選挙委員会(CNE)によって投票用紙の数え直し作業が続けられているところである。米や野党勢力は一気にチャベスを倒せると企んでいた「国民投票」が長期化する中で、焦りを見せ始め、今回の挙に打って出たと思われる。
逮捕された準軍事組織メンバーらは、ベネズエラ軍の軍服を着るよう指示されていた。これは、ベネズエラ軍の関係者がこのクーデター計画に関わっていたことを示している。これまでに、カラカスの富裕層の住む町で、上級将校たちがチャベス政権転覆を主張する演説や会合を重ねてきている。彼らにも捜査の手が向けられている。
準軍事組織メンバーらが集結していた農場のオーナーは、元々キューバから亡命してきた人物で、現在米国に合法的に在住しているロベルト・アロンソである。彼は、反チャベス政治指導者の一人として知られている。アロンソは、亡命キューバ人の多く住むマイアミの放送局を通じて、自分の無実を訴えた。
捜査の時に逃げ出した準軍事組織メンバーたちは隣接する農場に逃げ込んだ。この農場の所有者はメディア王として知られる億万長者グスターボ・シスネロスである。シスネロスは、ベネズエラのテレビ局「ベネビジオン」のオーナーであり、さらに、米国のスペイン語のテレビ局「ウニビジオン」やコロンビアのラジオ局「カラコル」も所有している。また米国元大統領ブッシュ(父)とも個人的に親交がある。ニューズウイークなどによれば、彼は2002年4月の反チャベスクーデターの立案者の一人であったという。捜査の手はこのシスネロスの農場にも及んだ。シスネロスは、弁護士を通じて、この事件はシスネロス一族に対する名誉毀損であると述べた。
ベネズエラ元大統領でチャベス政権の猛烈な反対派であるペレスは、事件が起こる一週間前に、コロンビアのラジオ局「カラコル」を通じてチャベス政権の暴力的手段による追放を訴えていた。彼の所有する家もまた捜索の対象になった。
※2002年4月のクーデターの首謀者が大土地所有者=メディア財閥であり、彼らが民間放送局を使って反革命クーデタを扇動したことについては、[番組紹介]NHK・BSプライムタイム(11月22日)「チャベス政権 クーデターの裏側」を参照。
■反チャベス・メディアが再びウソの報道。チャベス反対派の分岐・分裂。
現地のメディアは、あいかわらず反チャベスの立場から、事件をねじ曲げて扱った。ペレス元大統領は、マイアミからのラジオ放送で、チャベス大統領の追放のために暴力が必要であるという主張を繰り返し、この事件は、罷免要求の国民審査から国民の目をそらすためのチャベスの「自作自演だ」という論陣を張った。
しかし、その一方で、チャベス反対派の政治指導者の一人ランへルは、メディアがチャベス反対派の言い分ばかり取り上げていることを批判し、「我々はこの政府を批判することができる。しかし、時代錯誤のニセ指導者とともにではなく…。いまこそ決別する時なのだ。」と国営テレビのインタビューに対して語った。
あまりにも露骨な隣国コロンビアの札付きの残忍な準軍事組織を使ったクーデター計画をめぐって、反チャベスの野党勢力の中で、分岐・分裂が生じている。
■ブッシュ政権は、ベネズエラ−コロンビア紛争を激化させることで、チャベス政権の不安定化、政権転覆を狙う。
チャベス大統領は、この準軍事組織メンバーらがコロンビアの予備役に属しているということで、コロンビア政府に調査を求めた。コロンビア政府は、ベネズエラ政府が準軍事組織を捕らえたことを讚える発言をし、大使を通じて事件解決のために協力することを申し出た。コロンビア政府が、拘束された準軍事組織の中にいる未成年者をコロンビアに帰還させてくれるよう求めたところ、チャベス大統領は「少年たちを刑務所に入れることはしない」として、その要請に応じた。(現在イラクで行われていることとは天と地ほどの差がある。)
言うまでもなく今回の事件は両国のシビアな政治・軍事紛争へと発展しかねない極めて危険な外交問題である。コロンビア政府がどこまで知っていたのか。チャベスも異常なほど慎重に構え、自分から挑発に乗らないよう神経を使っていることが分かる。米国からの軍事的経済的援助なしに存立し得ないコロンビアの政府・軍の一部が、今回の事件に深く関わっていたことは公然の秘密だ。
明らかにブッシュ政権は、ベネズエラとコロンビアの両国間関係を緊張させ、国境紛争を煽ることを目的の一つにしていたはずである。もしそうだとすれば現在のところはその思惑は外れている。チャベスの慎重対応がどこまで通用するのか。今後の両国関係の行方を見守りたい。
■またもや石油。飽くなき石油資源の追求と米国の露骨な干渉政策。
今回のクーデター未遂事件の背後には、間違いなくブッシュ政権と米軍とCIAが存在する。クリントン政権以来、米政府はコロンビアに「麻薬戦争」を口実に、軍事要員・情報機関、そしてあの悪名高い「民間軍事請負会社」を大量に送り込んでいるのである。(「プラン・コロンビア」という名の干渉政策)これら米の「どす黒い闇」と無関係と考える方が不自然であろう。もちろん2002年4月のクーデターのように、それらがベネズエラ国内の反チャベス派と手を結んでいるのだ。
今年3月から4月にかけて、ラテンアメリカ干渉政策の担当部署である米国南部方面司令官ジェイムズ・ヒル将軍は、議会の委員会で、中南米にもっと軍事的テコ入れを図るよう政府に求めた。そしてヒル将軍の提案の鍵になるのが、コロンビアにおける米国の「軍部隊員」を400から800に増やし、400人のアメリカ軍事民間請負契約者(いわゆる傭兵)を600人に増やすことである。今回の事件と全く関係がないのか。非常に怪しい。
※以下に翻訳した「米国の将軍、ラテンアメリカの軍隊の強化を要求」参照。
※5月12日、ラテンアメリカ・ワーキング・グループ(LAWG)という反戦NGOが米国内外に緊急行動の呼びかけを発した。翌日、下院の軍事委員会でコロンビアに「民間軍事請負会社」(要するに傭兵)を追加派兵する決定がなされるので、至急反対行動に参加して欲しいというアピールであった。
http://www.lawg.org/countries/colombia/taylor_amt.htm
2002年4月のクーデターも、2002年12月からの石油サボタージュも、大統領罷免の「国民投票」運動も、そして今回の事件も、米国が国内の反チャベス勢力の背後で画策した結果である。チャベス派と反チャベス派とが、権力機関から政治、経済、メディアのあらゆる分野でせめぎ合いを続けているベネズエラでは、米国の干渉との闘いはとりわけ重要になっている。米国情報公開法に基づいて入手した文書によれば、米国政府からの資金がベネズエラ国内の反チャベスグループに直接支給されていることが分かっている。チャベス大統領は米国を直接名指しして「侵略者であり殺人者である帝国主義勢力」と呼んだ。
原油価格が高騰する中、イラクと中東、中央アジア、アフリカから奪うだけでは気が済まず、世界中から石油を略奪しようと躍起になっているアメリカのことである。キューバとも団結し反米姿勢を強めているOPECの有力なメンバーベネズエラは目の上のたんこぶ。しかも中東と違い、ベネズエラはアメリカに近い。ブッシュはベネズエラの石油を、喉から手が出るほど欲しいのだ。
■石油収入を「人民のための医療」「人民のための教育」に振り向ける。
チャベス大統領は、これまで「人間の顔をもった資本主義」を建設する立場から「新自由主義」に対する呵責のない批判をくり返していたが、最近一層左傾化し、次第に「資本主義そのもの」を鋭く批判しはじめると同時に、キューバ型社会主義の社会的プログラムを積極的に採用し始めた。
※以下で紹介した翻訳記事「ベネズエラ人は準軍事組織と帝国主義的介入に反対して平和行進を行う(2004/05/17)」を参照。
米国とベネズエラの寡頭支配層に私物化され収奪され、反革命派の拠点となってきた国営石油公社をベネズエラ人民の手に取り返したチャベス政権は、その莫大な石油収入を米系石油メジャーや一握りの特権的支配層のポケットに入れるのではなく、人民のための福祉、人民のための社会事業に還元する大事業を開始した。石油公社の収益や施設を利用して、全国に500ヶ所の診療所整備や100万人を対象にした識字教育など10分野の社会事業に乗り出したのだ。首都カラカス西部の低所得者居住区に今年4月にオープンした公営病院「人民診療所」では、貧困層に無料で医療を提供、院内は患者でごった返しているという。「ボリーバル革命」の人民革命的性格がいよいよ鮮明になり始めた。
※「ベネズエラ政権 支持率ばん回 原油高騰追い風」読売新聞2004/05/25。
※「Free Neighborhood Clinics Spread
Across
Venezuela」May 05, 2004。「無料地域診療所」がベネズエラ中に拡大している。そこではキューバから派遣されたボランティアの医師が活躍している。
http://www.venezuelanalysis.com/articles.php?artno=1170
■キューバと共に!“反米・反帝の新たな段階”に入った“ボリーバル革命”。
チャベス大統領は、今回もまた、この新たな“クーデタ未遂事件”を逆手に取って、「ボリーバル革命」を深化させつつある。5月16日のスピーチの中でチャベス大統領は、「米国の『帝国主義者たち』は、ベネズエラの豊かな石油資源を略奪するためにベネズエラに侵攻しようと計画している」と述べ、「新市民防衛軍」(new
civil defense force)の組織化を提案した。出鼻を挫かれた反対派は、「この計画には、国家に奉仕する親政府の民兵(militias)を組織し合法化する狙いがある」とほぞをかんでいる。
※CNN「Plan for civilian military training
decried」May 18, 2004
http://edition.cnn.com/2004/WORLD/americas/05/18/civilian.military.ap/
5月17日には、チャベス政権を暴力的に転覆させようとするコロンビアの準軍事組織の介入に反対する平和行進がカラカス市内で行われた。数万の群衆が米と野党の反革命的な策動に反対する大規模な街頭行動を行うことで、チャベス政権への強固な支持を表明した。集会の場で、チャベス大統領は「ボリーバル革命は反帝国主義的段階に入った」と述べ、米国の反革命的な干渉からベネズエラを守るために、ベネズエラの全人民が団結して、「市民防衛軍」を組織する必要性を訴えた。
ブッシュ政権はキューバに対して、送金や里帰りへの規制を強化する一方、反政府派への支援を強める経済制裁強化方針を打ち出した。秋の大統領選挙に向けて亡命キューバ人などの支持を獲得するためだ。こうしたブッシュ政権の反カストロ政策強化に抗議するデモが、5月14日にキューバで行われ、何と120万人もの民衆が参加した。
キューバとベネズエラに対する介入・干渉政策の強化は、逆にキューバとベネズエラの接近と団結を促進している。ラテンアメリカの革命を圧殺しようとする米国の試みは、今日のベネズエラとラテンアメリカにおいては、むしろ逆の結果、すなわち進歩的革命的過程を一層加速する原動力となっている。
2004年5月25日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
2004年5月9日(日)−−ベネズエラ当局は今朝、コロンビア人の準軍事組織(paramilitary)グループ55人を逮捕した。彼らはカラカス近郊の農場で訓練を受けて、ベネズエラ軍事基地への攻撃とウーゴ・チャベス政権へのクーデターを準備していた。
Credit: Venpres |
捜査は、文民情報局(DISIP)、軍事情報将校と、刑事犯罪科学調査局(CICPC)によって行われた。準軍事組織たちが捕らえられた地所は、カラカス南部のバルタ市に位置していた。国営テレビによる映像では、寝台と台所のついた住居のようなものが映し出されていた。
最初に逮捕された55人の準軍事組織たちは、130人にものぼる大きなグループの一部であり、そのうちのある者はなんとか逃げ出した。日曜の午後までに、当局はその幾人かを逮捕し、2人の未成年者を含む合計71人を拘束した。当局は、カラカス盆地南部を囲む山々の至るところでこれらのゲリラの追跡を続けている。
ベネズエラの国防相ホルヘ・ガルシア・カルネイロによれば、このグループの最終目的は政府を転覆することである。この企みに加わっているベネズエラ軍の退役将校が存在するとガルシアは述べる。加わっていると伝えられるベネズエラ軍の将校たちは、反乱グループの一部として、アルタミラ近郊、富裕層の住むカラカス東部のフランシア街で反政府演説をし、政府の転覆を呼びかけるために定期的に会合を行っていたという。
より大きなグループとの関連
被拘束者の一人が、テレビリポーターに、この農場のオーナーからここで仕事をするために50万コロンビアペソで雇われたと打ち明けた。彼らは、46日前に到着した時、迷彩服を着た男たちに迎えられた。その男たちは、彼らに、国家守備隊の基地を攻撃するための訓練を受けてもらうと述べた。
「おれたちがここに来て八日後、あいつらはおれたちに、逃げ出しちゃいかんし誰かに知らせてもいかん、見たり、人にしゃべってもいかんって、でなけりゃおれたちの家族を殺すって言ったんだ。」とその被拘束者は、強いコロンビアなまりで語った。その男は誰であるか特定されないようにするために、スカイ・マスクをかぶっていた。
このグループは、カラカスの軍事基地−−おそらく国家守備隊都市警備司令部−−の近くに集結し、そして次の水曜にはそこを襲撃する計画を立てていた。証言者は、その作戦の目的が、基地の倉庫から武器を盗み出し、ベネズエラに来ることになっている3、4千人の市民軍を武装させるためであったと説明した。
その農場で発見されたコロンビアの文書についての当局の分析によれば、また被拘束者の中の複数の証言によれば、ゲリラのうちの約100人は、コロンビア予備役のメンバーだということである。
被拘束者たちによれば、日曜の午後、この作戦の組織者である「将軍たちと大佐たち」がベネズエラ軍の軍服と軍靴と食料を持ってきた。「おれたちにはあいつらがよく見えなかった。だってあいつらはおれたちに遠くの方からしか見ることを許さなかったんだ。」
「おれたちがその計画について知った時、逃げ出そうとした者もいた。コロンビア人の一人は反抗し、なんとか脱走した。だけど100メートル逃げた所でつかまえられたんだ。あいつらはそいつを縛り上げ、もう一度逃げようとしたら殺すって言ったんだ。そしてあいつらはおれたちの身分証明書を取り上げたんだ。」とその被拘束者は述べた。
その証言者によれば、彼らは正規の訓練を受けたが、武器の携行は制限されていた。おそらく逃亡を企てた者がいたからであろう。訓練の一部は、彼らが家の中に入り人々を殺す反復練習から成り立っていた。
捜査の際、抵抗は全くなかった。というのも、彼らはほとんど武装していなかったからである。彼らはもっと訓練をした後、別の場所に移送され、それから武器が手渡されることになっていた。
関与したキューバ人亡命者
当局によれば、準軍事組織メンバーたちが捕らえられた地所は、反政府政治指導者ロベルト・アロンソの所有に属する。アロンソ氏は元キューバ人で米国の合法的な在住者であり、「グアリンバ」と呼ばれる文民抵抗計画の作成者である。「グアリンバ」とはチャベス政権を転覆させることを目的とし、2月末、カラカスでの「グループ15」の首脳会談の間、最初に実行されることになっていた。
ロベルト・アロンソ氏は、ブロック・デモクラティコ(民主的ブロック)として知られている反対派連合の指導者の一人であり、また、より広範な組織であるコオルディナドラ・デモクラティカ反対派連合とも結びついている。彼はキューバ=ベネズエラ人女優マリア・コンチータ・アロンソの兄弟である。
立法府の政府擁護派議員イスマエル・ガルシアによれば、なんとか逃亡した準軍事組織メンバーは、キューバ=ベネズエラのメディアの有力者でありチャベス反対派であるグスターボ・シスネロスの地所に逃げ込んだ。ニューズウイークなどの情報によれば、シスネロスは2002年4月11日の反チャベスクーデターの主要な立案者の一人だったという。
立法府の議員で、国民議会外交委員会の委員長タレク・ウィリアム・サアブは、バルタ市の市長エンリケ・カプリレス・ラドンスキがこのグループとの関係を調査されるべきであると要求した。カプリレス市長は、警察に秩序回復のための仲裁をしないよう命令していたことで、彼の市で2月末に実行された「グアリンバ計画」に協力していると非難されていた。
サアブ議員は、100人の被拘束者がコロンビア予備役のメンバーであるからには、コロンビア政府は調査を行なうべきであると述べた。
コロンビア大統領アルバロ・ウリベは、「いかなる者であれベネズエラで不正な行為に関わる者が逮捕されたことに対して」祝辞を述べた。駐ベネズエラのコロンビア大使は、調査にコロンビア政府の協力を申し出た。
問題のあるメディア
他の事件と対比してみると、公然と政府に反対している現地の地方メディアは、準軍事組織メンバーの逮捕について紙面をほとんど割かなかった。この事件を控え目に扱おうとするメディアの中には、「ベネビジオン」がある。それは、ベネズエラ最大の商業テレビネットワークであり、億万長者グスタボ・シスネロスがオーナーとなっている。地方ニュースネットワーク、「グロボビジオン」だけが国営テレビ局からの映像を使って、ある程度までこのニュースを報道した。
チャベス大統領は、このメディアの態度を嘆き、「彼らは、この重要な事件を脇へ押しのけて、社会の知る権利を否定した」と述べた。国営放送だけがこの逮捕についてきちんと情報を与えた。
通信情報相ヘセ・チャコンは、「ベネズエラにおける最近の歴史で前例のない」この事件に対するメディアの態度を非難した。
また、立法府議員サアブも、地方商業メディアがこの事件を放送しなかったことを批判し、この逮捕を「政府による自作自演」だと退ける反対派の指導者にテレビ枠を与えたことを批判した。
反対派によって予告された殺戮
ベネズエラの元大統領カルロス・アンドレス・ペレスは、チャベス政権に反対しており、先週、コロンビアのラジオネットワーク、「カラコル」を通じて、チャベスの政治的反対派が「平和的な手段ではなく力によって彼を追い出すことを望んでいる」とアナウンスした。米国で亡命生活を送っているペレスは、チャベスの追放で事態が内乱へと流れるとは思っていないが、彼を追い出すために「血が流されるであろう」と述べた。コロンビアのラジオネットワーク、「カラコル」もまた、メディア王にしてチャベス反対派のグスタボ・シスネロスが所有しているのである。
2004年5月11日(火)−−ベネズエラ当局によって日曜日にカラカス郊外で逮捕されたコロンビアの準軍事組織グループの事件について、捜査が継続されている。被拘束者の複数の証言によれば、そのグループはベネズエラの軍事基地への攻撃とウーゴ・チャベス大統領の政府へのクーデターの準備をするために訓練をしていたということである。
このグループは、カラカスの軍事基地、おそらく国家守備隊都市警備司令部の近くに集結し、そして次の水曜にはそこを襲撃するという計画を立てていた。農場で発見されたコロンビアの文書についての当局による分析と、被拘束者の証言によれば、約100人の非正規兵はコロンビア予備役のメンバーである。
ベネズエラ捜査警察(DISIP)の署長ミゲル・ロドリゲス・トレスは、昨日、当局が多くの捜査を行い逮捕に導いたことを発表した。しかし他の容疑者に警戒させないために捜査の詳細については語ることを避けた。
発見された600の防弾チョッキ
Credit: Venezolana de Television |
600の防弾チョッキが、国家守備隊員カピタン・ドウグラス・ペレスの家から発見された。ペレスの家は富裕層の住むカラカス東部、プラドス・デル・エステの近郊にある。ロドリゲス署長によれば、そのチョッキは焼却されてしまった大量の物の一部であると考えられている。当局はカピタン・ペレスが彼の家の中になぜチョッキを蓄えていたのか取り調べる予定である。ペレスは、中国人の移民を密入国させた罪が発覚した後、2003年5月以来、自宅謹慎中であった。ロドリゲス署長はチョッキは準軍事組織メンバーによって使用されることになっていたはずだと述べた。
DISIP署長によれば、捜査は夜を徹して続けられ、本日、重要な発表があるだろうということである。彼は、この準軍事組織グループにはいくつかの班があるが、「しかし、そのすべてが憲法によって我々に与えられた手段を使って解体されていくであろう」と述べた。
チャベス政権の猛烈な敵対者である元大統領カルロス・アンドレス・ペレスの所有に属する家もまた捜索された。その家は富裕層の住むオリポット近郊にあり、現在、彼の元の妻が占有している。「我々はこんなことがあろうかとも思っていたよ。ベネズエラでは法の秩序なんて行き渡っていないということをよく知っているからね。」と元大統領ペレスは反対連合のユニオン・ラジオ・ネットワークのマイアミからのインタビューの中で述べた。ウーゴ・チャベスを追放するあらゆる平和的手段は汲みつくされ、目的を達成するためには暴力が必要であるという信念をペレスは何度も繰り返した。ペレスはいくつかのメディアの支店に、民兵たちの逮捕なるものはチャベスが、彼の大統領としての地位が直面している問題から人々の注意をそらすためにしくんだ茶番であると宣言した。
捜査に抵抗する反対勢力
この二つの捜査が行なわれている時、テレビの画面は、なべをバンバンたたき、警笛を鳴らし、「一歩も引くな」のようなスローガンを唱和しながら当局に抵抗する隣人たちを映し出した。DISIP署長ミゲル・ロドリゲスは、捜査が行なわれた上流階級の居住区の隣人たちが準軍事組織メンバーを擁護しているように思われることを嘆いた。「これが我々すべてを悩ませる問題なのだ。彼ら(抵抗する人々)は、我が同胞を殺害するためにわが国に来た犯罪者を擁護している。私は彼らにおのれの行為をよくよく考えてみるように要請する。」とロドリゲスは述べた。
さらなる逮捕者
国営ラジオネットワークのラジオ・ナシオナル・デ・ベネズエラは、昨日の朝さらに9人の準軍事組織メンバーが逮捕されたことを報じた。
副大統領ホセ・ビセンテ・ランヘルは、記者会見の場で、カラカス西部から1時間の場所に位置するマラカイ市で現役の国家守備隊大佐オルランド・カストロを逮捕したことを宣言した。カストロ大佐は、逮捕された準軍事組織メンバーのために食料を購入する任務を負っていた一人であると考えられている。
もう一人の準軍事組織メンバーの将校とみなされている者が、コロンビアとの国境に隣接したバリナス州で捕らえられた。その不正規兵はコロンビア情報局DASの偽の身分証明書を携行していた。
このグループが集結していた農場の所有者ロベルト・アロンソ氏が当局によって捜索されている。アロンソは、マイアミのテレビとラジオステーションでインタビューを受け、いかなる悪事についても無実であると訴えた。
発見された遺体
準軍事組織メンバーたちが集結していた農場の近くで一人の遺体が発見された。その体は完全には埋葬されていなかった。つるはしが埋められているのが発見されたので、この男は自分の墓穴を掘ることを強制されたと当局はにらんでいる。
ランヘル副大統領によれば、反乱軍の将軍で「カラス」という異名をもつフェリペ・ロドリゲスもまたこの事件の容疑者である。情報局の調査では、ロドリゲス将軍は最近コロンビアの準軍事組織の指導者たちと会ったという。ロドリゲスは2003年2月にカラカスにおいてコロンビア領事館とスペイン大使館へのテロ攻撃に参加したことで正式に告発されている逃亡者である。
準軍事組織グループの逮捕は、民主的に選出された政府を転覆させる意図でもってベネズエラの外部から資金が提供され、現地の反対派によって担われているグループの存在について、チャベス大統領が繰り返し警告してきたことを確証している。「我々はクーデター計画者、騒乱者、そしてテロリストのわき腹に一撃をくらわせた。」とチャベスは述べた。
Credit: Carlos Rios - Radio Nacional
de Venezuela
2004年5月12日−−ベネズエラ政府当局者は、少なくとも50人以上の準軍事組織のメンバーがカラカス内外に潜伏していると述べた。彼らを発見したり、彼らの行方の手がかりをつかむために政府は数多くの拠点や倉庫、さらには警察本部までも、情報を元に捜査を行った。通信情報相ヘセ・チャコンは記者会見で「我々は、悲劇的な事態が起こる前に情報機関がその計画を取り除くと期待している。」と述べた。
25か所以上の捜索
国家捜査警察(DISIP)の署長ミゲル・ロドリゲスは彼の組織がこの二日間に25か所以上の捜索を遂行したと述べた。ロドリゲスによれば「全ては、よく組織され資金を受けた計画の存在を指し示しており、その計画の根本的な目的は共和国大統領ウーゴ・チャベスの抹殺である。」彼はまた近日中にはDISIPは捜索と発見したものの詳細を公開するだろうと述べた。
ある捜索の間に発見された品目の中に8頁の文書があり、ロドリゲスによれば、それはさまざまな現役及び退役将校の参加を含む詳細な計画である。将校たちの多くは、昨年末の間に、富裕層の住むカラカス近郊アルタミラにおける広場の占拠に参加していた者である。
昨夜捜査されたと考えられる拠点の一つは、立法府の議員で、野党アクシオン・デモクラティカの元秘書長ラファエル・マリンの家であった。この党は昨年彼を除名したのだった。ロドリゲスは、準軍事組織メンバーたちの運転手の一人がDISPに、計画会議の一つはラファエル・マリンの家で行われたという情報をもたらしていたと述べた。しかしながら、捜査のための裁判所の命令の不備があって、軍事情報組織は任務を遂行し損ねてしまった。
軍区域法定代理人ルベン・ダリオ・ガルシラソは、先週の日曜日に逮捕された準軍事組織メンバーたちと関係があると言われている10人の不正な現役将校に逮捕令状を発行した。
捜索されたシスネロスの農場
昨日捜査されたもう一つの注目すべき拠点は大規模農場「カラボボ」であった。それはグスタボ・シスネロスの一族の所有に属するものである。このメディア将軍は米国でスペイン語のテレビネットワーク、ウニビジオンとベネズエラでベネビジオンを所有している。シスネロス一族の弁護士ルイス・ケレマルは「これは政府によって開始されたシスネロス一族に対する名誉毀損のキャンペーンです。」と述べた。
グスタボ・シスネロスは米国元大統領ジョージ・ブッシュの個人的な友人でもあり、反チャベス運動の主要な出資者の一人であると考えられている。複数の情報によれば、シスネロス氏はチャベスに反対する2002年4月のクーデターの主要な立案者の一人であった。
ベネビジオンの社長、ビクトル・フェレレスはエル・ムンド紙から引用すると、次のような事実を述べている。グスタボ・シスネロスの農場は、準軍事組織の派遣団が逮捕された「かのジェントルマン・アロンソ」の農場の隣に位置している。しかしそれは、たまたまそうであったにすぎない。「シスネロス・カンパニー・グループはいかなる捜査にも協力する」とフェレレスは述べた。彼はさらに、ベネズエラにおけるコロンビア人の準軍事組織の存在は、選挙によってチャベス大統領を追放するという反対派の目的に重大な害を及ぼすものであると付け加えた。
準軍事組織勢力発見のための地方警察の功績
準軍事組織メンバーたちが発見された農場のあるエル・アティリョの反対派市長は、アティリョ市警察が、コロンビア人を最初に発見したカラカス都市警察の幹部と協力して、政府に警戒態勢を取らせたのだと述べている。軍と情報当局者は、準軍事組織グループの逮捕が3か月の捜査の結果であるという説明と主張を退けた。
ベネズエラでの準軍事組織の活動についての主張を控えめに扱う反対派とメディア
元の副市民安全相でありチャベスの反対派であるルイス・カマチョ・カイルスによれば、政府は不安を喚起させるような印象を与えたがっている。「国民政府は、国境から」首都にまで「これほどまで多くの人々を動かす能力を持つ唯一のものである。」とカマチョ・カイルスは述べた。
反対派の代議士、第一正義党(プリメロ・フスティシア)のラモン・ホセ・メディナは
グロボビジオンのテレビ番組で、準軍事組織メンバーたちに起こったことは、大統領リコール国民審査から国内の目をそらすために画策されたと述べた。
一方、反対派の政治指導者ドミンゴ・アルベルト・ランヘルもメディアの姿勢を非難した。ランヘルは国営テレビ、ベネズエラ・デ・テレビジオンのインタビューに答えて、マルタ・コロミナやナポレオン・ブラボのような商業メディアのコメンテーターがテレビ番組で話す機会を反対派にしか与えていないということで直接批判した。ランヘルは反対派の部門を分割する提案まで行った。彼によれば、それは彼ら自身の利益より他のものはなにもないのである。「我々はこの政府を批判することができる。しかし、時代錯誤のニセ指導者とともにではなく…。いまこそ決別する時なのだ。」とランヘルは述べた。
ベネズエラにおける準軍事組織の存在を批判するカーター・センター
政府と反対派の間でリコール手続きと討論を調停し監視する手助けをしているカーター・センターは、本日、声明を発表した。その声明において、カーター・センターは「あらゆるタイプの非正規あるいは準軍事派遣団を、政治目的を達成するための力の使用として、断固として非難している。」この声明はさらに「このような扱いづらい問題」は政党によって政敵を「失墜させる」ために用いてはならないと付け加えた。
カラカス、2004年5月15日(土)−−金曜日のベネズエラの外国人プレス団体の記者会見で、チャベス大統領は、先週首都近郊の農場で逮捕された準軍事組織グループのリーダーたちの顔写真と名前を示した。
外国人記者の前で証拠を示すチャベス大統領
Credit: Gregory Wilpert - Venezuelanalysis.com |
グループの主要なリーダーはホセ・エルネスト・アヤラ・アマドで、「ルーカス司令官」として知られている。チャベスによれば、彼はまた、コロンビアのノルト・デ・サンタンデル州出身の、AUCとして知られているコロンビアの準軍事組織グループのリーダーの一人でもある。
他の二人の拘束されたリーダーは、同じ州出身の「リチャード司令官」として知られているラファエル・アントニオ・オマニャ・トゥルジリョと、「イェフェルソン司令官」として知られているイエフェルソン・グチエレス・グスマンである。もう二人のベネズエラ人グループに属するAUCのリーダー、「ディエゴ司令官」と「コステニ司令官」は、まだ捕まっていない。チャベス大統領は「これは、メディアが無責任に文句をつけ始めたような、我々がでっち上げたというような類のものではない。むしろ、何年にもわたる経験を積んだ古参兵と新兵とがいっしょになったコロンビア準軍事組織によるベネスエラ領土への潜入作戦が存在しているのである。」と述べた。
チャベスによれば、先週拘束されたグループは三つのブロックから構成されている。第一はノルト・デ・サンタンデルからのAUCのリーダー、第二は経験を積んだコロンビア準軍事組織、第三は騙されて連れてこられた諸個人であり、その中には未成年者もいた。
コロンビア政府はベネズエラにおける準軍事組織との関係を持たない
チャベス大統領は拘束された準軍事組織グループとの関係について「私には、アルバロ・ウリベ大統領の政府はこれに全く関係がないことは全く確かなことである。そう信じているし、わかっている。」チャベスはさらに付け加えて、コロンビア大統領との最近の会談、準軍事組織グループの発見の少し前に、コロンビア=ベネズエラ関係が非常に良好で、二つの国の間の貿易は昨年の石油工業シャットダウン以来、100パーセントも増加したという結論に達した、と述べた。
チャベスによれば、それにもかかわらず、彼の政府を転覆させようと目論んでいるコロンビアの極右翼のエレメントが存在している、という。
ベネズエラの反対派もその多くは関係していない
ベネズエラの反対派のリーダーの中に、この準軍事組織計画に参加しているのは誰かと尋ねられて、チャベス大統領は「これらの計画は反対派の重要な部分によって考え出されたものでないことは確かである」ことを明らかにした。この計画はあまりにもずさんで、ベネズエラの反対派の大多数のセクターが関係したというには、その根拠はあまりにも乏しすぎる。「もし反対派のリーダーの大部分がわが国における準軍事組織グループの存在に関係しているとすれば、これらの男たちは輸送機関や武器をあてにしていたことであろう。」とチャベスは述べた。
カラカス、ベネズエラ2004年5月17日−−コロンビアの右翼準軍事組織グループがカラカス郊外で逮捕されてから1週間後、数万のベネズエラ人が、外国の反乱者への抵抗と国内問題に対する米国のあからさまな干渉への抵抗のために首都の街頭行動に出た。
Credit: Venpres |
120人の準軍事組織グループのメンバーの大部分は逮捕されている。被拘束者の複数の証言によれば、そのグループはベネズエラの軍事基地への攻撃とウーゴ・チャベス大統領の政府へのクーデターの準備をするために訓練をしていたということである。
デモ行進は、カラカスの東の端からダウンタウンの方へ、ベネズエラの旗を掲げ、外国の反乱軍の存在に反対するサインを示しながら、行われた。
チャベスは、このデモでの演説の間、彼の政府はコロンビア当局からの捕らえられた者の中にいる未成年者について彼らを帰国させてくれとの要請に応えた。「我々はこれらの少年たちを刑務所にいれることはしない」とチャベスは述べた。
「我々はこの数日ベネズエラでおきたことを控えめに扱うという過ちを犯すことはできない。我々はメディアによって行われた故意の誤報のキャンペーンに影響されることはありえない。」とチャベスは述べた。野党からの政治家たちそして最も敵対的な商業メディアは、準軍事組織メンバーの逮捕は、反対派のリーダーを逮捕し、大統領に対するリコール国民投票をその可能性から脱線させる口実として、政府によって仕組まれた茶番であると言い続けている。
先週の金曜日、チャベスは外国人記者会見で、準軍事組織グループの逮捕したリーダーの写真を示した。
「準軍事組織の侵入は全世界的な反響を呼ぶ歴史的な事件だが、地方の民間メディアだけがそれを軽視している。」と大統領は述べた。
大統領は資本主義に反対する演説をし、冷戦後、世界中でそれに取って代わった新自由主義及び資本主義について、左翼の多くが語るのをやめたことを批判した。どちらも「同じ殺人者であり、道理に反したいまいましい帝国」である。大統領職にある間、チャベスは「人間の顔をもった資本主義」を建設するために革命を先導するという主張を行いながら新自由主義に反対することを言い続けてきた。彼はごく最近資本主義を直接的に批判し始めた。
この南米のリーダーは、米国情報公開法を通じて書類を入手してから米国の外交政策に対する批判を強めてきている。そこには、米国政府からの資金が、チャベスを倒そうと積極的に動いているベネズエラのグループに直接支給されていることが暴露されている。
チャベスは米国政府を直接名指しして、「侵略者であり殺人者である帝国主義勢力であって、数百万人の人間の尊厳に屈辱を与えるために国連を脇へ押しやっている」と述べた。大統領は、自分を倒そうとする勢力の背後にはブッシュ政権がいると述べ、2002年4月、権力の座から彼を追い落とそうとしたクーデターの背後にいる米国政府を一度ならず批判した。
チャベスは準軍事組織の活動が「コロンビア寡頭勢力のブレイン・チャイルド」であると述べ、彼の政府に反対するベネズエラ人が侵入した準軍事組織たちを組織し援助したことを批判した。彼は軍隊の6人の現役メンバーがこの準軍事組織との関係で逮捕されたと述べた。
大統領は、反乱者の目的が彼を殺すことだと述べた。彼は準軍事組織の侵入が彼を抹殺するための国際的なキャンペーンの一部であると述べた。ベネズエラ人の中で彼らが獲得している支持のレベルからすると、彼の殺害は内乱に導き、そして「ラテンアメリカとカリブの民衆から手痛いしっぺ返しを食らう」であろう、と彼は述べた。
「反帝国主義的段階」("Anti-imperialist phase")
チャベスによれば「ボリーバル革命は反帝国主義的段階に入った」。新しい防衛計画の一部として、チャベスは、政府が軍事力を強化し、ベネズエラ人を積極的な国防の担い手になることを求めると宣言した。「全てのベネズエラの男女は自分自身を兵士と考えなければならない」とチャベスは述べた。
通信情報相、ヘセ・チャコンは、このデモが「成熟し、民主主義は街頭での闘いで勝ち取られなければならないということを理解した社会」による返事であると述べた。チャコンは、「ボリーバル革命」について意見の合わない人々に、このような革命は「全てのベネズエラ人のための」包括的なプロジェクトであることを熟考し、理解してほしいと要望した。
米国のラテンアメリカ担当の将軍が、この地域の軍がテロとの戦いの手助けをしてくれることを求めている。−−しかしながら、この戦略は、数十年にわたって広範に犯されてきた人権侵害を復活させる結果になるかもしれないと指摘する向きもある。
先月[2004年3月]、ラテンアメリカに最も関わってきた米政府機関の長である米国南部方面司令官ジェイムズ・ヒル将軍は、議会の委員会で、ワシントンは「国際テロリズムと戦うために、我々の地域に包括的な対策をほどこさなければならない」と述べた。彼の述べたことは、ラテンアメリカにおける軍の強化を意味している。
ラテンアメリカの至るところで、テロリストは「爆破、殺害、誘拐、麻薬密売、武器輸送、マネー・ロンダリング、密入国を行っている」と、ヒル将軍は下院軍事委員会(House
Armed Services Committee)に語った。
彼は米国への二重の脅威について述べた。
−−「伝統的」テロリスト。このカテゴリーには、麻薬密売人や、中央アメリカの25000人の都会のギャング、コロンビアでの麻薬密売にかかわるゲリラや準軍事組織グループが含まれる。
−−「新興」テロリスト、つまり「民主主義的改良の失敗への根深い欲求不満」を利用する「過激なポピュリスト」。ヒル将軍は、ベネズエラ大統領ウーゴ・チャベスと、ボリビア生え抜きの指導者エボ・モラレスについて明白に言及した。
また、ヒル将軍は「中東のテロリスト組織の分派が、南部方面司令部管轄地域で支援活動を行っている」と指摘した。
これらの脅威に立ち向かうため、米国がテロとの戦いにおいて「軍と軍との連携を広める」べきだと、彼は立法府の議員に語った。彼は、また、「法的な境界線が現時点での脅威に対してもはや何の意味も持たない」時に(もし軍隊が警察や文民情報部との協力を禁止されるなら)、「ラテンアメリカ諸国はこのような制約が改正を必要としているかどうかを判断すべきであろう」と述べた。
ヒル将軍の荒っぽいやり方に、UCベーカリー・ラテンアメリカ研究センター所長ハリー・シェイクンは警戒感を抱いた。
「20世紀においては、ラテンアメリカの軍隊がなすべきことは、ある者を共産主義者と呼び、人を大々的な狩りの獲物にすることだけであった。」とシェイクンは述べた。軍隊に新しい活力が吹き込まれれば、「テロリズムが、21世紀における共産主義になるかもしれない。人に死刑判決を下す口実としての。」
米軍増派の提案
ヒル将軍の提案の鍵になる要素−−そして、まちがいなく議会で論争になること−−は、コロンビアにおける米国の「軍部隊員」を400から800に増やし、400人のアメリカ民間契約者[訳注:いわゆる傭兵]を600人に増やすことである。それらは、この国の政府が40年にわたるコロンビア革命軍(FARC)や国民解放軍(ELN)といった左翼との戦いに勝利することを手助けしてきた。
マイアミからの電話インタビューで、南部司令部スポークスマン、ラウル・デュアニーは、左翼または右翼の軍事グループによって、年に100件のテロ事件−−車の爆破、誘拐、殺人−−が生じており、それらの多くはコロンビアにいると述べた。
さらに彼は、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイの3つの国境地帯、ベネズエラのマルガリータ島、チリのイキケ、コロンビアのマイカオで、アラブ人の密入国者が、ヒズボラやハマスのようなイスラム過激派グループに資金を送っていると付け加えた。
デュアニーは、ラテンアメリカにおいては「アルカイダと直接関係しているという証拠はない」ことをしぶしぶ認め、ヒル将軍の声明は「国際テロリストで満ちた」地域に「より長期間の関心」をむけることを表明したのだと付け加えた。
南半球における政策に関しては、南部司令部がまちがいなく重要な役割を果たしている。
南部司令部は、国務省、商務省、財務省、農務省、ペンタゴンの統合本部などの当該部局と、国防総省の当該事務所を合わせたもの以上に、ラテンアメリカの問題を扱う人々を多く−−1470人−−抱えている。この司令部の年間8億ドルの予算は中南米の19の国とカリブの12の国をカバーしている。
ワシントン・ラテンアメリカ局の安全保障政策メンバー、ローリー・フリーマンは、ヒル将軍の議会への見解が、予算承認過程の流れの中で作られたものであって、南部司令部の役割を正当化する意図があると述べた。
「9.11後の世界で、米軍はテロとの戦いとの関連で自分自身の意義を明確化しましたが、南部司令部は余計者扱いされました」と、彼女は述べた。
しかし、イラクとアフガニスタンに夢中になったブッシュ政権下で、テロリズムの可能性から南部方面を守るというヒル将軍の提案は、真剣に受け止められるに違いないと、下院軍事委員会のメンバーである共和党員エレン・トーシャーは述べた。
「政府は我々自身の裏庭であまり多くのことをしてきませんでした。ラテンアメリカを我々の外交政策の取るに足りない部分のように扱い続けることはできません。」とトーシャーは述べた。「しかし、ヒル将軍がこの問題を取り上げるのは正しいと私は思います。コロンビアにおけるような麻薬犯罪は、アルカイダのようなネットワークを刺激します。」
トーシャーは、コロンビアにおける米軍の増派についてヒル将軍に同意するが、地元の軍隊をてこ入れするのは間違っているだろうと述べた。
「我々はすでに南部方面司令部管轄諸国との軍隊同士の重要な共同行動を行ってきました。」と彼女は述べた。「それらの諸国の軍隊がそれらの国の警察力よりももっとしっかりした治安警察力として機能することを許すような、そのような法的な枠組みの変更を主張すべきだとは、私は思いません。」
ワシントンD.C.にある「国際戦略研究センター」の「南アメリカ・プロジェクト」の長であるミゲル・ディアスもまた、ヒル将軍の猛然たる主張に同意した。「法の支配の欠如、機能不全に陥っている裁判制度、贈収賄、武器の広範な流通、刑罰を免れる文化、貧困問題を処理できなかった国々−−こういうことをすべてまとめて考えてみれば、ラテンアメリカで地歩を得るテロリストに役立つような、ますます悪化しつつある治安状況があるということになる。」と、ディアスは述べた。
より大きな脅威と言われる貧困
しかし、フリーマンは南半球の安全保障への最大の脅威はテロリズムではなく、貧困、不平等、不正であると警告した。その地方特有の貧困が、ラテンアメリカを麻薬やゲリラグループや都市ギャングやボリビアのモラレスのような、米国の政策に常に逆らうポピュリストの政治家たちへと引きつけると彼女は述べた。
「本当のテロの脅威と人々の不安とを区別するのに失敗したことで、我々の政府が効果的にテロリズムと戦う能力は妨げられています。」と彼女は述べた。
実際、ラテンアメリカには、世界で最も甚だしい所得配分の不公平がある。「ラテンアメリカ・カリブ地域経済委員会」によれば、10パーセントの富裕者が35パーセントの収益を得ており、43パーセントの人々は貧困ライン以下の生活を送り、そういう貧困者が1997年に比べて2003年には2000万も増えている。
シェイクンもまた、地域の軍隊を強化しようとするヒル将軍の計画を、政府が結局は拒絶することを望んでいる。
「我々がラテンアメリカ諸国の軍隊を強化すべきだという考えは、それらがこの数十年間において人権侵害において果たしてきた役割を見過ごし、ラテンアメリカ諸国の政府がこれまで軍の役割をいかに減じようとしてきたかをを見過ごすものである。」と彼は述べた。「多くの国で、それらの軍隊は何千何万という人々を殺害し行方不明にしてきたテロ組織であった。」
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