注 : 被害者の氏名は、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。 また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。 |
S.TAKEDA |
040310 | 抗議自殺 | 2005.1.23 2005.10.20 2007.2.4 2008.7..8 2009.5.17更新 | ||||||||||||||||||
2004/3/10 | 長崎県長崎市の市立小島中学校で、安達雄大くん(中2・14)が、ライターとたばこをもっていたことを担任のT教師に見つかり、指導途中、トイレに行くと言って、校舎4階の手洗い場の窓から飛び降り自殺。 | |||||||||||||||||||
遺 書 | 「オレにかかわるいろんな人 いままでありがとう ほんとにありがとう ○○(友だちの名前)とりょうしん、他のともだちもゴメン」 と書かれたノートが、指導されていた部屋の机から出てきた。 |
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経 緯 (事故報告書、生徒たちへの聞き取りから) |
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被害者 | 雄大くんは、無遅刻無欠席。友人が多かった。 小学校3年生からサッカーをやり、中学校でもサッカー部に入っていた。 担任について、1年生のとき、「首をつかまれ、ガンとやられていやだった」と家で話していた。 2年生になり、「担任がいやだ」と話していた。 雄大くんく担任のT教師に対して、怖いイメージを持っていた。きらっていた。 |
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担 任 | 2年生時からの担任。アゴが出ているためか、アゴというあだ名がついていた。 T教師は日頃、落書きをしたり、消しゴムを千切って投げたり、口答えをするなど、小さなことでも拳で頭をなぐったり、襟首を掴んだりすることがあった。顧問をつとめる部活動でも、げんこつや平手で殴るなどの体罰をしていた。 多くの生徒がT教師のことを怖がっていた。体罰を受けても親に話していない生徒がたくさんいた(今回の事件に絡んでの聞き取り調査などで事実が判明)。 月に2、3回程度の体罰を行った。今回は体罰はなかったという。(本人談) T教師はよく、男子生徒の耳たぶをさわっていた(女子はなし)。アゴや尻を触られたという生徒もいる。雄大くんのアゴを触ったり、背中を触ることもあった。 雄大くんのシャツが出ているのを、T教師が入れることもあった。 担任のT教師は、何かあるたびに「だよね、雄大」と言って、絡んでいるように見えた。雄大くんは目を付けられているように見えた。 修学旅行のとき、T教師は雄大くんを全員の前に出し、悪い見本としていちいちチェックをして注意をした。 |
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事件後の担任教師の対応と言い分 | 担任のT教師に処分なし。翌日からも休まず教壇に立ち、4月から同じ学年の副担任としてそのまま持ち上がった。 狭い掃除道具入れのなかで指導したことについては、「生徒たちは人前で注意を受けたり指導されることを極端にいやがり、反抗的な態度をとってしまうことがあったので、とっさに、少しでも人目をさけることが必要だと思った」と回答。 掃除道具入れのなかで、雄大くんは友人に「ポケットに手を入れられた」と語っているというが、そのようなことはなかった、本人に「見せてくれ」と頼んで、雄大くんが自分で出したと回答。 担任の報告書は他人事のような内容で、「行き過ぎや問題点があったのなら、その時に問題になったのではないか」「体罰と言われればあったかもしれないが、これまで問題になった事はないからいいのではないか」などと書かれていた。 セクハラと言われる行為については、「握手と同じようなスキンシップの一つ」と言う。 |
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背 景 | 担任が最初に雄大くんを連れ込んだ掃除用具入れは、1メートル四方で、ひと2人が入ると身動きができない。 | |||||||||||||||||||
多目的室は日常、視聴覚室的に利用。ビデオなどを見せるために遮光していた(外部から見えない、電気をつけなければ暗い)。 多目的室のことを「お仕置き部屋」と呼んでいる生徒もいる。 |
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生徒が問題行動を起こしたときには、部活動顧問会議で話し合い、所属する部活動を停止する決まりになっていた(文章化されたものはない)。部活動停止はすぐ決まっていた。 2002年末に、1年生が買い食いをして、各部が3日間の停止になった。 2004年初め、サッカー部の2年生が買い食いをして、1週間の部活動停止と奉仕活動が科せられた。 |
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学校は、アンケートによる違反の告白や、他の生徒の違反を密告させる生徒管理・指導を行っていた。宿泊研修の後日アンケートで、自分や友だちの校則違反などを書かせて、あめを食べたことがわかった生徒に親子で1週間、反省文を書かせたことがあった。この時も部活動は停止になった。 | ||||||||||||||||||||
学校の対応 | 学校は指導した担任から話しを聞いただけで、自殺の当日には「行き過ぎた指導はなかった」と発表。また、遺族が「うちの子どもが弱かった」と言ったなどと、言っていないことをマスコミに話した。 生徒たちの心の傷になる、二次被害を防ぐためとして、これ以上の調査を拒否。 一方で、3年生時にT教師を同じ学年の副担任にした。 |
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スクールカウンセラーの対応 | スクールカウンセラーが、同級生らにカウンセリングを実施。 学年緊急保護者会(雄大くんの家族は不参加)が開かれた際、スクールカウンセラーは、「カウンセリングをするなかで何人かの生徒から、彼は以前から死にたいというようなことを言っていたと聞いた」というような内容の発言をした。 このような内容については、家族にも報告されていなかった。 家族がその後、カウンセラーに事情を聞きに行ったところ、「一般論として話した」と回答。 |
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遺族の対応 | 雄大くんがなぜ死んだのか、学校の調査は不十分だとして、同級生らにアンケート調査等を行った。 2004/11/19 学校、市教委にも再調査を要望。 |
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市教育委員会の対応 | 遺族の要望に応じて、生徒から聞き取り調査を行った。 一方で、生徒や保護者からのT教師の体罰やセクハラ的な行為の情報を得ながら、何の処分も行わなかった。 その後も「指導は適切だった」「指導が(自殺の)直接的な原因ではない」とする。 2005/9/16 市教育委員会は県教委に「転落死亡事故」として、自殺とは報告していなかったことが判明。 両親が、事故死から自殺への修正などを求める要望書を市教委に提出。 市教委は「事故翌日に警察に相談した際、転落事故との判断に異論がなかった。その後警察が自殺と断定したことは知らなかった」としており、今後、再確認した上で報告書の変更を含め検討したいとする。 2005/11/ 市教委は「判断する権能がないため修正できない」と文書で回答。 2008/10/ 両親が、雄大くんが亡くなった2003年度の長崎県の公立中学生自殺者数が「0」から「1」に修正されたことを知り、市教委に問い合わせた結果、2007/1/10に市教委が「事故死」を「自殺」とする統計修正を県教委に報告していたことが判明(両親には修正を伝えていなかった)。 2009/4/23 両親が情報公開請求で、修正を文書で確認。 市教委健康教育課課長は、修正について「06年末に文科省発表の自殺者数と警察庁発表の自殺者数の違いが問題になったため」と説明。遺族への説明については「修正時は裁判中で遺族に報告できなかった。その後判決が確定し、説明しなくてはと思っていたが、時機を逸した」と釈明。 |
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誹謗中傷 | 家族が厳しいから雄大くんは死んだという噂が出る。 前から「死ぬ」と言っていたとの噂が出る(同級生たちは、タバコが見つかってから言っていた。それ以前は聞いたことがないと証言)。 |
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裁 判 | 2006/8/22 両親が「不適切な指導で自殺に追い詰められ、学校側の安全配慮義務違反があった」として、学校を設置管理する長崎市を相手に、約9000万円の損害賠償を求めて提訴。 | |||||||||||||||||||
判 決 | 2008/6/30、長崎地裁で、棄却判決。 田川直之裁判長は、教師の指導と自殺との因果関係を認定したものの、予見可能性を否定。 「 T教諭及びI教諭による雄大に対する喫煙指導は、不適切な面が認められるが、法律上の義務としての配慮義務又は防止義務に違反したとまでは言えない。」とした。 |
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参考資料 | 報道ステーション、報道センターNBC、スーパーJチャンネル、毎日新聞、長崎新聞、西日本新聞、朝日新聞、週刊現代、2005/9/16共同通信、「支える会ニュース」ほか。2009/5/14毎日新聞 | |||||||||||||||||||
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