【ケース1】
1991/9/1 東京都町田市立つくし野中学校の前田晶子さん(中2・13)が、母親あてに外から「明日、どうしてもつくし野中学へいかなきゃいけない?」と電話した数10分後、自宅最寄り駅の線路に身を横たえて鉄道自殺。
1993/1/22 学校が生徒たちに書かせた作文の公開をめぐって、遺族が提訴。
1997/5/6 東京地裁で、原告の訴えを棄却。
東京地裁は、「作文は生徒の個人情報」とし、生徒との信頼関係がこわれることを理由に非開示処分。
原告は「この作文は、いじめの実態調査のために書かせた文書だ」と主張したが、裁判長は「そう言い切れない」とした。
一部「作文」の不存在認定。学校が「作文」の開示請求を知りながらそれを廃棄し、その事実を偽って報告したことに対して、裁判所は「極めて遺憾」とした。
1999/8/12 東京高裁で、控訴棄却。
(理由は一審とほぼ同様)
(上記、民事裁判で棄却判決後)
2002/8/13 父親が作文の開示請求を出したあと、母親が作文を処分されないための保険として、作文の開示請求を申請していたことに対し、町田市情報公開・個人情報保護審査会は、「筆跡などから執筆者本人が特定される可能性がある」ことを理由に、請求を棄却する答申を市教育委員会に提出。
一方で審査会は、残っていた作文289点の内容を整理した別紙を答申書に添付して、遺族に示した。
別紙の内容は、筆者が特定される恐れがある部分や真偽がわからない箇所は要約や削除。
「事件、自殺に関して知っていること」「学校の対応についての感想、意見」などの6項目を整理。
審査会は、「自殺から相当の時間が経過したことや両親の心情に配慮して例外的に作成した」と説明。
参照: http://www.jca.apc.org/praca/takeda/number/910901.html
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【ケース2】
1997/1/7 長野県須坂市常磐中学校の前島優作くん(中1・13)が、自宅の軒下で首吊り自殺。「あの4人にいじめられていた」「ぼうりょくではないけど ぼうりょくよりも ひさんだった」などと書いたメモがズボンのポケットに入っていた。
1999/3/2 父親が長野地裁に、公文書非公開非開示処分取り消しを求めて提訴。「学校側は親に対する説明義務があり、個人情報であってもプライバシー侵害のおそれのない本人や親に対する開示は認められるべきだ」と主張。
2000/12/21 長野地裁で全面棄却。
佐藤公美裁判長は、市教委側の主張をほぼ全面的に認め、「情報公開の範囲は地方自治体が自主的に決めるもので、非開示とした処分に違法性はない」として原告の訴えを棄却。
また、開示要求のあったすべての資料を「個人が識別される個人情報」と結論づけた。その上で「市の条例は市民が自己情報を取得する制度ではない。公開にあたってプライバシーの侵害を考慮する規定もない」とした。
参照: http://www.jca.apc.org/praca/takeda/number/970107.html
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【ケース3】
1998/7/25 神奈川県横浜市港南区で、神奈川県立野庭高校の小森香澄さん(高1・15)が、吹奏楽部でのいじめを苦に自宅で首吊り自殺。両親は市青少年相談センターに相談し、香澄さんの生前、カウンセリングなどを受けていた。
民事裁判のなかで、遺族は学校側が女子生徒の死の直後に書かせた「生徒の作文」を請求。
神奈川県は提出できない理由を3つ上げて拒否。
1.作文作成の主旨は、いじめの事実関係を調査する目的にはない。今後の教育指導に役立てるための内部資料として生徒に書かせたもので、主旨が違うから出せない。
2.生徒との信頼関係のもとに教育効果を得る目的で作文を書かせている。元々、第三者に見せることを想定していない。生徒が安心して書けるような配慮をしなければ今後、作文を書かせることができなくなる。
3.作文は作成した生徒のプライバシーにかかわることで、勝手に公開できない。
地裁は生徒の作文の開示請求を却下。原告側が不服申立。
作文の開示のみ独立して高等裁判所で審議。
高裁も、生徒たちのプライバシーや学校との信頼関係を壊すことを理由に非開示決定。ただし、生徒本人の同意があるものに関しては、証拠提出するよう裁判所が命じた。(遺族が個別に手紙で連絡をとって、同意書を送ってもらうことのできた生徒が7名。その中には「いじめ」があったという記述もあった。)
横浜地裁で原告一部勝訴の判決後、東京高裁で、県側が作文の開示を和解条件として出す。「生徒らに書かせた作文について、これらに含まれる女子生徒に関する情報を集約した文書(ただし、個人名及び作成者について判別できないようにしたもの)を作成し、一審原告らに公布する。一審原告らは、この文書の内容を口外しないこと及び第三者に開示しないことを約束する。」という内容を和解条項に入れて、和解成立。
しかし、和解後に開示された作文は、約束していた条件とはかなり異なっていた。
参照: http://www.jca.apc.org/praca/takeda/number/980725.htm
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【ケース4】
2007/10/27 青森県八戸市の八戸工業高校の男子生徒(高1・16)が、自宅で自殺。
所属していたラグビー部でのいじめとそれに関連した同部顧問教諭の不適切指導により、睡眠障害や抑うつ症状を発症していた。
2004/4/ 男子生徒はラグビー部顧問の勧誘で同校に入学し、ラグビー部に入部。しかし入部直後から、部内でいじめを受けるようになり、5月には退部を決意。顧問教師に相談したが、「退部するなら退学しろ」と言って引き留めていた。
2011/4/ 両親は、校長やラグビー部の顧問の教師を相手に、慰謝料と逸失利益約7500万円の損害賠償を求めて提訴。
2014/11/ 遺族が県を相手に起こした民事裁判の仙台高裁で、裁判長はプライバシー侵害の恐れはないことと、自殺の動機につながる証拠調べの必要性を認め、県側にアンケートの開示命令。全851枚のアンケート回答のうち、自由記述欄に記載のあった34人分197枚を開示。内15枚について県は「原本を失くした」と説明していたが、その分も含めて開示された。
アンケートの自由記載欄には、「女子がいじめていた。ラグビー部のこもんの先生もいじめていた。自殺した生徒がラグビー部をやめたいと言ったのに、先生はラグビー部をやめるなら学校をやめろと言っておどしていた」「校長先生ももみ消そうとしています」「家に遊びに来た時、『死にたい』と言っていて理由は『部活がやっかい』と言っていた」など、クラスや部活で男子生徒がいじめにあっていた事実や、部活に悩んでいた様子について書かれていた。(2007年に閲覧したときには、いじめについて書かれたものはなかった)
参照: 「先生がいじめていた」いじめの存在示唆するアンケート見つかる 07年の青森県立高生自殺で」
加藤順子さん
http://bylines.news.yahoo.co.jp/katoyoriko/20150515-00045738/
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【ケース5】
2011/9/1 鹿児島県出水市で、市立中学校の女子生徒(中2)が自殺。
事件直後に学校側は、全生徒を対象にアンケートを実施した結果、学校・教育委員会は「直接のきっかけとなる出来事は確認できなかった」と結論。
一方、遺族が独自調査をおこない、いくつものいじめの情報を得ていた。
学校の調査でも、遺族側の調査と同様の内容が記載されていたというが、「断片的な情報や憶測・伝聞情報が含まれている」などとして、二次被害を防ぐためにアンケートを非開示にするという。
2014/4/4 遺族がいじめに関するアンケート内容を開示しないとした教育委員会の決定の取り消しを求め、鹿児島地裁に提訴。
2015年12月15日、鹿児島地裁で、アンケートの結果をまとめたものの固有名詞をマスキング処理したものの不開示を取り消す一部認容判決(確定)。
参照: http://www.jca.apc.org/praca/takeda/number3/110901.html
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【ケース6】
2011/10/11 滋賀県大津市のマンションから、市立中学校の男子生徒(中2・13)が自殺。
2012/9/7 父親が、男子生徒の自殺後、中学校が行ったアンケート調査の結果をまとめた書面の交付を求めたところ、
@学校長が父親に同書面の内容を部外秘とする旨を確約する書面の提出を求めたこと、
A開示請求対象文書の一部を不開示とする旨の処分をしたこと、
B一部の資料についてその存在すら明らかにしなかったこと
について、慰謝料を求めて、提訴。
2014/1/14 大津地裁で、原告の主張を認める判決。
@原告に対し、安易にアンケートで得た情報の一切を部外秘とする旨を約束させ、原告の予定していた調査を事実上不可能とした
A不開示とすべき事項を限定すべき注意義務を負っていたにもかかわらず、ほぼ全面非開示とした
B開示すべき資料を開示せず、存在を明らかにすることもしなかったことが個人情報保護条例違反に当たる
として、大津市に慰謝料の支払いを命じた。
参照: http://www.jca.apc.org/praca/takeda/message2014/me140115.html
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