注 : 被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。 また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。 |
S.TAKEDA |
110901 | いじめ自殺 | 2016.1.31新規 |
2011/9/1 | 鹿児島県出水(いずみ)市の市立米津中学校の吹奏楽部の中村真弥香さん(中2・13)が、2学期が始まる日の早朝、鉄道自殺 | |
いじめ態様 |
真弥香さんは、数人の女子生徒から、所属していた吹奏楽部で使っていた学校の楽器を壊されたうえ、弁償を強要されたり、文房具を壊されたりしたという。 【遺族の独自調査】 (伝聞を含む) ・物がなくなったり、スリッパがぐちゃぐちゃにされたり、スカートをわざとらしく叩かれたりしていた ・部活のあと、ノートがなくなったと泣いていた ・同級生が真弥香さんの悪口を言っていた ・同級生が真弥香さんのカバンを蹴っていた ・クラリネットを折られた。楽譜を破られた ・楽器を隠された ・いじめられても『どうしたらいいかわからない』と言っていた ・シャープペンシルの中央部分が鋭利な刃物でえぐられたうえ、焼かれていた(現物有) ・クラリネットを壊され、弁償しなければならない、お金を貸してくれないかと言っていた ・5月から6月にかけて楽譜が数回なくなり、真弥香さんの祖父がコピーしていた などの情報が生徒や家族から得られた。 |
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被害者 | 亡くなる1カ月前から吹奏楽部を休みがちになり、元気がなかった。 | |
保護者の 認知と対応 |
葬儀の直後、遺族に「吹奏楽部内でいじめがあった」という情報が寄せられる。 遺族は、いじめが原因で自殺した可能性があるとして、学校に調査を依頼。 |
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学校の対応・ ほか |
市教委は、@教委や学校関係者を中心とした調査委員会と、A外部専門家からなるいわゆる第三者調査委員会の2つの調査委員会を設置。 | |
@事故 調査委員会 |
メンバーは、教育委員会のメンバーと当該校校長、教頭、教務主任、生徒指導主任、PTA会長、臨床心理士、スクールソーシャルワーカーら11名。顧問として、市教委及び教育事務所より各2名の計15名。 |
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A事故調査 専門委員会 |
メンバーは、学識経験者、臨床心理士、民生委員、児童委員、人権擁 護委員の5名。氏名 非公開。 専門委員会は、 ・ 事故調査委員会の報告書案を見て、評価を行った。 ・ 独自に追加して、アンケートや生徒の聴き取り、遺族への聞き取りも一度も行っていない。 ・ 3回の会合を開いただけで報告書をまとめた。 このようなやり方をした理由は、「知らない人だと生徒が身構えてしまって本当のことを言わない、遠方から来ている委員がいたので物理的にも生徒と接触を持つのは難しかったから」とする。 2011年11月末 3か月後、13頁の報告書を提出。 生徒への聞き取りの結果、「吹奏楽部の部員が離れて座っていた」「ノートがなくなって泣いていた」「楽器を掃除するスワブがなくなって、あとで下駄箱から見つかった」などが挙がった。 しかし調査委員会は、いじめを認定せず、学校での出来事が自殺のきっかけか確認できなかったとした。 理由としては、 「吹奏楽部内においては、楽譜クラリネットのリードがなくなったり、壊れたり、チューナーコードが切られたりしたことがあった。Aについても、部活動ノートがなくなったり、スワブがなくなったのしたことがあった。 なお、これらに対して顧問は、日頃からのチームワーク等に関する指導に加え、Aのノートがなくなった時には強い姿勢で全体指導を行ったり、スワブがなくなった時は顧問自ら探してAを気にかけるなどしており、特に不適切な対応は認められない。 また、吹奏楽部内には、Aが特定の生徒との人間関係を気にしていた様子も伺えるが、他方でAの話を聞いたり、一緒に練習や行動をしたり、遊んだりしている生徒もおり、Aが部活動内で孤立した状態にあったとはいえない。 さらに、A自身が、2学期の部活動への期待を8月26日に話しているほか、8月29日の最後の部活動練習にも休むことなく出席しており、吹奏楽部の活動における人間関係等が今回の事故と直接関係しているとは考えにくい。」とした。 |
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アンケート | 2011年10月7日、事故調査委員会は、真弥香さん自殺後、約1カ月たって、全校生徒対象にアンケート実施。欠席者27名を除いた368名の生徒が回答。 【アンケート内容】 「去る9月1日に亡くなられた、2年生の中村真弥香さんのことについて、アンケートに協力してください。 このアンケートは、中村さんのつらさを無駄にせず、二度とこのような悲しい出来事が起きないようにするための手がかりを得ることと、自分の子どもに何があったのか、真実を知りたいという家族の願いにこたえるために実施するものです。 みなさんがこのことを真剣に受け止め、知っていることを正しく誠実に答えてくれるよう願っています。」 質問1 以前に、中村さんのことで気になったことがあれば、どんなことであったか(いつ頃・どこで・何を・だれと)書いてください。 質問2 最近の様子で、特に変わったことがありましたか。気が付いたことがあれば、どんなことか書いてください。 質問3 友達から聞いたこと。いつ頃・どんなことを聞きましたか。 質問○ あなた自身について何か伝えたいことや相談したいことがありますか。 「記入したことやそれ以外のことで、直接話したいことがあれば、遠慮せずに先生やスクール・カウンセラー、あなたを支えている周りの方々に相談してください。」 学年・学級・氏名 記入欄 |
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他の被害者 | 同中学校では、1994/10/29に舩島洋一くん(中3・14)が自殺し、調査のためにとったアンケートを遺族に見せることなく処分。(参照941029)。 |
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情報開示 請求 |
中学校長は当初、アンケートを遺族に見せると約束していたが、1枚も見せなかった。 遺族が、出水市情報公開条例に基づき、出水市教育委員会が組織した事故調査委員会が、同中学校の全校生徒を対象に実施したアンケート調査の回答用紙及びアンケートをまとめたものの各写しの開示請求。 出水市教委は、「開示により、特定の個人を識別することができ、又は特定の個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を害するおそれがあること、及び個人の生命、身体、生活、名誉等の保護に支障を生ずるおそれがあることを理由として、全部不開示とする旨の決定。 遺族は、アンケート開示を求める署名運動を実施し、全国から約1万4,000人分の署名を集めた。そして、何十回も市教委に開示を求めた。 |
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民事裁判 | 2014/4/4 遺族が、アンケートを全部不開示とする処分の取り消し及び本件文書の開示決定の義務付けを求め、提訴。 【請求文書】 1 米津中学校において平成23年9月7日に実施された全校生徒対象のアンケートの回答用紙の写し(ただし、固有名詞をマスキングしたもの) 2 米津中学校において平成23年9月7日に実施さけた全校生徒対象のアンケートの結果をまとめたものの写し(ただし、固有名詞をマスキング処理したもの) |
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判 決 | 2015/12/15 鹿児島地裁で、一部認容判決(確定) 2の全校生徒対象のアンケートの結果をまとめたものの写し(ただし、固有名詞をマスキング処理したもの)の不開示とした部分を取り消す(開示を認める)決定。 |
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その後 | 2016/1/8 市教委は、アンケートの回答者の氏名や学年、部活動名など、個人が特定される部分を黒塗りにして、パソコンで打ち直した全校生徒300人分のアンケートを、遺族に手渡す。 遺族は、改めて自殺の原因はいじめだったとして第三者による調査委員会の設置を求める。 |
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参考資料 | 2014/4/5西日本新聞、全国学校事故事件を語る会資料、判決文 ほか | |
「日本の子どもたち」(HOME) | http://www.jca.apc.org/praca/takeda/ | ||||
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