わたしの雑記帳

2004/5/25 桶川ストーカー事件、民事裁判(2004/5/24)の傍聴報告

昨日(2004/5/24)、東京高裁で、1999年10月26日、桶川市の駅前で猪野詩織さん(大2・21)が元交際相手の仲間から殺害された事件、いわゆる「桶川ストーカー事件」で、警察の職務怠慢と隠ぺいを訴えている国家賠償訴訟の傍聴に行ってきた。(前回3月15日は、実家の父が危篤状態で傍聴に行けなかった)
午後2時開廷予定で、1時半までに高裁入り口の傍聴券配布の列に並んだ。傍聴席は95席。この時間までに並んだひとの数は20人足らず。書類だけのやりとりが続くなかで残念ながら傍聴者が減っている。
それでも、開廷する頃にはざっと数えて35名ほどが座っていた。

裁判長は秋山壽延氏
先日(2004/4/28)、東京高裁で判決のあった戸部署事件(1997/11/ 神奈川県戸部署の取調室で、銃刀法違反容疑などで逮捕されていた金融業の男性(55)が証拠品の拳銃で死亡した事で、遺族が「取調官による誤射」などとして県(県警)に損害賠償を求めていた裁判)の控訴審判決を出した裁判官だという。
戸部署事件で、秋山寿壽裁判長は、「引き金を引いたのは取調官」として県に500万円の支払いを命じた横浜地裁一審判決を取り消し、原告の訴えを棄却。神奈川県警の逆転勝訴をもたらした。
秋山裁判長は判決理由で、「男性は証拠品の弾丸をポリ袋から警察官に気付かれずに短時間に引き抜くことは可能であった」「拳銃の発射は男性自身による」などと認定した。
同じように、埼玉県警を訴えているこの国家賠償訴訟で、はたしてどんな判断を下すのかが注目される

今回、10分程度の原告側弁護団と裁判長のやりとりのなかで出てきたのは、同事件の刑事裁判のさいたま地裁判決文の内容。
詩織さんと母親が上尾署に助けを求めたときに「ヤクザのような人がいます。何をされるかわからない。家族に危害を加えられるかもしれない」と訴えた、その「ヤクザのような人」とは小松武史のことを指すとさいたま地裁は認定。小松らの詩織さんへの攻撃は計画的であり、ストーカー事件であったとしている。
詩織さんや家族が上尾署に名誉毀損行為を訴え、助けを求めていた頃、武史は仲間に金をちらつかせながら、詩織さんを拉致し山小屋に監禁して強姦する計画を立てていたとされる。そのための道具まで準備されていたという。また、詩織さんに対する何段階もの攻撃が計画されており、「社会復帰できないほどのダメージを与えられないときは殺害しろ」と武史が命じていたという証言もあった。
そして実際に、(殺害実行犯とは)別のグループが詩織さんの拉致監禁に失敗した後、刺殺事件は起きたという。

この裁判で、弁護団も首を傾げる不可解なことが起きている。
上記刑事事件の一審判決は2003年12月25日、小松武史に求刑通り無期懲役の判決が出た(その後、被告控訴)。
弁護団はその刑事裁判の判決文の詳細を、この民事裁判で証拠提出するつもりで、謄写申請を出していた。しかし、謄写の許可が出たにもかかわらず、今日までの度重なる催促に関わらず、原告弁護団の手元に届いていない。
しかも刑事の一審判決時の裁判官は3月に退任している。少なくとも退官前には判決文は仕上がっていなければならない。140頁ほどだと言われる判決文の謄写が、なぜ未だ届かないのか、謎だ。
仕方なく、弁護団は今回の公判には、すでに新聞等でも発表された判決骨子を用いた。そして、改めて民事裁判の高裁裁判官からも催促してもらったところ、5月末には出るという。

裁判後の報告会で、弁護団から、今回、常盤大学の諸澤教授に、さいたま地裁判決に対する意見書を出してもらったという。そのなかで、県警側はこの事件はストーカー事件ではないという意見書を出しているが、これは典型的なストーカー事件であること、平成8(1996)年頃から統計的にはストーカー事件が資料に現れており、警察は対策を取り始めた。国家の義務として、被害発生を恐れる被害者の保護に動くべきだったと指摘した。
また、県警の言う「被害者に危機意識がなかったのではないか」という意見に対しては、被害者は非常に危機感を持ち、注意深く生活していたとした。
一審の判決内容を国際的なシンポジウムのなかで発表したところ、会場からは失笑が漏れたという。

報告会の最後に詩織さんのお父さんとお母さんのコメントがあった。
次回、お父さんの証人尋問が行われることについて、裁判所のなかで被害者は自分の感情を表すことができない。これを訴えるチャンスだと感じていると話した。
そして、母親の京子さんからは、5月18日は詩織さんの26歳の誕生日だったと報告があった。誕生日に本人がいないことが辛い。詩織さんはくつが好きだったので、今年はオレンヂ色の夏のサンダルをプレゼントとして買ったと話された。そして、(娘を守れなかった)情けない母親だったと、自分を責める言葉もきかれた。
また、月命日の26日に、現場に誰が供えてくれたのか花があるという。そのことに力づけられていると、感謝されていた。

次回の裁判は、7月21日(水) 東京高裁101号法廷にて、午後2時から4時までの予定(傍聴券配布は1時半から)。詩織さんのお父さん、憲一さんの証言がある。

それから、5月29日(土)には、午後4時からJR大宮駅西口で、署名活動とビラ配りがある。
7月2日(金)、午後6時半(開場6時)から、埼玉教育会館201、202会議室にて、「桶川ストーカー事件国家賠償訴訟 控訴審勝訴をめざす市民集会」が開かれる(入場無料)。
詳細は同会のサイト(http://okegawa-support.web.infoseek.co.jp)にて。


桶川ストーカー事件に関する「わたしの雑記帳」バックナンバーは me010420 me010515 me030303 me031222 を参照。




HOME 検 索 BACK わたしの雑記帳・新