6月30日から7月2日、私たちは、タイのバンコクにある国際NGO「フォーカス」と共同して、沖縄、浦添市にお いて、東北アジア、東南アジア、南アジア、またアメリカ合州国からの活動者とともに、「民衆の安全保障」沖縄国際フォーラムをひらきます。
私たちは、基地と軍隊による「国家の安全保障」に根本的な疑問を抱くようになりました。国家の軍隊は人びとの安全を守るどころか、あまりにも多くの民衆 を殺し、傷つけ、暴力によってその生活を破壊してきたからです。人びとの安全と平和はすでに世界大で耐えがたいまでに踏みにじられています。「グローバリ ゼーション」の名のもとに大企業や投機家に無制限の自由が保証されるなかで、いたるところで貧富の格差が急激に広がり、社会的に弱い立場におかれた何十億 の人びとが生きていけない状況におちいり、環境破壊が急速に進んでいます。そこから生じる社会的混乱と軋轢を、国家の軍事力による威圧と一方的な軍事介 入、そして社会の軍事化によって押えこもうとする企てを私たちは「安全保障」と呼ぶことはできないし、そのような秩序を、「平和」と呼ぶことはできないと 考えます。
私たちはそれに対して「民衆の安全保障」の創造を追求します。それは、人びとが、自分たちの生活、仕事、環境、自由を守り、飢餓や差別に苦しまず、殺さ れたり傷つけられたりレイプされたりしない生身の平和と安全を、非軍事化をつうじて、自身の力で創りだしていくことを意味します。
沖縄国際フォーラムで、私たちは、
このフォーラムは、国家・軍隊・基地の力と民衆の力がせめぎ合う沖縄で開かれます。沖縄では、7月21日から23日、名護市を主要会場に、主要国首脳会 談(サミット)が開かれようとしています。サミットを沖縄に誘致した小渕前首相は、沖縄から「平和の発信」をすると語りました。その沖縄では1996年の SACO報告によって「返還」が合意された普天間飛行場の「代替」施設を名護市辺野古に建設する問題が焦点になっています。それは老朽化した基地の「返 還」を隠れみのに、最新鋭の機能を備えた米海兵隊基地を新たに建設し、沖縄を冷戦後の米軍戦略の要としてすえ直すための重大な布石なのです。名護市民は 1997年12月の市民投票で、当時計画されていた「海上ヘリ基地」計画に拒否の意思を表明しました。しかし今、それはいとも簡単に踏みにじられようとし ています。そればかりか、稲嶺恵一沖縄県知事や岸本建男名護市長が基地の受け入れに際して条件とした「15年の使用期限」さえも、すでに日米両政府によっ て拒絶されています。新しい米軍基地の建設を強行しようとしているその名護をあえてサミット開催地に選ぶことで、日本政府はこの軍事的な企てに「平和」の 衣をかぶせ、国際的に権威づけようと試みているのです。
この動きはまた、沖縄戦の体験と戦後の米軍の直接支配に対する闘いによってつちかわれてきた沖縄の民衆の平和への意志、また「歴史意識」そのものを解体 しようとする動きを伴っています。さる3月30日、沖縄県議会は県関係機関の役職から一坪反戦地主を排除せよ、という右翼団体からの陳情を可決しました。 それは、4月1日にオープンする新平和祈念資料館の展示をめぐって、日本軍による住民虐殺などの事実を「国益」のために隠そうとする県当局の「歴史意識」 改ざんの試みを後押しするものと言わなければなりません。いま日本国家は、「未来志向」の名のもとに、戦争責任、植民地責任を棚上げしながら「戦争のでき る国家」への転換への重大な数歩を進めつつあります。「周辺事態法」、「盗聴法」、「国旗国歌法」などの制定から、有事立法、憲法改定へと事態は急速に動 いています。
私たちは、このような事態を許すわけにいきません。また私たちは、このような事態が、沖縄だけの問題、もしくは日米2国間だけの問題であるとは考えませ ん。私たちは、1996年に再定義され、97年に日米防衛協力指針(ガイドライン)として具体化された日米同盟を軸とするアメリカの東アジア太平洋戦略 が、朝鮮半島、中台関係を含む東アジア・太平洋地域、さらにはペルシア湾にまでおよぶ広大な地域を軍事介入の対象にしているからです。私たちはこのこと に、アジアの隣人たちの注意を喚起したいと思います。この状況全体に、アジアの民衆がどう向き合うのか、が問われているのです。沖縄国際フォーラムは、沖 縄の闘いを包み込むアジアの民衆の抵抗と介入と創造の戦線をつくることをめざします。
私たちは、「民衆の安全保障」の考えと行動がすでに沖縄の民衆運動のなかに深く根ざしていることを知っています。1995年9月の米海兵隊員による少女 への性暴力事件をきっかけにした「島ぐるみ」の米軍基地反対運動は私たちの記憶に新しいことです。とりわけ沖縄の女性たちは、戦後の数々の米軍犯罪の歴史 を検証しながら、軍隊と基地による暴力の犠牲者がまず何よりも女性たちであること、軍隊と基地が女性の安全と平和とは並び立たぬことを強く訴えてきまし た。第二次世界大戦で戦場となった沖縄では、米軍の砲爆撃によってだけではなく日本軍自身によって殺害された住民も少なくありませんでした。「国家や軍隊 は住民の安全を保障するものではない」ことは、沖縄の人びとの体験に根ざした考え方になっています。同様な教訓が、ビルマで、インドネシアで、東チモール で、フィリピンで、そして世界各地の人びとの経験のなかから引き出されています。私たちはこれらの経験と洞察から力をくみとり、それを私たちの国境を越え た運動の基礎にすえたいと願います。
「民衆の安全保障」沖縄国際フォーラムは、6月に沖縄で開かれる国際女性サミット(東アジア・アメリカ国際女性ネットワーク主催)、国際環境NGO フォーラム、第三世界諸国の債務帳消しを求めるジュビリー2000の国際会議、グロバリゼ−ション下の地域自立と持続可能な発展の道をさぐるピープルズサ ミットなどの、国家のサミットに対抗する企画と連携しながら、平和、環境、女性、労働などの運動の場からサミットに体現される大国主導の覇権戦略への対抗 構想についての討論を深めていきたいと思います。
私たちは、このフォーラムを支える市民の連絡会を東京と沖縄で出発させました。沖縄の反基地・平和の運動を強め、平和の構想を市民の側から国境を越えて 発信していくために、みなさんの物心両面の参加と協力を訴えるものです。
2000年4月
◆東京連絡会呼びかけ人◆ | ◆沖縄連絡会呼びかけ人◆ |
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秋山眞兄(日本ネグロス・キャンペーン委員会事務局長) 天野恵一(「派兵チェック」編集委員会) 上原成信(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック代表) 梅林宏道(太平洋軍備撤廃運動) 太田武二(「命どぅ宝」ネットワーク) 太田昌国(新しい反安保行動をつくる実行委員会W) 大津健一(日本キリスト教協議会総幹事) 加地永都子(日本YWCA中央委員) カリン・リー(アメリカン・フレンズ・サービス・コミッティ) 木邨健三(カトリック正義と平和協議会事務局長) 国富建治(戦争協力を拒否し、新ガイドライン・有事立法に反対する全国FAX通信) ダグラス・ラミス(ピープルズ・プラン研究所) 田巻一彦(脱軍備ネットワーク「キャッチピース」) 遠野はるひ(APWSL アジア太平洋労働者連帯会議日本委員会) 花崎皋平(ピープルズ・プラン研究所) 原義和(名護へリポート基地に反対する会) 松井やより(VAWW-NET Japan 「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク) 武者小路公秀(フェリス女学院大学教員) 武藤一羊(ピープルズ・プラン研究所) 山下治子(No!レイプ No!ベース 女たちの会) |
安次富浩(海上ヘリ基地建設反対・名護市政民主化を求める協議会) 池宮城紀夫(弁護士) 新崎盛暉(一坪反戦地主会代表世話人) 宇井純(沖縄環境ネットワーク) 浦島悦子(ヘリ基地いらない「二見以北十区の会」) 金城睦(弁護士) 島田善次(宜野湾告白教会牧師) 島田正博(一坪反戦地主会) 崎原盛秀(平和市民連絡会事務局長) 平良修(日本キリスト教団うふざと教会牧師) 高里鈴代(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表) 知花昌一(読谷村議) 中村信嗣(基地はいらない平和を求める宜野湾市民の会) 西尾市郎(平和をつくる琉球弧活動センター) 真喜志好一(SACO合意を究明する県民会議) 源啓美(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会) 由井晶子(元沖縄タイムス論説委員) |
「民衆の安全保障」沖縄国際フォーラム
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