10月9日、午後5時30〜8時まで、関西電力との交渉を行いました。この日の交渉では、関電のMOX燃料契約に関する問題を中心に、敦賀2号で起きた加圧器逃し弁用管台のひび割れ問題などを取り上げました。主な内容についてお伝えします。 <9月11日付質問書はこちら> <10月7日付追加質問書はこちら> 1.MOX契約について、秋山会長と会社の姿勢は違う 「BNFLは契約先としては『困難』」−−関電秋山会長 「会社としてはBNFLも候補の一つ」−−関電広報 9月4日の英国の新聞フィナンシャル・タイムズ紙は、関電秋山会長のインタビュー記事を掲載しました。記事では、秋山会長の「「BNFLは契約先としては『困難』」とのコメントを載せています。事実上契約先がフランスのコジェマ社に絞られていることがうかがえます。 会長が発言しているのですから、これは当然、関西電力としての見解だろうと確認すると、広報の職員は「広報としては知らない」「私は聞いていない」を繰り返します。そして関電の回答は「BNFLもベルゴニュークリア社もコジェマも候補の一つだが、契約先は具体的には未定です」と「公式見解」を述べました。会長の発言と、会社の見解は異なるのかと確認すると、それには直接的には答えず、「会社としてはBNFLも候補の一つ」を繰り返し、会長発言を会社の見解としては認めませんでした。 会長発言は、BNFLを契約候補から落とし契約先が絞られていることを臭わせています。フィナンシャル・タイムズ紙等に掲載されたのですから、当然福井県も知っているでしょう。しかし、関電の正式見解は、「契約先を決める前に、国や県に関電の品質保証体制について報告をする」というものです。それもやっていない内から、もう契約先は絞られているという事が報道されたため、社内では「まずい」となったのでしょうか。「契約先はまだ決まっていない」という公式見解をアピールするために、あえて、「BNFLも候補の一つ」と言わざるを得なかったのでしょう。 さらに、BNFLの新MOX工場(SMP)は、未だにMOX燃料を作れず、ドイツやスイスから得たMOX注文も、コジェマとベルゴニュークリア社に作ってもらうという始末です。これに関して「BNFLはMOXを作ることができないでしょう」と言うと、関電は困ったような顔をして黙ったままでした。 また、8月18日付「ニュークリア・フュエル」紙では、コジェマのMOX燃料ペレットの生産について「現在のところ、技術的リスクのため公称の生産能力にわずかに達していない」と書かれています。この「技術的リスク」とは何かと問うと、「答える立場にない」とまたも常套句です。 それにしても、会長の発言と、会社としての発言が「食い違っている」とは、奇妙なものです。他に何か、表に出せない問題でも抱えているのでしょうか。 2.コジェマが米国MOX契約で安全当局の許可を得ていないが 「記事は知っているが関知しない」しかし「契約先になれば調べます」 コジェマは、8月12日に米国用のMOX燃料製造契約を結びました。核兵器解体から出てくるプルトニウムを使用して試験的MOX燃料を作るためのものです。製造はコジェマのカダラッシュにあるMOX工場で行い、05年に米国で使用する予定と言われているものです。しかし、この製造契約について、コジェマがフランスの安全規制当局の許可を得ていなかったというスキャンダルが発覚しました。原子力業界紙の「ニュークリア・フュエル」9月15日付でも報じられています。 この問題に関して、事実を知っているのかと問うと、「記事は読んでいるが、事実関係は関知しないし、承知しない」とまるで他人事のような回答です。契約候補にあがっている会社が、安全規制を守らないということに対してどう思っているのかと追及すると、「コジェマとは信頼関係があるので、何かあれば連絡してくれます。今は気にしていません」との回答。フランスの安全規制を守らないコジェマでも、「信頼関係がある」というのです、いや、安全規制を守らないから「信頼関係がある」のかも知れません。 コジェマは法的規制を気にしない会社ではないのかと聞くと、「当社としては答える立場にありません」という、またも困ったときの常套句でした。しかし、最後には、「コジェマが契約先になれば、この問題は調べます」とのこと。この重要な言葉は、忘れずにいてほしいものです。 関電は、自社の品質管理体制について、第三者機関ロイドによる評価を受けた上で、近々報告書を発表すると言っています。この報告書を国や福井県・高浜町・京都府に報告し了解を求めようとしています。その後、契約先の品質管理について調査し、今年度中にMOX製造契約を結ぼうとしています。これから来春にかけて大きな山場を迎えます。関電の三度目のMOX契約を阻止しましょう。 3.敦賀2号の加圧器逃し弁用管台で貫通亀裂が見つかっているのに 「各原発で当該箇所をいつ点検したかは言えない」 「検査も何もしてないが、きちっと対応している」 9月9日、敦賀2号で定検中に加圧器逃がし弁用管台で貫通亀裂が見つかりました。加圧器は原子炉の圧力を保つ重要な機器です。そのため、関電の原発もすぐに止めて、該当部分を点検すべきだと要求していました。当初、回答は一般論のみです。そのため、質問に具体的に答えるよう追及しました。すると、また、とんでもない回答です。 ■まず、関電の各原発で該当部分はいつ点検したのかという質問に対しては、「供用期間中検査で義務づけられており、定期的にやっている。最低10年に1回は保温材をはずしてUT検査をやっている」。具体的に各原発毎に点検を行った日を聞いていると追及すると、「公開されている情報を元にしており、加圧器は公開情報ではない。そのため各原発毎の点検日時は答えられない」と無茶苦茶な理由です。原子炉上ぶたの点検日についてはこれまで公開してきています。加圧器について点検日を公表できない理由でもあるのかと激しく追及しました。この件は、10月14日になって関電から「主管部と相談して、各原発毎の点検日は出すことになりました。今週中にFAXで送ります」との電話がありました。 ■点検の頻度は10年に一回です。たまたま定検中の高浜2号と美浜2号では、保温材を外し目視で検査をしたが、異常はないといいます。しかし、目視検査でひび割れが確認出来るのでしょうか。敦賀2号の場合は、溶接部表面に現れていた傷は0.4oだったのです。いい加減な検査です。 ■敦賀2号で予想されなかったひび割れが見つかったのだから、関電の原発も止めて点検を行うべきだと要求すると、「本日午後3時に日本原電から正式の事故報告書が出たところで、ひび割れ原因が敦賀2号に特有なものかを検討する必要がある。また保安院からも指示があるかも知れないので待っている段階だ」と一般論で逃げようとします。追及されると「我々はきちっとした対応をとっているから大丈夫」などと言い出すので、どういう対応をとっているのかと追及すると「何も対応はしていません」。すなわち「何もしていないが、きちっとした対応をとっている」。さらに、「うちの原発は順調に動いているから大丈夫」とまで。これが関電の安全性に対する基本姿勢なのです。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ 9月7日に、北海道電力・泊2号原発の再生熱交換器・配管部分から水漏れ事故が起きました。11日、北電はこれより古い泊1号器を緊急停止して点検に入っています。 関電の高浜3・4号も同型の再生熱交換器です。グリーン・アクションと当会は、15日、関電に対して「高浜3・4号の再生熱交換器を直ちに点検してください」との申入書を送りました。<申入書はこちら> |