「うん、あの頃より、顔がひきしまったね。ちゃんと運動とかしてる?」
「運動の時間に走ったりしてます。朝、仕事を始める前に、ラジオ体操もやってます」
「先月(10月12日)、運動会があったって?」
「はい。今年は、チアガールが15人も来て、こ〜んな短いスカートで踊ってくれたので、みんな大喜びでした。でも、私は、この頃、精神状態が悪いので、あまり楽しめなかった・・・運動会の競技などにも、あまり興味ないし・・・」
「ゴビンダさん、それじゃダメだよ。楽しめる時に楽しまなくっちゃ!」
桜井さんは、運動会やカラオケ大会など、リクリエーションの機会に率先して楽しむのはもちろんのこと、日頃の刑務作業についても「よし、今日はこれだけ仕上げるぞ!」というように自分で自分にノルマを課して、単調な作業に張り合いを持てるよう、いろいろ工夫していたのだそうです。
「刑務所の中にいるとき、『ここから出たら頑張る』とか言ってる人っているじゃない?でも、俺は違うと思う。ここで頑張れない人は、外に出たって頑張れない。だって、外は外でまた別の大変さがあるんだよ。だから、ゴビンダさんも、今、頑張らなきゃ!」
桜井さんも服役中にお父さんを亡くされたため、その後、家族からの面会はなく(救援会の特定の支援者の面会だけ)、また仮釈放になっても帰って行く家庭はなかったのです。
「ゴビンダさんには、ネパールで待ってる家族がいるんだから、元気出さなくちゃ」
「わかってるんだけど、私の精神状態おかしくなったのは、やっぱり高裁判決のせいだと思います。あれから薬のまないと眠れなくなりました。桜井さんは眠れましたか?」
「有罪判決のショックはよくわかるよ。でも俺は薬なんか飲んだことない」
「再審なんかやってると仮釈放にならないと言われたことあるけど、ほんとですか?」
「そんなことないよ。俺、ちゃんと仮釈放になったじゃない」
「桜井さんの再審は、今、どうですか?」
「もうすぐ事実調べが終わって、来年早々には結果が出る。きっと勝てるよ!」
「良い知らせ、楽しみに待ってます」
実際に体験した人ならではの桜井さんの言葉の数々。ゴビンダさんは、感に堪えないという面持ちで聞きいっていました。きっと大きな元気をもらったことでしょう。
桜井さん、再審の山場を迎えて大変な時期に、遠くから面会に来てくださって、本当にありがとうございました。
客野美喜子