無実のゴビンダさんを支える会

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「私のお正月、せつないでした」  2006年1月17日

1月17日、今年初めての面会に行ってきました。
「あけましておめでとうございます!」と挨拶すると、すかさず「今年もよろしくお願いします!」という返事が返ってきました。
「この前、雨がたくさん降ってから、少し暖かい日が続いていて楽です」
 とは言うものの、ずいぶん「着ぶくれ」して見えました。やはり刑務所の中は寒いので、作業服の下に何枚も重ね着しているのでしょう。
 お正月をどんなふうに過ごしたかは、1月1日付の手紙(末尾に添付)に書いてあったので、今日の面会ではとくに話題にせず、すぐ用件に入りました。

家族の近況:
 ゴビンダさんが待ちわびていた家族からの手紙・写真・本が、先日ネパールから託送で届いたので、先に手紙は簡易書留で送っておき、写真と本だけ持参しました。
 窓越しに写真を1枚ずつ見せながら家族の近況などを話しました。現在、カトマンズの家には、ラダさんのお兄さんや妹さん一家も(一時的に)同居しています。ミティラちゃんとエリサちゃんは年頃のせいか急に大人びて、都会的な雰囲気の娘になりつつあります。 イラムのお父さんは高齢のわりにはお元気ですが、お母さんは、毎年、冬になると持病のぜんそくが悪化しがちなので、インドラさんがイラムに行って世話をしているそうです。
 そんな話の途中、「ねえ、先生!」とゴビンダさん、後方に控えている看守を振り返り、「これ、みんなボクの家族の写真ですから。全部受け取れるようにしてくださいね」と声をかけたのですが、この老看守さん、あまり関心なさそうに「それ私の担当じゃないから」とそっけない返事。  やがて家族からの手紙に話が及ぶと、またもやゴビンダさん、看守を振り返り、「家族の手紙、とっても大事なこと書いてあるから、あまり時間かけないで受け取れるようにしてください!」。するとまったく同じように「それ私の担当じゃないから」という無愛想な返事。これには二人で顔を見合わせて苦笑いするしかありませんでした。

年賀状とクリスマスカード:
 救援新聞やゴビンダ通信での呼びかけに応えてくださった方々から、事務局宛に届いたゴビンダさんへの年賀状(26通)を持って行きました。それらを出したとたん、ゴビンダさん、目を輝かせて「あっ!それ、あたってるかどうか調べた?」。
 お年玉つき年賀はがきということを、ちゃんと知ってるんですね。それらを1枚ずつめくって絵柄を見せたところまではよかったのですが、メッセージを読み始めたら看守に気付かれてしまい、「他の人からの私信は見せないでください」と注意されました。
 「すみません」とひっこめたところ、「5月からは、みんなからの手紙も受け取れるようになる」という言葉がゴビンダさんの口から出ました。受刑者処遇改正のこと、昨年までは全然知らなかったのですが、どうやら今年になって内部でも公表されたようです。

 昨年、蓮見さんが送ったクリスマスカード、無事に受け取れていました。ふつうのカードではなくて、組み立てると立体的なクリスマスツリーになるタイプだったので、本人に渡してもらえたかどうか心配していたのですが、「あっ、この前の手紙でそのこと言わなかったね。ごめんなさい。ちゃんともらえました」。ただし、「こおんな大きな(と手でサイズを示して)クリスマスツリーだから、自分の部屋に持って行くのはダメで、他の人たちのと一緒に工場に置いてくれた」。  つまりゴビンダさん以外にも、そういうタイプのカードをもらった人たちがいたので、みんなまとめて工場のどこかに飾ってくれたということらしいです。
 「それなら、みんなにも見てもらえてよかったじゃない?」と言ったら、「そうです!」と、ちょっと得意そうな顔をしていました。

再審:
 「再審を開始するかしないか、今の裁判所が決めるんですよね。これだけの証拠だけじゃだめだと言って却下されるんじゃないか心配だから、日弁連の支援が決まったら裁判所にちゃんと鑑定して調べてくださいとアピールしてもらえないかと思って・・・」と言うので、「たとえば最高裁の上告棄却みたいに、今の段階でいきなり却下しますという通知がくるようなことはないから、まだそういう心配はしなくて大丈夫」と説明しました。
 「もうすぐ十年ですよお!」と拳を握り締め、「鍵は、間違いなく6日に返したのに・・・マルさんが本当のこと言ってくれれば・・・裁判所がバッグの鑑定さえしてくれれば・・・そしたら絶対ボクが犯人じゃないこと、わかるはずなのに!」などと悔しそうに繰り返していました。この数年来、獄中でいくら考えをめぐらせても、ゴビンダさんの思いは、どうしてもそこに戻ってきてしまうのですね。まったく痛ましいかぎりです。

 最後に、毎週2〜3通の絵はがきが私から届くのがとても嬉しいと言っていました。手紙が届いている日は、朝、出房して工場に行くとき「今日は手紙が来てるよ」と知らせてくれる。それを工場から帰って来たときに渡してもらえるので、その日は、働いている間ずっと、「今度はどんな絵はがきかな」とか「何が書いてあるかな」と楽しみにして、明るい気持ちで過ごすことができるのだそうです。

差入れ: 家族からの写真と本6冊、1月分支援金。


(以下、1月1日付の手紙)

Dear 客野さん、ナマステ!

新年あけましておめでとうございます。
今回、年賀状に書いて送ることできなかったのですみませんでした。今度から必ず年賀状送ります。
客野さんの年賀状、山本真砂子さん、加茂京子さんのハガキで送ってくださった年賀状、全てもらいました。嬉しかったです。どうもありがとうございました。この手紙、1月1日書きましたけれど、長い休みだから届くのは遅くなります。すみませんでした。
NHKTVで、紅白歌合戦第47回、見て楽しみましたよ。また、たくさん美味しいもの(折詰め、餅など)食べました。
ラダさんからの手紙、写真など、もうすぐネパールから持ってきてもらえるから、その手紙見てから、ラダさんに返事書きます。
客野さん、お正月の料理、何を作りましたか?みな家族と一緒に美味しいもの食べたり、楽しみましたか?羨ましいですね。私のお正月、せつないでした。
今年の最初の面会、楽しみに待っています。ではまた。
あなたの愛、情け、忘れません。

Yours "INNOCENT" Govinda
2006年1月1日 横浜刑務所にて


補足説明:
「刑務所内で年賀はがきを購入できるのだが、それを知ったときには、すでに申し込み締め切りがすぎてしまっていたので、買えなかった。ごめんなさい」と、12月面会のときに謝っていたので、「そんなことはちっとも気にしなくていいよ。それより、発信数に制限があるのだから、1月はラダさんに手紙を出してあげてね」と言ったのです。
 しかし、結局、「ラダさんには、あちらから手紙が届いてから返事を書けばいい」という判断をして、1月の発信はこの手紙にあててしまったようです。
「紅白歌合戦」や「正月料理」のことは、「見られましたか?」、「食べましたか?」と、私が年賀状に質問形で書いたので、それに対する返答になっています。

客野美喜子