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「布川事件第15回現地調査」レポート 2005年8月27--28日

熊野です。先日客野さんから簡単なご報告がありましたが、布川事件の現地調査に日のみ参加してきました。
当日の進行は客野さんの投稿にあった通り、「37年目の真実」のビデオ上映、桜井・杉山さんの訴え、弁護団の話、新倉修教授の講演と盛りだくさんでしたが、特に印象に残った点について個人的な感想を交えてご報告します。

まず、集まった人数に驚きました。布川事件「守る会」の底力を見た気がします。
当日はかなり広い講義室が人でいっぱいになっていて、3人がけの椅子に3人びっしり並んでいる列がかなりありました。とても暑い日でしたが、冷房を入れるとなると職員を出勤させなくてはならずその分お金がかかってしまう、ということで自然の風だけに頼っていたのですが、途中で退席する人はほとんどいなかったようで、最後まで盛況でした。守る会の活動の経緯は恥ずかしながらほとんど知らないのですが、長年にわたり粘り強く訴えてきた成果ではないかと察します。改めて関係者の皆さんの努力に頭が下がります。

もうひとつ印象に残ったのが、視覚的に訴えることの大切さとその効果でした。
主な新証拠について、現場写真や見取り図を使ったり、現場に置いてあったものとほとんど同じものを使って再現・模擬実験したりしたので、自白内容と現場の状況との矛盾点がとても鮮やかに浮かび上がりました。争点のひとつとして以前から話には聞いていたガラス戸のことも、百聞は一見にしかずで、実物(に近いもの)を見て初めてどういうことなのかがよくわかりました。今までは、上部にはめこんであるガラス部分を足で直接蹴って割れた、割れない、を争っているのだとばかり思っていたのですが、あんな上にあるのに足が届くわけがないと一目で納得。実際は、ガラス戸の下部にある木の部分を蹴った衝撃で上部のガラスが割れた、と自白しているけれども、蹴ったくらいでは割れない、というところが争点になっています。当日は実際に参加者がガラス戸を蹴ってみせたのですが、ガラスはびくともしませんでした。単純に蹴った時の衝撃よりも、木枠がねじれたときに加わる力で割れたにちがいないとする鑑定書がある、と聞き、確かにそう考えた方が実体験に即しても納得がいく、と思いました。ガラス戸手前の床の落ち込みも、現場ほど傾斜をつけられなかった、ということでしたがそれでもかなりの角度で落ちていてとても奇異で、こんな状態で自白のようにガラス戸を外して隣の部屋に持って行こうとするのはそもそも危ないし、非常に不自然だと思いました。自分の目で見て確認できるととても説得力があります。

今回もうひとつ初めて知った事実がありました。おふたりとも事件当日はアリバイがあったということです。またもうひとつ知ったことで驚いたのが、一審での弁護活動のお粗末さでした。特に桜井さんの場合は国選弁護人がついたものの、一審初公判の2週間前に初めて接見に来て、桜井さんの訴えをろくに聞かずに公判に臨んでしまったそうです。杉山さんの方は私選だったそうですが、あれだけ詳細に事件当日の行動を覚えていたのなら、その気になればもっとアリバイの裏づけが取れたのではと思えてなりません。当初からやれることをすべてやっていたなら、もしかしてお二人の人生は違ったものになっていたのかもしれない、とやりきれなさを感じてしまいました。もちろん、今さら「あの時こうしていれば」ということを言っても仕方のないことですし、弁護人がひとり奮闘してもやはりどうにもならないことも多々あるのでなんとも言えません。国選弁護人については制度そのものにもいろいろ問題があるのでしょう。ただ、今までは検察、裁判所の問題点にばかり目がいっていましたが、弁護士も含めた法曹三者それぞれに改善・改革が必要なんだ、と思わせられた一幕でした。

最後になりますが、杉山さん、桜井さんはもちろんのこと、再審弁護団そして守る会のみなさんの今までのご尽力に改めて敬意を表します。再審の重い扉が開くよう、心から望んでいます。
熊野里砂
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