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TICADでは、アフリカの人々のアイデアを中心に据えた取り組みが謳われているのではないのですか。TICADは、「アフリカにおける貧困撲滅、持続可能な成長と開発、世界の政治経済への統合を目指す、アフリカ人自身の決意を原動力とするアフリカ指導者達の誓約」(外務省)とされる「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(the New Partnership for Africa's Development :NEPADネパッド)との連携を非常に重視しています。 このNEPADは、(1)アフリカ開発における「支援する側」と「支援される側」という関係ではなく、アフリカ自身がオーナーであり支援する側はパートナーである、という関係を明確に打ち出したこと、(2)援助する側の押し付け政策ではなくアフリカ自身が作成した文書であること、などの理由によって、TICAD、G8諸国をはじめとする各国政府や民間企業、一部の市民社会の中でも高い評価を得ています。 NEPAD文書のイントロダクションでは、基本的な目標は(1)貧困を削減し、(2)持続可能な成長と開発を実現し、(3)グローバリゼーションからの排除をなくし、世界経済に完全かつ有益な形で統合すると同時に、(4)女性のエンパワーメントを促進し、そのために、紛争処理や民主主義を追求すると同時に、インフラを整備し教育や健康保健に取り組むとしています。 一見、問題のないように見えますが、NEPADがつくられる過程をみれば、それがアフリカの人々による下からの願いを反映しているのではないことが分かるでしょう。 NEPADは、ムベキ南アフリカ大統領、ブーテフリカ・アルジェリア大統領、オバサンジョ・ナイジェリア大統領の三人によって作られ、2002年7月のAU総会で提案され、AUの基本的文書の一つとなりました。 この3人の大統領たちは、G8沖縄サミット(2000年7月)、IMF/世界銀行(2000年11月と2001年2月)、ダボス会議(2001年2月)、G8ジュノア・サミット(2001年7月)、EU(2001年11月)でNEPADについて協議してきました。これらの国際会議は、新自由主義グローバリゼーションを進めるものとして、貧困と抑圧にあえぐアフリカをはじめとする世界の人びとの抗議の的になってきたものです。そこで協議されてきたNEPADが、新自由主義と無縁であると考えるのは、いささかお人よし過ぎると言えるでしょう。 TICADやG8諸国がNEPADを高く評価し、積極的にプロセスの中に取り込んでいく理由も、従来のような「押し付け新自由主義」ではなく、アフリカの大国の指導者らによる「自発的な新自由主義」であるからではないでしょうか。NEPAD文書の多くが開発アフリカ自身が発したビジネスチャンスの掛け声に金持ち諸国が飛びついている、というのがNEPADをめぐる構図ではないかと思います。 もちろんビジネスの話しだけでなく、下記のように貧困削減や債務削減についても触れられていますが、それも批判の多い世銀やIMFなどによる従来の計画を踏襲したものでしかありません。 「貧困削減:貧困削減をNEPADの全ての計画において優先させる。世銀、IMF等と協力し『包括的開発フレームワーク』及びHIPC債務削減と連携した『貧困削減戦略』を加速。」 アフリカの中でも、金と力のある一部の国の指導者から「新たなビジネスチャンスのために関係を再構築したい、借金返済の方法については従来どおり世銀とIMFの方針を守ります」とプレゼンテーションをされて、嫌な顔をする金持ち諸国はないでしょう。 NEPADは、上述のような対外的なビジネスアピールだけでなく、それによる域内新自由主義の拡大を通じて、アフリカのなかでも経済的に大きなウェイトをしめる南アフリカなどの多国籍資本のアフリカ全土への展開を促進することにもつながるでしょう。 (参考)アフリカ開発のための新パートナーシップ
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