111.3.20のイラク反戦デモに参加して、および、『論座』3月号の小論への反響について (2004/03/28掲載 )
(1) 3月20日の行動に参加して
3月20日の東京は寒い一日でした。日比谷野外音楽堂でのWORLD PEACE NOW主催の行動に参加しようと家を出たときは、雪混じりの霙(みぞれ)が降っていました。都心では雨でしたが、旗を持つ手が赤くなり、かじかんでしまうほどの寒さでした。(写真は、島川雅史さん撮影)
天気がよければもっと参加者は増えたかと思うのですが、主催者の発表によると3万とのことでした。しかし、それはすこし多すぎる数字のように思えるという意見もだいぶ聞こえます。正確なところはわからないのでしょうが、2万弱といったところでしょうか。
3・20行動の評価については、これから議論されるのでしょうが、各地の情報を正確に知り、しっかりした意見交換が行なわれるよう期待します。
東京・中野のグループの行動を聞きました。「戦争に反対する中野共同行動」は、日比谷への参加を前に、午前中、地元の中野駅前で集会をし、約四〇人が繁華街を一周するデモを行なったそうです。集会では立川自衛隊監視テント村のメンバーが、自衛隊官舎へのビラ入れ弾圧にともに抗議しようと訴え、救援カンパが集められました。デモはブッシュや小泉のイラク戦争をきびしく糾弾しつつ、憲法改悪と有事関連七法案に反対することを訴え、同時に、中野区議会に提出された、警察権力を増大させながら住民同士の相互監視体制作りを目論む「生活安全条例」を、地域社会の監視化・軍事化の推進と位置づけて、その成立に反対することを呼びかけたということです。大きな共同行動に参加する際に、こうした地域での独自活動をつなげるという動きは、見事だと思います。共同行動参加者の数の大きさだけでなく、このような質の面こそ、評価の基準となるべきでしょう。
長崎の舟越耿一さんからは「長崎は一五〇〇人の集会・デモになりました。市民運動プラス社共プラス県平和センターという集まり方ですが、これまでの最高です。カトリックも結集しました。やはり時間をかけて、手間隙をかけて準備すると立派なものができます」とのメールをいただきました。このように結集できたところもあるし、東京や大阪、名古屋のように分かれたところもありました。
東京では、@市民運動などの連合体「WORLD PEACE NOW」主催の日比谷野外音楽堂での集まり(私の参加している「市民の意見30の会・東京」や「市民意見広告運動」はこれに参加しました)、Aその近くの日比谷小音楽堂での「陸・海・空・港湾労組20団体」主催の「平和コンサート in Hibiya」、そしてB「3・20国際共同行動IN東京・芝公園」(同実行委主催)の三つでした。
それぞれの間でメッセージの交換などの努力もされましたが、この状況は運動の前進であるのか、後退であるのか、「分裂」と言うべきなのか否かで、議論は分かれているようです。あけすけに実態を言えば、@はさまざまな市民グループと、そこに参加している「平和フォーラム」の日教組、自治労など旧総評系労組グループ、Aは一部「連合」系労組も含む全労協などを中心としたグループ、そして中核派、革マル派などの集団もここに参加、Bは全労連など共産党系の労組や安保拒否全国実行委などの団体といった色分けです。
背景には、各系統の労組連合の間での主導権争いや対立、そして参議院選挙を前にしての政党間の思惑などがあるのでしょう。だが、そうした労組間の議論ややりとりなどを聞くと、市民運動には到底理解できないような低次元での確執・対立もあるようです。
これまで、運輸関連20労組は、宗教団体などと組んで、有事法制反対の大きな共同行動を組み立て、3万、6万という参加者による行動を行なってきました。多くの市民運動も昨年半ばまではこの行動に参加してきました。
今回、共産党系団体が、芝公園での独自集会に踏み切ったのは、近づく参院選挙への計算もあったでしょうが、同時に、これまで20労組の呼びかける行動にくりかえし大動員をして参加してきたし、20労組側もその動員に大きく依存してきたのに、共闘の場では全労連の姿が常に薄められ、あるいは無視されてきたことへの反発もあったでしょう。
加藤哲郎さんは、そのホームページで、「原水禁運動以来、長く続く平和運動の悲しい現実」「私はもちろん日比谷に行きますが、ただそのことで互いがいがみあい、非難の応酬になったりしないことを願います」と書いています。「非難の応酬」にはならないでしょうが、プラスよりマイナスの影響のほうが大きいことは確かでしょう。(加藤さんのURLは、http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Homef.html )
国会での関連7法案審議を前に、首都圏ではこれまであったそういう構造までもが崩壊したというべきなのでしょうか。今後もさまざまな折衝は行なわれるでしょうし、どんな展開になるのか注目すべきですが、少なくとも首都圏での3・20の状況は、前進として歓迎できるものではないと思います。表面からはなかなか理解しがたい政党間や労組連合間のこのような事態に対しては、市民運動の側からの率直な批判や提言も必要でしょう。
これまで「平和フォーラム」参加の労組グループと共産党系全労連との仲立ちに努力してきた運輸関係20労組ですが、その有事法制反対の根拠は、反戦というよりは「命と安全」を守るというところにあるようです。業務従事命令によって生命の危険にさらされる労働者の主張としてそれは納得できるものの、そのかぎりでは、政府の対北朝鮮強硬政策に正面から対決できません。ブッシュも悪いが、北朝鮮もひどすぎるし危険だ、というレベルだと、自衛隊はイラクから撤兵して北朝鮮に備えよという方向への歯止めがなくなります。
これは、労働運動に限らず、反戦市民運動にとっても指摘できることです。イラクは危険だ、国内テロの危険性も増えている、だから撤兵せよという、いわば被害者意識に訴えようとする運動だと、反テロ・キャンペーンに足をすくわれ、それに組み込まれてしまう危険性もあります。60年代後半以降の反戦運動が獲得してきた思想――歴史認識を、再確認し、今の事態の中でどうそれを生かすかを検討する必要があると思います。
(2)『論座』3月号の小論「デモとパレードとピースウォーク」への反響について。
朝日新聞社発行の月刊誌『論座』3月号に、私は「デモとパレードとピースウォーク」という小論を載せました。これは、このホームページの「最近文献」欄に全文を転載してあります。これに対する反響が出てきました。反戦運動についての議論が少ない、ということも、この小論での主張のひとつでしたから、反響が出て、議論が起こることは大歓迎なのですが、いまのところは、どうも議論らしい議論にはなっていないようで、残念です。とくに『労働情報 』3月15日号に出た WORLD PEACE NOW の中心的メンバー3人による座談会は、私への揶揄に近い表現もあって、残念に思っています。これについて、まだ発行されていないのですが、私の参加する「市民の意見30の会・東京」の『ニュース』83号(4月1日号)にごく短い意見を書きました。それを、このホームページの「論争・批判 」欄に載せましたので、関心のおありの方はご覧ください。