「昭和の日」参議院可決についての抗議声明
5月12日、参議院本会議において、4月29日の「みどりの日」を、来年から「昭和の日」と改める国民祝日法改定案が、自民、公明、保守の与党3党などの賛成多数で可決、衆院に送付された。
「昭和の日」制定を求める世論が強くあるわけでもなく、わずか4時間足らずの実質審議時間で通過されたものである、なぜ「みどりの日」を「昭和の日」に変える必要があるのか。また、10年以上定着し、各地で行事も行なわれている「みどりの日」はどうして5月4日なのか。なぜ今、急ぐのか。これらに何らの答もないまま、多数与党を背景に採決が強行されたものである。
この法案は、「昭和の日」の趣旨を「激動の日々を経て復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」としている。しかし、「昭和」という時代をどう評価するかは、意見の分かれる問題である。4月29日は、もともとが昭和天皇の誕生日である。少なくとも昭和の最初の20年は戦争の時代であり、未曽有の犠牲者を出したアジア・太平洋の人々からも、また沖縄戦や広島・長崎への原爆投下をはじめとした被害者からも、昭和天皇の戦争責任がいまなお問われている。法案の提案者はこの天皇の戦争責任についての質問に、何も答えなかった。これでは、「国民がこぞって祝う」という祝日法の趣旨にあったものとはとうていなりえない。
私たちは、この改定案に対して反対の意思を改めて表明するとともに、衆議院が参議院のような拙速な審議ではなく、「天皇の戦争責任」を含め、徹底的な審議を行なうことを強く求めるものである。
2000年5月14日
フォーラム平和・人権・環境
代表 江橋 崇
森首相の「日本は天皇中心の神の国」発言に抗議する
5月15日、森喜朗首相は「日本は天皇中心の神の国」であると発言した。神道政治連盟国会議員懇談会の結成30周年記念祝賀会であいさつし、「昭和の日の制定や先帝陛下60年の即位とか、政府側が若干及び腰になるようなことを前面に出して、日本の国はまさに天皇を中心とする神の国であるということを国民にしっかりと承知していただくという思いで活動をしてきた」と述べたものである。
また、森首相は、「宗教は自分の心に宿る文化だ。それを大事にしようと、もっと教育の現場ではなぜ言えないのだろうか。神も仏も大事にしようと学校でも社会でも家庭でも言うことが、日本の国の精神論から言えば一番大事なことなのではないか」とも発言した。
これらの森首相の発言は、主権在民、信教の自由、政教分離を定めた日本国憲法を正面から否定するものである。憲法第99条の国務大臣などの公務員の憲法尊重擁護義務に反するものであり、ただちに発言を全面撤回、謝罪をすべき問題である。
しかし、森首相は、野党はもとより、閣内、与党内からすら批判があるにもかかわらず、「日本の悠久の歴史と伝統文化という意味」と称して、発言をごまかそうとしている。
「神国日本」という考え方は、「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」とした大日本帝国憲法の精神そのものであり、これがアジア・太平洋の人々をはじめとした他民族に対する差別・抑圧をもたらし、台湾や朝鮮半島の植民地化、さらには各地に侵略戦争をもたらし、日本のなかでも人権抑圧をもたらしてきたことは周知の事実である。
いずれにせよ、敗戦後、日本が平和主義、民主主義、主権在民の国家として再生することに務めてきた内政、外交、憲法の基本にかかわる重大事項である。国の行政の長である首相が、このもっとも基本的なことがらを理解せずに、発言を「悠久」とか「伝統」とかどこにも通用しない言葉でごまかしつづけることは許されない。ましてや、教育改革に携わることなど、けっして許されないことである。
私たち平和フォーラムは、上記の通り、森首相が首相としての資格に欠ける以上、一刻も早く退陣することを求めるものである。
2000年5月16日
フォーラム平和・人権・環境
代表 江橋 崇
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