ポール・スポング博士、来日


カナダ・ハンソン島のオルカラボで野生のオルカの研究をしているポール・スポング博士が、17日、来日されました。今回捕獲され水族館にバラバラに売られていった5頭のオルカの健康を気遣って、また水族館や政府関係者との対話を求めて、自ら来られたものです。




太地町立くじらの博物館を視察(18/03/97)

ポール博士は和歌山県へ飛び、さっそく太地にあるくじらの博物館を訪れました。
この雌のオルカは生け簀の仕切りに頭をもたせかけ、約1時間ほとんど動かなかったということですが、このように1時間もの長い時間オルカが下半身が沈んだまま浮いている状態は、野生では見られないそうです。

また、残念ながら水族館関係者との話し合いを持つことはできませんでした。

アドベンチャーワールドを視察(19/03/97)

搬入されたオルカの状態を視察するための訪問でしたが、プールには以前から飼育されている3頭(ゴロー・ラン・ルカ)の姿しかありませんでした。
もちろん水族館関係者と話すこともできませんでした。
しかし、朝日新聞和歌山版に写真付きでポール博士のコメントが掲載されました。
また関西のテレビ局3社とラジオ局などのインタビューでは、「オルカを解放するという話以前に彼らの健康状態を知りたい。捕獲から50日以上経っており、うまく餌を食べていないとすれば飢餓状態にある。また妊娠している雌がいるという噂があったが、事実であったとすれば親子共に死亡する可能性が高い」ことなどをお話されました。

来日記念シンポジウム開催(20/03/97)

野生のオルカの生態についてのお話のあと、今回の捕獲の経過や問題点、水族館視察の報告などがありました。
搬入されたオルカを見せてもらえず、関係者との話し合いも持てなかったため、博士は何よりもオルカたちの健康状態を心配しています。
オルカなどの鯨類は餌となる魚から水分を取るため、魚を食べていないとすると脱水状態をおこす可能性があり、またすでに捕獲から6週間たっていることから飢餓状態にある可能性もあると述べました。
また日本近海のオルカに関する研究はほとんどされておらず十分なデータはないが、太地で捕獲された個体はコールやサドルパッチから「トランジェント(移動性のオルカ)」ではないかと思われ、個体数は非常に少ないものである可能性が高く、それゆえに今回の5頭の捕獲が与えるダメージは大きいのではないかと述べました。

「問題はこの捕獲されたオルカたちが、いつまで生き延びることができるかということであり、生きている限り彼らを海へ返すことが出来る可能性は十分にある」「私はこの5頭が自由になると信じている」「世界中の人々がこの問題に関心を持ち心配しているということを忘れないで欲しい」というコメントが印象的でした。



伊豆三津シーパラダイスを視察(21/03/97)

館長不在とのことで話し合いを持つことはできませんでした。またごくわずかな観察時間でしたが、くじらの博物館のオルカよりは元気そうだということです。
このメスは捕獲時に聞かれたような鳴き声を発しており、これを分析すればこのポッドに関する情報を得ることが出来るかもしれないというお話でした。
昨日のシンポジウムでもお話があったように、捕獲されたポッドはコールやサドルパッチからトランジェント(移動性のオルカ)である可能性が高く、カムチャッカ半島から中国大陸周辺に回遊する個体数は非常に少ないと考えられることから、今回の5頭という数字は大きなダメージを与えるかもしれないという博士の見解に、マスメディアも大きな関心を寄せています。
どちらかというと感情的なものと思われがちな抗議行動が、博士の来日によってもっと重みのあるものになったような気がします。

今のような十分に餌を食べない状態でオルカが生き延びることができるのは、最長で80日くらいであると博士は述べています。
あと1ヶ月、私達がぼやぼやしていたらあっという間に過ぎてしまいます。
広く人々に訴えるのと平行して、自分自身の意見も改めて水族館や政府に伝えましょう。

ポール・スポング博士帰国(23/03/97)

博士は短期間でハードスケジュールをこなして、多くの人々にオルカ解放を訴え、また私たちに知識と力を与えてくれました。
精力的に活動してくださった博士に心から感謝したいと思います。
今後彼の来日を無駄にしないよう私たちは改めて団結し、オルカ解放を訴えていきましょう。

前回の報告で、伊豆三津シーパラダイスに搬入されたメスのオルカは太地のオルカと比べて元気そうだというお話でしたが、それはあくまでも外見上のことであって、博士の観察によると、このメスは噴気孔の後ろあたりがへこみ始めており、これは脂肪が消費され始めている兆候だそうです。
野生下では体調が悪化し始めた時に見られるということで、今後が非常に心配されています。
今のような餌を十分に食べない状態で体力が持つ期間には限界があり、あと1ヶ月あまりであろうと博士は述べています。
悲劇が起こらないように、一人一人ができる限りのことをしましょう。
改めて何を求めどうして欲しいのかという個人の意見を、FAXや手紙、電話等で伝えてください。

4月発売の雑誌「Diver」にポール博士とオルカ捕獲に関する記事が掲載されます。



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