調布原水禁より悲しいお知らせ
調布市議会、9月議会で「原発推進」意見書を採択
9月27日、調布市議会は「原発推進」決議を行いました。東京電力をはじめとする電力業界、経済産業省など推進側の度重なる不正が明らかになり、原子力に対する国民の不安と怒りが高まる中で、許されることではないと思います。
この決議は、国に対する意見書として提出された「電力会社による原子力発電所の不適切な取り扱いへの厳正な措置を求める意見書」というものです。東京電力などによる原発のトラブル・損傷の隠ぺいを「不適切な取り扱い」と矮小化し、「国民の信頼を大きく揺るがしたことは遺憾」といいながら、一般論に終始して具体的な解決方法については一切触れていません。そればかりか、「我が国が独自に続けてきた新品同様主義が不適切な取り扱いの背景にあるという指摘もある」として、今回の不正の原因が過度の点検にあると表明し、原発の「維持基準」の導入を急ぐべきだとしています。これは原発の検査基準を電力会社のコストダウンなどの都合に合わせて緩和しようと導入が検討されている、安全性を無視する行為です。その法制化が「法令上における再発防止策」であるとするこの意見書はたいへん悪質であるといわざるをえません。
それだけではありません。この意見書は最後に「地球温暖化を阻止して豊かな生活を享受していくためにも、原子力エネルギーの安全かつ有効な利用は重要課題となっており」と、堂々と原発推進の立場を表明しています。原発が地球温暖化防止の役に立つなどという議論は、日本政府だけが主張している論理で、世界の笑い者になっているといっても過言ではありません。100歩ゆずって、発電時にお湯を沸かす工程で原発は他の発電方法と違って二酸化炭素を出さないとしても、次の世代に対して「二酸化炭素をとるのか、放射能をとるのか」という最悪の選択を迫るものです。
今回の9月議会では、この意見書のほか、調布原水禁が提案して社民・ネット・民主の会から提出した意見書がありました。具体的に原発のトラブル隠しの防止を訴えて、プルサーマルと六ヶ所村の核再処理工場の稼動の凍結を訴えるものです。上記の「原発推進決議」が、17対13で採択され、私たちの意見書案が同じ票数で否決されました。なぜもっと議論を尽くしてこのように最悪な内容のものが採択されることを阻止できなかったのか、残念でなりません。この意見書採択に賛成した議員・会派に対して反対意見の声明と、なぜこのような内容に賛同したのかを質す公開質問状を送りたいと思います。以下の反対意見声明にご賛同いただける団体・個人の方は、ぜひご署名ください。この採択された意見書決議の全文、私たちが提出して否決された決議の全文、賛成した会派の名前、そして「維持基準」の導入に反対する原子力資料情報室の反対声明、三鷹市で採択された決議を以下に載せています。このホームページのメッセージ・フォームを利用していただいて、みなさまのご意見をぜひお寄せください。
調布市議会・「原発推進」意見書採択への私たちの意見と決意
「電力会社による原子力発電所の不適切な取り扱いへの厳正な措置を求める意見書」に賛成された調布市議会議員
各位
私たちは9月27日に調布市議会において採択された上記の意見書は、原発の推進および、安全基準の緩和を求めるという、世論に逆行する内容だと思います。国民の約9割が原発への不安を感じている中(朝日新聞10/8世論調査)で、このような意見書が十分な審議もなく採択されたことが、残念でなりません。私たちはこの意見書への意見表明を行うとともに、今後このような誤った内容の意見書が採択されることがないように行動していくことを表明します。
以下に、この意見書の問題点を3点にまとめて指摘させていただきます。
(問題点1)
この意見書は、東京電力など各電力会社による原子炉の損傷の隠ぺい、虚偽報告、データを改ざんして国民を欺くという悪質な不正を、「不適切な取り扱い」と矮小化しています。これは被曝者が出る事故が起きているにもかかわらず、「事故ではなく事象である」などとして事実を隠してきた東京電力の態度と同じで、地方自治体の意見書としてはまったくおかしなことです。
(問題点2)
この意見書は「維持基準」の早期導入を求めていますが、これは電力会社のコストダウンなどの都合に合わせて原発の点検・検査の緩和を行おうとするものです。東京電力の不正を20年も見抜くことができなかった現在の検査体制や、推進側と規制・許認可を行う側が同じ省庁にあるなどの安全管理上のおかしな体制をそのままにして、電力会社側にだけ都合のいい「維持基準」を導入することは許されません。
(問題点3)
この意見書は「地球温暖化を阻止し豊かな生活を享受していくためにも、原子力エネルギーの安全かつ有効な利用は重要課題」であると主張しています。原発が地球温暖化防止の役に立つなどという議論は、世界でも日本政府だけが主張しているもので、世界の笑い者になっているといっても過言ではありません。実際にも日本で原発が稼動を始めて電力シェアの30%程度を占めたにもかかわらず、日本の二酸化炭素排出量は減ることはありませんでした。むしろエネルギー消費を煽ることになって、排出量は増えるばかりです。100歩ゆずって、原発は火力発電とちがって熱で蒸気を発生させる工程では二酸化炭素を出さないとしても、その代わりに膨大な放射性廃棄物を出すのが他の発電とは決定的に違う点であり、このことは次の世代に対して、二酸化炭素か、放射能か、どちらを我慢するのか、という最悪の選択を迫るものです。何万年もの長い間、これらの放射能の管理を後の世代に押し付けることは、許されない行為です。
今回の不正が発覚してから、原発立地自治体はもちろん、全国の自治体で原子力利用そのものに歯止めをかけたり警鐘を鳴らしたりする内容の意見書・決議が続々と採択されています。反対意見が多いプルトニウム利用のためのプルサーマル計画が進められようとしている福島・新潟両県では、県でも、地元自治体でも凍結や白紙撤回の決議がなされ、日本の原子力利用計画はまったく不透明となっています。三鷹市議会では9月26日に「国民の、とりわけ福島・新潟県民の原子力安全対策に対する信頼が取り戻されるまでの間、全原子炉の運転を停止するよう求める」という決議が全会一致で可決されています。
私たちは、この意見書は原子力災害から住民の安全を守るべき自治体の責任や使命から大きく逸脱していると思います。企業による不正が明るみに出た場合、食品会社などであれば商品を買わないことで直接市民が制裁を加えることができますが、東京電力などライフラインに関わる独占企業である場合は、市民が不買によって意思表明をすることはむずかしいといわざるを得ません。だからこそ、行政や議会はこのような不正に対して、市民の意見を代弁する態度で臨まなければならないと思います。しかしこの意見書は東京電力の社内調査報告書の内容とほとんど同じであり、国民感情や市民の意見から大きくかけ離れたものといわざるを得ません。
私たちは、この意見書の採択は、調布市議会の長い歴史にたいへん大きな汚点を残したと考えています。世界は脱原発に向かい、日本の世論も原発への不安を訴える声が多数を形成しており、実際の原発の運転が欺瞞に満ちていたことが判明したというのに、残念でなりません。
すでに調布市議会での正式な手続き経て採択された意見書ではありますが、たいへん重大な問題を含んでいるため、私たちは市民への徹底した広報を行うとともに、このような軽率で見識に欠ける意見書に賛成票を投じた議員のみなさんに私たちの意見をお伝えしたいと考えました。そして公開質問状を差し上げて、これからの議論の礎を作っていきたいと思います。私たちはこれからも脱原発社会の実現と、原子力文明からの決別をめざして活動していく決意です。
10月21日
原水爆禁止調布市民会議
原水爆禁止日本国民会議
三多摩平和運動センター
稲城・狛江・府中・調布平和運動センター
多摩女性学研究会
非営利特定活動法人原子力資料情報室
(個人)
藤川泰志・石黒紀子・落合大海・内田冨美子・
久保真一・西野みのり・今西千晶・高橋千代司・
川上美砂・大脇正昭・切明 浩
この意見書に賛成した会派は以下のとおりです
グローバル調布21(1人)
自由民主党(9人)
公明党(5人)
改革市民の会(1人)
この意見表明の連絡先
原水爆禁止調布市民会議
調布市布田2-2-6みさと屋内・TEL 0424-87-1714 FAX 0424087-1742