★否決された私たちの意見書
原子力発電所における不正についての意見書(案)
8月29日、経済産業省原子力安全・保安院は東京電力の原発における「原子炉損傷の隠ぺい、報告データの捏造」を発表した。長年にわたって原発の点検作業においてトラブルを隠し、法律に定められた報告をせず、違法な運転を続けてきたことが明らかになった。東京電力は日本を代表する企業として重い社会的責任を負わなければならない。また今回の違法行為は内部告発によって明るみに出たが、原子力安全・保安院(当時は通商産業省)は平成12年7月からこの不正を2年も調査のためと称して明らかにしなかった。原子炉に損傷を抱えた原発をこの間も稼働させ続けた事実は許されることではない。このことは政府の原子力産業へのチェック機能がその役割を果たしていないことを明らかにした。
経済産業省および東京電力は、柏崎刈羽原発と福島原発において使用済みウラン燃料から取り出したプルトニウムをウランに混合したMOX燃料を導入するプルサーマル計画を推進している。しかし原子炉の制御が困難になる、燃料の製造に危険な核燃料再処理工場が必要、またこのMOX燃料の使用済み燃料や廃棄物がウラン燃料と比べて格段に危険なものとなる、などの理由で反対が強く、地元自治体での住民投票でも圧倒的な反対の結果が出ている。今回の不正事件でこの意見は強まり、自治体としてこの計画の事前了解を撤回、または議会が反対決議をする事態となっている。立地自治体の協力がなければ、プルサーマル計画だけでなく、原発の運転そのものが困難になるだろう。
青森県六ヶ所村には核燃料再処理工場が建設されている。原発の使用済みウラン燃料からプルトニウムを取り出す施設であるが、そのプルトニウムを使用するはずのプルサーマル計画は今回の事件で先行きが不透明となった。プルトニウムを直接燃料とするはずの高速増殖もんじゅも平成7年の事故以来動いていない。この再処理工場では来年6月からウランを使った稼働試験が予定されているが、これを行えば100キロメートルあるといわれる配管をはじめ巨大な施設が放射能まみれとなり、後戻りができないことになる。プルトニウム利用の先行きがまったく不透明な現状では、ここで踏み止どまって、プルトニウム利用計画について国民の理解が真に得られるのかどうか再検討するべきである。
調布市議会は地方自治法第99条の規定にもとづき、経済産業省に対して以下の事項を意見書として提出するものである。
1、経済産業省は、東京電力をはじめ各電力会社に対して原発の保安体制を徹底させ、このような隠ぺい、データの改ざんを許さないチェック機能を確立すべきである。
1、経済産業省は、原発への国民の不安がかつてないほど高まったことを真剣に受け止め、現状のウラン燃料による運転以上に国民の不安が高いプルサーマル計画の導入は一時凍結して、国民の理解が得られるのかどうか検討すべきである。
1、高速増殖炉もんじゅが動かず、プルサーマル計画が進まない現状では、プルトニウムの使用目的が明確でなく、核燃料再処理工場の必要性は不透明である。余剰プルトニウムを日本が保持することは国際的な核不拡散の観点からも許されない。青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場の稼働およびウラン注入試験は、政府における原子力政策が再構 築されるまで行うべきではない。
以上決議する。
平成14年9月○○日 調布市議会