自治労音協通信555

自治労音協通信
　5面　　NO55号／2004.12.19発行

道楽道　連載その　８　タイ民主化闘争が生んだ

「ＣＡＲＡＶＡＮ、カラワン（終わりのない旅）」

白石　孝（荒川区職労書記長）

１９７０年代、タイでは軍事独裁政権に反対し、民主化を求める国民的な運動が繰り広げられた。そこに多くの若者が参加し、運動の中心を担ったことは、欧米や日本と同様である。「カラワン」を結成した４人の若者もその渦中にいた。大学や専門学校で画家や作家あるいは詩人として学んでいた若者が、楽器を手に自分たちの主張や思いを集会などで表現したことがきっかけで１９７４年に結成したのが、英語のＣＡＲＡＶＡＮ、タイ語のカラワン（終わりのない旅）である。
しかし、最初の民主化はわずか３年で頓挫、１９７６年、再びクーデターによって軍部がよみがえり、さらには右翼や「民兵」が登場し、民主化運動を担っていた若者たちにリンチを加え、数百人が虐殺された。身の危険を感じた若者たちは、タイ南部・マレー半島や北部、ラオスさらには中国にまで逃げ、タイ共産党と合流していった。このことを「森に逃げる」と表現していた。「森」の中で、カラワンのメンバーは数年を過ごしたが、やがて再び民主化が実現、タイ共産党も民衆からの支持を急速に失い、順次バンコクに戻っていった。
１９８２年、最後の帰還を果たした中心メンバーの「スラチャイ・ジャンティマトーン」を軸に、カラワンは再結成され、再び民衆から熱狂的に支持される音楽集団としてタイの音楽シーンをリードしていった。カラワンの唄は、民主化や平和から始まり、さらには高度成長による一極集中や農山村の破壊の弊害、すなわちスラムの貧困者や貧農を表現し、さらには環境や自然を守る唄へと範囲を広げていった。1980年代には数々の名曲がヒットし、特に遠く離れた地からタイの故郷を思う「望郷＝満月」は国民的な歌になり、いまや　タイ王家の王女ですら吹き込んだカセットを販売するほどである。
そのカラワンも１９８９年「自分たちの役割は終わった」として解散、４人は別々の道を歩むことになった。タイの音楽シーンも世界の多くの若者がそうであるように、ロックやポップス主流に変化、カラワンたち「生きるための歌＝ソングフォーライフ」は、出稼ぎ者や貧困者、インテリ学生など限られたファンへと縮小していった。
しかし、カラワンは解散以降5年に一度再結集し、タイと日本で周年コンサートを開催している。２０周年の１９９４年１０月、お茶の水にあった日仏会館ホール最後の日（翌日から閉館）を飾るコンサートを４００人の聴衆を集めて開催。１９９９年には、練馬区江古田のライブハウス「ＢＵＤＤＹ」で、そして今年、新大久保の労音大久保会館「ＲＳﾔアートコート」で３０周年のコンサートを開催した。
３０年の時を刻んだ今、改めてカラワンの音楽をじっくり聴いてみた。新大久保でのコンサートもそうであったが、彼らのメロディー、歌詞、演奏は決して古びていない。それどころか、まさに今を表現する革新性、先駆性を満載している。ただ違っているのは年輪を重ね、表出されるエネルギーが減少していることくらいか。しかし、淡々と表現するステージからは、重みと深さがかもし出されていた。
社会運動の第一線に参画し、民衆の生活や労働、さらには戦争と平和を表現し、なおかつ抜群の知名度を誇る「カラワン」は、アジアでも真のスーパースターだと思う。商業主義やマスメディアに迎合し、そのみこしに乗って「売り込む」こと自体を一概に否定はしない。そういったメジャー展開をしているミュージシャンでも、社会や政治に関してのきちんとした姿勢を表現する人たちも結構いる。しかし、すべてにおいて真っ向から表現し、それでいてスーパースターであるカラワンの存在は稀有だと思う。
日本は空前の韓国ブームである。タイもそこまではいかないが、この数年、長期にわたって高い人気を誇り、成田・バンコク便はほとんどが満席となっている。エステやグルメに買い物ツアーでバンコクを訪れる人たちの数は相当なものだ。東京でも年１～２回、代々木公園で数万人を集めて「タイフード・フェスティバル」が盛大に開催されている。だが、タイのスラムや高度成長の犠牲となっている農漁民や山岳少数民族に思いを馳せる日本人はごくわずかでしかない。
マレー半島・南部４県での国軍とイスラム教徒との戦争にも関心が向かない。韓国の「ヨン様」ブーム然り。折りしも来日している「元従軍慰安婦」はマスコミに取り上げられることなく、公務員労組が団結権すら奪われていることを大半の日本人どころか、私たち公務員ですら多くが知らない。タイでは知らない人はいない、というカラワンに関心を持つ日本人は圧倒的少数派でしかない。
わずか２００人のホールを埋めるだけでも半年間のプレッシャーと相当な努力を要した３０周年コンサートは、こういった背景で開催に至った。
当日のゲストは、日本のジムに所属している在日タイ人のプロボクシング世界チャンピオン「イーグル京和」だった。彼は、日本のパラリンピック選手に資金を提供し、中古の消防車をタイに贈り、貧しい子どもたちを支援している。「日本の皆さんにもっと本当のタイのことを知って欲しい。障がい者のことに関心を持って欲しい」とあいさつした。貧しい境遇から世界チャンピオンになった彼もカラワンのファンであった。
カラワンの歌詞を少し紹介しよう。

【失業者】貧乏人に生まれ／苦しい生活を耐えてきた／これまでずっと／失業状態が続き苦しい毎日／朝から晩まで／心うつろで顔も真っ黒け／死ぬ思いで仕事をしても／働き口はありゃしない（後略）
【人と水牛】人は耕す／人は水牛と耕し続けてきた／人と水牛の絆は／長い間はぐくまれ／ともに一生懸命はたらき／よろこびとしあわせを培ってきた（後略）
【平和（サンティパープ）】（前略）国には歴史があり／それは人々が築いてきたもの／社会に階層を作り／貴賎貧富や皮膚の色による差別を生み出した／でも流れる血の色は赤ひと色／これからもずっと／こころを合わせて／一緒に平和の歌を歌い交わそう／おお平和よ／サンティパープ、サンティパープ

３０周年を記念した日本ツアーに合わせ、日本語訳のカラワン解説本『カラワン・ソングブック』（６３０円）が作られた。ＣＤも通信販売で購入できる。●問い合わせはビレッジプレス０６（６３３８）８３５５

第９回ＪＰＵ音楽学校に初参加／日音協近畿支部合宿も合同開催　

西藤安彦（近畿ブロック幹事）

　２００４年１１月５日（金）から７日（日）にかけて、京都府城陽市「友愛の丘」で「第３回ＪＰＵ全国音楽学校」が開催称変更したことに伴い、「全逓音楽協議会」も「ＪＰＵ音楽協議会」に名称変更されたそうです。今回は、日音協近畿支部合宿も兼ねるということだったので、自治労音協滋賀支部結成の挨拶も兼ねて参加して来ました。
講座内容としては、「歌」「作詞作曲」「楽器」の３コース。どれにしようか迷ったのですが、せっかくの合宿なので、みんなで演奏できる「楽器」コースに参加しました。
　メンバーは、全逓のフュージョンバンド「アフターファイブ」のメンバーが中心で、講座としては、課題曲に伴奏をつける作業をみんなで進めて行きました。
　私も、自治労では「滋賀の電気ウナギ」の異名を取って（？）エレキを弾きまくっておりますが、もう、みなさん演奏がめちゃめちゃ上手で、私なんか足元にも及びませんでした。
　夜の交流会は、みんなでビールや焼酎を飲みながらワイワイと会話を楽しんでいると、いつのまにかビートルズメドレーが始まったりもしましたが、私もしっかり「ハイカイモモちゃん」を披露して来ました。
宴会の盛り上がりは、自治労の方が上ですね。深夜までとことん飲む事も無く、みなさん、次の日のことを考えてかそこそこで切り上げ、就寝されました。若干１名近畿の「Ｓ司さん」というツワモノもおられますが、やはり、自治労の極悪トリオには敵いません。まあ、宴会の盛り上がりも大事ですが、我々は音楽の協議会ですので、音楽でがんばらないとネ！
　合宿最終日には、それぞれの講座の成果発表をし、閉校となりました。
　ちなみに、今まで日音協近畿支部は、全逓だけで運営されて来ましたが、これをきっかけに、滋賀を中心とした自治労も参加して行くこととなりましたので、次回のはた音ではともに日音協近畿支部として発表することを併せて報告させていただきます。

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