『亜空間通信』135号(2001/12/29)

ソマリア侵攻企む破落戸アメリカの動機に「石油」疑わぬ記者修行の悲しい性

送信日時 :2001年 12月 29日 土曜日 8:30 AM

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『亜空間通信』135号(2001/12/29)
【ソマリア侵攻企む破落戸アメリカの動機に「石油」疑わぬ記者修行の悲しい性】

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転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 破落戸国家アメリカが、またぞろソマリア侵攻を企んでいるとの風評しきりの折から、以下の題名の記事が転送されてきた。

[ 田中宇:ソマリアのやらせ戦争 ]
田中宇の国際ニュース解説
2001年12月24日 http://tanakanews.com/
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★ソマリアの和平を壊す米軍の「戦場探し」
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 以上の題名紹介のみで引用終わり。

 田中宇さんは若手の著名人で、テレビ朝日のスーパーモーニングにも出ている。「タリバン通」とか「アフガン通」とかである。共同通信出身だそうだ。

 ところが、というよりも、それだからこそ、かなり長い記事なのに「石油」の「セ」の字も出てこない。私は最早、まるで驚きもしない。真相追及マニアのような私とは違って、新聞記者とか通信社記者とかには職業上の癖が付く。この手の手軽な学生論文並みの記事を、手っ取り早く器用にまとめる修行を積んでいるから、多くの大手メディアがこれまでに間違って伝えてきたことを、必ずと言って差し支えない程、踏襲してしまうのである。悲しい性である。

 ついでのことに、同じ共同通信出身の著名人についても、同様の問題点を指摘せざるを得ない。社長にもなった原寿雄さんは『放送レポート』で、私とは高校の同窓生の仲の坂井定雄は『しんぶん赤旗』で、ソ連のアフガン侵攻の6ヶ月前にアメリカ がCIA工作を開始していたことを知らずに、疑わずに、従来通り、またはアメリカの宣伝の通りに記していた。

 なお、この件は、本通信、2001.10.17:47号【ムジャヒディン援助はソ連の侵攻以前のCIA謀略と大統領補佐官が認めてた】で報じたが、耳情報によると、『軍縮資料』の最新号にも同様の記事が載ったそうである。

 話をソマリアに戻すと、私は、今回の事件に関連しても、『亜空間通信』53号(2001/10/21)【アフガン攻撃の狙いと結末の参考にソマリアでは失敗した米石油戦略を見直す】を送り、そこで旧稿の一部を再録した。

 以下、それからさらに抜粋する。

第10章/アメリカのソマリア出兵の狙いは何か

希望回復作戦は砂漠の嵐作戦の継続

 ソマリアへの米軍出動の際、日本の大手メディアはブッシュ前米大統領の意図に疑いをさしはさむことなく、実際にはまったく逆に、アメリカの大量宣伝攻勢に追随してしまった。

[中略]

 だが、いまだに日本の大手メディアでは、アメリカの「人道的動機」という口実を枕言葉よろしく認めたままで、現地の状況悪化を報道している。結局、意図は良かったが「やり方」が上手でなかったと擁護していることになる。混乱の基本的原因は、いかにもすべて現地の無政府状態のみにあるかのように印象づける報道振りなのだ。

なぜ「石油は?」と疑わないのか

 私は最初からアメリカの意図を疑った。湾岸戦争の継続に違いないと思った。

 ソマリアは地理的にも戦略的要衝だが、それだけではない。アメリカは、内戦以前にソマリアに入りこんでいた。元石油採掘業者のブッシュが、大統領選挙で大敗北を喫しながら任期切れ間際に出動命令を下すという、実に際どい勝負をしたのだ。きっと石油があるに違いないとにらんだ。ブッシュの背後には、常にテキサスを本拠とする石油マフィアが控えているのだ。

 ソマリアはアラビア半島の対岸にある。地図を一見すれば分るように、大陸分離時代以前にはアラビア半島とつながっていたのだから、地層も一致しているはずだ。アラビア半島周辺にあれだけの石油の宝庫があって、ソマリアにないはずがない。そう思ってすぐに手元の平凡社版『世界百科事典』を見たのだが、「ソマリア」の項には石油のセの字もなかった。それでも私の確信は揺るがなかった。

「アメリカ」「ブッシュ」「出兵」「地理的位置」、これだけのキーワードがそろっていて、石油がないはずはないのだ。 だがその時期の私には、ソマリアの石油を調べる時間の余裕がなかった。翌年早々の一九九三年一月中旬にはカンプチア・ヴェトナム取材旅行を予定していた。個人の仕事としてはカンプチアPKO問題だけでも手一杯である。気になりながらも、手が出せない状態だったのだが、労せずして情報は向こうの方から飛びこんできた。というのは私は湾岸戦争以来、経済専門紙誌の記事を見張っていた。特に重視していたのは、石油などのエネルギー関係の開発プロジェクトであった。

 アメリカの突然のソマリア出兵の翌年、一九九三年元旦の日刊工業新聞のエネルギー欄には、「今年はどうなる石油開発プロ」という囲み記事が載った。三段の大見出しは「地域紛争や国際緊張/探鉱事業、一段と厳しく」である。世界各地の「石油開発プロ」の状況を追っているのだが、記事に添えられていた絵柄はただ一つ、「日鉱共石のソマリア鉱区」の図解地図だけだった。内容から見ても、ソマリア出兵を意識した記事だった。

「日鉱共石(旧日本鉱業)がソマリアの北部陸上鉱区で行っていた探鉱作業は九〇年七月より同国の政情不安が深まったことから中断したままだ。九二年十二月に入り、米国などの“多国籍軍”が“人道的理由”から同国の首都モガディシオやその周辺への展開を開始しているが、果たして今年、正常化が図られるのかどうか。同社は八八年にソマリアでの石油探鉱、開発を行うためのプロジェクト会社、日鉱ソマリア開発(権益比率一五%)を設立している。オペレーターは米国コノコ社(同五〇%)」

 早速、日鉱共石本社に電話すると、現地には行っておらず、日本国内でコノコ社のエイジェントと契約したのだという。無精な話だが、石油が噴き出せば出資しただけのシェアが得られるというのが、この業界の商売のやり方らしい。続いて外務省に電話すると、担当の部署はこの件を知っており、日本企業としては唯一の例だという。ともかく、石油業界と外務省は事実を知っていたのだ。

 ところが、その後に出た『エコノミスト』(毎日新聞社発行93・1・19)を見ると、表紙に「特集・ソマリアが日本に問いかけているもの」とある。早速ページをめくったが、これには大変失望した。二人の大学教授による「ソマリアとはどういう国か」という論文と、「ソマリアは国連改革の先例となる」という談話記事が載っていたが、その双方ともに、基本的にはアメリカの出兵に希望を託していた。しかも決定的なことには、双方ともに、石油のセの字も出てこなかった。

アラブのジャーナリストが喝破

 ところが、世の中は面白いもので、なんと、右翼紙の名をほしいままにする読売新聞に、一番胸のすくような文章が載ったのである。ただし、読売新聞記者の取材によるものではなく、筆者は日本人でさえなかった。

 読売新聞の一、二面にわたって時折掲載される大型コラム「地球を読む」に、エジプトのジャーナリスト、モハメド・H・ヘイカルの寄稿による「不透明な米の行動/対ソマリア/七つの座標から分析する」(3・1・1)が載った。

 ヘイカルはアラブ世界を代表する最も著名なジャーナリストである。読売新聞の著者紹介には一九二三年生れとあるから、執筆の時点で七〇歳またはその直前になる。一九五四年から一九七四年までの二〇年間、エジプトの有力紙アル・アハラムの主筆兼編集主幹を勤め、その間の一九七〇年にはナセル政権で国民指導相に就任した。

 そのヘイカルが「七つの座標から分析」した上で、歴史的事実を紹介し、アメリカの意図への疑問を投げかけ、最後にほのめかす。「あるいは、現在米国系企業四社がソマリアで石油の試掘に当たっていることからみて、米国の決定には石油が何らかの役割を果たしたのだろうか」

 さらに三か月後、六月二〇日発行の岩波ブックレット『ソマリアで何が?』の中に、次の記述を発見することができた。著者の柴田久史はIVC(日本ボランティアセンター)のソマリア・自立促進プロジェクトに一九八三年以来参加しており、現在、JVC東京でソマリアを担当している。

「バレ政権時代には米国の石油企業は、領土の三分の二にあたる地域の石油探鉱権を獲得していた。

『希望回復作戦』の目的の一つは石油企業の投資と利権を擁護することにあった。これを証明するかのように今回のソマリア視察で、私たちは米国の石油会社コノコが内戦中もモガディシュにとどまり、しかもその事務所はアイディド派の事務所の向かいにあるのを確認した」

 大手メディアに「石油」の字が出たのは、つい最近になってからいうお粗末さである。

「なぜソマリアに?」(毎日93・10・15)「個人的には、……ソマリア沖で石油埋蔵の芽があるとも聞いた」

「ソマリア深く悲しい傷口」(朝日新聞社発行『アエラ』93・11・1)

「九〇年二月まで十年以上もソマリア議会議長を務めたモハメッド・イブラヒム・アーメッド氏(七二)は、アフリカの角の戦略的な重要性、石油などの豊富な資源、といった理由を挙げて、『単に人道援助のために乗りこんでくるわけがないでしょう。つまり、ソマリアは大国の犠牲になったのだ』と言い切る」

[後略]

 以上で引用終わり。


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