『亜空間通信』571号(2003/04/13) 阿修羅投稿を再録

バグダッドに逆巻くアメリカへの怒りから長期抵抗の可能性の純軍事歴史的考察

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『亜空間通信』571号(2003/04/13)
【バグダッドに逆巻くアメリカへの怒りから長期抵抗の可能性の純軍事歴史的考察】

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転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 実に皮肉なことに、「バグダッドに逆巻くアメリカへの怒り」が、「バランスの取れた」報道を旨とするアメリカの通信社の記事から、明瞭に読みとれる状況と相成った

 配信元の通信社、Associated Pressは、以下の電網検索情報によって紹介する。

----- 引用ここから ------------------------------
http://www2.nsknet.or.jp/~azuma/a/a0168.htm
Associated Press(AP 通信)
 アメリカの大手通信会社。 154年の歴史を持つ通信社で,同社の株のほとんどは新聞社や放送局が所有する。
サイト:http://www.ap.org
----- 引用ここまで ------------------------------

「反米」を名乗るアメリカ人から届いた情報集の中から、最も時宜にかなった記事を選び出し、さらにその核心を紹介するのは、結構、大変な作業である。

 以下が、本日のそれである。

 題名は、すでに紹介済み、「バグダッドに逆巻くアメリカへの怒り」である。

 簡略に解説する。

 最初は笑顔(ただし、やらせの誤解)で出迎えたが、しかし、フセイン政権が溶け去り、秩序を失った首都では、この感情は、たちまち蒸散した。

 略奪を取り締まらずに傍観するだけのアメリカ兵に対する怒りが爆発している。

「アメリカ人は嘘つき」という父親の息子、13歳の少年は拳銃を持ち、すべての友達が持っていると言う。「アメリカ人は大嫌いだ」とも言う。

 49歳の男は、「ここの住民はアメリカもフセインも拒絶」と言う。

 30歳の失業中の若者は、「この状態が続けば、われわれは、どのアメリカ兵でもイギリス兵でも、殺すだろう。皆がだ。女でさえもだ」と言う。

 はい、これが、ラムズフェルドの嫌みなニヤケ面の自慢、ブッシュのゲタゲタ笑い「圧倒的勝利」報道の「偽らざる」真相なのである。

 以下は、この通信の抜粋紹介である。

----- 引用ここから ------------------------------
http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/ap/20030412/ap_on_re_mi_ea/war_baghdad_s_anger_2

Sun, Apr 13, 2003

Baghdad Seeths With Anger Toward U.S.
Sat Apr 12, 2:14 PM ET

By NIKO PRICE, Associated Press Writer

BAGHDAD, Iraq - At first they cheered, smiled, offered hearty thumbs-ups to the U.S. soldiers newly in their midst. But across Iraq 's lawless capital, that sentiment is evaporating as quickly as Saddam Hussein 's government melted away.

Baghdad was bursting with anti-American feeling Saturday as residents saw their city being stripped by its own citizens while U.S. forces stood by, rarely intervening and in some cases even motioning treasure-laden men through checkpoints.
[中略]
"The United States is a liar," Adnan said. "They are not going to make anything better."

His son, Forkan Efil, 13, wore a T-shirt that said "Football" and also carried a pistol. He said all his friends have guns now.

"I don't like the Americans," the boy said, "but this pistol is for the thieves."
[中略]
"The army of America is like Genghis Khan," Fouad Abdullah Ahmed, 49, snapped as U.S. tanks rumbled by without stopping. "America is not good and Saddam is not good. My people refused Saddam Hussein, and they will refuse the Americans."

One young man went even further.

"If this continues in Baghdad, we'll kill any American or British soldier," said Rahad Bahman Qasim, 30 and unemployed. For emphasis, he added this: "All of us ― even the women."
----- 引用ここまで ------------------------------

 イラク侵略に対する武力反撃の状況については、すでに以下の2つの報道例もある。現状では、どうやら、大規模な反撃の計画はなかったと見えるが、予断は許さない。

1)・・・・・・・・・
----- 引用ここから ------------------------------
バグダッド各所で抵抗勢力と米軍のあいだの戦闘が続く [BBCニュース]
http://www.asyura.com/0304/war31/msg/948.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 4 月 13 日 03:01:19:

先ほど放送された「BBCニュース」は、バグダッドで戦闘が続いていることを伝えた。

パレスチナ・ホテル周辺でも銃撃戦が行われているくらいで、市内各所で戦闘があるという。

たぶん、2日ほど前に23名の米軍兵士が死んだ可能性もあるモスクと同じだと思われるが、市内北部のモスクを拠点とする抵抗勢力と激しい戦闘が繰り広げられており、米軍は増援部隊を送っているという。

チグリス川のほとりにある建物にこもった抵抗勢力と川を挟んで銃撃戦を行っている米軍部隊の映像も流された。
----- 引用ここまで ------------------------------

2)・・・・・・・・
----- 引用ここから ------------------------------
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030413-00000105-mai-int
海外ニュース - 4月13日(日)0時21分

<イラク戦争>「隠れていろ」が命令だった イラク軍大佐が批判

 イラク軍の共和国防衛隊の大佐だった男性が12日、バグダッド市内の自宅で英BBCラジオのインタビューに応じ、米軍の首都攻撃に対し武力で抵抗するよう命令されていなかったことを明らかにした。

 兵士600人を率いていたという男性は匿名で「(上からは)持ち場にとどまり、爆撃を受けないように隠れていろという命令を受けていた」と語り、「(バグダッド郊外の)空港さえ閉鎖しないで首都を防衛しようというお粗末な作戦だった」と軍指導部を批判した。

 市街戦に持ち込んで抵抗しなかったことについては「やるとすれば自宅や近所にたてこもって戦わなければならない。自宅には家族がいるし、子供もいる」と説明した。(ロンドン共同)(毎日新聞)
[4月13日0時21分更新]
----- 引用ここまで ------------------------------

 しかし、これらは、まだまだ、局地的、一時的な現象である。私が提起する問題は、もっと深く、長期にわたるものである。

 私は、今回のイラク侵略に関して、かなり早い時期に、ロシアが、ナポレオンの侵略に対して首都モスクワの焦土作戦を取った故事を示唆した。

 この面から見ると、「バグダッド焦土作戦」も通用するわけである。首都が「陥落」とか、「放棄」とかになっても、侵略に対する抵抗闘争は、終了しないのである。

 正規軍や準正規軍の「民兵」と呼ばれる軍事組織が、大規模なゲリラ戦を展開する可能性もある。

 ところが、この種のゲリラ戦によるナポレオンへの反撃は、ロシア以前に、スペインで始まったものなのである。ゲリラは、スペイン語で「小規模の戦闘」の意味である。これが中国では、「持久戦」となった。

 スペインの事例は、かなりのアングロ・サクソンご都合主義の創作を交えてはいるが、以下のハリウッドの大型駄作映画にも描かれた。以下の「市民義勇軍」の戦いが、ゲリラの始まりである。

----- 引用ここから ------------------------------
http://www.asahi-net.or.jp/~hj7h-tkhs/jap_brief/jap_brief_pride.htm
誇りと情熱 ★
(原題:The Pride and the Passion)
1957 US
監督:スタンリー・クレイマー
出演:ケーリー・グラント、ソフィア・ローレン、フランク・シナトラ、セオドア・バイケル
[中略]
繰り返して見たい気にさせるような映画ではないにもかかわらず、この映画には一度は見るべきであろうと思わせるパワフルさがあるのです。ストーリーは、ナポレオン時代のフランス軍がスペインに攻込んでいた頃、[中略]
スペインの市民義勇軍[中略]がどでかい大砲をスペイン中引き廻し、最後はフランス軍の砦に突撃するというものであり、実にシンプル且つパワフルなのですね。[中略]
ところで、あちらのレビューワも言及しているところなのですが、この映画が傑作になる為には決定的にマイナス要因として働いている要素があるのです。すなわち、主演3人が全て典型的なミスキャストなのです。彼らだけがいやに浮いて見えるばかりではなく、愛国的なスペイン市民義勇軍のリーダーであるフランク・シナトラはいかにもこれから一曲歌うか或は一発ジョークをかませてやるかというような印象がありますし、ソフィア・ローレンも彼に付いていくスペインの田舎娘にはとても見えないのですね。
[中略]この映画は、もう少し名前の知られていないマイナーな俳優さん達を起用した方が遥かに効果的で結果は良かったであろうなと思わせるタイプの映画なのです。そういうわけで、確かにお薦めではない点もあるのですが、少なくとも素材としては一級品のアイデアであったように思われますし、何よりも文字通りの力強さに溢れた映画であると言えるように思います。
[後略]
----- 引用ここまで ------------------------------

 上記のスペインのゲリラ戦闘に関して、最も重要なことは、当時のスペインの王国の正規軍が降伏した後に、各所から民衆のゲリラ戦が始まったことである。

 つまり、正規軍や準正規軍、イラクの場合は「フェダイン」とか呼ばれるドイツの親衛隊の軍事組織に似た軍事集団が、たとえ降伏しても、民衆が戦いを続ける可能性もある

 さらには、たとえば、インド亜大陸のように、広大なイギリス帝国の植民地では、完全に「平定」されたように見えても、2世紀を経て、非暴力抵抗の独立回復が成功している。他の植民地独立闘争の例は、むしろ、枚挙にいとまがない。

 そこで、イラク、またはアラブの場合を振り返る。

 私は、湾岸戦争の際、イラク大使館員のファルークと何度か会った。その後、彼は、イラクに戻り、今回「サハフ情報相」で名を挙げた情報省に勤め、交通事故で亡くなった。帰国前には、彼が、近くにアラブ料理店が無いので、代わりにインド料理店に招待してくれた。私は、お返しに、他の友人と一緒に、彼をフランス料理店に招待した。

 ファルークは、エジプトの最後の王と同じ名前である。日本では、金沢大学と法政大学に合計6年も在学した。日本語は自由である。惜しい人材である。彼が在日中、存命中に出した拙著、『マスコミ大戦争/読売vsTBS』の「あとがき」に、私は、次の様に記した。

----- 引用ここから ------------------------------
(文芸紙だった読売新聞への元特高課長)正力乗り込みの1924年から数えて、まもなく70年になろうとしている。

 だがつい最近私は、パレスチナ人を支援する立場のアラブ人から、「十字軍の侵略は400年ですよ」といわれたばかりである。[中略]

 彼は、[中略]こう力強く応じ、[中略]最後に、「ユダヤ人の中にもシオニズムに反対する人が沢山いますよ」と静かに付け加えた。
----- 引用ここまで ------------------------------

 ファルークは当時、日本の官庁や企業とも接触する立場だったから、私は、その立場を考慮して、「パレスチナ人を支援する立場のアラブ人」と記したのだった。

 昨日(2003/04/12)、私は、「人間の盾」の任務を果たしてイラクから帰国したばかりのジャミーラ高橋さんに、このファルークの話をした。

 侵略者は、遅かれ早かれ、必ず、敗退するのである。

 以上の本日の拙文を、今は亡きイラク人の旧友、ファルークに捧げる。

 以上。


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