出生によらない個人の意志による国籍取得の方法もある。日本の帰化制度もそのひとつだ。もちろん、誰でも望む人が日本国籍をもらえるわけではない。もしそうなら、たくさんの人たちが日本にやってくるだろう。帰化するためには、まず一定の条件を満たしていることが必要だ。その条件とは、日本に引き続き5年以上いること、罪を犯していないこと、生計が成り立っていること、元の国籍を離脱することなどだ。また、日本国民の配偶者などは条件がゆるくなる。日本は、いまでも元の国籍を失うことを帰化の条件にしているが、フランスやスイス、イギリスなどの諸国は元の国籍の離脱を義務づけていない。
注意してほしいのは、上に述べたような生計や居住などの条件を備えていたとしても、外国人は日本国籍を必ず得られるわけではない、という点だ。一般に帰化を許可するか否かは、国家の自由裁量とされている。アメリカやフランスなどの国は、外国人が法の定める条件を備えていれば国籍の取得を認めるやり方を採っているが、日本では国家(法務大臣)の自由裁量という側面が強い。かなり古いデーターしかなくて残念だが、1955年から10年間の日本への帰化許可率は46%しかなかった。国籍を与えるか否かの判断で、法律に規定のない様々な条件が課されているからだ。特に重視されているのは、法務局の担当官による実地調査で、当人宅への訪問から近所や勤め先での聞き込みまで行われる。調査の過程でこれまで隠していた朝鮮人であることが会社に分かってしまい退職になったり、取引に支障が生じるということも過去にあった。
また、日本に「同化」しているかどうかも実地調査で調べられる。日本社会になじんでいること、日本の風習・生活様式を自分のものとして取り入れていることなどが帰化の暗黙の条件になっているようだ。だから、帰化の際に「日本人らしい」名前に変えることは近年まで当然だった。1980年代になって、ようやく「日本人らしい」名前でなくても帰化を認められるようになってきている。孫やスミスという姓の日本国民が生まれてきているのだ。
たくさんの書類を提出し、何度も役所に足を運び、申請してから何年も待った後にやっと帰化は認められる。
在日朝鮮人は、これまで約18万人が帰化して日本国籍を得ている。植民地支配の結果として日本にいる人たちとその子孫についても、帰化の要件は他の外国人と全く同様である。