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従来のチェチェン憲法(以後イチケリア憲法)は、それまで効力を持っていた チェチェンイングーシ自治共和国憲法にかわるものとして1992年3月に制 定され、その後1996年11月と1997年2月に改定されて現在にいたっ ている。片や新しい憲法(以後ノフチーン憲法)はロシア現政権によって起草 されチェチェン語に翻訳された後に、今年3月23日に国民投票で採択され たと称されている。ただしグロ−バルスタンダ−ド的にはその正統性は証明さ れていない。この二つの憲法の差異について考察を試みることとする。今後は 各界の識者による分析が望まれる。
イチケリア憲法においては、チェチェン共和国は独立した主権国家であること が宣言され、神の意志により憲法を制定したと述べられている。これに対して ノフチーン憲法においては、ロシアとの一体性が強調されている。
イチケリア憲法においては、チェチェン共和国が領土と資源に対して主権を持 つことが明記されている。ノフチーン憲法においては、領土はロシア連邦の一 部と規定されており、資源についてはロシア連邦法優先が明記されている。ま たロシア連邦の排他的統治権も認められている。ノフチーン憲法独特の規定と しては、チェチェン共和国独自の軍組織が禁止され、公用語はロシア語とチェ チェン語とされていることだ。
(2003.10.01 今西昌幸/本紙コントリビューター)
チェチェン共和国には、1997年に民主的に選挙されたマスハードフ政権と、1999 年にロシアの傀儡として設置されたカディロフ政権の二つの政府が存在します。 そして今年3月に新しい憲法をロシア側がチェチェンに押し付けたことにより、 憲法も二つ存在することになりました。今後の社会的な議論を期待して、二つ の憲法を公開します。仮訳してくださった今西さんに感謝します。(大富)