チェチェン総合情報




チェチェン共和国憲法


(イチケリア憲法/仮訳)
1992年3月制定
1996年11月、1997年2月改定


原文(その1):http://www.chechenpress.com/ichkeria/atributy/postonovlenie.shtml




チェチェン共和国国民は、チェチェン民族の希求するところを体現し、ヒューマニズムの理想と公正な社会構築の目標を指針とし、現在及び未来世代の同朋に対する強い責任に立脚し、あらゆる民族と人種の権利と利益を尊重し、チェチェン共和国が独立した主権国家であることを宣言し、自らを諸国民世界共同体の平等なる一員と考えて、神の意志により本憲法を制定し、今後はこれを社会及び国家の基本法とする。

第1章
立憲体制の基盤

第1条

チェチェン共和国はチェチェン民族の自決の結果樹立された独立した主権を持つ民主主義的法治国家である。自国の領土及び資源に関しては究極の権限を持ち、自国の対外及び対内政策を独自に決定し、国内において最高の威力(supremacy)を持つ憲法及び諸法を制定する。国家主権とチェチェン共和国の独立は不可分にしてゆるぎないものであり、国権機関の権限に付属するものではない。

第2条

チェチェン共和国国民は国家におけるあらゆる権力の唯一の源泉である。国民は自らのものである主権を直接、および国民が設立した立法、行政、司法権各機関の体系を通じて、あるいは自治体機関により行使する。

国民の一部、もしくは団体、個人はいかなるものであろうと本邦において権力を私有することはできない。不法な権力奪取は重大な犯罪である。

代議制機関の選挙に当たっては、普遍、平等、直接の選挙権を原則として、自由な候補者推薦と秘密選挙により行使する。選挙で代表を選出するあらゆる機関及び公務員の任期、並びに行政機関及び司法機関形成の手続は本憲法および諸法に定める。

第3条

人は最高の価値であり、国家の政策の主要な目的である。チェチェン共和国は人の権利を尊重し、これを保護し、個人が自由に成長するための平等な機会を確立し、社会的公正と個人の保護を保証する。

チェチェン共和国においては人間の権利は、広く受け入れられている原理と国際法の基準に従ってこれを保証する。

第4条

国家、その諸機関、公務員は社会の一部でなく、その全体に奉仕する。国家は社会的公正、国民の合意と平和の原則に基づき、チェチェン共和国のあらゆる社会階層、グループ、人種及び民族の団結を助成する。チェチェン共和国は民主主義を政治的、思想的多元主義に基づいて実現する。

政党並びにその他の社会的連合組織は憲法の範囲内でこれを設立し、活動する。人種、民族、社会、宗教、階級の敵対関係を煽り、立憲体制の抑圧と打倒を標榜する政党及びその他の社会的連合組織は禁止する。

国家機関、軍、国営企業、教育機関における政党の創設とその活動は禁止する。

政党組織の決定は国家の機関、団体、企業及びそれらの職員が職務上の義務を果たすに当たっては、これに強制力を持ってはならない。

チェチェン共和国の国教はイスラム教である。本邦においては個人のものの見方や信念の尊重、宗教的儀式執行の自由を保証する。

公共団体、宗教団体、政党、政治勢力登録の手続は法律に定める。法律に定める手続で登録を済ませた政党、政治勢力、社会的連合組織、宗教団体は法人としての権利を有し、所有する施設その他の資産および資金を自由に使用し、処分できる。

あらゆる個人、社会的連合組織、マスコミは国家の権威を強固にし、その標章及び象徴に敬意を表する責務を負う。

第5条

国家とその全ての機関、公務員は法律及び立憲体制の制限のもとにある。

チェチェン共和国においては他の全ての法令に対する憲法及び法律の優位性が確立している。憲法の条文に違背する法律及びその他の法令は法的効力を持たない。公式な発表により周知しなかった法令は国民を拘束せず、裁判所はこれを援用しない。憲法の規範は直接的効力を有す。

立法、行政、司法権はチェチェン共和国においては分立しており、それそれの権限の範囲内で独自に、あるいは他と関連しながら、またお互いに調整しながら機能する。

第6条

外交政策においては、チェチェン共和国はそれぞれの国の権利および自由を尊重しつつ、広く認められた原則と国際法の基準に従う。全人類的価値観に基づく誰もが認める公正な世界と、全ての国との緊密かつ実務的で、互恵的な協力関係を目指す。

チェチェン共和国は法の支配を基調にした国際社会の拡大を支持しており、国際機関、集団安全保障体制、国家間共同体に加盟することができる。

第7条

マスコミの検閲は行わない。マスコミは情報公開の条件下で業務を行う一方、憲法及び法律の侵犯に対しては責任を問われる。

国家機関、社会的連合組織、政党、グループ、個人によるマスコミの独占化はこれを排除する。

マスコミ設立の手続、その権利と義務及びその責任は法律に定める。

第8条

チェチェン共和国は国民及び勤労者の経済的自由、所有形態の多様性、並びにそのそれぞれにつき法的保護の平等を保証する。国民及び勤労者の経済活動につき、その自由の限度は公共の利益の観点から法律にこれを定める。

第9条

本邦では所有形態は個人所有と国家所有に分類する。

土地、その地下、地上空間、水、自然の状態で生息する植物及び動物は奪うことのできないチェチェン共和国国民の財産である。これを個人、企業、機関、団体の所有及び利用に帰する場合、公共の必要性と利益を考慮し、法に従ってこれを定める。

所有の種類と形態に係わる法規制は法律に定める。

第10条

チェチェン共和国国民の個人所有物は個人の財産であり、それぞれの考えによってこれを利用する。

個人もしくは個人のグループが所有する個人企業の業務は法律に従って行う。

公共の利益のため個人企業の活動の一部を法律により禁止し、もしくは制限することができる。

第11条

人々の健康を守り、正常な生活条件を達成するため、国家は土地、地下、環境保護に必要な手段を講ずる。

第12条

チェチェン共和国は人道的な人口移動政策を取り、母性と児童を保護し、国の社会的核としての家庭に必要な援助を行い、保証された最低生活を確保する。

児童は常に国の社会的庇護の下にある。国は就学前の児童養育施設および休養施設に対する国民社会の側からの需要を満たすことを求められている。児童の健康を護ることについては特別な関心を払う。

第13条

チェチェン共和国は青年が一般教育および職業教育を受ける機会を確保し、素質、能力、教育の程度に合わせ、一般社会の需要も考慮して職場を与えるべく、積極的な青年政策を実施する。

国は若年夫婦支援計画を作成、実施し、有利な条件での住宅取得を援助する。政治生活の諸問題解決のため国家機関は青年諸機関と協力し、社会経済、環境等に関する計画の作成に当たってはこれら青年諸機関の意見を考慮する。

第14条

チェチェン共和国は無償で質の高い保健、社会保障、国民教育、文化、スポーツに係わる機構を完成させる。国はこれらの目的に必要な資金、物資を提供する。

第15条

チェチェン共和国は科学、芸術、文芸、民芸の進歩に関心を持ち、国民の知性、精神性、倫理性の水準を向上させる条件を整備する。

国は国民社会の倫理的基盤を損なう作品やそれに類する活動の普及を阻止する。

第16条

国家活動の最重要課題は全人民の論議に付し、また全国民の投票(国民投票)を求める。

第2章
国民の権利、自由、義務

第17条

チェチェン共和国は国民一人一人に生得にして固有の権利を認める。 チェチェン共和国はこれらの権利を保障し、これを擁護する一方、国民に義務を遂行せしめる。 チェチェン共和国国民の権利、自由、義務はこれを廃止、もしくは制限してはならず、また廃止、制限以外の他の行為および行動により故意に義務の範囲を広げてはならない。 国民の正当な権利及び自由を縮小し、もしくは制限する法令は法的効力を持たない。

第18条

チェチェン共和国国民の権利、自由、義務は、国際条約および国際協定によって発生するチェチェン共和国の義務に従って制定し、行使する。

第19条

国民と国家は相互の権利と責任により束縛される。

国家機関と公務員は国民の権利と自由を保証するとともにこれを保護し、社会的人権保護活動を奨励する。

第20条

国民の権利はその義務と不可分である。国民は自らの権利と義務に従って自由に行動するが、その行動において他の国民の権利および正当な利益、国家および国民社会の安全、法秩序、社会の倫理的基盤を侵害してはならない。

第21条

全てのチェチェン共和国国民は民族、人種、出身、性、言語、宗教に対する考え方、居住地、職業の種類、資産状況、政治その他の信条、政党への所属等の状況にかかわり無く、法と裁判の下に平等で、保護される平等の権利を有す。

国民の同権は国政においても社会生活においてもあらゆる分野でこれを確立する。一部の社会階層、住民、個人の特権、あらゆる理由による差別は社会的公正に反し、法によって排除すべきものである。

国民の特定グループの特典や優遇措置は法律のみによってこれを定める。

第22条

女性と男性は平等の権利と自由を持つ。

第23条

国民はいかなる民族であろうとも同権が保証される。民族的特長によって直接または間接に権利を制限し、あるいは特権や優遇措置を設けることは法により罰っせられる。国は少数民族の権利を擁護する。

第24条

チェチェン共和国においては均一な市民権を制定する。 市民権の獲得と停止の事由および手続は法に定める。 チェチェン共和国国民は市民権及び国籍変更の権利を奪われることは無い。 チェチェン共和国国民は共和国外に追放されてはならない。国は自国民の権利を擁護し、国外にいる国民を庇護する。

第25条

チェチェン共和国の領土にいる外国人および無国籍者はチェチェン共和国憲法および国際法の基準に照らしてその権利と自由を擁護する。

外国人および無国籍者はチェチェン共和国の憲法および諸法を尊重し、遵守する義務を負う。これらの人々はチェチェン共和国において政治亡命者としての権利を享受することができる。政治亡命の手続と条件は法に定める。

第26条

チェチェン共和国国民は労働の権利を持つ。勤労者の労働に対する対価は双方の合意によりこれを決定するが、公式に定める最低生活費を下回ってはならない。国は国民の就業確保に努め、職業・技術教育および研修、並びに社会の要請を踏まえた勤労者の職種変更プログラムを実施する。

強制労働は、法に定める場合を除いてこれを禁止する。

第27条

チェチェン共和国国民は私有権を持つ。

私有権は神聖にして不可侵である。

国民が持つ私有権の不可侵性およびその相続権は法制でこれを保証する。

第28条

チェチェン共和国国民は企業活動を行い、自らの経済的欲求を満足させるため、個人企業、家内企業、集団企業、株式会社等を設立する権利を持つ。

第29条

チェチェン共和国国民の休養する権利は、40時間以下の勤労者および事務職員週間労働時間、24労働日以上の年間有給休暇、祭日および毎週の休日、特定の職業および現場についてはその短縮労働時間、その他の保証を法制で確保することによりこれを保証する。

第30条

チェチェン共和国国民は健康の維持をはかり、無償での国立医療機関を利用し、医療機関が行う有償医療を利用する権利を持つ。国は医療の質を向上する施策を講ずる。

第31条

チェチェン共和国国民は住宅に対する権利を持つ。これを所有物として取得し、もしくは国営、公営、私営の住宅を継続的に使用することができる。

何人も恣意的に住宅を奪われてはならない。

第32条

チェチェン共和国国民は学校および各種教育機関で一般教育および専門教育を受ける権利を持つ。教育はその種類を問わず、誰でも受けられることを国が保証する。

第33条

チェチェン共和国国民は老齢、不具、失業、疾病、扶養者の喪失に当たっては社会保障を受ける権利がある。年金、補助金その他の公共の支援は、少なくとも規定の最低生活費による生活水準を保証するものでなくてはならない。

第34条

チェチェン共和国国民は好ましい環境に対する権利を持つ。 自然の利用に係わる不法行為により国民とその健康、あるいは財産に損害を与えた場合、これを弁済しなくてはならない。

第35条

チェチェン共和国国民は文化の精華を利用する権利がある。

文化的価値のある史跡等の維持はチェチェン共和国国民の義務である。

第36条

チェチェン共和国国民には芸術、科学、技術における創造力を発揮する自由を保証する。国民の著作権と知的所有権は国がこれを保護する。

第37条

チェチェン共和国国民は国税を納める義務がある。その手続と額は法に定める。

第38条

チェチェン共和国は一人一人の人間の生命に対する権利を認め、これを尊重する。

人は何人たりとも生命を奪われてはならない。死刑は特に重い罪に対する例外的罰則として、裁判所の判決のみによりこれを行う。

生命、健康、個人の安全に対するあらゆる侵害から国民を保護することを保証する。何人もその合意なしに医学的および科学的実験に供されてはならない。

第39条

人の名誉と尊厳は法律によりこれを保護する。恣意的に人の個人生活に介入することはいかなるものであろうとも違法である。

自由を剥奪された人であろうとも、人道的扱いを受ける権利を有す。何人も拷問、非人間的扱い、尊厳を傷つける行為を受けてはならない。不法な方法で取得した証拠は法的拘束力を持たないものとみなす。

第40条

個人は不可侵である。何人も裁判所の決定もしくは検事の許可によらずして逮捕され、もしくは監禁されてはならない。

犯罪の責任を問われた国民は等しくその罪を裁判所が確定するまでは無罪とみなす。

第41条

チェチェン共和国国民はその信書、電話、電報その他の通信の秘密を保証される。

法に定める場合、その定める手続によってのみ例外が許される。

第42条

チェチェン共和国国民は住居の不可侵を保証される。住人の意思に反して住居に入り、法に定める場合、その定める手続によらずして捜索もしくは検査を行うことは禁止する。

第43条

良心の自由はこれを保証する。チェチェン共和国国民はいかなる宗教であろうともこれを信仰し、もしくはいかなる宗教も信仰せず、宗教的祭式を取り行い、法に抵触しない限りその他あらゆる宗教的活動を行う権利を有す。

何人も国家に対する義務を免れ、あるいは宗教的信念を理由にして法の遂行を拒否することはできない。従軍がその人の宗教的信念に矛盾する場合、民間の任務を遂行することによりこれに替えてもよい。このような代替の手続と条件は法に定める。

第44条

家族、母性、幼児は国の庇護の下にある。婚姻は男性と女性の自発的合意による。夫婦は家族関係において平等である。

婚姻の成立と破棄の手続と条件、夫婦の権利と義務は法にこれを定める。

第45条

チェチェン共和国領土においては移住、滞在および居住場所選択の自由、チェチェン共和国からの出国、チェチェン共和国への入国の権利を保障する。

これらの権利は例外的な場合、法に定める事由により制限されることがある。

第46条

チェチェン共和国国民は国家機関、公共機関およびこれらに所属する公務員の行為に対し不服を申立てる権利を有す。不服申し立ては法に定める手続と期間によりこれを審理しなくてはならない。

国民は不法で自らの権利を侵害する国家機関、公共機関およびこれらに所属する公務員の行為に対し裁判所に不服を申立てる権利を有す。

チェチェン共和国国民は国家、国家機関、公共機関、並びに公務員がその職務を遂行するに当たって行った不法行為により心的および物的損害を蒙った場合、その賠償を受ける権利を有す。

第47条

チェチェン共和国国民は国家および公共の事業に直接又は代表者を通じ間接的に参加する権利を有す。国民は国全体および地域に係わる法律および法令の審議、並びに国民投票に参加する。

チェチェン共和国国民は合法的な個人的および集団的利益をはかり、チェチェン共和国憲法および諸法の範囲内で共同事業を行い、また自らの権利を共同で擁護する際に主導権、独立性を発揮する権利を有す。

第48条

チェチェン共和国の国民は等しく国家、公共の活動および国際的活動のあらゆる局面、並びに国民の権利、正当な利益、義務の諸問題に関し情報を得る権利を有す。

国民の情報に対する権利の行使を阻害し、法律の公表に際して損害を与えた場合、これに対する責任は法に定める。

法律で護られている国家機密等の秘密を含む情報は漏洩してはならない。

第49条

チェチェン共和国国民の印刷の自由、法に定める手続により国営ラジオおよびテレビ放送を利用する権利はこれを保証する。国は国民のマスコミ利用を可能ならしめる。

第50条

チェチェン共和国国民は発言、意見、信条、並びにそれらを自由に表現し、流布する自由を享受する。何人も自らの信条のために迫害を受けてはならない。大衆に対し立憲態勢の暴力による転覆、もしくはチェチェン共和国憲法に違背する方法によるその変更、テロリズムへの勧誘を行い、社会的、階級的、民族的、宗教的敵意を扇動し、国民の名誉と尊厳を侮辱することはこれを禁止する。

第51条

チェチェン共和国国民は集会、大会、行進、デモの自由を享受する。 これらの自由を行使する場合の手続は法に定める。

第52条

チェチェン共和国国民は個人および集団で国家機関、公共団体に申し入れを行う権利を有す。

公務員はこのような声明を審議し、これに答え、必要な手段を講ずる責任を負う。

チェチェン共和国国民が国家機関および公共機関に申し入れを行う場合、チェチェン語もしくはロシア語でこれを行う。国家機関および公共機関は申し入れの言語をもって申入れに回答し、あるいは国民の利益を考慮してこれを翻訳する義務を負う。

第53条

チェチェン共和国国民は団結して政党および社会的連合組織を形成し、大衆運動に参加する権利を有す。暴力によるチェチェン共和国立憲体制の転覆を目的とし、軍隊的性格を帯び、もしくは隠蔽体質を持ち、あるいはその他の刑法に抵触する目的を追求する政党、社会的連合組織はこれを禁止する。その活動は法に定める手続により停止させることができる。

第54条

チェチェン共和国国民は国権機関および地方自治体の選挙に投票し、また投票される権利を有す。普遍的な、直接の、平等な選挙権を保障する。

第55条

チェチェン共和国国民は国家公務員として職につき、国家の任務に服する平等な機会を有す。

国家の任務に服する条件と手続は法に定める。

第56条

チェチェン共和国国民は国を防衛し、チェチェン共和国国軍の一員として兵役に服する義務を負う。

兵役の条件と手続は法に定める。兵役に替えて民間の任務につくことは法に定める事由にしたがってこれを許可する。

国土防衛、社会の秩序と安寧の警備に参加しているチェチェン共和国国民、並びにその家族は社会的、物質的保証およびその他の保証を得る。

第57条

非雇用勤労者は国家機関での任務に参加する権利を有す。国は非雇用勤労者に対し企業、団体、機関の業務に参加し、生産における自治組織を結成し、交渉を行い、企業の管理者もしくは所有者と集団的契約を締結し、法に違反しない形で自らの経済的、社会的利益を確保し擁護する権利を認める。

第58条

企業、公共機関、団体での労働組合の活動、勤労者が自らの選択により任意に労働組合に加入する権利、労働組合団体が連合し、また国際的な労働組合に加盟する権利を保証する。

第59条

企業の勤労者と経営側に間の集団的論争は企業の所有形態に係わり無く、国が公正に解決する。法に定める場合、従業員はストライキ、すなわち企業、公共機関、団体が行う業務の全部又は一部の一時停止を実施する権利を有す。

ストライキが人々の生命と健康に脅威を与える場合、もしくは社会の死命を制する活動を担う業務の機能を損なう場合はストライキは許されない。

第60条

チェチェン共和国においては消費者の権利は法により保護する。消費者は個人の資格で、および消費者団体を通じて、裁判および行政により、商品およびサービスの生産者、公告等を行う団体の行為により蒙った損害の賠償を要求する権利を有す。

第3章
国権および統治の制度

第61条

チェチェン共和国唯一の立法権機関はチェチェン共和国議会であり、その議員は国民が普通直接選挙権に基づいて秘密投票で選出する。 裁判所が行為能力なしと認めた国民および裁判所が下した自由剥奪の判決が発効した者は投票も立候補もできない。

第62条

チェチェン共和国議会はいかなる問題もこれを審議し決定を下す権限をもつ。 下記各項はチェチェン共和国議会の専権の属す:

1. チェチェン共和国憲法を制定し、これを改正および追加すること;
2. チェチェン共和国の内政および外交の方針を決定すること;
3. チェチェン共和国の国家体制の諸問題につき決定すること;
4. チェチェン共和国の行政地域制度に係わる諸問題決定の手続を定めること;
5. チェチェン共和国の国境変更に係わる諸問題に決定を下すこと;
6. 将来に亘るチェチェン共和国社会経済発展計画およびプログラムを承認すること;
7. チェチェン共和国議会の議長を選出すること;
8. チェチェン共和国議会の第一副議長およびその他の副議長を選出すること;
9. 全人民投票(国民投票)施行の決定を下すこと;
10. チェチェン共和国大統領解任手続開始の決定を採択すること。

第63条

チェチェン共和国議会はチェチェン共和国国権機関の常設最高立法機関である。チェチェン共和国議会議員は5年の任期をもって選出する。

第64条

チェチェン共和国議会は:
1. チェチェン共和国議会議員、大統領、地方自治体各機関の選挙を決定する。
2. チェチェン共和国議会および地方自治体議員選挙にかかわる中央選挙委員会の構成を承認する。
3. 閣僚の構成を承認し、これに変更を加える。
4. チェチェン共和国憲法裁判所議長およびその代理、チェチェン共和国憲法裁判所裁判官;チェチェン共和国最高裁判所議長およびその代理、チェチェン共和国最高裁判所裁判官、都市および地区(地域)裁判所判事;チェチェン共和国仲裁裁判所議長およびその代理、チェチェン共和国仲裁裁判所裁判官を選出する。
検事総長およびその代理;チェチェン共和国調査委員会議長、国民防衛機構議長およびこれらの代理;国立銀行、衛生防疫および環境部門の責任者を任命する。
5. 大統領の閣僚、大使、その他法に定める高級国家公務員任命に同意する。
6. 議会が構成を決め、あるいは選任した諸機関、承認もしくは任命した、判事を除く公務員の報告を定期的に聴取する;内閣信任を決議する。
7. 共和国全体につき法規制を統一する。
8. 憲法の規定する場合、その規定する手続により大統領、副大統領、憲法裁判所議長および裁判官、最高裁判所議長および裁判官を解任する;法に定める場合その他の高級国家公務員を解任する。
9. 全国民又はその一部の動員を宣す;非常事態を宣し、あるいはその旨の大統領令を承認する;チェチェン共和国への軍事攻撃があった場合戦争状態を宣言する;非常事態並びに国際的義務遂行に当たり、兵員導入の決定を行う。
10. 外交官のランク、軍人その他の特別な称号(官位)を制定する。
11. 軍の行為、特別な称号(官位)、外交官の位階を授与する。
12. チェチェン共和国全土の法規制を統一する。
13. 憲法がチェチェン共和国国民に与える権利、自由、義務の徹底にかかわる諸問題を解決する。
14. チェチェン共和国諸法の解釈を行う。
15. 地方自治体諸機関の組織および業務に係わる制度を制定する。
16. 特赦に関する法律を制定する。
17. チェチェン共和国国家予算を審議し、承認する;租税およびその他の義務的納付金を制定する;
予算執行過程の監査を行い、その執行報告書を承認する;
国家予算の変更が必要な場合、これを変更する;
借入および経済援助等に関する決定を行う。 18. 国際的合意を批准し、また否決する。
19. チェチェン共和国の防衛と国家安全についての基本政策を立案する。
20. チェチェン共和国の国家褒章と称号を制定する。
21. チェチェン共和国内閣の決定および布告、大統領令および布告がチェチェン共和国憲法および諸法に抵触する場合、これらの全部または一部を廃止する。
22. 地方自治体諸機関および部局の法令が現行のチェチェン共和国法制に抵触する場合、これらの法令を廃止する。
23. チェチェン共和国議会議員の権限を任期前に停止する場合、これにかかわる諸問題を解決する。
24. 大統領の提案になるものを含め、全人民投票(国民投票)施行を決定する。
25. その他の問題につき決定を下す。

チェチェン共和国議会は議会議員総数に対する多数決をもってチェチェン共和国諸法を制定する。

第65条

議案提出権は議会議員、チェチェン共和国大統領、憲法裁判所、最高裁判所、チェチェン共和国仲裁裁判所、検事総長にある。

第66条

チェチェン共和国議会議長は5年の任期をもって議会議員から選出する。 チェチェン共和国議会議長は議会議員の秘密投票によりいつでも罷免することができる。 チェチェン共和国議会議長はチェチェン共和国議会に報告の義務を負う。 チェチェン共和国議会議長はその権限により:

1. チェチェン共和国議会が審議すべき諸問題にかかわる準備の全般的指揮をとり、議会が採択した法令に署名する。
2. チェチェン共和国議会に対し国の情勢および内政・外交の重要問題に関する情報を提供する。
3. 議会に対し議会第一副議長およびその他の副議長選挙の候補者を推薦する。
チェチェン共和国議会議長は命令を発行する。
チェチェン共和国議会第一副議長および副議長は、議長不在もしくは任務遂行が不可能な場合、議会議長の委任によりその機能に一部を果たし、議長を代行する。

第67条

チェチェン共和国諸法は採択の日から10日以内にチェチェン共和国議会議長が署名してこれを発表し、署名日にチェチェン共和国大統領に送る。チェチェン共和国大統領は法律原文受領から10日以内なら採択された法律に対し拒否権を発動することができる。

大統領が拒否権を発動したチェチェン共和国法律はチェチェン共和国議会で再度審議し、議会議員総数の三分の二の賛成を以って発効する。

第68条

チェチェン共和国議会議員は任意の公務員に質問することができ、質問を受けた公務員は3日の期限をもってこれに回答する義務を負う。このような質問に対する回答を回避し、もしくはこれに対して明らかに虚偽の回答をした公務員は免職とし、法に従って行政責任もしくは刑事責任に問われる。

議会議員は議会内外で議会活動の際の行動につき責任を問われることは無い。

チェチェン共和国議会議員は不逮捕特権を与えられる。すなわち議会の合意なしに逮捕されず、裁判の結果としての刑事責任又は行政責任を問われることはない。

チェチェン共和国議会議員の法的地位、すなわちその権利、責任およびそれらの保証は法律で規定する。

第69条

チェチェン共和国においては、行政は大統領が主催する。

共和国大統領はチェチェン共和国議会の議員になることはできない。共和国大統領は営利団体のいかなる職務にもついてはならず、営利活動に従事する権利を有しない。

第70条

共和国大統領に立候補できるのは65歳以下の共和国国民である。一人の人物が2期連続してチェチェン共和国大統領に選出されてはならない。

第71条

チェチェン共和国大統領は5年の任期を以ってチェチェン共和国国民により秘密選挙で普通直接投票により選出される。大統領候補の数は制限しない。大統領選挙は選挙民の50%以上が参加すれば有効とする。投票に参加した選挙民の半数以上の票を集めた候補を当選者とする。

これ以外の選挙方法もしくは任命、また共和国大統領権限の簒奪は不法であり、無効とする。
共和国大統領の選挙および就任の手続は共和国諸法に定める。

第72条

大統領就任に際しては下記内容の誓約を行う:

「誠実にチェチェン共和国国民に奉仕し、その主権を強化するとともにこれを擁護し、チェチェン共和国憲法および諸法を厳密に遵守し、国民の権利と自由を保証し、自らに課せられたチェチェン共和国大統領の責務を忠実に果たすことをここに誓約する。」

第73条

チェチェン共和国大統領は:

1. 内政、外交においてチェチェン共和国を代表する。
2. チェチェン共和国政府を主宰し、憲法に従って行政府諸機関を形成し、これを指揮する。
3. 議会の同意を得て閣僚、大使、その他のチェチェン共和国高級官僚を指名する。
4. 大統領が任命した閣僚その他の高級官僚を罷免する。
5. 外交政策実施を指揮し、交渉を行ってチェチェン共和国の国際条約を締結し、さらにこれを批准のために議会に送る。大統領は法律の範囲内で批准を必要としない国際協定を締結することができる。
6. チェチェン共和国国軍の最高司令官である;議会の同意を得て国軍最高司令部を任命する;将校に階級を授与する。
7. 緊急の場合チェチェン共和国もしくはその一部地域に非常事態を宣言し、その後2日以内に議会がこれを承認する。
8. チェチェン共和国に対する攻撃の脅威がある場合、部分的もしくは全面的動員、チェチェン共和国国軍の高度な臨戦態勢、その他の必要な措置を命令し、その後これらの措置につき3日以内に議会の承認を得る。
9. チェチェン共和国への攻撃があった場合、戦争行為開始を命令し、その後3日以内にこれに対する議会の承認を得る。
10. 国家予算案を議会に提出し、議会の審議と承認を得る。
11. 議会の本会議、委員会、審議会に出席することができる;議会の承認を得て全人民投票(国民投票)施行を決定する;議会と国民に対する教書を読む。
12. チェチェン共和国全土のあらゆる事件につき特赦の権利を行使する。
13. 勲章その他のチェチェン共和国褒章を授与し、特別の称号(官位)および名誉称号を与える。
14. チェチェン共和国国籍の取得と離脱の諸問題を法制に従って決定する。
15. 発議権をもつ。
16. 大統領令を発し、その署名より10日以内にこれを発表する。
17. 共和国議会に対し少なくとも年間に一度は採択した経済その他のプログラムの遂行状況および共和国内の状況に関する報告を提出し、国民向けの教書を読む。
18. チェチェン共和国憲法および諸法が大統領に与えたその他の権限を行使する。

第74条

大統領が犯罪をおかした場合大統領を解任することができる。議会はこのような告発を受けた場合、三分の二以上の多数を以って大統領解任を上程するか否かを決定する。上程が決議されればこれを憲法裁判所に移管し、裁判官の三分の二以上を持って結審する。憲法裁判所審判受入れの最終判断は議会が行う。チェチェン共和国大統領解任は議会議員総数の三分の二以上の賛成票が投じられた場合成立したものとする。

第75条

大統領と同時に5年の任期を持ってチェチェン共和国副大統領が選出される。

副大統領候補は大統領候補が決める。大統領候補への投票は同時にその推薦する副大統領候補への投票をも意味する。

大統領の委任により副大統領は大統領権限の一部を行使することができる。大統領が一時的にその責務を遂行できない状態にある場合、副大統領がその職責を遂行する。この場合副大統領の権限は24時間以内に議会の承認を得るものとする。大統領退任もしくは解任に場合、法に基づく新たな大統領選挙まで副大統領が大統領となる。

副大統領解任もしくは退任に当たっては、大統領は新たな副大統領を任命する。新たな副大統領は議会議員の過半数が賛成票を投ずることによりその地位に就任する。副大統領が他の任務を兼任することはできない。

第76条

共和国大統領は憲法、共和国諸法、共和国議会決議に基づき、これらの執行のため大統領令および大統領布告を公布し、その履行状況を調査する。共和国大統領令は共和国憲法および諸法と不一致があってはならない。大統領令は共和国全土において強制力を持つ。共和国領土においては行政機関の決定が共和国憲法に違反する場合、大統領はその効力を一時留保する権利を有す。

第77条

共和国大統領および副大統領は不可侵であり、法により保護されている。

第78条

チェチェン共和国内閣は行政執行機関であり、チェチェン拠和国大統領に従属する。

内閣の構成は内閣議長、その代理、内閣構成員で構成する。

内閣の構成は大統領の提案によって決定し、共和国議会がこれを承認する。

第79条

共和国内閣は大統領および共和国議会に対し責任を負う。 新たに形成された内閣は共和国議会に対し自らが任期中に行う活動のプログラムを提出する。 内閣は共和国議会に対し少なくとも年に一度自らが行った業務を報告する。 共和国議会は内閣に対し不信任を表明することができ、この場合内閣は辞職する。内閣辞職決議は共和国議会総数の三分の二以上の多数で可決される。 大統領が新たに選出された場合、内閣は辞職する。

第80条

内閣は自らの権能に属する国家行政の諸問題を決定する権限をもつ。

第81条

内閣は共和国諸法、議会決議、大統領令に基づき、これらの執行のため決議および命令を公布し、その履行状況を調査する。チェチェン共和国内閣決議および命令は共和国全土において強制力を持つ。

第82条

内閣の構成、権限、活動規則、他の国家機関との関係はチェチェン共和国内閣法に定める。

第83条

共和国国庫の歳入と歳出はバランスしなくてはならない。

最大許容赤字幅は法に定める。

第84条

共和国国庫の歳入は法に定める租税、義務的支払、賦課金および関税、国有資産からの収入およびその他の収入で構成する。租税、賦課金、関税の種類と料率は法に定める。

第85条

共和国の歳出は国庫から支出する。

共和国諸経費支出は議会承認の予算項目のみについて行われる。

国の歳入歳出に係わる詳細な報告は毎年発表しなくてはならない。

第4章
選挙制度

第86条

チェチェン共和国における選挙は普通平等直接選挙権に基づき、秘密選挙で行われる。

第87条

選挙には17歳に達したチェチェン共和国国民が参加する。

裁判所が行為能力なしと認めたもの、自由剥奪の刑を申し渡す裁判所判決が発効した者は立候補することも、投票に参加することもできない。

第88条

議会議員、地方自治体職員および公務員選挙の手続は本憲法および諸法に定める。

第5章
地方自治体

第89条

地方自治は代表統治機関および行政統治機関が行うか、もしくは直接民主主義の形態で行う。地方自治機関の名称は法令に定める。

第90条

地方自治機関はチェチェン共和国憲法および諸法の枠内で、その権限の範囲内においては国権から独立して機能する。

第91条

自治の代表機関はそれぞれの地域における主要な地方統治機関である。

第92条

地方自治機関は独立してその予算を作成し、承認し、執行する。地方自治の予算等の資金は没収してはならない。

第93条

国民は地方自治機関およびその公務員の決定および行為に対し法廷で不服を申立てる権利を有す。

第6章
司法権

第94条

チェチェン共和国において司法権は裁判所のみがこれを行使し、立法府、行政府、政党、その他の社会的連合組織および政治勢力から独立して行動する。チェチェン共和国憲法および諸法に定める司法機関以外は何人も司法権の機能と権限を持つことはできない。

司法機関はチェチェン共和国の立憲体制、国民の権利と自由を擁護し、行政府によるチェチェン共和国の法律、法令ならびに憲法の不正な運用を監視することをその目的とする。

第95条

司法権は裁判を実施することにより行使する。 チェチェン共和国領土においては司法機関の決定は全ての国家機関、公共機関、公務員、法人、個人に対し強制力を持つ。

第96条

チェチェン共和国国民は陪審員の義務を遂行することによって裁判に参加することができる。

陪審員団は法令に定める手続により当事者双方で構成する。

第97条

裁判官は独立して職務を行い、法のみに従う。裁判官は法にしたがって誓約を行う。

裁判官は教職以外の有給の仕事に就くことはできず、政党員になることもできない。

第99条

チェチェン共和国憲法裁判所議長およびその代理、チェチェン共和国憲法裁判所裁判官、チェチェン共和国最高裁判所議長およびその代理、チェチェン共和国最高裁判所裁判官、都市および地方(地域)裁判所判事はチェチェン共和国議会が選出する。

第99条

チェチェン共和国憲法裁判所は下記の権限を持つ:

- チェチェン共和国諸法および大統領令の合憲性の判定;
- 国家機関同士および国家機関と公共団体間の憲法論争の判定;
- チェチェン共和国大統領の憲法および諸法違反告発にかかわる判定。

憲法裁判所が違憲と判定したチェチェン共和国諸法および大統領令は憲法裁判所の決定が公表された日に失効する。

憲法裁判所所管事項に関する憲法裁判所決定はすべて最終とする。

憲法裁判所における審理の手続は法に定める。

第100条

チェチェン共和国には最高裁判所、グロズヌイ市裁判所、都市および地方(地域)裁判所、軍事法廷があり、責務を遂行している。これ以外の裁判所はチェチェン共和国諸法によってのみ新設することができる。

第101条

チェチェン共和国最高裁判所は下位裁判所が行う裁判監視機能を果たし、チェチェン共和国の民法および刑法事件を審査する。

チェチェン共和国最高裁判所、グロズヌイ市裁判所、都市および地方(地域)裁判所、軍事法廷の組織および手続はそれぞれの法律により規制する。

第102条

全ての法廷における審理は公開とする。

非公開法廷での審理は法に定める場合のみ、あらゆる訴訟手続を遵守して行われる。

法廷における審理は裁判官の合議、あるいは一人の裁判官、もしくは陪審裁判により行う。

刑事事件一審裁判における欠席尋問は、法令に定める場合を除き、行ってはならない。

第103条

訴訟は弁論を原則として行う。

訴訟のどの段階でも弁護を要請する権利が認められる。

第104条

容疑者、被告人、未決囚、既決囚には弁護を受ける権利を保証する。

訴訟の当事者たる被害者およびその他の国民にはその権利と合法的利益の擁護を保証する。

第105条

被告は有罪が法に定める手続により証明され、裁判所の判決により確定するまでは無罪とみなす。

第106条

訴訟はチェチェン語もしくはロシア語で行う。訴訟当事者が訴訟の言語を知らない場合、あらゆる関係書類を読み、通訳を同伴して訴訟に参加する権利、法廷での発言に自らの言語を使用する権利を保証する。

第107条

事件審理中に、適用した基準法がチェチェン共和国憲法に違反すると法廷が認めた場合、訴訟手続を一時停止し、チェチェン共和国憲法裁判所に対しその法律が違憲である根拠を示し、見解を伝える。

第108条

法人間の経済訴訟審理を目的としてチェチェン共和国仲裁裁判所があり、責務を遂行している。

チェチェン共和国仲裁裁判所の運営規則と業務は法に定める。

第7章
法と法秩序の擁護

第109条

チェチェン共和国領土における法と法秩序の擁護には立法府、行政府、司法府、弁護士、国民が参加する。

適法性と法秩序を護るための国家機関に与える権限についてはその限度をチェチェン共和国諸法に定める。

チェチェン共和国立法府直属の法執行機関はチェチェン共和国検察庁、チェチェン共和国犯罪調査委員会、チェチェン共和国国家保安室である。

チェチェン共和国行政府直属の法執行機関は法務、内務、国境警備、税関諸機関・団体である。

チェチェン共和国の領土においては犯罪にかかわる捜査等の機能を独自に遂行する私立および公共の団体の設立は禁止する。

社会的連合組織は法執行国家機関がチェチェン共和国諸法に従って行う適法性と法秩序、国民の権利と自由の擁護に協力することができる。

第110条

チェチェン共和国検事総長および検事総長が管掌する検事は、チェチェン共和国領土内で効力のある諸法および国際法上の法令を、チェチェン共和国の立法府、行政府、裁判所各々の最高機関を除く全国家機関、公共団体、その公務員、国民が全土において正確に、一律に執行し、援用するべく監視を行う。

チェチェン共和国検事総長は5年の任期を以ってチェチェン共和国議会が任命し、検事総長が管掌する検事は検事総長の指名によりチェチェン共和国議会が同じく5年の任期を持って任命する。

チェチェン共和国検事局の運営および業務規則は法に定める。

第111条

チェチェン共和国国家保安室およびその管掌する諸機関はその権限の範囲内でチェチェン共和国の立憲体制、国家主権、国益、領土の保全を擁護する。

国家保安室の長はチェチェン共和国議会が任命する。

チェチェン共和国国家保安室の運営および業務規則は法に定める。

第112条

チェチェン共和国犯罪調査委員会およびその管掌する諸機関はチェチェン共和国全土で発生した犯罪の予備的調査を行う。

チェチェン共和国犯罪調査委員会議長は5年の任期を持ってチェチェン共和国議会が任命する。

チェチェン共和国犯罪調査委員会の運営および業務規則は法に定める。

第113条

国民および団体に対する法律上の援助は弁護士団等の任意の弁護士団体、弁護士会社、その他弁護士活動に従事する権利を持つ個人が行う。

法に定める場合、法律上の援助は無償で行う。

チェチェン共和国における弁護士業営業規則は法に定める。

第8章
補則

第114条

チェチェン共和国の首都はグロズヌイである。チェチェン共和国の象徴たるチェチェン共和国国旗および紋章は法にこれを定める。

チェチェン共和国国歌はチェチェン共和国議会決議で承認する。

第115条

チェチェン共和国憲法はチェチェン共和国議会議員総数の三分の二以上が賛成票を投じた決定により採択し、また改正する。

憲法改正案を提出することができるのは本憲法により発議権を賦与された機関および個人である。

第116条

本憲法はチェチェン共和国議会がこれを採択した日に発効する。

仮訳:今西昌幸