「中継塔問題を考える九州ネットワ−ク」は九州内の40地域で携帯中継基地局問題に取り組む団体・個人で構成されている組織で、電磁波研会報17号2〜5ペ−ジ掲載の省庁交渉にも2名が参加され、いつも当研究会に貴重な資料・アドバイスを提供していただいています。
特にいま福岡県三瀦町(みずまちょう)、熊本県熊本市楡木(にれのき)、大分県別府市春木(はるき)の3ヵ所は重要局面を迎えていますので報告します。3ヵ所とも相手はNTTドコモ。
<福岡県三瀦町>
2001年11月にドコモが鉄塔建設工事を強行しようとしたため、住民が抗議行動をとったのに対しドコモは住民を相手に「工事妨害禁止仮処分申し立て」をしました。その結果、福岡地裁久留米支部は2002年3月にドコモの主張を支持し住民の“工事妨害”を認めました。そこで住民側は2002年4月、「基地局の建設・操業差し止めの仮処分申し立て」を裁判所に提出しました。
弁護士は5人で、その準備書面の内容は(1)ドコモの建設強行は住民の理解を得る努力をしないで企業利益を追求しようというもので企業の権利濫用である、(2)国の電波防護指針値を遵守しているからドコモは安全と主張するが、WHOのレパチョリも「適切な曝露尺度に関する知識が不足して(中略)適切な安全係数を確実に決められない」と述べているように、制限値は今後より厳しい数値に変更することは自明であり健康のおそれは存在している、(3)住民は「建設絶対反対」を言っているのでなく、人家から離れた所へ「移転希望」しているのであり、その声を無視し強引に予定地をドコモが決めているのも権利濫用である、と明快な論理展開をしています。
また荻野晃也京大講師が「意見書」を提出しているが、これも豊富なデ−タとわかりやすい表現ですぐれたものです。
ところが、6月20日、福岡地裁久留米支部は住民の建設操業・差し止め仮処分申し立てを却下しました。その却下内容はすべてドコモ側の主張の受け売りで不当なものです。
つまり「健康被害が生じる可能性は直ちには認めがたい」とし「鉄塔建設地はドコモが自由に決める」という内容です。
住民側は、翌日6月21日に「鉄塔建設・操業差し止め」の本訴訟(本裁判)を裁判所に提出し、長期戦に入りました。
6月22〜23日に当会の事務局長が熊本を訪れましたが、そこで三瀦町の方にお会いしすでに建った鉄塔の写真を見せてもらいました。醜い姿の鉄塔です。住民たちは今後も粘り強く取り組んでいくと話されていました。5人の弁護士のうちの2人(馬奈木昭男氏と高橋謙一氏)はごみ弁連(ごみ問題を闘う弁護士連合)の有力メンバ−で全国的に環境問題で著名な弁護士です。三瀦町訴訟申立書・準備書面・荻野意見書はどれも今後全国で携帯会社相手に活用できるものです。入手希望者は下記にお申し込みください。資料代(千円)プラス送料が必要です。
<連絡先>
中継塔問題を考える九州ネットワ−ク:宮崎周事務局長
〒862-0935 熊本市御領2−8−5
TEL:096-388-1765
<熊本県熊本市楡木>
楡木地区は6月22日に当会の事務局長が訪れた時、前日にドコモがクレ−ン重機を入れ、いまにも鉄塔を組み立てようとしている最中でした。ここはドコモの鉄塔建設を許さないための監視態勢は取っていましたが、三瀦町のような抗議行動は取っていませんでした。にもかかわらずドコモは約30人を動員し、うち10名以上はビデオ撮影隊で住民を撮り「工事妨害」というありもしないシナリオつくり三瀦町と同じように住民を仮処分で訴え裁判所から「工事妨害認定」を得た上でクレ−ン重機を搬入しました。「見せしめ」的に住民を脅すやり方です。住民は三瀦町同様、ドコモの脅しに屈せず裁判に訴えました。
直近の情報では、福岡県三瀦町と大分県別府市の両弁護団が楡木裁判弁護に加わるとのことです。
<大分県別府市春木地区>
大分県別府市春木では、電磁波研会報16号6〜7ページで紹介したように、わずか1回の住民説明会でドコモが鉄塔を建設してしまったため、小学生や幼児など16歳未満の子供たち28名が原告となり「基地局の建設・操業差し止め仮処分申請」を大分地裁に提出しました。
今回あまりにもドコモのやり方が住民無視のため、住民側はこうした企業の横暴を繰り返させないよう別府市に建設規制強化を要望し、別府市は条例改正しました。(今日新聞2002年7月4日に報道)。内容は15メ−トル以上の工作物建築の際は建築申請前に住民説明会を設置業者は行なうよう義務づけることで、ドコモのような横暴企業を規制しようというものです。
同じようなケ−スとして大分県湯布院町が1999年10月に条例改正しました。湯の町である湯布院町でも携帯基地局問題があり、1990年に制定されていた「潤いのある町づくり条例」に「工作物で10メ−トル以上のもの」を条例適用対象に新たに加えました。そうすることで基地局建設の際は「町との協議必要」とすることで歯止めをかけたものです。
2002年7月25日に大分地方裁判所で「審尋」があり、原告を代表して小学校児童会長をしている小学校6年生(女子)が裁判所で「ドコモの鉄塔建設強行の不当性と将来における健康不安」を訴えます。原告の訴状も立派なものです。この関連資料を入手したい人は三瀦町同様に「資料代千円プラス送料」で九州ネットワ−クが扱います。
ドコモの横暴さは住民の怒りを買い、それが日本中で住民の決起をもたらします。