□湯の町別府の鉄塔騒動
大分県別府市。日本を代表する温泉のメッカがドコモのケ−タイ鉄塔建設で揺れている。
それは「明日から工事を始めます」こんな挨拶から始まった。あまりにも唐突なドコモのやりかたに近隣の住民は、一体どんなモノが建てられるのか不安にさせられた。「ちょっと待ってください。そんな話は聞いていませんよ」と抗議しても、ドコモは「法的になんら問題はない。地権者がOKしているのに何を言うか」と日本全国お決まりの開直りをする。
□話し合いなどあったもんじゃない
大分県別府市・春木地区に建設予定地の隣接数軒に「明日から工事に入ります」と挨拶が来たのが2002年2月3日のこと。急遽、住民側の要請でなんとか説明会が開かれたのは3月17日の1回のみ。そのわずか3日後の3月20日にドコモは住民の声を圧殺して工事に着工した。
こんな横暴がまかり通っていいのだろうか。だがこれが日本全国で繰り広げられているケ−タイ会社の実態でもある。
□だが、住民は黙っていなかった
電磁波のことを国民のほどんどは知らないし、日の出の勢いのケ−タイ会社が金と力づくで押し切れば住民はあきらめるにちがいない。これが会社側の目論みだ。
だが、この地区の住民は会社側の誤算を生んだ。それもユニ−クな取り組みで反撃を始めた。
2000年5月、海の向こうのイギリスでサッチャ−首相時代に首相の科学アドバイザ−を務めた大物のウィリアム・スチュワ−ト卿を委員長とする「携帯電話問題独立専門委員会」(通称スチュワ−ト委員会)が「16歳未満の子供の携帯電話使用は控えるべきだ」とする画期的な勧告を出した。そして英国教育省は国内の全学校にその内容でパンフレットを配布した。
そこで、すべて16歳未満の小学生や幼児28名だけで4月25日、大分地方裁判所に「基地局の建設ならびに操業を差し止める仮処分申請」を提出した。しかもそこに付いた弁護士は10名という大所帯。
いま、日本ですこしづつだがなにかが変わろうとしている。第2、第3の春木地区が続く予感がする。
いままでの鉄塔裁判は電磁波そのものの安全性で争うより、景観/落雷誘発/鉄塔地盤軟弱からの倒壊危険性等、いわば“からめ手”で争うケ−スが多かったが、この春木地区の「仮処分命令申立書」は真っ向から電磁波の安全性論争を掲げている。
<関連資料>
・「携帯基地局は健康に害」幼児ら28人を申立人に、中止の仮処分申請(大分合同新聞・2002.4.26)
・NTTドコモ鉄塔建設。工事差し止め請求へ。青木地区住民が別府市に勧告を要望(今日新聞・2002.4.18)