[投稿] 韓国ソウル 〜 日本軍「慰安婦」問題解決のための
第774次水曜デモ及び世界同時連帯行動 参加報告


参加されたハルモニたち
 8月15日ソウル、断続的な小雨と時折強い陽射しが照りつける蒸し暑さの中、水曜デモに参加した。若者を中心におよそ300名。そして韓国各地から、高齢の日本軍「慰安婦」被害者ハルモニたちが無理を押して参加されていた。
 毎週水曜日、これが774回目、実に16年に及ぶ途切れることのない闘いは、世界各地に拡がり続け、数年前から始まった世界同時連帯行動も定着してきている。今年は3月7日(3・8世界女性の日)と8月の半ば2週間を世界同時連帯行動週間として設定し、5月にはソウルで第8次「アジア連帯会議」が開催され、さらに11月25日世界女性暴力追放の日に向けて世界共同キャンペーンが展開されている。

水曜デモ参加者
 毎回、挺対協スタッフに混じって、大学生ボランティアが入れ替わり立ち代り生き生きと働く姿が眩しい。親子連れや、「慰安婦」問題講演会で触発されて自発的に生徒が学内で参加を呼びかけてきたという制服姿の高校生集団。韓国語、日本語、英語、ドイツ語、中国語など多彩な言語が飛び交う国際色豊かな水曜デモは、まさしく韓国挺対協が提唱する「青少年と市民への生きた人権教育、平和教育の場」となり、「国内外の市民団体と連帯する場」であり、文字通り「動く街頭博物館」としての役割を果たしている。


発言するイ・ヨンス ハルモニ
 7月30日米議会下院で採択された「慰安婦」問題での決議を、韓国現地ではどのように受け止められているのかが知りたかった。決議の採択が現実味を帯びてきたころから、挺対協はじめ、世界中から決議を支持・歓迎するアピール声明が出されてきたが、採択後の今、これからが問題である。決議自身にはもちろん拘束力はない。決議があがっても「謝罪はしない」と公然と言い放ってきた安倍首相はこの問題への言及を自ら封印し、無視・沈黙を決め込んでいる。この状況をどう突破していくのか。どう展望を切り開いていくのか。挺対協は冷静に事態を見極めつつ市民レベルでの国際連帯と、韓国政府へのはたらきかけを強めていくことをこれまで以上に重視しているかのようだ。
 ハルモニたちの表情は明るかった。自分たちが見捨てられていないこと、国際社会・国際世論が味方となりつつあることを実感されたのではないだろうか。中でも、膝の痛みをこらえながら公聴会で必死に証言し、現地での集会や交流に精力的に飛び回り、米議会と米世論に大きな影響を与えたイ・ヨンス(李容珠)ハルモニは「まだ時差ボケがなおらない、ゆうべもほとんど寝てない」と言いつつ終始上機嫌で、集会での発言も生気に満ち大いに会場を沸かせた。一時、水曜デモから遠ざかっていたという「ナヌムの家」のハルモニたちも戻ってこられ、この日も動ける人はほとんど参加されていたようだ。自らの闘いが報われること、目に見える成果を全身に感じることが彼女らを奮い立たせている。


ユン・ミヒャン共同代表
 集会半ば、ユン・ミヒャン(尹美香)挺対協共同代表の発言でひときわ印象的だったのが、「アフリカ、中東地域でも連帯行動が行われている」というくだり。そう語る時の彼女のなんと晴れやかで誇らしげな表情だったろう。集会声明文でも触れられているが、なぜアフリカや中東でこの問題が?―――そこが激しい紛争地域であり、今なお続く性暴力と残虐行為のただ中にあるまさにその地で、日本軍「慰安婦」被害者たちの闘いが、苛酷な性暴力被害に苦しむ女性たちを勇気づけ希望を与えているからなのだ。被害者ハルモニたちと挺対協・支援者たちは、この闘いが過ぎ去った歴史のひとコマではなく過去と現在をつなぐもの、現在の戦争と性暴力根絶のための闘いであることを強く意識している。だからこそ若者たちを惹きつけ行動に駆り立てる。だからこそこれほど長きにわたって信じられないほどの粘り強さで、この困難な闘いの継続を可能にしている。ただ被害者救済だけを目的にしていたなら、到底なしえなかったであろう国際連帯の急速な拡大は、日本軍「慰安婦」問題、戦時性奴隷制問題が決して過去の問題ではないということを事実をもって雄弁に語っている。

小中学生も!
 米議会決議はその途上に結実した成果の一つであり、一部勢力・団体の政治的駆け引きなどによってではなく、永きにわたる地道な活動によって得られた国際的な理解と市民連帯の拡がりの中で勝ち取ったものである。
 安倍政権、日本政府の狼狽ぶりは「井の中のカワズ」そのもの。国際社会で孤立しているのは日本と日本政府、安倍極右反動政権であることを、日本国内から突きつけていかなければならない。安倍首相は自らの暴言が招いた事態にあわてふためき、被害者ではなく米大統領に「謝罪」して失笑を買い、ブッシュがこれを「受け入れた」という、ぶざまな恥さらしを、しかし、笑ってばかりではいられない。日本国内での多くの受け止め方もまた、「今になってなぜアメリカで?」と、降ってわいたような違和感をぬぐえないでいる。それは、度重なる国連勧告も、世界中に「日本軍『慰安婦』被害者に正義を!」と沸き起こる声もことごとく無視してきた、マスコミの意図的な黙殺と怠慢に大きな責任があるとはいえ、日本国内における加害責任追及がいかに脆弱であるかの裏返しでもあることを痛感しないではいられない。かつて南京大虐殺が世界中を駆け巡り驚愕と非難が沸き起こる中で、ただ日本人だけがその事実を知らされず、恥ずべき無知の中に安穏としていたことを想起させる。同じ轍を踏むのなら、私たちは歴史に何を学んだというのか。

 午後2時すぎに終わった集会の後片付けの最中、挺対協スタッフが数十人の若者たちを集めて檄をとばしていた。「皆お腹へったでしょうけど、あと1時間がまんして!」。蒸し風呂のような暑さの中で、汗だくで思い切り声を張り上げた2時間余り、空腹をかかえてさらにこれから「人権博物館」建設のためのカンパ活動に手分けして繰り出すのだという。はじめて水曜デモに参加したと話していた大学生の顔が、その中にあった。どこまでも明るくエネルギッシュな闘いは、常に参加者から新たな力をくみ出しているかのようである。
 私たちは日本で、このような力をどう掘り起こしていけばいいのだろう。ハルモニたちに残されたわずかな時間を思えば、立ち止まっているわけにはいかない。日本国内で、私たちが自国政府と対決すること、教育反動と憲法改悪をはじめ新たな反動強化、軍国主義強化の策動を一つ一つ押し返していくことが、唯一ここに集った人々との闘う連帯の道であることを再度自覚させられる一日だった。

2007.8.20 N・Y



日本軍「慰安婦」問題解決のための
第774回定例水曜デモ 及び 世界連帯行動の日 声明書


 わが民族が真に解放されたと誰が言えるのか? 日帝の植民地から解放されたと宣言されてから62年、しかし社会の隅々にしみこんでいる植民地の残滓は依然として清算されず、植民地の傷は膿むがままに膿み、呻吟している。南北は分断されたままわれわれの主権は依然として周辺の強大国によって意のままにされており、わが国民の外交的保護権さえも安全に保障されえない状況に置かれている。

 日本軍「慰安婦」被害者たちは16年もの間水曜デモを行い、米国へ、スイスへ、日本へ、世界各地へ老躯を引きずって駆け回りながら正義の回復を要求してきた。疲れることを知らず投げ出すことを知らない生存者たちの運動は、決して過去の歴史のひとコマとして、すでに終わった運動史として記録されるものではない。アフリカで、中東地域で、今も人権を蹂躙され性暴力を受けている女性たちへの激励であり希望であり連帯へと拡がりつつある。過去と現在が手をつなぎ、平和な未来を目指してきつつあるのだ。ソウルの真ん中から始まった水曜デモは行動する博物館となり、アジアを越えて遠くアフリカまで「日本軍『慰安婦』被害者に正義を!女性への暴力を止めよ!」と叫びながら、広がっていきつつある。今日の集会は、世界各国における日本軍「慰安婦」問題解決のための世界連帯の日と定め共に連帯している。

 しかし日本政府は依然として日本軍「慰安婦」の強制動員を認めず、犯罪認定もしていない。偽られた歴史を真実だと歪曲し、金で自分たちの罪を覆い隠そうとしている。在日朝鮮人たちに対する弾圧と人権蹂躙をさらに露骨に行い、教育法改悪と平和憲法9条改悪など軍国主義の復活を助長しつつ、アジアに戦雲を助長している。

 わが国政府も周辺国の顔色をうかがうことに汲々として、「静かな外交」政策を前に押し立てたまま、日本政府への沈黙によって責任回避を助けている。1965年の韓日協定に日本軍「慰安婦」問題は含まれていなかったことをもってして、日本政府の法的責任が残っているという立場を発表したにもかかわらず、これは国内用だけであり、外交的な政策においては全く反映もしないでいる。このような韓国政府の恥ずかしい沈黙の中で、日本軍「慰安婦」生存者たちは一人、二人とわれわれの傍らを去り、今や114名の被害者たちが生き残って、日本政府の謝罪と賠償を首を長くして待ちわび、一日一日を耐え忍んでいる。

 本当の「解放」などであるとは言えない「解放62周年」の8・15を迎え、日本軍「慰安婦」被害者に正義が回復されることを願うわれわれは、南北と海外同胞の名において、全世界市民の名において、次のように要求する。

1. 日本政府は、侵略と掠奪、徴用と徴兵、日本軍性奴隷制等、過去にわが民族に対して犯した犯罪と関連した全ての資料を全面公開し、それに対する公式の謝罪と賠償等、法的責任を履行するための政治的・法的措置を早急に実行せよ!
2. 日本政府は、歴史歪曲、戦争犯罪に対する美化・称賛を即刻中止し、歴史教科書に日本軍「慰安婦」制度と全ての戦争犯罪、反人倫的諸犯罪を正しく記録し、二度とこのような犯罪が起こらないよう措置せよ!
3. 日本政府は、在日同胞たちに対する民族的差別、弾圧行為を即刻中止し、在日同胞たちの人権保護のために社会的制度的措置を整えよ!
4. 日本政府は自衛隊法改訂と[平和憲法]改悪により軍国主義を復活させることで世界平和を脅かす行動を即刻中断せよ!
5. 韓国政府は、「沈黙外交」によって日本軍「慰安婦」被害者たちの痛みを傍観するのでなく、積極的な外交政策によって問題解決の先頭に立て!

われわれは日本政府から徹底的な真相究明と公式謝罪、完全な賠償を満足いくように受け取り、日本軍「慰安婦」被害者への正義が回復されるその日まで、最後まであきらめることなく闘う。併せて、われわれのこの闘いを7000万わが民族の連帯で! 世界の女性・人権諸団体との連帯で! 必ずや成就し遂げるのだ。


2007年8月15日
日本軍「慰安婦」問題解決のための
第774回定例水曜デモ及び世界連帯行動の日 参加者一同





<カンパのお願い>
  日本軍「慰安婦」被害者の名誉と尊厳回復のための韓国ソウル「戦争と女性の人権 博物館建設基金」にご協力下さい。建設予定地を確保したにもかかわらず、必要な資金が不足していることから着工を1年延期せざるをえないという厳しい実情にあります。皆様の支援を再度心からお願いいたします。