[翻訳紹介]
平澤基地拡張に反対する現地市民団体による抗議声明
−−5月18日 光州(クァンジュ)民衆抗争26周年を記念して新たな大衆行動を提起−−

 韓国平澤基地拡張反対闘争の続報である。一部報道で、平澤の闘争が『暴力的なもの』から『平和的なもの』へ方針転換したかのような報道がなされた。しかし、一貫して平和的手段で基地拡張に抵抗しているのは現地住民と支援者たちであり、軍と警察と雇われヤクザまで投入して、暴力をほしいままにしているのは、盧武鉉政権である。
 今回は、現地で闘っている人たちの直接の声を伝えるために、『平澤米軍基地拡張阻止汎国民対策委員会(平澤汎対委)』を含む地元の市民諸団体の5月8日の共同記者会見文と『平澤汎対委』の5月11日の記者会見文の翻訳したものを転載する。
 あれだけの負傷者を出し、大量逮捕を余儀なくされたにもかかわらず、反対運動は、光州事件26周年にあたる5月18日、大規模な全国闘争を計画している。あくまでも大衆闘争で基地拡張の撤回を迫っていく構えである。私たちは引き続き、韓国の反基地闘争に注目し連帯していきたい。

※今回翻訳したのは『平澤汎対委』のホ−ム・ページからのものである(http://www.antigizi.or.kr/)。この一部は、日本語でも見ることができる。(http://www.ne.jp/asahi/cyura/kiyoko/hangukalbum.html

2006年5月15日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局





軍警の野蛮な強制執行および軍事保護区域指定を糾弾して
平澤(ピョンテク)対策委    2006・05・08 23:15
<記者会見文>

 軍警の野蛮な強制執行および軍事施設保護区域指定を糾弾し、平澤市民に犠牲と苦痛だけを与えている米軍基地拡張移転を全面再検討せよ!

 平澤地域の市民社会団体、宗教界、市民は、憂慮していた残酷極まりない事態が、彭城(ペンソン)(*1)の大楸里(テチュリ)、トドゥ里一帯に、5月4日〜5日に広がった戒厳令に準じる暴力と恐怖の雰囲気が続いている状況に対して、怒りと悲しみを抱くほかはない。

 一方的な米軍基地拡張は、彭城住民の共同体喪失のみならず、平澤市民全体に途方もない悪影響を及ぼす事案で、対話を通した平和的解決方式で解決しなければならないにもかかわらず、国防部は、非常戒厳状況のごとき1万5千余名に達する軍、警察、雇われヤクザを動員し、7百余名に過ぎない平澤住民と市民社会団体の人々を暴力的に制圧した。その過程で524人が連行され、200人余りの負傷者が発生するなど、平和だった大楸里を戦場にしてしまい、農民たちが熱心に育てた農地に、軍兵力を駐留させて鉄条網を設置し、軍事保護施設区域に指定する破廉恥なことを憚ることなくやりまくった。

 4日の軍隊投入と警察の流血鎮圧に続き、5日の大楸里では、軍人たちが民間人を武力で制圧し、警察が帰宅する市民および人権活動家たちを無差別に連行する"戒厳的状況"が発生した。この過程で、セクハラ、女性連行者の裸体検視など、深刻な人権侵害も発生した。

 また国防部は、5日の昼から、農地に囲まれた鉄条網を切ったという理由で集会参加者たちを捕縄でくくって暴力を加える事態まで行い、警察は、平和的キャンドル集会に参加して帰る人権擁護者たちを、真夜中に連行理由も明らかにせず、ミランダ原則(*2)を告知しないまま、手当たり次第に捕獲する如く連行する反人権的行為を行った。

 住民たちの生活基盤が凄惨に踏みにじられ、民主主義が蹂躙されている事態を前に、平澤市民の自尊心は崩れつつあり、共同体の平和が壊れつつある。呆れたことに、政府と一部言論は、米軍基地拡張反対運動が多数の平澤市民の参加と支持の中で行なわれていることにもかかわらず、外部の人と不純団体の介入と言い、真実を糊塗するなど言論統制と世論歪曲に打って出ている。平澤市民の反対世論は黙殺しつつ、徹底して彭城住民民を孤立させることにだけ血眼になっているのだ。

 政府と一部言論は、外部勢力が住民を扇動して利用しているとしつつ離間を計る卑劣な行為を止め、平澤市民の多数が米軍基地拡張によって苦痛を受けて反対しているという現実について、正確に直視しなければならない。

 平澤市民たちは、政府の一方的で強圧的な米軍基地拡張計画に反対している。既存の米軍基地が60余年間存在する間、平澤市民に政府が見せた態度は、平澤市民は国家のために一方的に犠牲を甘受しろというものであり、今また米軍基地を拡張するためには平澤市民の権利と生存は犠牲になってもかまわないという認識と強圧的方式のみであった。

 地域を代表する市長は、地域住民の生活基盤が凄惨に蹂躙され、平澤市民の自尊心が大きく傷付けられている状況であるのに、政府に対して抗議さえできないまま、住民たちに強行される暴力を放置している。

 更にひどいのは、地元の鄭長善(チョン・チャンソン)国会議員(*3)は、米軍基地拡張に反対する市民らをすべて反米団体の人々として片付けつつ、平澤を第2の光州(クァンジュ)にしている軍部隊の投入と人権蹂躙について積極的な擁護を買って出て、市民たちの怒りをかっている。

 平和と人権を踏みにじった国家暴力は、それ自体で国家犯罪だ。歴史の審判を恐れるなら、今からでも政府は、戦略的柔軟性合意(*4)を撤回し、平澤米軍基地拡張移転を打ち切るべきで、平澤市長と鄭長善国会議員は、地域住民に謝らなければならない。

 平澤地域非常事態会議に参加したすべての市民社会団体、宗教界、市民は、今日から、野蛮的な強制執行および軍事施設保護区域指定を糾弾して、軍兵力の即刻の撤収と軍事施設保護区域の撤回を要求する断食座り込みに入る。また、持続的な共同行動を通して、この土地の正義と平和を守って行く。

 断食座り込みに入りつつ、平澤非常事局会議一同は、政府が野蛮な暴行と人権蹂躙に対する徹底した真相調査と責任者の処罰、連行者全員の釈放、不法不当な軍事施設保護区域指定と軍投入の撤回を通して、平和的対話環境を作ること、対話を通した平和的解決のために平、澤市民社会団体と平澤汎国民対策委、国防部、公正な第三者が共に参加する社会的協議機構の構成を検討することを要求する。

2006年5月8日

 『野蛮な平澤強制執行および軍事施設保護区域指定糾弾平澤非常事態会議』:米軍基地拡張反対平澤対策委員会、民主労総平澤・安城(アンソン)地区協議会、平澤参加自治連帯、平澤農民会、民主労働党平澤市委員会、平澤労働者の力、平澤青年21、コドク国際化計画地区反対非常対策委員会(*5)、平澤キリスト教教会協議会、平澤外国人労働者人権センター

(*1)平澤の旧名で、大楸里を含む地域名
(*2)被疑者に、弁護士を付ける権利があること等を知らせる原則
(*3)与党、ヨルリン・ウリ党(開かれた私たちの党)所属
(*4)米軍のトランスフォーメーションに合わせた在韓米軍基地の整理統合計画に関する韓米合意
(*5)平澤市コドク面(ミョン)を国際化計画地区に指定して開発をしようという、建設交通省の計画に反対する市民組織



[記者会見文]平澤(ピョンテク)汎国民対策委の立場発表
平澤汎対委                 2006・05・11 12:06

5・18精神(*6)継承 軍部隊撤収! 平澤米軍基地拡張全面再検討!
平和農作業実現汎国民大会に際した平澤汎国民対策委の立場

 5月4日と5日、軍・警・雇われヤクザ1万5千余人を動員した野蛮な国家暴力が強行された後、その日の惨状が知らされる中、国防部の無謀な軍投入と警察の荒れ狂う暴力に対する批判世論が激しくなっている。全国各地でこれに抗議する自発的なキャンドル行事が打ち続いており、平澤の事態を対話を通して平和的に解決しなければならないという世論が高まっている。
 しかし国防部と崇米事大主義の言論は、百万長者である住民対策委の中心幹部たちが生存権を云々するだとか、住民は補償を望んでいるのだが外部勢力が住民をそそのかして反米騒ぎを繰り広げているだとか、軍人がデモ隊に一方的にやられただとか、大々的び陰湿な攻撃工作を繰り広げている。放送は、軍や警がやられる場面を主に放映し、事実を隠蔽・歪曲している。
 歪曲されでっち上げられた世論を頼りに、国防部は駐屯軍に対する鎮圧棒支給、鉄条網進入者に対する軍刑法適用を言い放っており、検察・警察は、汎国民対策委幹部らに対する召喚状を発行するなど、総体的な攻勢と脅迫を加えている。

 多くの国民が心配している平澤事態の根源は、住民の平和的生存権を蹂躙し、韓半島の平和を脅かす駐韓米軍の『戦略的柔軟性』を後押しするための平澤米軍基地拡張事業を、住民との事前協議や国民的同意過程を経ないまま、韓米両国が密室で一方的に合意したところにある。
 事態が破局に向かって疾走している直接原因も、国防部が軍事施設もない所に保護区域を指定するために、人為的に鉄条網とテントを設置したところにある。さらに国防部が設置した軍事施設保護区域は、該当地域に何の軍事施設もない5月1日に指定したものとして、違法不当なことであると明らかになっている。

 従って私たちは、不法に指定された軍事施設保護区域と軍部隊撤収を要求し、駐韓米軍追加縮小に伴う平澤米軍基地拡張の全面再検討を要求し、平和な農作業実現を期す汎国民大会を平澤現地で開催する。
 合わせて、平澤事態の平和的解決のため、社会的協議機構の構成を要求する。また、拘束者の釈放と暴力鎮圧責任者の処罰、国防部長官および警察庁長官の退陣を要求し、盧武鉉大統領に最終的な責任を問う。
 私たちは、各界各層が参加する平和的で大衆的なやり方で、この大会を成功させる。

 今回の大会は特に、光州(クァンジュ)民衆抗争26周年を記念して、5・18精神継承大会とし行われる。80年の光州でのように、孤立して軍と警とに対峙して闘う平澤で、5・18精神の継承大会として行うのは、その意味を実質的に受け継ぐ大会という点で、非常に意味のあることである。

 私たちは、政府が恣意的判断で集会を許さなかったり国民の正当な意思表明を力で踏みにじるという態度を変え、平和的集会を保障し、国民の要求を受け入れて今までの一方的で強圧的な態度を捨て、対話を通して平和的に平澤事態を解決できる代案を提示することを要求する。

2006年5月11日

平澤米軍基地拡張阻止汎国民対策委員会

(*6)1980年5月18日、光州事件が勃発した。5・18精神は、光州市民の抵抗精神のことを指している。





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