反占領・平和レポート NO.48 (2006/7/22)
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.48

イスラエルと米国は一体となって新たな侵略戦争を開始している
Israel & U.S. Beginning Together a New Aggressive War
――イスラエル・米国はレバノンへの侵略をやめよ!
――ガザへの攻撃をやめよ!パレスチナ占領を終わらせよ!
-- Stop U.S.-Israel Aggressive War on Lebanon!
-- Stop the Aggression on Gaza Strip! End the Occupation on Palestine!



7月16日 「グッシュ・シャロム」「女性連合」などの呼びかけで行われたイスラエルでの反戦デモ
グッシュ・シャロムのHPから http://gush-shalom.org/pics/telaviv-16-7-06/

■イスラエル軍による無差別殺戮が続いている
 イスラエル軍の砲爆撃によるレバノン人の死者は、7月20日に300人を超えました。その大半は民間人です。しかも子どもたちがたくさん犠牲になっています。1,000人以上が負傷し、50万人以上が避難民となっています。イスラエル軍は、空爆を続けるだけでなく、予備役の新たな召集を行い、陸上部隊による侵略も強化しはじめました。7月21日付のイスラエル「ハ・アレツ」紙によれば、レバノン南部に越境攻撃している陸上部隊は数千人規模に拡大しています。
 パレスチナ・ガザ地区に対する攻撃もいっそう無差別殺戮の様相を強め、ガザ地区での死者は既に110人を超えています。それだけではなく、イスラエル軍が西岸地区ナブルスやトゥカレムでも軍事行動を行なったことが報告されています。
※「ナブルス通信/P-navi info」http://0000000000.net/p-navi/info/news/200607201625.htm
※「WAFA / Palestine News Agency」http://english.wafa.ps/body.asp?id=6968
※「Army invades Tulkarem」Ghassan H Bannoura - IMEMC & Agencies  http://www.imemc.org/index.php?option=com_content&task=view&id=20233&Itemid=1


■民衆の怒りの声が高まっている
 アラブ諸国の各地で民衆の怒りの声があげられ、抗議行動が広がっています。シリアの首都ダマスカスで、レバノン各地で、ヨルダンの首都アンマンで、イラクのバスラとキルクークで、クウェートで、またエジプトの首都カイロで、リビアの首都トリポリで。これらの抗議行動においては、異口同音にイスラエルと米国を非難し、パレスチナとレバノンの抵抗運動への支援と連帯が叫ばれました。レバノンの首都ベイルートでのデモでは、特にイスラエルを擁護し続ける米国と、手をこまねいている国際社会、アラブ諸国指導者たちに対しても、抗議の矛先が向けられました。

 米国内でも抗議の声が高まっています。7月14日にはフィラデルフィアで、18日にはニューヨークで、「レバノンとパレスチナへの攻撃をやめろ!」をスローガンに抗議行動が行なわれました。ここで特徴的なことは、米国がイスラエルと一体となって侵略攻撃を行なっているという観点が押し出されてきていることです。
※「米国-イスラエルの侵略攻撃に反対するニューヨークでの抗議行動 Protest in NYC against U.S.-Israel aggression」(「ワーカーズ・ワールド」)http://www.workers.org/2006/us/protest-0718/
「中東における米国-イスラエルの侵略攻撃を止めろ! Stop U.S.-Israel aggression in Middle East!」(「ワーカーズ・ワールド」)http://www.workers.org/2006/us/wwp-statement-0727/

 イスラエル国内でも、即刻、反戦の声があがっています。7月12日、イスラエル軍がレバノンへの攻撃を開始した数時間後には、国防省前で「グッシュ・シャロム」を中心とする200人の抗議行動が行なわれました。その際、通行人の反応は敵対的なものではなかったと、「グッシュ・シャロム」のスポークスマン、アダム・ケラー氏が報告しています(写真:http://gush-shalom.org/pics/kirya-13-7-06/)。


7月13日 「グッシュ・シャロム」「女性連合」などの呼びかけで行われたイスラエルでの反戦デモ
グッシュ・シャロムのHPからhttp://gush-shalom.org/pics/kirya-13-7-06/

 7月16日には、テルアビブで、ハマスおよびヒズボラとの捕虜交換交渉とレバノンへの攻撃中止を要求する2,000人のデモが、「女性連合」など数団体の呼びかけで行なわれました(写真:http://gush-shalom.org/pics/telaviv-16-7-06/)。ハイファでも、同じ日に女性たちを中心に抗議行動が行なわれています。さらに22日にもテルアビブで抗議行動が行なわれます。


■イスラエルの反戦平和団体からの訴え
 今回のレポートは、イスラエル国内で先進的に反戦平和運動を闘っている「女性連合」の中心的な組織の一つである「黒衣の女性たち(Women in Black)」のギラ・スヴィルスキーさんが全世界に発信した呼びかけと、「グッシュ・シャロム」のウリ・アヴネリ氏による事態の本質を暴いた論説を、翻訳紹介します。
(なお、1年半前にレバノンのベイルートで前首相のハリリ氏が暗殺され、反シリアが煽られてシリア軍がレバノンから撤退しましたが、そのときにもアヴネリ氏による論説が出され、「反占領・平和レポートNo.43」で翻訳紹介しました。レバノンをめぐる情勢のきわめてすぐれた分析が行なわれています。そちらもぜひ参照してください。)
※「米・イスラエルの危険な“火遊び”−−ブッシュ政権、第二期の狙いもやはり中東の石油支配と軍事覇権−−」(署名事務局)


2006年7月22日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局






[翻訳紹介1]

(ギラ・スヴィルスキーさんからの配信メールより)

現在中東で進行している危機に照らして、イスラエルの「黒衣の女性たち(Women in Black)」は、全世界の姉妹組織(とその盟友グループ)に呼びかけを発しています。次の要求を掲げて、この週末にそれぞれ独自の抗議行動をとってほしいと。

戦争を止めよ! 流血を止めよ!
イスラエルの占領を終わらせよ!
平和と正義のため交渉をはじめよ!


私たちは、姉妹と兄弟に呼びかけます。私たちに連帯して加わってくださることを。
それぞれのグループは独自にメッセージや形式や日時を決めてください。

私たちは既に、ウィーン、メルボルン、カルガリーで抗議行動が計画されているのを知っています。私たちは、他にも計画されている抗議行動について聞かせてほしいと思っています。

ご協力を感謝します
「イスラエル・黒衣の女性たち(Women in Black, Israel)」より



7月16日 「グッシュ・シャロム」「女性連合」などの呼びかけで行われたイスラエルでの反戦デモ
グッシュ・シャロムのHPから http://gush-shalom.org/pics/telaviv-16-7-06/



[翻訳紹介2]

本当の狙い
「グッシュ・シャロム」06.7.15
By ウリ・アヴネリ
http://zope.gush-shalom.org/home/en/channels/avnery/1152991173

 本当の狙いは、レバノンの現政権を変えること、そして傀儡政権を据えることである。

 それは、アリエル・シャロンの、1982年のレバノン侵攻の目的であった。それは失敗した。しかし、シャロンと、軍および政治的指導部におけるシャロンの生徒たちは、それを一度もあきらめたことはなかった。

 1982年のときと同じように、現在の軍事作戦も、米国の完全な協力の下で計画され遂行されている。

 1982年当時と同様に、レバノンの支配的エリート層の一部と協力していることも疑いない。

 それが主要なことである。その他のあらゆることは、雑音とプロパガンダである。


 1982年の侵攻の前夜、米国務長官アレクサンダー・ヘイグは、アリエル・シャロンに次のように述べた。開始する前に、世界中が受け入れるような「(原因となるべき)明らかな挑発行為」が必要である、と。

 その挑発行為は実際起こった。まさに適切なタイミングで。アブ・ニダルのテロ組織が、レバノンのイスラエル大使を暗殺しようとしたのである。
 今回は、必要な挑発行為は、ヒズボラによる2人のイスラエル兵士の拘束によって提供された。拘束された兵士の解放は捕虜の交換によって以外には不可能であることは、誰もが知っている。しかし、作戦行動を数ヵ月間継続する準備が整えられてきたこの巨大な軍事行動は、イスラエルと世界の公衆に、救出作戦として売り込まれた。

(何とも不思議なことに、これとまさに同じ事が、2週間前にガザ地区で起こった。ハマスとその仲間が一人の兵士を拘束した。それが、長らく準備されてきた大規模作戦の口実を提供した。その目的は、パレスチナ政府を破壊することである。)

 公式に宣言されたレバノン軍事作戦行動の目的は、ヒズボラを国境から遠ざけること、これ以上の兵士の拘束を不可能にし、イスラエルの町にロケット弾を発射することを不可能にすること、というものである。ガザ地区の侵攻も、公式には、アシュケロンとスデロトの街をカッサム・ロケットの射程外にすること、とされている。

 これは、1982年の「ガリラヤ平和作戦」に酷似している。そのときにも、一般公衆と議会は、戦争の目的は「カチューシャ・ロケットを国境から40km遠ざけること」だと聞かされた。

 それは意図的な嘘であった。戦争前の11ヶ月間、カチューシャ・ロケットのただの一発も国境を越えてはこなかったし、ただの一発も発射されてはいなかった。はじめから、軍事行動の目的はベイルートまで侵攻すること、そこに「クィズリング(売国奴の代名詞)」の独裁政権を樹立することであった。
 私が一度ならず詳述したように、シャロン自身が戦争の9ヵ月前に私にそう言ったのである。そして私は、その時に彼のしぶしぶの同意のもとで(しかし出所不明のものとして)しかるべくそれを公表した。

 もちろん、現在の軍事行動も、いくつもの副次的な目的をもっている。もっともそこには捕虜の解放は含まれてはいない。それが軍事的な手段によっては達成されえないということは、誰にでもわかることである。しかし、ヒズボラが何年にもわたって蓄積した数千のミサイルをある程度まで破壊することは、おそらく可能であろう。この目的のために、軍首脳は、イスラエルのいくつもの町の住民を進んでロケット弾の危険にさらすのである。彼らは、チェスの駒交換のように、そうする価値があると信じているのである。

 もうひとつの副次的目的は、軍の「抑止力」を名誉とともに回復することである。
 それは、南でのハマスと北でのヒズボラの大胆な軍事行動から受けた手痛い打撃で傷ついた軍のプライドの回復を意味する。

 公式には、イスラエル政府は、レバノン政府にヒズボラの武装解除とヒズボラを国境地域から移動させることを要求している。

 それは、複数の民族的宗教的コミュニティーがデリケートに織り成す現在のレバノン政権の下では、明らかに不可能である。わずかな衝撃でも、この建造物全体の崩壊をもたらし、国家全体を無政府状態に投げ込むこともありうる。長年にわたって一定の安定をもたらしてきた唯一の要素であったシリア軍を、米国が撤退させることに成功した後においては、特にそうである。

 レバノンに「クィズリング(売国奴)」を据えるという考えは、決して新しいものではない。1955年に、デイヴィッド・ベングリオンは、「キリスト教徒の将校」をつれてきて独裁者として据えることを提案している。モシェ・シャレットは、その考えがレバノンの諸事情についての完全な無知に基づいており、レバノンを木っ端微塵に破壊するものだということを示した。しかしそれから27年後、アリエル・シャロンは、それでもこの考えを実行に移そうとした。バシール・ジェマイエルが大統領に据えられたのだが、すぐに殺される結果に終わった。彼の弟アミンが後を継いで、イスラエルとの平和協定に署名したが、官邸から追い出された。(その同じ人物が今、公にイスラエルを支持している。)

 現在の計算はこうである。イスラエル空軍がレバノンの住民に十分な重爆撃を加えて、港湾も空港もマヒさせ、インフラを破壊し、居住地域を爆撃し、ベイルート・ダマスカス幹線道路を遮断し、等々すれば、レバノンの人々はヒズボラに激怒し、レバノン政府にイスラエルの要求を満たすように圧力をかけるだろう。現在の政府がそうすることは夢にも望み得ないから、独裁政府がイスラエルの支持の下に樹立される、と。

 それは軍事的ロジックである。私には私なりの疑問がある。大部分のレバノン人が、地球上の他のどんな人々でもとるであろうような行動をとるということは、十分想定されうる。つまり、侵略者に対して怒りと憎しみをもって行動するということである。それは1982年に起こったことである。そのときまでは玄関のドア・マットのように従順であったレバノン南部のシーア派教徒が、イスラエルの占領者に対して立ち上がり、ヒズボラを創設したのである。それが今ではレバノンで最も強力な勢力となったのである。もし今、レバノンのエリートたちがイスラエルの協力者として堕落すれば、彼らは政治地図から一掃されるであろう。(ところで、カッサム・ロケットやカチューシャ・ロケットが、イスラエルの住民をして我が政府に軍事行動をあきらめるよう圧力をかけさせることができただろうか。それと全く同じである。)

 米国の政策は矛盾に満ちている。ブッシュ大統領は、中東における「体制変革」を望んでいるが、現在のレバノン政権は、つい最近、米国の圧力の下に樹立されたばかりだ。この間ブッシュは、イラクを解体し、内戦を引き起こす(ここで予め述べられたように)ことに成功しただけである。もしすぐにイスラエル軍をとめないのであれば、おそらく彼は、レバノンでも同じ結果に直面するであろう。
 さらに、ヒズボラに壊滅的な打撃を与えることは、おそらくイランにおいてだけでなくイラクのシーア派の間にも怒りをかきたてるであろう。ブッシュの計画のすべては、イラクのシーア派の支持の上にたてられているのだが。

 それでどういうことになるか? パレスチナ人が支援を求めて叫び声をあげているときにヒズボラが襲撃と兵士誘拐を行なったのは、偶然ではない。パレスチナの大義は、アラブ世界ではあらゆるところで大衆的支持がある。ヒズボラは、他のアラブ諸国・諸勢力がみじめに何もできないでいるときに真の友であるということを示すことによって、大衆的人気と支持を拡大させたいと望んでいる。もしイスラエル・パレスチナ合意がこれまでに達成されていたなら、ヒズボラは、我々の状況とは関係のないレバノンの地域的現象にすぎなかったであろう。

 オルメルト・ペレツ政府は、成立から3ヵ月も経たずして、イスラエルを二正面戦争という状況に投げ込んだ。その目的は非現実的で、その結果は予見できない。

 もしオルメルトが、たくましく男らしい首相として第2のシャロンとして見られたいなら、あてがはずれるだろう。同じことは、本当に堂々とした安全保障の大臣と見られようとするペレツの絶望的な試みについても言える。この軍事行動――ガザとレバノンの両方とも――が、軍によって計画され軍によって命令されているということは、誰もがわかっている。現在イスラエルの政策決定を行なっているのは、ダン・ハルツである。レバノンでの軍事行動が空軍に任せられているのは偶然ではない。
(訳注:ダン・ハルツは初めての空軍出身参謀総長である。)

 一般市民は、戦争に熱心なわけではない。ストア哲学的な宿命論で、あきらめているのである。というのも、他の選択肢はないと言われているからである。そして実際、それに誰が反対できるだろうか? また、「拉致された兵士」を解放したいと思わない者がいるだろうか?
 カチューシャ・ロケットを除去したいと思わない者、抑止力を回復したいと思わない者がいるだろうか? 政治家の誰一人として、あえてこの軍事作戦を批判する者はいない。(アラブ人の国会議員を例外として。ただし、彼らはユダヤ社会に無視されている。)メディアは、将軍たちが席巻している。そして、それは制服組だけではない。メディアに招かれ、コメントし、解説し、正当化する元将軍たちも、ほとんどすべて異口同音に同じことを語っている。

(具体例として: イスラエルの最も人気のあるテレビ局が、私にこの戦争についてのインタヴューをした。それは、私が反戦デモに参加したということが耳に入った後で行なわれたものであった。私はとても驚いた。しかし間もなく――放送の1時間前に――低姿勢のトークショー担当者が電話をかけてきて言うには、たいへんなまちがいがありました、と。彼らは実は、シュロモ・アヴネリ教授にインタヴューするつもりだったのである。彼は、Foreign Office の元 Director General で、政府の行為をどんなことがあっても高尚なアカデミックな言葉で正当化してくれると当てにされていたのである。)

 「武器が物を言うとき、瞑想は沈黙に入る。」むしろこう言う方が適切だろう、大砲がうなるとき、頭脳は機能停止に落ち入る、と。

 さらに、ちょっとした考察を付け加えておこう。: 残酷な戦争の真っ只中で、イスラエル国家が樹立されたとき、あるポスターが貼られた。「国中すべて――前線! 人民すべて――軍隊!」

 58年が経過した。そして同じスローガンが依然として当時と同様に効力がある。それは、政治家と将軍たちが世代交代してきたことについて、いったい何を物語っているのであろうか?