反占領・平和レポート NO.34 (2003/9/7)
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.34 |
アパルトヘイト・ウォールに反対する国際オンライン署名に協力を!
“Mas'ha Petition Against the Apartheid Wall"
何よりもまず、壁(Wall)を撤去せよ!
“First of All - the Wall must Fall!"
●青空軍事監獄=アパルトヘイト的ゲットー化の
Wall
●新たな大規模土地収奪=帝国主義的領土併合の
Wall
●“静かな民族浄化”を画策する
Wall
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■前の「反占領・平和レポートNo.33」では、この間の事態の推移を確認して、停戦と和平を望まないのはまさにシャロン政権にほかならないということを明らかにしました。その際、分離壁(=アパルトヘイト・ウォール)問題が重要な政治問題として浮上し焦点化したことが一つの大きなポイントであったことを指摘しましたが、ウォールそのものの実態に詳しく触れることができませんでした。今回は、イスラエル内で最も先進的な平和運動を展開している「グッシュ・シャロム」のウエブサイトから、驚くべき実態が克明に明らかにされているウォール特集の中心的部分を翻訳紹介します。
■さらに、最近開始されたアパルトヘイト・ウォールに反対する国際オンライン署名の趣意文を翻訳紹介し、オンライン署名の手順も示しましたので、ぜひ皆さんもご協力ください。
この署名は、「アパルトヘイト・ウォールに反対するマースハー請願書(Mas'ha
Petition Against the Apartheid Wall)」というものです。「マースハー(Mas'ha)」というのは、ウォール反対闘争の拠点となっているキャンプ地名で、今やウォール反対闘争の象徴的存在となっています。マースハー村は、ウォール建設のために村の土地の9割以上(6000ドゥナムのうち5500ドゥナム)が接収されることになりました。今年3月28日に現地でウォール建設反対のデモンストレーションと行進が行なわれ、そのまま接収予定地に野宿キャンプが設営されました。ウォール建設と占領に反対する現地パレスチナ人とイスラエル平和運動活動家と国際連帯運動活動家たちによって、粘り強く反対闘争が継続されています。このオンライン署名は、国際的な連帯の広がりを反映して、8か国語で趣意書が用意されています。
■このウォールは、当初はグリーンライン(1967年の占領以前の国境線)に沿って建設するということで、イスラエル労働党が熱心に提唱し、リクード党は冷やかでした。しかし、昨秋イスラエル労働党が連立を離脱して以降、シャロン政権は大幅にルートを変更して積極的に取り組み始めました。
私たちは、これが新たな大規模土地収奪=帝国主義的領土併合であること、またそれが「ロードマップ」の受け入れをシャロン政権が渋った最大の理由であったことを、「反占領・平和レポートNo.30」で明らかにしました。
■イスラエル国防省は、7月31日に、第1期分約120キロが完成したと発表しました(エルサレム周辺の20キロを合わせれば140キロ)。これが、下に掲載した地図の赤い線に当たるものと思われます。「グッシュ・シャロム」の評価によれば、イスラエルは既に占領地の10〜15%を事実上併合したことになります。しかもその大部分は肥沃な土地だといいます。
※ フォトジャーナリストの広河隆一氏が「アエラ」9月1日号で「パレスチナ封じる巨大壁」を報告しています。そこにはカルキリヤ付近について次のように述べられています。「壁の外ではすでに7000ドゥナム(1ドゥナムは1000平方メートル)が接収された。これはカルキリヤ市の農地の約半分にあたる。そこの32の井戸も没収された。カルキリヤは西岸地区で一番水が豊富な場所として知られていたが、その水源の32%が没収されてしまった。カルキリヤの経済は大打撃を受け、1800あった企業のうち600が閉鎖に追い込まれ、失業率は70%にのぼっているという。」
※ 新聞報道でも分離壁が特集され大きく報じられるようになってきています。8月25日付「朝日新聞」の「閉塞
不満 生活奪う壁 / パレスチナ自治区分断 イスラエルが120キロ
/ 車で5分の距離 1時間の遠回り 病院行けず死者も」。8月6日付「読売新聞」の「イスラエルの分離フェンス 西岸へ“突出”
/ 12000人、自治区から分断」。8月13日付「福井新聞」の「和平遮る8メートルの壁
/ 西岸侵食し既に140キロ / 4万人、巨大な監獄の中」など。
シャロンは、将来のパレスチナ国家の領土は‘係争地(占領地のこと)’の約40%だと公言してきました。イスラエル政府がウォールのルートを公表していないもとで、立ち退き命令などが出された地域を調査することで明らかにされたルートは、シャロンのこの「約40%」という発言と完全に符合しています。最終的にはそこまで領土併合していく計画なのでしょう。
※ 「今はまだこの「防護壁」は全貌をあらわしていないが、最終的にはシャロン首相がかねて主張していたように西岸地区の40%だけをパレスチナの自治地区にする形で壁を建設するのではないかと思われる。」(前出、広河氏「アエラ」9月1日号)
※ 「パレスチナ人は、占領地全体の40%あまりの区画に追いやられようとしている。しかもそれぞれの区画は、他から隔離され、区画間を移動するためにはイスラエルの検問を抜けなければならない。主要な都市の周りも、コンクリート塀と金属フェンスで取り囲まれる。」(「ルポ アパルトヘイト・ウォール
/ ロードマップという空論が踊る」小田切拓、『世界』9月号)
しかし、このような将来のパレスチナ「国家」(国家といえないような擬製「国家」)を露骨に先取りしてしまうような明らさまな領土併合は、さすがにブッシュ政権もかばいきれないと見て、一定の圧力をかけはじめました。ウォール問題が国際政治の焦点になればなるほど、シャロン政権もブッシュ政権も苦境に立つにようになるに違いありません。
■カルキリヤの状況は特に重要です。詳しい地図付きで明らかにされていますが、完全な青空軍事監獄です。
一方では、事実上イスラエル側に併合した肥沃な土地で、パレスチナ人が生活していくことができないようにして、パレスチナ人をその土地から追い出そうとしています。他方では、パレスチナ人の居住区域とイスラエル政府が一方的に決めた区域は完全にウォールで包囲して、巨大な青空軍事監獄、アパルトヘイト的ゲットーにしようとしています。グッシュ・シャロムが適切に特徴づけたように、まさに「静かな民族浄化」です。まさかと思うようなことが本当に行なわれつつあるのです。
※ 「壁はこれまでに16の村を国境とフェンスの間に閉じ込めている。この村の人たちはどこにも行けない。イスラエルは結局村を消滅させるのがねらいではないかと、人々は恐れている。」(前出、広河氏「アエラ」9月1日号)
※ 「カルキリヤは、イスラエルの商業都市テルアビブに最も近い西岸の都市。近くのユダヤ人入植地をイスラエル側に取り込む形でフェンスが建設され、カルキリヤの住民約4万人は「巨大な監獄」に閉じ込められたような犠牲を強いられている。」(前出、「福井新聞」03.8.13)
2003年9月7日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
[以下「グッシュ・シャロム」ウエブサイトのウォール特集
(http://www.gush-shalom.org/thewall/index.html)の翻訳]
(「グッシュ・シャロム」のサイトより)
<地図の説明>
The Separation Wall(分離壁)
西岸地区とガザ地区は1967年に占領されたのだが、1948年以前のパレスチナの22%からなる。
オスロ合意に署名したとき、パレスチナ人は、この22%で解決しグリーンライン国境内のイスラエルを承認することに同意した。
この地の78%を認めたことはパレスチナ側の歴史的歩み寄りであった。
(緑色の線): グリーンライン(1967年国境線)
(赤色の線): 建設中のウォール
(紫色の線): 承認済のウォールの道筋
(紫色の破線): 提案中のウォールの道筋
(赤の囲み): 建設中の飛び地
(赤の破線の囲み): 提案中の飛び地
(紫の破線の囲み): パレスチナ側管轄領域
(緑の囲み): イスラエル側管轄領域
( ※ 次のサイトの下の方の Click here
to
Start をクリックすれば、グリーンラインだけの地図からウォールが次々と建設されていく様子がアニメーション風にあらわれます。
http://www.gush-shalom.org/media/seperationmap_eng.swf)
この「ウォール」は、西岸地区とガザ地区のイスラエルによる占領の具体的あらわれであるだけでなく、パレスチナ人の土地のさらなる没収という政策を遂行する別法です。もしイスラエルが本当に自国民の安全保障に関心があって本当にパレスチナ人との分離に関心があるなら、「グリーンライン」(1967年の戦争以前に存在していた国境)の上に壁を建設したはずです。しかし、これはそうではないのです。計画された壁の大部分はパレスチナ領土深くくい込んでいて、占領地の約10%〜15%をイスラエルに統合しているのです。その大部分は、オリーヴ園、グリーンハウス、野菜畑、水資源などが豊富な、肥沃な土地です。壁は、いくつもの村や町を、その農地から切り離し、また交易や教育や文化の中心地から切り離すことになります。それは、占領地で現在進行している環境破壊や生じつつある環境の劣化を強めることになります。それはまた、イスラエルの入植政策を合法化しようとする企てでもあります。要するに、それは、存続可能なパレスチナ国家のいかなる可能性をも奪う致命的打撃を意図したものなのです。
数十万人のパレスチナ人農民にとって、このウォールは、監視人のいない監獄となるでしょう。家族を養っていく手段もなく、結局、彼らの多くに家を離れざるをえなくさせ、どこか他の場所で難民として暮らすしかなくなるようにしむけるような、そのような監視人なき監獄です。
これは、写真に撮ることができないような静かな民族浄化、しかし、にもかかわらず効果的で壊滅的な民族浄化を意図したものです。この理由から、私たちは、この壁を「トランスファー・ウォール(移送=追放のウォール)」と呼ぶことに決めました。
この「トランスファー・ウォール」は、したがって、「安全保障」に関するものではなく、まさに占領(Occupation)のもう一つの側面なのです。「ウォール」の拡張計画は、「ロードマップ」がその正体を現すときに明らかになるパレスチナ「国家」の、ありうる国境に関するシャロンの計画の概要を示すものかもしれません。それが和平へ向けた「ロードマップ」の出発点として交渉のテーブルに置かれる、というようなことはあってはなりません。なぜなら、それは和平をもたらさず、パレスチナ国家を創設する可能性を破壊するからです。
「貧しい者、無防備の者に対して、このような形の抑圧がなされているのに、抑圧者が他国の人々を欺き、自らが正当な者として受け入れられ信じられるようにしているということは、人類全体にとっての悲劇である。そして、「安全保障」と「テロ」というスローガンのもとで犯罪がおこなわれている。抑圧者がこの「ウォール」を建設するための、そしてこの犯罪をおこなうための財政的支援を得ているというときに、いったいどのようにして人々はこの抑圧者に祝福を与えることができるのだろうか?」
これは、この「トランスファー・ウォール」によって壊滅的打撃を受けているカルキリヤ地区の人々の言葉です。
カルキリヤ
この地図は、カルキリヤの劇的なケースを示しています。それは、巨大な監獄となるでしょう。ウォールが、カルキリヤを完全に包囲しています。2つのチェックポイントによってガードされた出口が1つ残されているだけです。以前は栄えていたこの商業の中心都市は、窒息させられ死滅するでしょう。
さらなる事実と数値
概して、このウォールは、67の町や村に住む
約210,000人のパレスチナ人の生活に壊滅的打撃を与えると予測されています。
13の村の 11,700人が、このウォールとグリーンラインとの間で「監獄」に閉じ込められます。イスラエル人入植者の要求で、ウォールは、入植地アリエル、エマヌエル、ケドゥミムを含むように、更にはるか東の方へと計画されています。これは、ウォールで影響を受けるパレスチナ人の数を劇的に増加させるでしょう。
(以上、「グッシュ・シャロム」のサイトより)
[アパルトヘイト・ウォールに反対するマースハー請願書
(http://stopthewall.org.il/mashacamp/petition/index.html)]
(趣意文翻訳)
アパルトヘイト・ウォールに反対するマースハー請願書
正 義 の 声
Mas'ha Petition Against the Apartheid Wall
The Voice of Justice
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私たち署名者は、パレスチナ占領地にイスラエル国家によって建設されつつあるアパルトヘイト・ウォールに衝撃を受け、ぞっとするほどの恐れをいだいています。そこでカルテット(米国、EU、国連、ロシア)の政治的指導者諸氏に、この途方もないプロジェクトをただちにやめさせるよう、あらゆる影響力を行使するように要請します。
安全保障という口実のもとに、イスラエルは、長期にわたる占領、追放、差別の政策を遂行し続けています。それは、総じて民族浄化をもたらすものです。また全体として、パレスチナ社会の生存と発展の物的基礎の破壊をもたらすものです。
アパルトヘイト・ウォールの背後での生活は、堪えがたいものとなるでしょう。パレスチナ人は、壁で囲まれたゲットーで監獄に入れられたようになるでしょう。最も基本的な人権を奪われて、そして、彼らの土地、水資源、生活資源の大部分を失って。
このウォールは、来たるべき次の世代に暗い影を投げかけるでしょう。
自由で存続可能な主権国家としてのパレスチナ国家は、不可能となるでしょう。
更に、このウォールは、イスラエルに安全保障を提供しないでしょう。というのは、壁の背後のパレスチナ側のゲットーでは、怒りと憤懣が渦巻くであろうから。
イスラエルにとっての安全保障は、ただ、パレスチナの人々にとっての自由と安全保障とともにのみ、達成されるでしょう。
私たちの声は、全世界の人々の大衆的な声です。
このミレニアムの初めにおいて、私たちは、声を大にしてはっきりと述べました、戦争と占領に反対であると。
今、私たちは、もう一度私たちの声をあげようとしています、この、戦争犯罪、アパルトヘイトの罪、人道に対する罪であるアパルトヘイト・ウォールに反対して。
私たちは、あなたがたに強く促します、私たちに加わることを、そしてイスラエル国家に対してあなたがたの影響力を行使することによって国際法を支えることを。
この途方もないプロジェクトをただちにやめさせ廃棄させるために。
占領をやめさせるために。
西岸地区の土地をそのパレスチナ人所有者に返還するために。
[オンライン署名の手順]
1.次のサイトをクリックして開くと、上に訳した趣意文が現れます。
http://stopthewall.org.il/mashacamp/petition/index.html
2.趣意文の後の最下の Sign the Petition をクリック。
3.記入4項目。フルネームとEメールアドレスは必ず。(公表されるのは氏名と国名のみ)
4.記入した後、[Sign the Petition] をクリック。
5.この後メールチェックすると、確認依頼のメールが届いています。その内容は、「24時間以内に次のサイトをクリックしておとずれて下さい」というもの。その通りにクリックすると署名者に加えられます。(出てきた画面の
List of Signatories をクリック すると自分の名前を確認できます。)
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