反占領・平和レポート NO.21 (2002/07/28)
anti-Occupation pro-Peace
Report No.21 |
ガザ虐殺を遂行したF16は一体誰が供与したのか?
−−軍事=侵略国家イスラエルを育成し支え続けるアメリカ
翻訳紹介:イスラエルに対するアメリカの武器譲渡と安全保障援助(「ワールド・ポリシー・インスティチュート/武器取引情報センター」)
Who granted Israel F-16, which perpetrated
the Gaza-massacre ?
The military=aggressive state Israel, brought
up and been supported by U.S.
TRANSLATION:U.S. Arms Transfers
and Security
Assistance to Israel (by World
Policy Institute
/ Arms Trade Resource Center)
|
■7月22日深夜のイスラエル軍によるガザ空爆は、1人のハマス指導者を殺害するために
F-16戦闘機で大型1トン爆弾を投下して、5軒のコンクリート造り住宅を一瞬のうちに瓦礫にし、15人の死者と160人以上の負傷者を出すというものでした。(ここ数日でまた犠牲者が増えて180人以上になっているとのことです。)
世界中から非難と抗議が殺到し、イスラエル国内でも批判が相次ぎました。私たちも即刻、抗議と糾弾の声をあげました。
■イスラエル軍によるガザ空爆は、7月23日に発表される予定になっていたパレスチナ側からの一方的停戦声明を吹き飛ばすことが、その政治的目的であったことは明らかです(「ガザの虐殺」参照)。この停戦への動きは、EUやアラブ諸国が積極的に支援していたものでした。そのこともあって、今回の空爆は、イスラエルの暴挙に対する国際社会の怒りを爆発させました。
それは、6月のサミット直前にシャロン政権を全面支持する中東新構想を打ち出したアメリカ・ブッシュ政権に、はね返っています。今、アメリカ国内では、「罪なき死」innocent
deathの問題と米国製武器の使用の問題とが、新たに政治問題化してきています。ブッシュの新中東「和平」提案の頃からシャロンとブッシュのペースで進んできた中東情勢が再びシャロンの暴走で変わろうとしているのです。
■「罪なき死」の問題は、アメリカの対アフガン戦争に対する批判が、ようやくアメリカ国内でも高まりはじめたことを示しています。それが、今回のイスラエル軍による空爆でいっそうクローズアップされました。イスラエル軍によるガザ空爆とアメリカ軍によるアフガン空爆とは同じではないか、という疑問がマスメディアから出され、ブッシュ政権は苦しい言い訳と居直りに終始しています。
■さらにもう1つ、今アメリカ国内で大きな問題となりはじめていることがあります。それは、米国製武器によって民間人が殺傷されることが「合衆国武器輸出管理法」に違反しているのではないかという問題です。特に、ガザ空爆に使われた
F-16戦闘機が問題の焦点となっています。
■今回の翻訳紹介は、アメリカ国内でアメリカの武器取引と軍事支出を研究し暴露し続けている「ワールド・ポリシー・インスティチュート」が最近発表したレポートです。アメリカが20年30年にわたって、いかに軍事国家イスラエルをつくりあげ支えてきたか、そして今も支えこれからも支え続けようとしているかを、具体的な事実資料によって暴露しています。そして、イスラエル軍によるパレスチナ人民への攻撃が、防衛目的以外の使用を禁じている「合衆国武器輸出管理法」違反であること、さらにそれをブッシュ政権が認識しているのだということを、具体的に明らかにしています。
特に、 F-16戦闘機については、次のように指摘しています。「イスラエルは、...アメリカを除けば
F-16戦闘機の世界最大編隊をもち、現在200機以上のジェット機を所有している。さらに102機の
F-16を、ロッキード・マーチン社に発注中である。」と。
このアメリカ製最新鋭攻撃機によるミサイル攻撃で、まさにジェニン難民キャンプやナブルス市街が「まるで大地震のあとのような瓦礫の山」に変えられました。そして今またガザの虐殺に使われたのです。まさにF16は虐殺機なのです。
赤ん坊や幼児を何人殺したかを戦果にあげ得意げになるイスラエル人兵士
(「グッシュ・シャロム」HPより)
2002年7月28日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
パレスチナ自治政府と西岸地区のパレスチナの街々に対するイスラエルの攻撃についてのアメリカの報道は、しばしばアメリカ政府を、現在進行中の紛争の罪のない傍観者か誠実な仲介者として扱っている。その報道は、イスラエルヘの武器と援助と軍事テクノロジーの供給者としてアメリカ合衆国が果たしている役割、その重要性の十分な意味を明らかにすることなしに行われている。イスラエルに対する第一の武器供給者としてのその役割において、アメリカ合衆国は、現在の紛争におけるイスラエルの行動に対して重要な潜在的テコを行使することが可能である。もしアメリカがそうすることを選択しさえすれば。
軍事的経済的援助
1976年以来、イスラエルは、毎年毎年アメリカ合衆国の海外援助の最大の受け取り手であり続けてきた。2001年11月の議会調査局報告「イスラエル:合衆国対外援助」によれば、ここ半世紀におけるイスラエルヘの合衆国援助は、813億ドルという途方もない額にのぼっている。
近年において、イスラエルは、アメリカの軍事援助と経済援助の第一の受け取り手であり続けている。最も一般的に引用される数字は、年間30億ドル。国防省から供与される年18億ドルの対外軍事融資(FMF:Foreign
Military Financing)と、国務省から供与される経済支援基金(ESF:Economic
Support Funds)の年12億ドルの追加的援助である。ここ10年で、イスラエルヘのFMF供与は、182億ドルにのぼった。実際、アメリカの対外援助全体の17%がイスラエルにあてられている。
2003年度には、ブッシュ政権は、イスラエルが27億6千万ドルの対外援助を受け取るように提案する予定である。FMFで21億ドル、ESFで6億ドル。さらに追加で2千8百万ドルが、アメリカ製対テロ機器購入のためにイスラエルに流れるだろう。
兵器売却と供与
イスラエルは、アメリカ合衆国の最大の武器輸入国の一つである。この10年で、アメリカはイスラエルに、72億ドルの武器及び軍事機器を売却した。7億6千2百万ドルは直接商業売却(DCS:
Direct Commercial Sales)によるもので、65億ドル超が対外軍事金融(FMF)プログラムによるものである。
実際、イスラエルは、アメリカの軍事的ハードウェアーを熱愛しているので、アメリカを除けば
F-16戦闘機の世界最大編隊をもち、現在200以上のジェット機を所有している。さらに102機の
F-16を、ロッキード・マーチン社に発注中である。
アメリカは、またイスラエル国内の軍需産業に保証を与えてきた。
●航空機「ラビ」開発のための13億ドル(キャンセルされたが)。
●ミサイル迎撃用ミサイル「アロウ」開発、配備のための6億2千5百万ドル(現在進行中のプロジェクト)。
●「メルカバ」戦車開発のための2億ドル(生産稼働中)。最新鋭の「メルカバ4」は、ジェネラル・ダイナミックス社によってアメリカでライセンス生産されているドイツのV-12ディーゼルエンジンを使用している。
●高エネルギー・対ミサイル・レーザーシステム開発のための1億3千万ドル(現在進行中)。
イスラエルに対する全般的な援助は、今後5年にわたって減額される予定になっているが、軍事援助は、かなり増額されるだろう。クリントン大統領時代の末期に制定された法律の一つによれば、2008年までにESFを段階的に廃止するというイスラエルとの合意に署名することになっていた。同時に、イスラエルヘのFMF基金は、毎年6千万ドル増額して2008年までに24億ドルに達することになっている。
イスラエルヘの無償武器供与
アメリカは、また、超過防衛項目(EDA:
Excess Defence Articles)プログラムの一部としてイスラエルに武器と弾薬を供与している。それも完全に無償で供与しているのである。1994年から2001年の間に、アメリカはこのプログラムを通じて多くの武器を供与した。それには次のものがある。
●64,744丁のM-16A1ライフル
●2,469丁のM-204手榴弾発射装置
●1,500丁のM-2・50口径機関銃
●30口径、50口径、及び20ミリ弾薬
イスラエルの武器庫にあるアメリカの兵器
主要リスト
武器 |
数量 |
製造業者 |
1単位当たりコスト |
戦闘機 |
F-4E ファントム |
50 |
ボーイング |
1,840万ドル |
F-15 イーグル |
98 |
ボーイング(もとマクドネル・ダグラス) |
3,800万ドル |
F-16 ファルコン戦闘機 |
237 |
ロッキード・マーチン |
3,430万ドル |
ヘリコプター |
AH-64 アパッチ・攻撃用 |
42 |
ボーイング |
1,450万ドル |
コブラ攻撃用 |
57 |
ベル・テクストロン |
1,070万ドル |
CH-53D シー・スタリオン |
38 |
シコルスキー |
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ブラックホーク |
25 |
シコルスキー |
1,100万ドル |
ミサイル |
AGM 65 マヴェリック |
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レイセオン |
1万7千 〜11万ドル |
AGM 114 ヘルファイアー |
|
ボーイング |
4万ドル |
TOW |
|
ハグヘス |
18万ドル |
AIM 7 スパロウ |
|
レイセオン |
12万5千ドル |
AIM 9 サイドワインダー |
|
レイセオン |
8万4千ドル |
AIM 120B アムラーム |
|
レイセオン |
38万6千ドル |
パトリオット |
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レイセオン、ロッキード・マーチン |
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ハープーン対艦船ミサイル |
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ボーイング |
72万ドル |
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殺戮兵器
「安定して民主的でそして軍事的に強力なイスラエルの存在を増進し、イスラエルが近隣諸国と平和に存在することを推進するのは、アメリカの国益のためである。」
(アメリカ国防省の、議会への合同報告における、イスラエルに関する声明、2001.1.3)
ヨルダン川西岸地区のパレスチナの街々と難民キャンプに対するイスラエルの攻撃の規模は、アムネスティ・インタナショナルの最近の報告によれば、ずっと「バランスを失したものであり、しばしば無謀なもの」であり続けている。アムネスティの評価によれば、3月1日から4月半ばまでの6週間に、イスラエル軍兵士によって
600人以上のパレ スチナ人が殺され、3,000人以上が負傷した。
イスラエルとパレスチナ自治政府との間の紛争において、アメリカの武器を使用することは、アメリカの武器が防衛ではない目的のために使用されることを禁じた「合衆国武器輸出管理法」に明らかに違反したものとして現れている。国務省の「人権状況に関する国別報告2001」(2002年3月)は、実弾の使用に注目しながら、IDF(イスラエル国防軍)は、差し迫った危険がない場合でさえ、パレスチナ人に対して「過度の武力行使」を行なっている、と述べている。国務省の報告は、また、イスラエル軍が「イスラエル市民や入植者へのパレスチナ人の個々の攻撃に対して、パレスチナ自治政府諸施設とパレスチナ人市民居住地域を砲撃した」と述べている。これらのコメントは、次のことを示している。つまり、アメリカは、武器輸出管理法で明記された目的のために使われているのではない、ということを知っているということである。
国連事務総長コフィ・アナンは、最近、IDFによるアメリカの武器の使用についての彼の懸念を次のように表明した。
「私は、イスラエル国防軍による一般市民と人道的救助隊員への対応の憂慮すべき事態に対して、あなたがたの注意を喚起せざるをえません。...IDFによって用いられている手段・方法−−
F-16戦闘爆撃機、攻撃用ヘリコプター、海軍の攻撃用ヘリ、ミサイルと重量級爆弾−−から判断して、この戦闘は、通常の全面的な戦争状態に類似したものになっています。この状況の中で、数百数千の罪のない非戦闘員市民−−男、女、子ども−−が傷つけられ殺され、多くのビルと家屋が損傷を受け破壊されてきました。人口密集の難民キャンプや街や村に戦車が配置展開され、数千人の子供たちがいる学校のすぐそばにまで、重量級の爆発物が落とされました。」
IDFが一般市民に対してアメリカの武器を使用した実例
ガ ザ 。 CNN、2002.2.11
「日曜日(2002.2.10)、イスラエルは、パレスチナ自治政府ヤセル・アラファト議長の親衛隊フォース17の本部を攻撃した。この攻撃で、2人の国連職員が重傷を負い、国連施設が損傷を受けた。そのことで、即刻、コフィ・アナン国連事務総長からイスラエルの行為に対する厳しい非難があった。国連によれば、中東和平プロセスのための国連特別協力機関テルジェ・ロエド・ラルセンの事務所が、イスラエルによる攻撃の結果として損傷を受けたのは3度目である。爆撃は、また他の国連事務所にも損傷を引き起こした。それには、国連人権委員会高等弁務官代表部事務所が含まれている。」
ジェニン。ニューヨーク・タイムズ、2002.4.18
「クフルジュ氏の妹の腐乱死体は、アパッチヘリコプターによるミサイル攻撃の日時の最も明瞭な実例の一つである。彼女の寝室の壁には巨大な穴があり、床には2フィートのクレーターがある。ミサイルの破片が床に散らばっていて、その中には、英語で「firing temparature」とか「cooling temparature」 とか書かれたラベルのついた破片もまじっている。壁の穴の近くに、乾いた血だまりがあった。クフルジュ氏によれば、ミサイル攻撃は、今回の攻撃の3日目の真夜中にあり、その攻撃で彼の妹は即死したという。」
デヘイシェ。ワシントン・ポスト、2002.3.10
「今日、イスラエルの戦車と軍部隊が、デヘイシェ難民キャンプに侵攻した。この難民キャンプは人口
8,000人。侵攻前にすでに、戦車とブルドーザーがキャンプの背後の丘の上に配置されていて、武装した
AH-64アパッチ攻撃用ヘリコプターが上空を旋回していた。兵士たちは、難民キャンプの学校へ通じる歩道橋を取り壊した。」
ベツレヘム。ワシントン・ポスト、2002.3.8
「イスラエル軍は、ほとんど間をおかずにさらに多くのミサイルを発射し、小型砲艦からも発砲して、ガザ地区のパレスチナ自治政府施設建物を攻撃した。そこでは多くの死傷者がでた。イスラエルは、また、ベツレヘムとそれに隣接する2つの難民キャンプ、さらに近隣の2つの西岸地区の街に、数十台の戦車と兵員輸送装甲車を送り、エルサレムの近郊で大規模な全面的軍事行動を行なった。イスラエル軍の装甲車輛の上の重機関銃の砲声は、キリスト生誕の地とされているベツレヘム中に鳴り響いた。そしてアメリカが供給したAH−64アパッチヘリコプターが、ベツレヘムとベイト・ジャラの間のアイダ難民キャンプを爆撃した。」
さらなる情報のための情報源
・ Foreign Policy In Focus:2002年4月号「イスラエルに対するアメリカの軍事援助に関する要約」。ウエブサイトは
www.foreignpolicy-infocus.org
・ Arms Sales Monitoring Project, Federation
of American Scientists
(www.fas.org/asmp)には、アメリカの国別武器移転に関する検索可能なデータベースがある。さらにアメリカによって手がけられた最近の武器売却合意のリストも。
・ Jane's Defence Weekly は、2002年5月1日号でイスラエルのカントリー・ブリ
ーフィングを行い、イスラエルの現在の軍事力についての約8ページにわたる分析を行なっている。それには、保持する主要な武器の詳細がある。ウエブサイトは
www.janes.com
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