反占領・平和レポート NO.18 (2002/06/05)

占領35周年にあたって
翻訳紹介:「35年にわたる占領の代償」



■1967年6月5日〜10日、イスラエル軍は、ヨルダン川西岸地域、東エルサレム、ゴラン高原、ガザ地区、シナイ半島を新たに占領しました。「第3次中東戦争」「6日戦争」「6月戦争」などと呼ばれています。
 イスラエルは、1979年にエジプトと平和条約を結び、1982年にシナイ半島をエジプトに返還しましたが、それ以外は現在にいたるまで軍事占領し続けています。

■今年は、イスラエルによるこれら地域の占領35周年に当たります。イスラエル国内の反占領・平和運動は、6月8日(土)に大規模な抗議行動を予定しています。

■私たちは、これまでに3つのオンライン署名を呼びかけ、3月末からのイスラエルの軍事侵攻に際しては抗議メール・はがき行動を呼びかけてきました。また、中東・パレスチナで起こっていることについて、イスラエルとアメリカに追随するような報道しかないもとで、私たちにできる限りで、真実を報道・紹介することに努めてきました。
 現地で何が起こっているかを広く知らせることが、日本においては何をおいても重要なことではないかと思います。あまりにも真実が知らされず、リアルな現実が知らされていないと思います。(この点に関しては、大手マスメディアの責任は重大です。)
 占領35周年の現地でのとりくみに呼応して、私たちは、パレスチナとアフガニスタンの写真展を全国各地で行う取組を推し進めていきたいと思います。5月25〜26日に大阪で、小規模ではありますが手作りの写真展が行われました(報告はこちら)。それに引き続いて、埼玉で6月1日、15日、20日と連続して写真展が行われます(案内はこちら)。自分たちの所でも写真展を行おうと思われる方は、ぜひ署名事務局へご連絡下さい。

■今回の翻訳紹介は、占領35周年に際しての、ギラ・スヴィルスキーさんの呼びかけ文です。イスラエル国内の反占領・平和運動は、今回の軍事侵攻の中で極度に困難な状況を経験しました(反占領・平和レポートNo.15参照)。その経験の中から、いっそう大衆的な基盤を拡大するために新たな戦略を検討する会議がもたれました。「公正な和平をめざす女性連合」が呼びかけて、5/3〜4に平和、民主主義、社会的正義をめざす諸組織の中心的メンバーが集まって戦略会議が行われました(反占領・平和レポートNo.17参照)。今回のギラさんの呼びかけの中にその内容が反映されています。
 すなわち、経済的苦境と占領との結びつきへの注目。社会福祉関連を切り縮めての軍事費捻出への批判。民主的諸権利の制限、圧殺への抗議。社会的モラルの低下、堕落との闘い。「女性連合」のサイトでは、これらのテーマについて広範な大衆からの情報と意見を求め、それを集約しようとしています。

■イスラエル国内の反占領・平和運動は、昨年末から「占領は我々すべてを殺しつつある」という共通スローガンを掲げ、その下で「占領の終結」(1967年国境線までの無条件完全撤退)に焦点を絞って、紆余曲折を経ながらも大衆的前進を遂げてきました。6月8日は、そのひとつの総決算です。私たちも熱い連帯の思いを抱きながら注目し、大手メディアが伝えない現地報告をこのサイトで紹介していきたいと思います。

2002年6月5日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局





35年にわたる占領の代償

2002.5.28

 友人の皆さん、

 この6月に私たちは、イスラエルによる「占領地」−−西岸地域、ガザ地区、東エルサレム、ゴラン高原−−の占領に35年を刻印します。

 占領下のパレスチナ人が払わされた犠牲については、既におびただしい量のものが書かれてきました。−−愛する者たちの死、生涯にわたる負傷、補填されることのない財産損失、トラウマを負った子供たち、そして、占領が(それが終わるのは不可避です)終わった後に数世代にわたって消し去られることはないであろう心の痛み。

 しかし、占領は、イスラエル社会にもまた破壊的に作用してきました。それは、ただ単に、テロリズムと軍務によって命を落とす悲劇という点だけではありません。イスラエルで私たちが「占領による堕落」と呼んでいるもの、他者の抑圧者であることの結果としての、私たちの社会の道徳的頽廃があります。しかし、さらに追加的に、占領がイスラエル社会に犠牲を強いてきたことがあります。

* 困難に直面している経済 : イスラエルは現在、重大な経済危機にあります。−−深刻なリセッション、厳しい失業率(現在10%)、増大する貧困、拡大する社会経済的格差。

* 社会的生活諸条件の諸施策の切り縮め : 児童教育、健康管理、老人及び障害者の特別なニーズ、水利用の合理的な計画、公共輸送の発展、などにおける予算削減。

* 民主主義の規範と価値観に対する脅威 : 言論の自由の廃止、メディア検閲と自己検閲、アラブ人に対する人種主義のおおっぴらな表現、他者に対する非人間化。

* イスラエル社会での暴力の氾濫 : 学童の間での高率の暴力、増大する暴力犯罪、女性に向けられた暴力の増大。

 このリストを拡大することはたやすいでしょう。例えば、銃の引き金を我慢ならないほどいともたやすく引くようになったことについてはどうでしょう? 先週、テルアビブのディスコの入口でガードマンが、妙な感じで近づいてくる車に気づいてリボルバー銃の引き金を引き、運転者を撃ち殺しました。爆発物を積んでクラブに突入する前でした。明らかにこのガードマンはヒーローということになりました。しかし、その運転者がただ単に酔っていただけだったとしたらどうでしょうか?

 その翌日、兵士が発育遅れの男性(イスラエル人)を撃ちました。この男性は、季節はずれの厚いコートの下に爆発物のベルトをしているかもしれないというふうに見えたのですが、ボタンをはずせという要求がわからなかったのです(幸いなことにこの男性は殺されはしませんでした)。先週はまた、母親と12歳の娘(パレスチナ人)が撃ち殺されました。彼女たちは爆発物から逃げようとしていたのですが、そのためにその爆発物を置いた者だと思われたのです(それはまちがいでした)。

 これからの数週間、イスラエルの平和と人権の諸組織は、この悲しい記念日−−占領の35年−−を最大限の抗議とデモンストレーションで刻印します。ある者は、イスラエルの資源とエネルギーの大量費消からくる占領の社会的経済的重荷について声を上げるでしょう。またある者は、数千人の死者、数万人の負傷者・不具者、数十万人のトラウマと憎しみで凍りついた心をもつ人々、それらの人数を数えるでしょう。

 これからの日々、私たちのとりくみに加わって下さい。皆さんに声を大にして連帯をお願いします。

 占領の多くの代償は、耐え難いものです。そして、いっそうますます耐え難いものになっています。イスラエルを大切に思い、パレスチナを大切に思い、この地で育ちゆく子供たちを大切に思う人は皆、この悲劇を終わらせるために、できうる限りの最大限を尽くしましょう。

ギラ・スヴィルスキー
エルサレムより