反占領・平和レポート NO.12 (2002/04/13)

今パレスチナは未曾有の人道的危機の中にある!
ジェニンの大虐殺−−数百人の死者と数千人の負傷者。真相究明を!
●抗議の電話、ファックス、eメール、手紙を何度でも出しましょう!
●このメールをあなたの友人に至急回すこと−−1分しか時間がなくても支援・連帯はできます。
 今回の「反占領・平和レポート」第12号は、Znetに掲載された、あの「公正な和平をめざす女性連合(平和のための女性連合)」のギラ・シヴィルスキーさんの「最前線からの手紙」がメインです。また命がけで現地からの緊急レポートを送られている広河隆一氏のHPからも現地報告の紹介を行います。
 シヴィルスキーさんや広河氏によればジェニンで未曾有の大虐殺が起こったようなのです。数百人の死者と数千人の負傷者が出ている模様です。町は封鎖されているために、負傷者はまともな治療もされずに放置され、間接的な「死者」は今後増えて行くでしょう。私たちもすぐに情報を集め皆さんに報告したいと思います。まずは緊急援助と負傷者の救援を要求しなければなりません。
 そして次にイスラエル政府に対して真相究明を要求しなければなりません。シャロンをこのまま暴走させ続ければ、各地でジェニンと同じような虐殺事件を続発させるでしょう。「サブラ、シャティーラの大虐殺」を何度も引き起こしかねません。世界中から抗議を集中し、監視の目を光らせましょう。

抗議先はこちら

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■ 「なぜ現地へ直行しないのか」−−アメリカによる「調停」・「仲介」の茶番劇
 パウエル米国務長官が現地に飛んでアメリカが本格的に「仲介」に入るという環境作りが進められています。これに前後してここ数日の新聞報道では、「アメリカが調停を本格化」「アメリカだけがイスラエルを抑えることができる」「頼りになるのはアメリカだけ」等々、歯が浮くようなウソの報道がなされています。まるでアメリカが「中立」であるかのような報道ぶりです。(パウエル長官は、世界中のマス・メディアを「調停」一色で覆い尽くしたことでジェニンの大虐殺を完全に封殺し隠蔽しました−−この事実だけでパウエル長官の犯罪性は明らかです)
 しかし実際にはどうでしょうか。そもそも今回の「仲介」のきっかけになったブッシュ大統領の4月6日の発言「遅滞なき撤退」(Israel must begin military withdrawal from Palestinian cities "without delay.")がどうやら“外交用語”では「今すぐ」ではないようなのです。米国のある新聞の論評は「“遅滞なき”は“作戦が終わったとき”を意味する」「そんな暗黙の合意がある」と揶揄し批判しました。またパウエル長官は4月7日に出発して、4月12日にイスラエル入りするまで1週間も“遠回り”しました。その間、イスラエル軍はやりたい放題に残虐行為を繰り返しました。アラブ親米穏健派王政諸国からも、「なぜ現地へ直行しないのか」と問いつめられました。アメリカは、イスラエルの侵略と暴虐と虐殺の「時間稼ぎ」をやっているだけなのです。イスラエル軍による殺戮を放置し保障したアメリカのまやかしの「仲介」は、占領と暴虐と人道的危機を隠蔽してパレスチナ側に屈服を要求しようとするものなのです。
 イスラエルによる「Occupation占領」を終わらせるのでない限り、あらゆるまやかしの「仲介」や「調停」は真の解決を引き延ばし、いっそう悲惨な事態をもたらすものでしかありません。「イスラエルによる占領を終わらせること」「全占領地からの無条件完全撤退」という要求を抗議の中で明瞭に主張しましょう。

■ イスラエルへの懲罰措置を妨害するアメリカ
 確かにアメリカとイスラエルは個々の局面では対立するような動きを見せますが、実際にはアメリカはシャロンの戦争を徹底的に擁護しています。現に今やイスラエルの暴走を阻止するには言葉や決議や要請ではなく、国連や世界各国の懲罰と制裁と行動が必要になっているのですが、アメリカはイスラエルを懲罰する一切の実行ある措置を妨害しているのです。おずおずとながらも制裁をちらつかせるEUとは対照的に、ブッシュ大統領は「アラファト議長は自爆テロをまず抑制すべきだ」と言い続けています。別のところでは「アラファト議長追放」まで主張しているのです。こんな政権が「中立」の顔をすること自体が間違っています。またフライシャー報道官は「イスラエルに対して制裁の考えは全くない」「シャロン首相は“平和の人”だ」と言い切っています。アメリカによる巨額の対イスラエル軍事・経済支援も、削減するどころかむしろ増額の構えです。
 全世界からの抗議の声をいっそう強めなければなりません。何度でも、毎日でも、イスラエルとアメリカと自国政府に抗議の声を発し続けましょう!

■ イスラエル軍の「撤退」はまやかし
 もう一つ重大な欺瞞があります。イスラエル軍の「撤退」についてです。だまされてはなりません。日本のマスコミ報道では、まるで「一部撤退」が行われたかのような書き方です。しかしそれは徹底弾圧した後の、封鎖を解除しないままでの欺瞞的「撤退」にすぎません。イスラエル軍は、いつでも好きな時に再侵攻し再占領することができるのです。事実、4月9日に「撤退」したトゥルカレムに4月11日再侵攻しました。パレスチナ住民の生活の窮迫と武力弾圧による負傷者の医療の危機と、全般的な人道的危機は続いています。マスメディアの偽りの報道に安堵してはいけません!切迫した事態は依然として続いています。否、いっそう急迫しさえしています。

■ ジェニンの大虐殺。数百人の死者と数千人の負傷者−−今すぐ真相究明の声を!
 諸種の現地からの報道から推測すれば、ヨルダン川西岸北部のパレスチナ完全自治区ジェニンで大虐殺事件が起こったようです。シャロンの共犯者である労働党のペレス外相も「ジェニン難民キャンプでの大虐殺(massacre)を懸念する」と心配するほどの大事件が起こったのです。私たちが一番恐れていたことです。
 ジェニン侵攻作戦の責任者であるイスラエル軍のシュレイン司令官は4月11日、「テロ基盤の破壊という目的を達成した」と述べジェニンの軍事拠点の「制圧」を発表しました。「制圧」とは虐殺事件をやり切ったということです。私たちも早急に情報を集め、キャンペーンと告発を始めたいと思います。
 報道によれば中心部に立てこもっていた武装パレスチナ人1000人以上が同日までに投降し組織的抵抗が終わったということです。そんな中、同司令官はジェニン作戦でパレスチナ側に非武装の民間人を含め数百人の死者が出たという報道に対して、民間人に死傷者が出たことを認めた上で、「武装パレスチナ人が女性や老人、子どもを盾として使ったためだ」と述べて居直り、自らの虐殺を棚に上げパレスチナ側に責任転嫁をしています。腹が煮えくり返る思いです。

■ イスラエル軍はなぜマス・メディアを閉め出すのか?−−虐殺を隠蔽するため
 フォト・ジャーナリストの広河隆一氏もこのジェニンの大虐殺に触れています。氏は、2月末から3月はじめのイスラエル軍の侵攻のときにも占領地現地に飛んで取材し、貴重な報告と映像をリアルタイムで提供し、3月半ばに帰国したばかりで今再び現地に飛んで取材しています。その4月4日付のレポートでは、私たちも「反占領・平和レポートNo.11」で紹介した「女性連合」をはじめとするイスラエル国内の先進的な平和運動諸組織の4月3日ラマラ緊急行動の模様をつぶさに報告しています。
 その広河氏が4月10日付のレポートで次のように述べています。「私がここに来たときは、ベツレヘム他あらゆる町が『軍事閉鎖地区』下におかれ、ジャーナリストも近付くだけで撃たれているという状況で、それは今も続いています。...この間に、ジェニンは最悪のことになっています。200人以上の死者、未確認情報では、1000人近い死者が出ているという報告もあります。ほとんど民間人で、子供も多くいるということです。死体は運び出すこともできず、ほとんど腐乱し始めています。今日、イスラエル軍は、これが世界に知られると大変だからと、死体を運び出して破壊跡を清掃し始めているといいます。...ジェニンはシャロンの戦争の最大の悲劇の象徴になり、やがて彼は戦争犯罪で裁かれるでしょう。こうしたことをやってのけた首相を選んだイスラエル国民、最後まで連立を割らなかった労働党、すべて、このジェニンの悲劇の重さを、これから数十年間、負い続けることになるでしょう。」
(広河隆一氏の現地報告サイト:http://www.hiropress.net/index.html)

■ シヴィルスキーさんの緊急要請−彼女も「筆舌に尽くしがたいジェニンの惨状」を告発
 次に翻訳紹介する「公正な和平をめざす女性連合」のギラ・シヴィルスキーさんの報告でも、ジェニンで「筆舌に尽くしがたい」深刻な事態が起こったと報告しています。そして彼女は更なる緊急行動の必要性を訴えています。私たちも彼女の要請に最大限応えていきたいと思います。


最前線からの手紙
Letter from the Front
by ギラ・シヴィルスキー
2002.4.10

 友人たちへ、

 私は今ちょうど2週間の外出からイスラエルへ戻りましたが、自分が見聞きしたことを全体の脈絡の中で見通してまとめあげるのに更に2日かかりました。それを今あなたがたと分かち合いたいと思います。

 まず第一に、私たちの前に繰り広げられた人を圧するような光景は、パレスチナの諸都市においてイスラエル軍がしでかした死と破壊の光景です。とりわけてもジェニンのそれは筆舌に尽くし難いものです。数百人が殺され数千人が負傷したのに加えて、イスラエル軍が救急車を阻止し死傷者の搬出を妨害したこと、大量に家屋をブルドーザーで破壊したこと(ときには家族がまだ中にいるもとで)、1週間以上にわたって水と電気と電話を遮断したこと、その反駁の余地のない証拠があります。自分の周囲で男たち、女たち、子供たちが血を流して死んでいこうとする時に、全く水もないという状況を、あなたがたは想像することができるでしょうか? そして、死体を数日のあいだ家に置いたのち近くの空き地にそれを埋めねばならないという状況を?

 これらの事態は、現在進行中の残虐行為、大量逮捕、破壊的蛮行、窃盗、屈辱を与える行為などをはるかに越えて進行しています。ある将校の言明が今日の「ハ・アレッツ」紙に引用されました。「我々がそこでおこなったことの映像を世界が見る時、それは我々に巨大なダメージを引き起こすだろう。」と。メディアが接近することを許されていないのも不思議ではありません。昨夜おこなわれた人権団体ベッツェレムの緊急委員会合での現場からの報告に耳を傾けると、涙したのは私だけではないことがわかりました。

 今は分析をしている暇はありません。私には言うべきことが多くあるのですが。たとえば、ペレスの共犯について。イスラエルに対する正当な怒りによって国際的に解き放たれたゾッとするような反セム族主義について。イスラエルにおける恐ろしいテロリズムとアメリカにおけるいわゆる「テロとの戦争」が、現在起こりつつあることにいかに許可証をあたえたかについて。等々。ブッシュ=チェイニー=ライス=シャロン=モファズを並べれば、暴力がいっそうの暴力の原因となる処方箋は完ぺきです。今日のジェニンでの13人のイスラエル兵士の死は、イスラエルの軍事力の悲劇的な無益さということを痛感させるばかりです。

 分析するよりはむしろ、今は行動する時です。ここイスラエルでは、平和運動と人権運動は、考えうる限りのありとあらゆる戦線で疲れを知らずに活動しています。占領地での軍務を拒否している将兵たちは収監されていきます。緊急に集められた食糧と医薬品の輸送物資は配達・配送され、更に集められています。人権活動家たちは、命がけで監視行動に取り組んでいます。平和活動家は、軍検問所で対峙して、催涙ガスその他をあびせられても勇敢に立ち向かっています。外国の活動家たちは、占領地全域で人間の盾として活動しています。私の活動歴の中で、これに匹敵するような緊急事態を思い出すことができません。ここにおいては、あることの原因を徹底追求するということのために、生命も日々のパンも脇へ押しやられつつあります。私はまた、私たちイスラエル人自身が創り出した大災厄が眼前で展開されつつあるということを感じ、それに匹敵するような感覚を思い起こすことができません。

 私は、あなたがたに、あなたがた自身の行動をとるように懇請します。関係諸官庁に(いくつかの宛て先は下に示されています)働きかけて下さい。もしあなたがユダヤ人であれば、それを必ず強調して下さい。次のことを主張して下さい。
1)この恐ろしい暴力を終わらせるために、国際監視団が現地に直ちに派遣されなければならないこと。2)紛争の根本原因はイスラエルによるこの地の占領であること。占領を終わらせねばならないこと。

 限られた時間しかなくてもできる他のことは次のことです。
・1分しか時間がないなら、この手紙をあなたのメールリストに載っている人々に転送して下さい。
・10分時間が割けるなら、あなたの選ぶ組織に小切手を書いて下さい(「www.coalitionofwomen4peace.org」でリンクスを見て下さい)。
・1時間あるなら、あなたの現地の新聞社に手紙を書いて下さい(手短に、そして心を込めて)。
・もっと時間があるなら、活動に関わって下さい。「www.junity.org」の「Get involved - Find an Organization Near You」を見て下さい。もしあなたがアメリカ在住のユダヤ人であれば、「Tikkun Community(www.tikkun.org)」または新たにつくられた「Brit Tzedek v'Shalom - Jewish Alliance for Justice & Peace(www.jppi.org)」に参加して下さい。

 どんなことでも、あなたがたにできることはすべて価値あることです。

 最後に、私は、イスラエルは今日ホロコースト記念日を印したということを書き留めないではいられません。私たちがこのトラウマからついに自らを解放し、その真の教訓、toleranceという教訓を肝に銘じることができるのは、いつになるのでしょうか?

Shalom(ヘブライ語の平和)/Salaam(アラビア語の平和)
エルサレムより
ギラ・シヴィルスキー(「黒衣の女性たち」の創設者の一人)



2002年4月13日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局