[憲法改悪と教育基本法改悪に反対する5・1討論集会報告]
憲法改悪、教育基本法改悪に反対する新たな闘いの一歩
◎改憲派の軍国主義的・反動的な憲法像・国家像全体の批判を狙い目に
◎9条改悪で目指すはイギリス型「海外派兵=武力行使」帝国主義国家
◎今国会への上程も。再び動き出した教育基本法改悪


(1)本討論集会を改憲反対、教育基本法改悪の闘いの新たな一歩に
 5月1日、憲法記念日を前に、大阪中央区のエル大阪において「戦争できる国造り、グローバル企業のための国造りに反対しよう!憲法改悪と教育基本法改悪に反対する5.1討論集会」をアメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局の主催で行った。私たちは、本討論集会を、憲法改悪反対、教育基本法改悪反対の闘いの新たな一歩として企画した。集会には70名を超える市民が参加した。
 憲法と教育基本法にとって今年ほど重要な年はない。自民党の改憲案、衆参憲法調査会による報告、経団連の憲法改革案などが相次いで発表され、民主党、公明党もそれぞれ独自の改憲志向を示し、政財界、さらには御用マスコミも一体となって改憲に動いている。政府与党とメディアから洪水のように垂れ流される改憲キャンペーンが功を奏したのか、最近では9条改憲容認が世論調査でジリジリと増えている。自民党・右翼勢力による憲法改悪策動は戦後を通じてこれまでもあったが、改憲反対派の弱さを考慮に入れれば、戦後初めての深刻極まりない憲法の危機と言っても過言ではない。

 集会は、@憲法改悪をめぐる直近の情勢、改憲派の狙い目、主要な論点、改憲派の衝動力とその矛盾について、A“小泉改憲”、憲法9条改悪の危険性について、そしてB改憲と不可分一体の教育基本法改悪について、それぞれ報告を行い、討論を行った。
 @では、改憲勢力は憲法9条の改悪と海外派兵・武力行使の実現を憲法改悪の最大の目的にしているが、その前提として、国家全体を軍国主義的・反動的な方向に全面的に改変しようと狙っていることを批判の眼目に据えた。すなわち「国を縛る憲法から国民を縛る憲法へ」「権力を縛る規範から人民を縛り支配する規範」へ、憲法の基本性格を根本から覆そうという目論見である。現行憲法が国家に課してきた様々な制約、禁止事項を一挙に撤廃しようという狙いである。その最大の目標が、9条改憲による侵略戦争の自由、海外派兵と武力行使の自由の獲得なのである。同時に、国民の権利と自由は徹底的に切り縮められ、逆に国防の義務、国家への奉仕をはじめありとあらゆる義務・責務が強制される。ファッショ的なグロテスク国家が改憲派の理想的な国家像・憲法像である。

 Aでは、小泉改憲とでも言うべき急速な改憲策動−−解釈改憲と明文改憲の同時並行的推進−−をこの間の経緯を含めて詳しく報告し、小泉政権の下でいよいよ「最後の一線」、つまり、あとは「武力行使のみ」というギリギリにまで憲法が蹂躙されている現状を糾弾した。その上で、9条第2項改憲の欺瞞を明らかにし、その狙いがイギリス型「海外派兵=武力行使」国家への改造であることを暴露した。

 Bでは、冒頭に報告者から切迫した状況が報告され危機感が表明された。郵政民営化をめぐる自民党内の対立から遅れていた教育基本法「改正」法案の最終的な取りまとめが再び動き始めたのである。強調されたのは、教育においても、国家が求める鋳型に子どもたちを洗脳しはめ込む「国民を縛り拘束する教育基本法」への180度転換である。愛国心・国家主義教育批判と差別選別主義教育批判の両面から現在の政府与党・支配層の教育政策を全面的に批判する必要性が提起された。


(2)国家には「侵略戦争の自由」、国民は国家への義務と責務でがんじがらめに縛る−−改憲勢力が狙う新憲法の本質
 署名事務局からの報告の後、冠木克彦弁護士からコメントがあった。冠木弁護士は、改憲の本質を見極め腰を据えた中長期の闘いを構築することが重要である、憲法像・国家像が問題になっている、まさに敵の国家像を根底から暴き出し批判する活動をしなければならないと強調され、以下のように改憲派の狙い目を暴露された。
 改憲論は“社会不安”を利用する。個人主義が蔓延している、個々人が権利を主張しすぎている、だから社会が乱れ道徳や規範が崩れるのだと言う。乱れた現状を正すには国家による規制・統制の強化しかない。「我が国固有の価値」「国柄」を復権するしかない。社会不安があると国民は国家にすがろうとする。改憲派はこれを逆手にとって、国民の権利を全面的に制限し国家権力の強大化を憲法の基本理念にしようとしている。等々。

 つまり敵の目的は国家構造を軍国主義的・反動的な方向へ変えることにある。憲法用語を使えば「国民主権」から「国家主権」への根本的転換と言うことができる。国民によって国家に権限を与える、それを受けて国家が権力を行使する。これが近代立憲主義の基本である。しかし、改憲勢力は権力の正当性は国民でなく国家にあるとする。このような主張は教育基本法改悪に一番よく出ている。「教育基本法を国家権力を制限する規範から、国民を縛り拘束する規範に180度転換」−−これが教育基本法改悪の根本問題である。
 国家への義務、国家への奉仕、国家のための教育等々。冠木弁護士自身、国家が前へ張り出してくる点に最大の危機意識を持っていると強調された。しかも、この危険性を真正面から反対している勢力がない。野党第一党民主党からして、国家と国民を等値し、憲法を単なる「行為規範」におとしめ、結局国家権力を野放しにしようとしている。近代憲法の意味も、現行憲法誕生の意味も全く無視している。憲法を国家を縛るルールではなく国民を支配し縛る道具に変えさせてはならない。


(3)反戦平和の闘いと改憲反対、教育基本法改悪反対の闘いを結合しよう
 討論ではまず、この3月に閣議決定された「国民保護基本指針」に基づき、新年度に入って大阪を含め全国各地の地方自治体や公共機関で、「有事訓練」などが開始されようとしている点について報告された。反原発を闘う方から、原発の集中する福井などでは、事前に有事対策のマニュアルや演習が行われる危険性が高い、と指摘された。

 また、基調の補足「日本経済のグローバル化と日本のグローバル企業のポジション」をもとに、日本経団連などグローバル企業を中心とする財界が憲法改悪の推進派に新たに登場してきた背景について報告があった。グローバル企業の巨大化(海外売上高や海外生産、海外での就業者、設備投資などの著しく高い比重)の実態が指摘され、こうした巨大になった日本の海外資産・海外利権を「防衛」することを理由に、財界が軍国主義化・反動化を強めていることが報告された。しかし今日においては日本単独では「防衛」できない。日米同盟強化を通じて「グローバル企業の安全保障」を図る、米の軍事覇権を維持するために米軍の従属部隊として自衛隊の海外派兵と武力行使、集団自衛権行使を本格化する−−財界のこのような危険な方向が鮮明になった。財界の改憲策動は、非正規雇用や雇用不安、社会保障制度の改悪、消費税の大増税と一体の策動であることから、改憲反対の闘いと労働者の雇用・生活防衛、収奪反対闘争との結合の重要性が指摘された。

 集会の最後に緊急の行動提起が行われた。
−−5月7日東京で行われる「教育基本法の改悪をとめよう!全国集会」
−−5月7日伊丹市で行われる「自衛隊第3師団イラク派兵反対集会」
 最後に、討論のまとめを兼ねて、署名事務局から、この討論集会を新たな一歩として、改憲反対の闘い、教育基本法改悪反対の本格的な闘いを構築していくことが確認された。

2005年5月5日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局



以下、討論集会で提起された報告。

戦争ができる国造り、グローバル企業のための国造りに反対しよう!
憲法改悪と教育基本法改悪に反対する5・1討論集会 [基調報告]


はじめに−−本討論集会の目的。

T “小泉改憲”の加速と諸矛盾。長期の構えで地道な反撃を組織しよう!
 −−自民党・改憲派による憲法観・国家観の転換。権力を縛る規範から人民を縛り支配する規範へ−−

U 9条2項改憲の欺瞞と危険を批判する
 −−最大の狙いはイギリスに次ぐ「派兵国家=武力行使」国家造り−−

V 政府自民党・右翼・財界による教育政策の玩弄と教育基本法の改悪
 −−子どもたちを自民党・右翼とグローバル企業の思いのままの鋳型にはめ込む−−

補足 「日本経済のグローバル化と日本のグローバル企業のポジション」

行動呼びかけ 「自衛隊伊丹第三師団、第6次イラク派兵反対行動へ!




戦争ができる国造り、グローバル企業のための国造りに反対しよう!
憲法改悪と教育基本法改悪に反対する5・1討論集会[基調報告]


はじめに−−本討論集会の目的。

(1) “小泉改憲”は、この4月相次いで衆参両院の憲法調査会が最終報告を出したことで改憲に向けて大きく前進した。次をどうするか。改憲派と改憲反対派の闘いは新しい局面に入ろうとしている。
 今なぜ憲法改悪か、今なぜ教育基本法改悪か。第一に、改憲、教基法改悪の推進者、衝動力、本質を、1990年代後半以降の軍国主義化・反動化の新しいエスカレーション、更には小泉路線全体の中で位置付けること、第二に、改憲、教基法改悪の危険性を暴き出し、その強さと弱さを見極めながら、署名事務局の反戦平和運動の取り組みの中にしっかり位置付けること、これが本討論集会の目的である。私たちの改憲反対の取り組みは立ち後れている。本討論集会を新たな出発点に、早急にこの遅れを取り戻したい。

(2) 押し付け憲法だ。日本人の手で憲法を作ろう。憲法は時代遅れ。9条は現実と乖離している。新しい人権、環境権やプライバシー権を書き込まねばならない。等々。改憲派からは、改憲を正当化する様々な個別論議が吹っかけられている。こうしたトリックとごまかしのプロパガンダが世論を惑わせ改憲容認に向かわせている。
 改憲反対派が、改憲の最大の狙いは9条改憲だとして、9条改憲に絞って対抗することは当然である。しかしそれが決定的だとは言え、9条だけに目を奪われてはならない。改憲戦略のトータルな批判が必要である。自民党や日本経団連の改憲案を検討すると、そこには驚くべき憲法観・国家観が示されているからである。憲法用語で言ういわゆる「立憲主義の根本的否定」、「権力制約規範から国民制約規範への転換」である。支配層は、改憲をきっかけに国家権力を縛る憲法を全面的に作り替え、人民を縛り義務を課し国家に奉仕させる憲法に覆そうと目論んでいるのである。改憲とは、恐ろしく反動的で軍国主義的な国家権力の再編強化である。
 これは、教育基本法改悪が、「子どものための教育」ではなく、「国家権力のための教育」を前面に押し出していることと符合する。「国家権力のための憲法」と「国家権力のための教育」は同じことなのである。
 私たちは、改憲派の戦略「権力を縛る憲法から国民を縛り支配する憲法への転換」を、まずは改憲派批判の最大の眼目の一つにしたい。

(3) 今回の改憲と教育基本法改悪は、日本政治と日本経済の歴史的な激動の中で推し進められている。小泉「構造改革」路線、対米従属の軍事外交路線とワンセットである。しかし、政府与党・財界のグローバル企業再生戦略と密接不可分に結び付いていることについては、まだ十分に理解されていない。支配層の狙いを明らかにするには、支配層が追求する日本経済の再生戦略、更には国家戦略の分析抜きには、「グローバル企業のための安全保障」「グローバル企業のための労働力政策」という視点を踏まえることなしには、本当の意味で改憲と教育基本法改悪の危険性と矛盾を明るみに出すことは出来ない。私たちの強調点の一つはここにある。こうした理由で、副題に「グローバル企業のための国造りに反対しよう」を付け加えた。

(4) この基調報告は3部構成である。第T部では、改憲を巡る直近の情勢、改憲の段階区分、改憲推進派と衝動力について明らかにする。今回の改憲は全面改憲だが、やはり支配層最大の狙いは9条改憲である。第U部では、軍事情勢の変化に即して解釈改憲から今回の明文改憲への動きを詳しく延べ、9条改憲の危険性を暴きたい。第V部では、改憲に先んじて強行されようとしている教育基本法改悪の狙い、本質を明らかにする。支配層の教育政策批判全体の中で今回の教育基本法改悪の意味を検討したい。

2005年5月1日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局



T “小泉改憲”の加速と諸矛盾。長期の構えで地道な反撃を組織しよう!
 −−自民党・改憲派による憲法観・国家観の転換。権力を縛る規範から人民を縛り支配する規範へ−−

U 9条2項改憲の欺瞞と危険を批判する
 −−最大の狙いはイギリスに次ぐ「派兵国家=武力行使」国家造り−−

V 政府自民党・右翼・財界による教育政策の玩弄と教育基本法の改悪
 −−子どもたちを自民党・右翼とグローバル企業の思いのままの鋳型にはめ込む−−

補足 「日本経済のグローバル化と日本のグローバル企業のポジション」

行動呼びかけ 「自衛隊伊丹第三師団、第6次イラク派兵反対行動へ!