教育関連3法改悪、イラク特措法延長 相次ぐ強行採決
窮地に陥る安倍政権 開き直りと暴走を許すな!


(1)安倍政権は6月20日、ヤジと怒号が飛び交う中、イラク特措法延長と教育関連3法改悪を相次いで強行採決した。成立した二つの法律はいずれも安倍の「戦争国家」づくりにとって重大な意味を持つ反動化、軍国主義化を加速する悪法である。
 イラク特措法延長は、米軍兵士と武器を空輸する侵略加担法である。すでに破綻が明らかとなったブッシュのイラク占領支配をあくまでも支持し航空自衛隊を戦地に送り続けるためのものだ。泥沼化するイラク情勢もブッシュのイラク新政策の失敗も全く検討されていない。延長する理由は、アメリカがいまだにイラクで戦争を継続しているということだけだ。自衛隊を戦場に派遣し、米軍の戦争を支援し続けているという実績を作るためだけの、全く根拠も大義もない政治的決定である。日本はこれによって、イラクの65万人を越える市民の犠牲にも、シリアなどへの巨大な難民・避難民の発生にも、バグダッドの社会・生活基盤、治安の崩壊にも、宗派対立・抗争の激化にも直接責任を負うことになる。
 教育関連3法改悪−−教育免許法、学校教育法、地方教育行政法−−は、教育を通じて国民を洗脳し「戦争国家」を受け入れさせるための法整備である。教職員を人事制度と差別給与体系、免許更新制度等によって支配し、「愛国心」・道徳訓をはじめ国家が決めた教育内容を子どもたちに押しつける。改悪教基法の具体化である。私たちは。安倍政権の「戦争国家」づくりのための反動・反人民法の強行採決・成立を断固糾弾する。
※10年ごとの教員免許更新制導入…教育改革関連3法が成立(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070620it11.htm
※改正イラク特措法が成立 自衛隊派遣を2年延長(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0620/TKY200706200225.html


(2)しかし安倍の強硬姿勢は、決して政権の強さを表しているのではない。その逆である。ここに来て安倍は、各種世論調査で軒並み内閣支持率を急落させ、政権発足以来の窮地に陥っているのだ。時事通信の世論調査では支持率がついに28.8%にまで落ち込んだ。内閣支持率が「危険水域」とされる3割を切ったのは2001年4月の森内閣以来である。また、朝日新聞の調査では不支持率が51%に登った。もちろん発足以来最高である。 
※内閣支持32% 不支持51% 本社連続調査(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0619/TKY200706180363.html
※内閣支持28.8%に急落=年金不信が直撃、発足後最低に−−時事世論調査(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007061500700

 安倍はこのような中で、反動法案の強行採決だけが政権維持策という異常事態に陥り暴走しているのである。安倍は、会期末の土壇場になって異例の国会会期の12日間の延長方針をごり押しし、天下り合法化のための国家公務員法改悪法案、年金不払い対処のパフォーマンスである年金時効撤廃特例法案、そして社保庁解体のための社会保険庁改革関連法案などの悪法成立へ突き進もうとしている。しかし、参院選を控える中で与党内部の対立も深まり、与野党の対立、国民と世論の反発等々も高まり、問題は沈静化するどころか、むしろ一層拡大している。
 安倍を窮地に陥れた最大で直接の要因は、5000件にも及ぶ年金記録紛失問題と松岡農水大臣の自殺=緑資源機構の官製談合問題である。しかし、今回の2つの新事態はきっかけに過ぎない。可燃物が蓄積されてきたのである。労働者・勤労人民の生活苦や生活不安を差し置いて、憲法「改正」を政治公約に掲げ教育基本法改悪を強行し、数々の悪法を相次いで強行採決して「戦争国家」への道を突き進む安倍の強硬路線に不安と不満が高まっていたのだ。それはまた、小泉が進めたネオリベラリズム的構造改革の矛盾、松岡に代表されるような土建国家的利益誘導政治の矛盾、そしてさらには安倍の持つ右翼反動的思想信条=天皇主義的復古主義の矛盾−−これら3つの矛盾が一挙に噴出したものである。


(3)安倍の推し進める「戦争国家」化の恐ろしさをまざまざと示す事件が相次いで明らかになった。一つは、安倍政権がこの5月、沖縄辺野古基地建設の「事前調査」強行のために、住民運動封じ込めを目的として海上自衛隊を動員するという前代未聞の暴挙をおこなった事件である。もう一つは、陸上自衛隊のイラク派兵直前に、防衛相の直轄部隊「情報保全隊」が、イラク派遣に反対する市民運動などに対してスパイ・監視活動を系統的、組織的に行い、その詳細な報告書を作成されたことが暴露されたことである。この二つの事件は、自衛隊(軍)が市民に直接対峙するかつてない事態であり、憲法や法律を蹂躙する形で勝手に自衛隊が動き、市民に牙をむき国内治安活動に乗り出したことを明らかにしている。これが制服組(=軍部)単独の暴走なのか、安倍(あるいは小泉)首相官邸(=政治)が指示したものなのか等々、詳細は「防衛秘密」をテコに隠蔽されている。しかしいずれにしても、憲法が改悪され、自衛隊が自衛軍となって大手を振って歩き出したらどうなるのか、改憲の恐ろしい危険性を明らかにしている。
 安倍は、集団的自衛権に関する「有識者懇談会」を組織し、より包括的全面的に自衛隊をアメリカの侵略戦争に協力・加担させる道を探っている。安倍は、憲法解釈で歴代の首相がだれも手を着けることのなかった集団的自衛権の解禁による解釈改憲を射程に入れ始めたのだ。それは安倍が、参院選後を睨んで憲法改悪の本格的に推し進めるための体制の整備である。
自衛隊によるスパイ・監視活動を許すな! (署名事務局)
軍艦を動員した辺野古基地建設強行糾弾!(署名事務局)

 安倍政権には、労働者・勤労人民の生活状態など眼中にないことがますますはっきりとしてきた。参院選は、「暮らし」が争点になるのは間違いない。それは直接的には住民税増税や物価高などでますます悪化する人民生活の窮乏化、とりわけ若年層の過酷な労働条件、不安定雇用、長時間労働と低賃金、ホームレス化、現在と将来への不安という問題である。しかしそれはまた憲法問題と密接に結びついている。「戦争国家」は、国家の総動員態勢を要求し、国民の忍耐と犠牲を強いるからである。国と社会全体の反動化と人民生活破壊と不可分であるからである。そして戦争国家は職のない若者を派兵要員として軍に徴用する。根底において、憲法問題は困窮化する人民の問題である。生活不安や生活苦を無視した「戦争国家」づくりに反対しよう。生活破壊・労働破壊反対の闘いと憲法改悪反対の闘いの結合を追求しよう。

2007年6月20日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局