安倍政権との闘いに備えよう!
−−臨時国会最大の争点、教育基本法改悪の危険性−−


[1]はじめに−−再び4点セット(教育基本法、共謀罪、国民投票法、防衛省昇格法)が争点に

 自民党総裁選は20日の投開票に向け終盤に差しかかっている。しかし、ポスト小泉は安倍総裁、安倍首相決まりであり、安倍氏の「圧勝」がどの程度になるのかが問題になっているにすぎない。安倍官房長官の関心は、すでに総裁選とそこでの政策論争ではなく、内閣人事に移っている。一方、安倍官房長官に対抗する谷垣財務相と麻生外相は、安倍政権への入閣も射程に入れて、それに有利な得票活動と「政策論争」を仕掛けているにすぎない。集団自衛権の解釈改憲を表明する安倍氏に麻生氏が共鳴し、谷垣氏が公然と打ち出した消費税増税に安倍が08年の増税構想を表明する−−右翼的、反動的、反人民的政策の土俵の上で「相乗効果」を生み出している。

 安倍官房長官は、政権構想において憲法改悪と教育基本法改悪を前面に掲げ、自らが作り出す政権を「改憲政権」と規定し、改憲のめどを「5年以内」と公言している。小泉首相が新自由主義的「改革」「郵政民営化」を目標に掲げたように、安倍氏は教育の右翼的反動的改悪と憲法改悪を目標に掲げたのである。
 来るべき安倍新政権のもとでは、小泉政権が前国会で成立を断念した教育基本法案改悪、共謀罪法案、国民投票法案、そして防衛省昇格法案が当面の最重要法案になる。とりわけ教育基本法改悪が臨時国会の最大の焦点であり、改憲に向けた重大な第一歩となる。これを阻止し廃案にすることができるかどうかが、憲法改悪、教基法改悪阻止の闘いにとって決定的となる。
※安倍氏:教育基本法改正案の成立 臨時国会の最優先課題に(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20060904k0000m010095000c.html

 いくつもの「パクリ説」が渦巻くにもかかわらず、いかがわしい安倍氏の著書『美しい国へ』が本屋に山積みされ、マスコミによって国民に売り込まれている。世論調査での安倍氏の支持率は5割を超えている。しかしながら、同じ世論調査で国民の関心は「福祉と年金」であり、「格差問題の是正」である。すなわち人民の生活である。国家主義色の強い安倍氏の政策と国民の「期待」のギャップははなはだ大きい。さらに彼のよって立つ右翼的基盤、極右的基盤と、「現実的政策」との間のギャップも大きい。国民から浮き上がった政権が、国民の期待と勝ち馬にのる事を目指す党内のほとんどの派閥の思惑と右翼的基盤と衝動力の間で「又割き状態」になる可能性は十分ある。「小泉劇場」「純ちゃんフィーバー」のような独裁的な求心力、ライバル、批判者を黙らせる力は安倍氏にはない。
※「安倍氏を首相に」53% 本社世論調査(朝日新聞)
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/seiji/20060823/K2006082204850.html
 たしかに安倍支持は5割を越えているが、支持する人の中で「安倍の政策を知っている」が11%にとどまり、44%が「人柄やイメージ」(もちろんマスコミが作りだしたにすぎない)で選んでいる。
※「次期首相に安倍氏」が5割超、JNN調査 (TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3373025.html

 安倍政権誕生と臨時国会に向け、即刻準備にとりかかろう。安倍氏の右翼的・反動的・反人民的性格、彼が首相になって作り出そうとしている「美しい国」の正体を全面的に批判し暴露し、闘いを組織していこう。本稿では特に、臨時国会で最大の焦点となる教育基本法改悪の危険性、そして憲法改悪と日米同盟強化・軍国主義化の危険性を取り上げ批判したい。

2006年9月18日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




[2]安倍氏が目指す『美しい国』とは−−グロテスクな反動的・反人民的国家

(1) 安倍氏は「美しい国」「戦後レジームからの脱却」など耳ざわりのいい言葉で、人々の関心を引きつけようとしている。しかし安倍氏がそのような言葉でごまかそうとする国はどんな国なのか。
−−それはまず、戦争放棄、基本的人権、国民主権の3原則で成り立つ日本国憲法を廃棄する改憲国家である。
−−日本の過去の侵略戦争を賛美し、日本軍性奴隷などの数々の戦争犯罪を覆い隠し、戦争責任問題をきれいさっぱり反故にする「開き直り国家」である。
−−アメリカが強引に推し進めているイラク、アフガンなどの侵略戦争を支持し、より一層の日米同盟の強化と基地再編、戦争加担、自衛隊の海外派兵を目指す「戦争ができる国家」である。
−−朝鮮民主主義人民共和国などに対して強硬外交一本槍で突き進もうとする「力の外交の国家」である。
−−生活保護を切り捨て、不安定雇用を拡大、弱者や低所得者に矛盾を集中し、悔しかったら努力しろと「再チャレ」精神を強要する格差国家・人民収奪国家である。
−−国家のために命を投げ出すことをいとわない若者や、国策のためには自らの犠牲も甘受する国民を作り出すための教育改革を行う洗脳国家である。

 結論を先に言えば、「美しい国」とはそのような醜悪極まりない反人民的・反動的な軍国主義国家、「危険な国」のことなのである。


(2) 危険なことは、このような安倍氏の目指す右翼的な国造りが、対アジア外交や構造改革のテンポなどいくつかの点を巡っては重大な対立を抱えながらも、基本的には日本の支配層、財界の中枢を握るグローバルトップ企業の意図に合致するということである。小泉「構造改革」という形を取ったグローバル企業による国家構造の改革は、安倍政権の下でも多少の手直しを経ながらも引き継がれていくということである。
 憲法改悪はもちろん、「恒久法」による海外派兵の本来任務化などの軍事・外交政策、非正規雇用の拡大などの労働政策、老人医療の切り捨て、医療費負担増など医療制度改悪とあわせて、「全国学力テスト」「学校選択制」「教員の免許更新制」など教育制度の改悪に関する提言も、日本経団連や経済同友会に集まるグローバルトップ企業が提示する政策から出されている。
 もちろん、グローバル企業が官邸に影響力を行使する「経済財政諮問会議」や「規制改革・民間解放推進会議」をどの程度重視するかは首相の意向によるところが大きい。小泉首相は奥田経団連と二人三脚で、対米軍事同盟重視の軍事外交政策と併せて新自由主義的な「構造改革」を推し進めてきた。安倍氏は、日本版NSC(国家安全保障会議)の創設、官房副長官の増員、内閣広報の強化、省庁幹部職員の政治任用など、小泉首相とはまた違った形で首相・官邸権力を強化し、グローバル資本の意図を政策に貫徹しようとしている。
※安倍長官:首相官邸機能、2段階で強化 現行仕組みを活用(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060914k0000m010143000c.html


(3) 安倍氏が臨時国会での成立を目指すという教育基本法改悪もこの枠組みの中にある。しかしそれ以前に私たちは、安倍氏が日本の教育の反動化において極めて右翼的で犯罪的な役割を果たしてきたことを厳しく批判しなければならない。このような輩が首相として、教育の憲法である教育基本法の改悪を新政権の最大の課題に掲げていること自身が極めて危険なことである。安倍氏はマスコミが意図的に作りだした「さわやかなイメージ」とはほど遠い、どす黒いごろつき右翼の顔を持っている。今の危険は、安倍氏が本来持っている右翼的な教育反動衝動とグローバル資本の意図が融合する危険である。
 安倍氏は、かつて東条内閣の重要閣僚を務め、植民地帝国「満州国」で決定的な役割を果たし、また戦後も60年安保条約締結を強行すると同時に憲法改悪を目論んだ、A級戦犯元被指定者岸信介の孫である。しかも安倍氏は、そのA級戦犯元被指定者をA級戦犯元被指定者として崇め奉り、自分もそのA級戦犯元被指定者のようになりたいと思い込み、祖父ができなかった軍事大国化を実現しようと考えている極めて危険な人物である。そのような人物がA級戦犯を批判することは絶対にない。だから東京裁判やその下での戦犯判決に敵意を持ち、同時にアメリカの軍事政策と日米同盟の強化に異常な親近感を持っている。右翼団体「日本会議」や「勝共連合」、カルト宗教団体「統一教会」と深い関わりを持っている。これは、国会でも追及されている。安倍氏は、アジア太平洋戦争は解放戦争であって侵略戦争ではない、南京大虐殺や『慰安婦』は事実ではないなどと主張する自民党の「歴史・検討委員会」のメンバーであり、「歴史教科書を考える超党派の会」のメンバーであり、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバーであり、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の元事務局長である。安倍氏はまた一貫した憲法改悪論者であり、「自由民主党新宣言」の検討過程では改憲を入れさせるために原案に大反対して運動した経歴を持つ。つまり札付きの思想右翼そのものである。−−“グロテスク”という一語に尽きる。


(4) 安倍氏は、これら右翼的な会の有力なメンバーとして1990年代の後半から、つくる会教科書の採択運動を積極的に押し進め、高校や中学校の教科書から「従軍慰安婦」の記述を抹消させたという、右翼勢力の中では輝かしい経歴を持っている。
 特に、2004年5月には当時自民党幹事長でっあった安倍氏は、「教育基本法改正促進決議・意見書」なるものを各地方議会で採択するよう自民党地方組織に通達した。これは、「全国キャラバン隊」を組んで6月の地方議会に圧力をかけた右翼団体日本会議の行動と事実上一体となった活動であった。NHK番組改竄事件では、中川昭一議員とともに、NHKに圧力をかけ、「従軍慰安婦」問題と天皇の戦争犯罪を裁く女性国際戦犯法定の番組をねじ曲げ、特に最重要の場面であった「昭和天皇有罪判決」部分を削除したことが明らかになっている。
女性国際戦犯法廷番組、改ざん強制問題(1) (署名事務局)
女性国際戦犯法廷番組、改ざん強制問題(2) (署名事務局)

 歴史をねじ曲げ、侵略戦争の恥部を教科書から抹消し、天皇の戦争責任を否定し、「天皇は歴史上ずうっと『象徴』だった」、1977年以来靖国裁判で「参拝自体は合憲とされている」(『美しい国へ』)などとウソ八百を並べ倒した。安倍氏は、歴代政府が受け入れてきた「東京裁判」や日本の植民地支配と侵略を不十分ながらも詫びた「村山談話」を公然と否定する。そして否定しながら、正面から自分の考えを出さずに「あの戦争の評価は歴史家にゆだねられるべきだ」などと、責任逃れをする。このような人間に教育を語る資格があるのだろうか。
 それにも関わらず、安倍氏はライブドア事件、長崎の同級生刺殺事件などことあるごとに、何の脈絡も根拠もなく「教育基本法が問題」と発言するなどし、教育基本法への敵意をあらわにしてきたのである。
※安倍官房長官:ライブドア事件は「教育が悪いからだ」(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060217-00000006-mai-pol


(5) そのような安倍氏が『美しい国へ』で描く教育改革はどのようなものなのか。それは、一方では、新自由主義的「競争」を子どもと学校に押しつけ、現在進行している教育格差を極限にまで押し進め、「レベルが低い」と決め付けられた学校や子どもたちを平気で切り捨て、他方では愛国心教育と道徳教育で国家に従順で役に立つ国民を作り上げるというとんでもない「改革」である。
 安倍氏が手本とするのは、すでに破綻が明らかになっているイギリス・サーチャーの教育改革である。安倍氏が幹事長であった2004年秋に教育調査団をイギリスに派遣し、サッチャーの教育改革を絶賛した。この教育調査団こそ、右翼団体日本会議による国旗国歌法制定運動やつくる会教科書採択運動などの教育反動化運動を直接政治に反映させるためにつくられた2003年の「日本会議国会議員懇談会」、そしてこの懇談会をもとにしてつくられた2004年3月の「教育基本法改正促進委員会」によって企てられたものなのである。ここでは、復古主義的な極右翼・極反動勢力が、財界も顔負けの新自由主義的な差別選別教育を大胆に導入しようというのだ。
※『教育正常化への道』(中西輝政監修 英国教育調査団編 PHP)

 安倍氏は言う。国が教育の目標を設定する。子どもに何を教えるかは国が決める。それを進めるために「全国一斉学力テスト」を実施する。その結果「学力レベル」という一点だけで全国の小中学校は序列化され、それに従って予算配分が行われる。「政府の定めた水準に達していない学校は容赦なく廃校にする」とイギリスの例を挙げながら強調する。さらに日の丸・君が代に反対するような「ダメ教師にはやめていただく」。彼にとって子どもたちは「監視」の対象であり、愛国心と徳目をひたすら教え込み、「国に対する誇り」を持たせるために道徳をたたき込む対象でしかない。「問題を起こす児童・生徒に対する教職員のしつけ権限を法制化」「地域に悪影響をおよぼすおそれのある問題家庭を24時間監視する」などイギリスの例を得意げに引用する安倍氏をみると戦慄さえ覚えいずにはおかない。ボランティア活動を「強制する」、落ちこぼれてしまい社会的底辺にたたき込まれても生きがいを感じられるように「再チャレンジ」精神を持つ。とにかく国家の言うがままに動くロボットのような人間づくり−−これが安倍氏が『美しい国へ』で思い描く教育改革の姿である。

 この中には、主権者としての国民の教育という発想も、教育本来の姿である子どもたちの豊かな人格の形成という発想もない。あるのは、国のための教育であり、国家に忠誠を尽くす人材、国家に逆らわない、逆らう気を起こさせないような人材の育成という、国民を奴隷のように扱う権力者的発想だけである。
 安倍氏は、総裁選の論戦で早速「教員の免許更新制度」の導入に言及した。「指導力不足教員」「不適格教員」をなくし、教員の質を上げるという。しかし実際に狙っているのは、「日の丸・君が代」不起立などの「不適格教員」を、「免許不更新」「教員免許剥奪」という形で教育現場から追放し、自動的に教員を免職にすることができるシステムであり、もっと言えば、少しでも子どもの発達や人格を大事にしようとする良心的な教員を全面的に排除することなのである。



[3]教育基本法改悪が臨時国会最大の焦点に−−知らされていない教基法改悪の危険性

(1) 教育基本法改悪は、現行日本国憲法と現行教育基本法において国民のものである教育権を国家の手に奪い返し、教育を「国家戦略」、「統治行為」に変えてしまう、「個人の価値」の尊重に基づいた「人格の形成」とされている教育の目的を、国家=政府にとって有用な資質を身につけた人材育成に根本的に転換してしまう、そのような危険なものである。
※教育基本法は、戦前の反省から生まれた「教育の憲法」「準憲法」といわれる特別の法律である。大日本帝国憲法の下では、教育は天皇のもの、国家のものであり、「教育勅語」で定められた徳目を獲得することが臣民の義務だった。現行法10条で謳われている「教育は、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」とは主権が国民にあることを明らかにしていると共に、教育がその主権者にのみ責任を負うことを明確にしている。

 改悪法案は、「国は教育の条件を整備する義務を負い、教育の内容に口を出してはならない」という、国家が何をしなければならず、何をしてはならないかを定めた現行の教育基本法の大原則を根本的に転換し、国家が教育の内容に直接介入することを可能とし、教育を国家のものに変更する危険な法案である。


(2) 改悪法案の下で行われる国による教育内容の中身が、愛国心と「徳目」教育の全面化である。教育基本法改悪法案第二条の「教育の目標」は、国民が獲得すべき徳目を「豊かな情操と道徳心を培う」「勤労を重んずる」「公共の精神」「環境の保全」「我が国と郷土を愛する」など五項目にわたって列挙している。
 とりわけクローズアップされているのが、「愛国心」教育である。子どもたちは、「我が国と郷土を愛する態度」を持つことが要求される。子どもたちに国を愛するか愛さないかの自由は存在しなくなる。どのような態度をもって国を愛するのかが評価されることになる。そして「国を愛する態度」の判定基準を決めるのは国であり行政である。国の愛し方まで国が指定する事になるのである。
 2002年福岡市で明らかになった「愛国心通知表」の存在−−「我が国の歴史や伝統を大切にし国を愛する心情を持つとともに、平和を願う世界の中での日本人としての自覚を持とうとする」という「愛国心」がABCで評価されるという通知表は、多少の文面の差異はあれ現在190を超える学校で実施されていることが明らかになっている。教育基本法が改悪されれば、愛国心にとどまらず、さまざまな「徳目」が通知票の評価項目にずらりと並ぶのはさけられない。これら一つ一つが国が決めた基準で評価され、理解度が試験されるのである。
※「愛国心」盛り込んだ通知表、全国190小学校に(朝日新聞)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200606090317.html


(3) 一方、教育基本法改悪案は、「能力に応じた教育を受ける機会を与えられ」として、子どもたちが「能力」別に振り分けられることを条文化している。そして、「義務教育の水準確保」を謳い、国家が定めた目標に達するために、教育内容へ国家が介入すること宣言している。これは、水準確保の名目の下に全国一斉学力テストが実施されるなど、全国の小学校や中学校の順位がつけられ、序列化される危険性を意味する。これに学校選択制が結びつけばどうなるのか。安倍氏が言うように「低レベル校」と決め付けられた学校は敬遠され「容赦なく廃校にされる」。現にイギリスでは、序列化での上位を目指すことだけが学校や教師の目標になり、そのための学校間の競争が激化し、学校の荒廃化が進んでいるという。
※『岐路に立つイギリスの「教育改革」』(阿部菜穂子 『世界』9月号)
 学力テストが導入され序列化が完成しているイギリスでは、事前に教員が問題を児童・生徒に教えたり、回収した答案を再度書き直させるなどとんでもない事態が生じているという。なぜなら、序列化は、「廃校」や「解雇」を含む、学校や教員の処遇に直接関わってくる、死活問題だからである。

 そもそも「学校のレベル」は様々であり、地域や学校によって特殊性があり、子どもの家庭環境などの影響も大きい。学校は、子どもたちの学力、しかも簡単な一枚のテストだけで序列化されるべきものではない。学習困難な学校や地域ではそれに即した対応が必要とされる。このような序列化は学力トップとされた学校周辺に高所得者層が移り住むなど、「学資」に余裕のある者とない者がそのまま「教育に関心のあるもの」と「ない者」を生みだし、社会的格差や地域格差が教育格差にストレートに結びついていく危険性をもっているのである。
※学校を5段階評定 戸惑い隠せぬ現場(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060913/mng_____kakushin000.shtml
 日本でも、教育基本法改悪を先取りする形で、序列化が「試行的に」始まろうとしている。文部科学省は、「義務教育の質の保証」を名目に、小中学校120校を対象に「極めて優れている」から「要改善」までの五段階で判定する第三者評価を始めるという。


(4) それでは政府が、教育基本法の改悪によって作り出そうとしている、国家にとって有用な資質を身につけた人材育成、「国民の理想像」とはいかなるものか。
 それは第一に、アメリカの侵略戦争への加担や自衛隊の海外派兵を支持し国のためには進んで命を投げ出し、生活を犠牲にする準備ができている国民である。そのような国民は、戦時だけでなく日常的に国民保護訓練に参加し、平時から国を守る気概を養っていなければならない。そのためには、大義がなくてもイラク戦争を支持し自衛隊の海外派兵に賛成するような好戦性をもち、また、日頃から朝鮮民主主義人民共和国を蔑視し、経済制裁を認め、軍事的恫喝にも賛成するような準備と訓練が行われていなければならない。
 第二に「グローバル独占資本に都合のいい人材」づくりである。すなわち、コアとなるごく少数の支配エリート育成と、単純労働に従事する圧倒的多数の実直な大衆の育成が不可欠である。そのために、年少の段階から子どもたちを「勝ち組」と「負け組」に差別選別し、一方では有名私学や中高一貫校に通うエリート層と圧倒的多数の公立校に通う中・底辺層に分け、そのヒエラルヒーを甘受させる。正規雇用労働者と非正規雇用労働者、派遣・契約・パート労働者で我慢し、その元で「勤労の意欲」を維持できる人間の育成である。
 第三に基本的人権を尊ぶ「公共の福祉」ではなく、国策を第一義とする「公共の精神」を重んじる国民である。原発や自然・環境破壊、空港や大型ダム、米軍基地などの国策を進んで受け入れ、自らの財産や生活を犠牲にすることを苦にしない、反対するような気をおこさない従順な国民づくりである。等々。
 自民党や公明党など、現在の政府与党の統治者にとって、これほど都合のいい「国民」はいないだろう。


(5) このような教育基本法の改悪は、アメリカに対する異常な親近感を持ち、対米関係最優先と自衛隊の「戦える軍隊」への改造、米の侵略戦争への協力を政策の柱の一つに置く安倍氏の政策と合致している。政府は、有事法制や国民保護体制を整備しているが、国民が戦争への協力を強制されると感じるのではなく、進んで協力するような思想改造が必要である。戦争の時には自ら命を投げ出す、国策には逆らわない、土地や私財を投げ出し戦争に協力する、そのような愛国心をもった国民づくりを「平時から」しておかなければならない。−−これこそが、安倍政権が何よりも今国会で教育基本法改悪を成し遂げようとしている理由である。

 改悪教育基本法案は、9条改悪を中心とした憲法改悪と連動している。自民党憲法草案の前文には以下のような記述がある。「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し」「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現のため、協力し合う。国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行う。」
 つまり、改悪憲法によれば、「国民は国を愛しかつ国を守る責務を負い」、「圧制や人権侵害」があると政府が決め付ける国に対しては、「不断の努力」を行う−−つまり朝鮮民主主義人民共和国に対する経済制裁、場合によっては軍事制裁をはやし立て、イラク侵略のように米国のグローバルな軍事介入に最初から付き従い、平気で罪もない民衆を虐殺する人間を作るというのだ。それだけではない。これが憲法に定められた国民の義務となり、従ってそれに逆らえば犯罪となる。このような異常な好戦的人間を創り出す教育が行われるのである。まさに、戦前の天皇の“赤子”を生み出す“皇民化教育”がそうであった。
 教育基本法改悪案にある「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度」は、このような、改悪憲法に明記された国民の義務を教え込むためのものになるのである。



[4]軍事外交政策の一大転換−−直接的な戦闘行為が可能な「集団自衛権」行使への踏み込み目指す

(1) 安倍氏は憲法改悪を政権の究極目標に掲げながら、現行憲法の中で「解釈改憲」と法整備を極限まで押し進め、海外派兵と対米協力の既成事実を積み重ね、憲法改悪の国民的合意形成をつくり出そうとしている。
 その第一が、集団自衛権に関する政府解釈の変更である。安倍氏は、「保持しているが行使はできない」というこれまでの政府解釈に対して公然と疑問を呈し、「米軍が攻撃を受けた場合の自衛隊による反撃」を「武器の使用」として許容し、米軍との共同作戦軍事行動に突き進もうというのである。彼は、有識者などで作る検討機関を政府内に設置する事を表明、従来政府が憲法上できないと答弁してきた集団自衛権の行使に何としても道を開こうとしている。親米ずぶずぶでブッシュ政権の要求に何でも応えてきた小泉首相だが、「集団的自衛権」には踏み込まなかった。その集団的自衛権行使に早々と道を開こうとしている中に安倍氏の右翼的信条と狙いの危険性があらわれている。
※集団的自衛権「政府見解で行使」検討 安倍氏(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0905/004.html

 第二に、「恒久法」の制定である。安倍氏は、アフガニスタンやイラクのようなアメリカが遂行する侵略戦争に、テロ特措法やイラク特措法という個別の時限立法ではなく、アメリカの要請があるときにはいつでも海外派兵をできる体制を作り上げようとしているのである。
 これに呼応するように、自民党の防衛政策検討小委員会は8月30日、恒久法案(「国際平和協力法案」)の条文案を了承した。ここではこれまでの海外派兵基準を大幅に転換している。自衛隊は国連決議がなくても日本独自の判断で「非国際的武力紛争地域」に派遣することができる。「安全確保活動」「警護活動」「船舶検査活動」などに任務を拡大している。これは、「人道復興支援」とされたイラク派兵とは全く異なり、米軍同様の治安維持活動を可能とすることを意味する。しかも「武器使用」についても、「正当防衛」と「緊急避難」に限らず、「任務遂行のため」に、「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度」での「危害射撃」を認めた。
※自民小委員会、自衛隊海外派遣の恒久法案を了承 (産経新聞)
http://www.sankei.co.jp/news/060830/sei071.htm

 第三に、防衛庁の省への昇格である。すでに政府は、前国会の最終局面で防衛省設置法案を上程している。防衛庁の「省」昇格は、防衛施設庁を解体して防衛省に統合し、予算要求などの権限を強化し、自衛隊を運用する独立した機関として国際的に米英などの国防省と対等な関係を築くことを目的としている。そして防衛省設置法案と同時に提案されている自衛隊法の改定は、「付随的任務」とされている海外派兵=国連平和維持活動(PKO)や「国際平和協力活動」を「本来任務」とし、米国の侵略戦争に加担するための自衛隊の海外派兵を、「本土防衛」に並ぶ主要任務に格上げしようとしているのである。
 イラク派兵は、武装した陸上自衛隊による、海外派兵への重大な第一歩ではあったが、大きな制約を課せられ「非戦闘地域」「武器使用基準」等々でデタラメな答弁を繰り返さざるをえなかった。このような制約された海外派兵はもうこりごり、武器も自由に使え、敵を殺しまくれる、そのような海外派兵を目指しているのである。
※「防衛省」法案が閣議決定(読売新聞)
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_06060916.cfm


(2) すでに述べたように安倍氏は、首相権力・官邸権力の強化の一環として、日本版NSC(国家安全保障会議 NSC=National Security Council)の設置をもくろんでいる。これは、外務省などの官僚組織に頼ることなく、首相や官房長官、外相、防衛庁長官らに自衛隊の統合幕僚長も加え、緊急事態にも対処する、アメリカ型の安保会議である。官邸主導で軍事・外交政策で独裁的な力を発揮できる体制を構築しようと言うのである。安倍氏は、「米国のホワイトハウスと官邸が定期的、戦略的に対話できるようにすることが必要」とまで語ってる。
※安倍官房長官:提唱の日本版NSC 官邸の機能強化図る(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060824k0000m010093000c.html


(3) 臨時国会では、沖縄の辺野古基地建設問題、その焦点のひとつであるグアムへの米軍基地移転費3兆円の日本負担問題、岩国、横田、座間、鹿屋などの基地機能強化問題が浮上する。日本を、全世界での米の「対テロ戦争」、特にアジアの「不安定の弧」を想定した戦争の司令塔、出撃基地に変える米軍基地再編と基地再編、司令部移転、日米軍事同盟のグローバル軍事同盟への拡大・強化に反対する闘いも正念場を迎える。



[5]憲法改悪を政権の任務とする反動政権−−国民投票法の強行にも警戒を

(1) 安倍政権は、自らの政策構想の目玉に「憲法改正」をかかげ、それを射程に入れて政権運営をおこなう名実ともの改憲政権である。また彼は、「部分改憲」ではなく「全面改憲」を主張している。すでに昨年10月に自民党憲法調査会が策定した改憲案をさらに修正し、現在9条の改訂内容に含まれていない「集団自衛権」を明文化する意向を明らかにしている。彼は「日米同盟の双務性」を強調する。集団自衛権にこだわるこの姿勢こそ、アメリカとその政策、日米同盟に対する異様な共感と親近性を表明する安倍氏の危険極まりない正体を現している。このような安倍氏の関心にあるのはアメリカのグローバルな戦争と軍事覇権への全面的な協力、海外派兵の恒常化、日米同盟関係をイギリス並に引き上げようとする思惑である。

 2005年に出された自民党の改憲案では、戦争の放棄と戦力の不保持を謳い自衛隊の海外派兵や武器使用に歯止めをかけてきた第9条の改悪とともに、普遍的な権利である基本的人権を定めそれを国家からの侵害から守るための第13条の改悪など現行憲法の全面的な改悪がもくろまれている。言うまでもなく、実際に戦争を行うためには、憲法を9条を変えるだけですむものではない。一切のものを戦争に動員するために、国民の権利の制約が必要になる。だからこそ、現在の改憲策動は、9条の改悪を基礎としながら、国民の包括的な権利の制約を組み込む全面的な改悪へと向かわざるを得ない。それは、憲法を「政府を縛る規範」から「人民を縛る規範へ」180度転換させるものである。個人の尊厳という現行憲法の基本理念に真っ向から反するものである。


(2) 臨時国会では、この憲法改悪を実現させるための法案「国民投票法案」が審議されることになる。この法案は、国民に憲法「改正」の是非を問うはずの国民投票制度を、国民の意見を圧殺するための制度に変えるためのものである。
 憲法に関する自由な議論や反対意見を封じ込め、あるいは学校で現行憲法の意義を教えるだけで犯罪となるような、言論の自由、表現の自由を抹殺し奪いとる国民投票法案に絶対に反対しなければならない。
憲法改悪のための「国民投票法案」に反対する−−憲法改悪反対の議論や運動を禁止する驚くべき言論弾圧法案−−(署名事務局)
「本当は恐ろしい国民投票法」(署名事務局リーフレット)



[6]安倍新政権がもつ深刻な諸矛盾−−広範な国民世論の喚起と徹底した大衆闘争で目論見を打ち砕こう

(1) 安倍氏は、一方では、右翼的信条をもち、極右的な側近や支持勢力に囲まれ、上述してきたような極反動的で反人民的な国家像を描き、その諸政策を提起しながら、他方では「靖国神社に行くか行かないか言わない」というあいまい戦術によって当面の政治的焦点をはぐらかし、これと引き替えに日中首脳会談実現という政策で、求心力を強めることを狙っている。政府・外務省などは11〜12月のAPEC国際会議での実現を追求している。対中関係を優先させる形で、財界の支持を取り付け、政権強化につなげようと言うのである。
※安倍氏は岡崎久彦氏、中西輝政氏、葛西敬之氏、的場順三氏といった親米保守派、日本のネオコンと言われる政策ブレーン達によって支えられている。

 しかし、早くもボロが出てきている。安倍氏は11日の討論会で、中国が72年の日中国交正常化の際、一般の日本国民と戦争指導者と区別する論理を使って戦争賠償請求を放棄した経緯について「そんな文書は残っていない、国と国とが国交を正常化するのは、交わした文書がすべて」と語り、12日の記者会見でも同様の発言をした。国と国との外交が、最終的に交わした文書だけでなく、水面下の交渉や相互の理解やかけひきによって成立していることは常識である。このような安倍氏の発言が、外交的無知をさらけ出したものなのか、歴史を曲解する右翼的な信条の吐露なのかはわからない。次期首相のあまりの幼稚な発言に、中国政府が、コメントできなかったほどである。
※安倍官房長官:日中正常化の中国側論理を否定(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060913k0000m010082000c.html

 いずれにしても重要なことは、中国政府と中国人民を愚弄し、30年以上にわたって培われてきた日中関係を水泡に帰すような重大な右翼的な心情が平然と語られていると言うことである。安倍氏は「首脳会談のためには双方が譲歩しなければ」と語り、靖国参拝を行った上でも日中、日韓首脳会談ができるなどまだ考えているようである。その認識そのものが日本帝国主義の行った過去のの植民地支配と侵略戦争のもたらした被害と犠牲をまともに考えようともしない傲慢な姿勢を示している。たとえ彼が支配層・財界の全面支持を取り付けるために形だけで靖国参拝を中止したとしても、そのタカ派路線は、対中・対韓関係に新たな対立点を生み出すに違いない。「靖国神社に行くか行かないか言わない」は結局は、「侵略戦争かどうかは言わない」、「戦争責任があるかどうかは言わない」ということであり、過去の侵略戦争を賛美し、新たな侵略戦争への加担と軍事的挑発行為を肯定することだからである。


(2) さらに安倍氏のより危険な傾向は、“北朝鮮バッシング”に表れている。実際に海外派兵をし戦争をしかけるという以前の段階で、安倍氏は、朝鮮民主主義人民共和国に対する強硬外交で緊張関係を極度に悪化させているのである。安倍氏はこの夏、国連において、「北朝鮮のミサイル発射を非難する決議」を先導し、それを根拠に金融制裁にまで突き進もうとしている。安倍氏は、北朝鮮に対する敵意をむき出しにし、拉致問題を最優先して日朝外交関係の改善阻止のために奔走してきた。そして安倍氏は、対敵地攻撃能力の保持を公言し、北朝鮮制裁だけでなく、MDの早期整備などに動いている。
 “北朝鮮バッシング”の過程で、安倍氏は総裁選にむけた自らのポジションを決定的に有利にし、福田氏の総裁選立候補断念を引き出し、早い段階で事実上首相の座を手にした。“北朝鮮バッシング”を安倍氏は自らの支持率アップの演出として最大限利用してきた。ブッシュが支持率を上げるために戦争を引き起こし、最大限利用したのと同様に、北朝鮮への敵意を煽り、瀬戸際政策的な軍事的緊張激化を煽ることで権力を維持しようとする人物なのである。

 このような彼の強硬外交、挑発外交は、反動政権として性格をますます強める。しかし同時に、このような側面が前に出れば出るほど、逆に政権の矛盾は拡大せざるを得ないだろう。安倍氏は自らのことを「闘う政治家」と呼び、「千万人といえども吾行かん」と決意を示している。靖国をはじめ安倍氏の右翼的傾向が露骨に前に出れば、危機的状態にある日中、日韓の外交関係だけでなく、経済関係も重大な影響を受けざるを得ないであろう。


(3) さらに臨時国会では、安倍氏の数々のスキャンダルが問題になるだろう。日本歯科医師連盟資金提供口利き疑惑、耐震偽装事件での安倍氏の秘書のヒューザーへの口利き疑惑、安倍晋三後援団体「安晋会」とライブドアとの関係、安倍氏の様々なカルト宗教団体とのつながり、統一教会のダミー団体主催の大会への「官房長官」名での祝電事件等々。
 しかも決定的に重要なのは、日本のイラク戦争への支持、加担問題である。航空自衛隊は、陸上自衛隊の撤退後もクウェートに残り、最も危険なバグダッドの国際空港まで、米・多国籍軍の人員・物資を輸送し続けている。これは紛れもなく、アメリカの侵略戦争・占領支配への加担であり、バグダッドの掃討作戦支援である。そして改めて私たちはイラク戦争と自衛隊派兵の大義を再び問わなければならない。
 「イラクの大量破壊兵器」の保有が真っ赤なウソだっただけでなく、最近「フセイン政権とアルカイダの関係」もでっち上げだったことが改めて明らかになった。米上院情報特別委員会は「9.11・5周年」前の9月8日、なんとイラクの旧フセイン政権は、アルカイダとの関係があるどころか、体制にとって脅威とみなし身柄拘束さえ試みていたという報告書を提出したのである。
※フセイン政権とアルカイダの関係、米上院委が完全否定(朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/update/0910/003.html

 安倍氏は、『美しい国へ』で、2003年当時国会で小泉首相に質問したことを誇らしげに語っている。そこで安倍氏は、「イラクが危険な状況にあるかないか」に拘わらずイラク派兵は「国際社会の一員」「先進国の責任」であるという論理を展開し、それこそがまず第一の大義であると主張している。そして重要な大義の第二が「イラクの原油」であり、それが「日本の国益」であると主張している。つまり、「非戦闘地域」であるかどうか、「大量破壊兵器」があるかどうかなどは安倍氏にとっては関係ない、これがアメリカの戦争であり、日本が国際社会の一員であり、死活問題である石油が絡む限り、日本が自衛隊を出すのは当然だ−−こんなめちゃめちゃな開き直りの主張を展開しているのである。

 ブッシュのイラク戦争は泥沼化し、対テロ戦争は破綻している。中東政策は行き詰まっている。ブッシュは、中間選挙での敗北の危機に立たされている。このような状況で、日米同盟を強化し、アメリカの戦争を支持し、自衛隊の恒常的海外派兵へ道を開こうとする安倍政権のアナクロニズムを問題にしなければならない。イラクへの自衛隊派兵を徹底して追及し、自衛隊の完全撤退を要求しなければならない。
マリキ政権発足後のイラクで何が起こっているのか−−崩壊の危機に瀕するイラク傀儡政権(署名事務局)
レバノン侵攻におけるイスラエル敗北の軍事的・政治的意義==米・イスラエルによる中東覇権の行き詰まりと破綻 (署名事務局)


(4) 私たちは、先の通常国会で国会内外の力関係が圧倒的不利と思われた状況の中でも、さまざまな市民運動が先頭に立って全力で国会に対する闘争を組織し、教育基本法案、共謀罪法案、国民投票法案の3悪法の採択を阻止し、継続審議に持ち込んだことを知っている。それは、「共謀罪」を軸にこれらの運動が総力戦で闘ったことによって生じた力関係の変化の結果であった。国会内の力関係の変化、市民運動及びメディアや言論の変化、世論の変化、財界での小泉支持の乱れ、与党内の混乱等々、これらが全体として、強行採決を困難にしたのである。来るべき「安倍政権」のもとで、再びこの闘いを再現することは可能である。
 この秋の臨時国会中に、10月22日に大阪と神奈川で衆院補選が、11月19日に沖縄知事選が予定され、安倍政権は次々と政治的対決に直面することになる。これらの選挙で自民党の敗北を押しつけることができれば、安倍政権は求心力を無くし、責任追及の声も出てくるだろう。
民主党は、憲法問題や教育基本法改悪問題、対米関係などの基本政策において自民党と差異はない。しかし、再選された小沢代表は、今のところ民主党の存亡をかける形で自民党との対決色を前に出し、臨時国会と選挙を闘おうとしている。下からの大衆運動の力があってはじめて、民主党の動揺を許さず、対決姿勢を維持させることが出きる。
 まれにみるグロテスクな右翼政治家を首相とする反動政権のもとで、矛盾が噴出するのは避けられない。安倍の化けの皮がはがれ、小泉「構造改革」のもとで生み出された格差社会と大衆の窮乏化、低賃金労働や非正規雇用、生活保護の切り捨てや医療費負担の増大等々に不満をもつ大衆が安倍新政権の危険極まりない本性を見抜いた時、前の通常国会のように世論が動いた時、労働者と人民大衆による大衆的な反撃と闘いが前進した時、間違いなく臨時国会で政府与党の目論見を打ち砕くことは可能になるだろう。そして安倍新政権は短命なものに終わるだろう。