3.23イラク戦争開戦5周年学習討論会」報告より

イラク戦争開戦5周年にあたって


 3月20日、イラク戦争は開戦5周年を迎えた。開戦以来実に100万人を越えるイラク市民が殺され、400万人とも600万人ともいわれる難民・避難民が放り出され、米兵の犠牲者も4000人に迫っている。根拠のないでっち上げの侵略戦争は今も甚大な犠牲を生み出し続けている。
※US deaths in Iraq approach 4,000
http://wiredispatch.com/news/?id=97247
 米軍の進める「増派・覚醒戦略」は、スンニ派部族に対して直接現金を与えて抱き込み、反米活動を封じ込める戦略だ。サドル派マフディ軍の活動停止もからみ、「イラク治安安定」として宣伝されてきた。だがそれは、秋の大統領選挙に向けたプロパガンダに過ぎない。米政権内には早くも、これら部族への無節操な金と武器の供給が、将来の不安定化を促進するという懸念も生まれている。実際昨年後半に減少傾向を示していたイラク市民の死傷者数は、今年2月に入って再び増加し始めた。連日のようにイラク中で多数の犠牲者がでている。とりわけ女性による「自爆テロ」の急増は、絶望的なイラクの状況を反映している。
※Iraqis 'Awake' to a New Danger(Antiwar.com)
http://www.antiwar.com/ips/fadhily.php?articleid=12212
※The Myth of the Surge(Rollingstone.com)
http://www.rollingstone.com/politics/story/18722376/the_myth_of_the_surge
 宗派分断支配のためにバグダッド各所で建設されている巨大なコンクリートの分離壁によって都市機能はマヒ、生活基盤の崩壊のもとで人々の生活は極度に悪化している。アムネスティが「イラクの人権状況は壊滅的」との報告を出すなど、国連機関や人権団体も開戦以来最悪の状態にある市民の生活状態について警告を発している。傀儡であるマリキ政権は無能力をさらけ出している。もはやイラク戦争・占領支配の失敗・破綻・泥沼化は明かである。アメリカが石油の略奪と親米政権の樹立、中東での軍事恒久基地の建設というイラク戦争の目的を放棄しない限り、イラクの混迷は続く。米をはじめ全占領軍は即時撤退すべきである。
※Five Years of Occupation, Iraq Destroyed(Commondreams)
http://www.commondreams.org/archive/2008/03/16/7717/
 アメリカではイラク戦争開戦5周年に抗議し、ANSWERやUFPJなど反戦センターがワシントンやニューヨークをはじめ各地で抗議行動を展開した。今年特に注目すべきは、イラク、アフガニスタンからの帰還兵たちが、隠された戦争の真実の姿、自らが経験した残虐行為を公然と語り始めたことである。彼らは、71年ベトナム戦争の残虐行為を告発した集会にちなみ「冬の兵士」と呼ばれる。13日から16日までメリーランド州で行われた証言集会(戦争に反対するイラク帰還兵の会主催)には数百人の帰還兵、現役兵らが参加した。
※Michael Prysner's testimony at Winter Soldier Watch the video below!(ANSWER)
http://answer.pephost.org/site/News2?abbr=ANS_&page=NewsArticle&id=8795
※Winter Soldier: US Vets, Active-Duty Soldiers from Iraq and Afghanistan Testify About the Horrors of War(Democracy Now)
http://www.democracynow.org/2008/3/17/winter_soldier_us_vets_active_duty
 イラク戦争開戦5周年は、サブプライム危機を発端とする金融・経済危機、ドル全面安と株価暴落、リセッションへの突入の危機というかつてない事態の中で迎えた。すでに戦費は日本の国家予算に匹敵する7500億ドル(75兆円)が費やされている。サブプライム危機は財政赤字と対外収支赤字の問題を再燃させ、軍事費と戦費支出の面からイラク戦争を大きく制約するのは間違いない。帰還兵たちの失業対策やPTSDをはじめとする身体的精神的障害のケアと保障のための財政負担など、「戦争国家」にのしかかる広範な戦争経費の問題を焦点化させるだろう。そしてそれはまた、貧困層や移民、マイノリティの若者たちを戦地に送り込んできた「隠れた徴兵制システム」=格差、差別、貧困、医療・社会保障の切り捨て等々=に対する怒りを爆発させるだろう。
「対テロ戦争」への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その10)膨らむイラク・アフガン戦争の巨額戦費。サブプライム危機、景気後退への突入の中でますます人民生活を圧迫(署名事務局)

 私たちは日本の自衛隊の戦争協力と海外派兵に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊の撤退を勝ち取る決意を新たにする。私たちがこの間目の当たりにしたことは、日米軍事同盟の強化と急速な戦争国家化を最優先する日本の政策が、耐え難い人命軽視、人権蹂躙、人民生活切り捨てを生み出すということである。「集団自決」軍強制の問題は、過去の問題ではなく、現在の問題である。教科書改悪で政治問題になっているというだけでなく、人民に犠牲を強いるという基本的な軍と戦争の危険性を明らかにする。イージス護衛艦あたごによる漁船衝突・沈没事故は海上自衛隊が海外派兵とミサイル防衛協力に大きく傾斜していく中で不可避的に起こった事故だ。沖縄での連続した女性暴行事件と新たに発覚した横須賀での事件への米兵関与など、米軍再編のもとで米軍基地がらみの事件が多発している。
 本日3月23日には 沖縄県北谷町において「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」が開催され、私たちも代表を派遣している。この学習討論会を沖縄の闘いに連帯する行動として開催したい。
イージス護衛艦漁船衝突事故徹底糾明!政府・防衛省は全事実を明らかにせよ!軍事最優先・人命軽視がもたらした重大事故(署名事務局)

2008年3月23日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局

(この文章は、討論会の議論をうけて加筆訂正し、参考記事などを添付したものです。)