イラク侵攻で100万人以上の幼児が危機に
by ジム・ローブ
OneWorld.net 2003.2.18 発表
Common Dreams NEWS CENTER (2003.2.20)
http://commondreams.org/headlines03/0218-02.htm

ワシントン ―
 二つの反戦グループによって入手され、月曜に公開された秘密国連文書によれば、5歳以下のすべてイラクの子どもたちの約30%、すなわち120万人以上の子どもたちが、イラクへのアメリカ主導の侵略の中で「栄養失調によって死の淵におかれるであろう」。

 人道主義的業務の協同のための国連事務所(OCHA)によって1月7日起草された文書で、もしも軍事攻撃が全国的規模での混乱を引き起こしたならば、イラク全人口の40%に満たない人口しか、水へアクセスできないかもしれないということもわかる。

 その暴露は、――戦争が起こった場合の人道主義的な事業を討議するためにジュネーブで援助諸機関や政府代表者が会合を持った際に出てきたものなのだが――ニューヨークの「経済的社会的権利センター(CESR)」とイギリスに本部を置く「イラク制裁反対キャンペーン(CASI)」によってなされた。

 戦争の潜在的な人道主義的インパクトに関するより十分で一層オープンな議論に賛成する国連事務官たちがその文書を準備したと彼らは述べた。草案自身は5ないし6週間かけて準備された別の諸プランに取って代わられたかもしれないと彼らは付け加えた。

 「これらの国連評価はイラク人民が圧倒的な重大さに直面していることを示している」とCASIコーディネーター、ジョナサン・スティーブンソンは述べた。「これに対処するため提供された【イギリス政府によって約束された】緊急援助の3000万米ドル――イラク人一人について1ドル以下――は全く不十分である。」

 CESRとCASIだけが、侵略の可能性としてある人道主義的インパクトについて関心をもつ唯一のグループではない。侵略は多くのアナリストが早くとも今月終わりか3月初めに起こりうると信じている。

 先週ヒューマン・ライツ・ウォッチが、「ことにイラクの中部・南部地域で激烈な」危機の潜在的可能性を唱えた25ページのブリーフィング・ペーパーを発表した。「その地域で、政府の割り当てのみに依存している幾万人が・・・深刻な欠乏に即座に直面する可能性がある。」

 アムネスティ・インターナショナルも国連安保理の議長に、先週、イラクでの現在の人権と人道主義的状態が「軍事行動の際、急速に悪化するかもしれない」という可能性に対する「深い関心」を表明する書簡を送った。

 アムネスティのチーフ、アイリーン・クワンによれば、「ことに、イラク当局、武装した反対諸グループ、軍事行動に参加した他の諸政党による新たな人権侵害の危険があり、そして民族の立場でのあるいは他の立場での報復がある。だからイラクの人権状態への緊密な調査の必要性、専門的なアドバイスの必要性が明確にある。」

 アメリカの非政府救援や人道主義的諸組織もまた関心を表明した。先週の木曜日出版された異常に直接的な声明の中で、160のグループの連合が、グループのいくつかは過去に米軍と共に働いてきたのだが、その連合が、次のように述べた。「イラクでの人道主義的な応答に対する準備状態に関して大いに関心がある」と。

 「私たちは、アメリカ政府が、すでに人口の60%が生きるために国際的な寄付を受けている国の援助と再建の必要に見合う十分な応答の準備にとりかかっていないかもしれないという印象を持っている」と、インターアクション連合長、メアリー・マッククライモントは書いた。

 1月7日付けの文書は、軍事行動に対する低い程度、中位の程度、さらに高い程度のインパクトの諸シナリオを示し、始まっている大抵の国連計画は、「中程度のインパクト」のシナリオに基本を置いていると記している。中程度のシナリオというのは、二ないし三ヶ月続き、「重大なインフラのかなりの破壊と国内的、国外的なかなりの人口移動を」結果する。戦争の影響を受ける市民に対するアクセスは、衝突の間「厳しく制限される」だろう。

 レポートは、必須のサービス ―― 事実上すべてサダム・フセイン大統領の政府によって統制されている ―― の崩壊が、「国連諸機関とか他の援助組織の能力をこえた、かなりの割合の人道主義的緊急事態を」導くだろうと強調している。レポートは、約1000万人の人々が「軍事行動によって高度に食糧が不安定となり、立ち退かされ、直接の影響を受ける」だろうという国連世界食糧プログラムの評価に言及していた。

 加えて、もし戦争が勃発すれば、避難を求めている145万人を上回る人々がイラクを避難しようとするかもしれない。一方、自分の家から立ち退かされたイラクの人々の数は、現在100万であるが、その倍になるかもしれない。

 レポートによれば、500万人以上のかなり傷つきやすい子どもたち、妊婦あるいは新生児の母親がまた最大の危険にあり、一方1800万人の人々が処理された水へのアクセスを必要とするかもしれない。


(資料)
イラク制裁反対キャンペーン
「イラクと近隣諸国のための統合人道主義的緊急事態計画」に関するノート(抄訳)

出典:人道主義的業務の協同のための事務所、「イラクと近隣諸国のための統合人道主義的緊急事態計画」、秘密草案、2003年1月7日、
http://www.cesr.org/iraq/docs/contingency/pdfhttp://www.casi.org.uk/undocs/intenal.html


ページ番号についての注: オリジナル文書では、1ページは「T.統合計画の範囲と計画」で始まっている。オンライン版では、ページのナンバーは大抵のページで現れない。例えば、参照で【p.3(5)】というのは、オリジナルのナンバー計画では3ページを意味するが、CASIのウェブサイト上に掲載されたPDF版では5ページであるということである。

テキストについての注:以下のテキストは写本を用いている。オリジナルでチェックしていただきたい。

判読しがたいテキスト部分:代わりのオリジナルでチェックされた、選択されたテキスト明確化のための、この注記の最後を見よ。

主要な引用

「危機的な出来事の場合、5歳以下の子どもの30%が栄養失調による死の淵に追いやられるだろう」【p.3(5)】
注記:5歳以下の420万人の子どもの30%=5歳以下の126万人の子ども

「イラクでの必須のサービスの崩壊は・・・国連機関と他の援助諸組織の能力をかなり超えた配給についての人道主義的な緊急事態を導くだろう」【p.4(6)】

「すべての国連諸機関は準備の最低限度のレベルにさえ届くことを阻止する深刻な資金制限に直面してきた」【p.1(3)】

「戦争に先立つ制裁の12年間を超える諸効果は、住民の傷つきやすさをかなり増大してきた。」【p.3(5)】

「WFP(世界食糧計画)はおよそ1000万人の人々が・・・食糧がかなり不安定となり、軍事行動によって移動させられたり、直接の影響を受けるだろう、と見積もっている。」【p.11(13)】

「危機的な状況の際には、住民のわずか39%だけが配給の基礎の上で【水を伴った】サービスの提供を受けるだろう」【p.12(14)】

「UNHCRは、145万もの避難者または避難所を求める人々が、軍事衝突の際にはイラクを避難しようとするかもしれないと見積もっている」【p.9(11)】

「現在の90万人から110万人のIDPs(国内避難民)に加えて90万人もの人々が移動させられるかもしれない」【p.10(12)】

【12(14)ページの表より】
521万人が5歳以下のかなり傷つきやすい子ども、妊娠中あるいは授乳期の女性である。
(全住民の中で)50万人の直接または間接的な犠牲者。
(全住民中)302万人の栄養危機。
1824万人が処理水へのアクセスを要するかもしれない。
871万人が下水設備を要するかもしれない。

全体の要約

危機を処理する国連の無力

資金の不足が国連の人道主義的計画に関する「主要な制約」である:「すべての国連諸機関は準備の最低限度のレベルにさえ届くことを阻止する深刻な資金制限に直面してきた。」外的資金はなかった、さらに内的資金は制限された借りる機会しかない。この文書が作られた1月7日以来、状態は変わったかもしれない。

 「衝突の最初の兆候で、国際的にリクルートされた国連スタッフはイラクから避難させられるだろう。」「国連の国内スタッフは彼らの家に監禁されるかもしれないし、軍事衝突の激しさのせいで移動させられるかもしれないし、政府に動員されるかもしれない。」

栄養状態と健康

 「イラク中部そして南部の5歳以下の死亡率(1000人の出産に対し136人)は1990年に記録されたレベルの2.5倍にとどまる。妊娠中の婦人の半分が貧血であり、そして結果として新生児の30%以上が軽い体重で生まれる(1990年の5%と比較して、そのことが致死的なあるいは発育不全に至るより一層傷つきやすいものとしている」

 「1996年以来の栄養失調率の改善はかなりつかの間のものであり、永続的な食糧の配給と定期的な携帯用水の供給に依存している。見積もりとして5歳以下の420万人の子どもと100万人の妊娠中の女性がかなり傷つきやすくなっている。危機の際には、5歳以下の子どもの30%が栄養失調により死の淵に陥るだろう。」

 「家計の蓄えは6週間以上もつことは期待できないし、もしも食糧配給がすみやかに回復されなければ、広範囲に及び飢えが続くだろう」【p.8(10)】

 「現在のワクチン摂取率はわずか80%ほどなので顕著なはしか発生の危機が生ずる」

 「基本となる医療インフラは十分には回復せず、信頼できない」

なされた想定

文書は軍事行動に対して、低い―、中位―、そして高位の程度のインパクトのシナリオを提供している。国連計画の大概は「中位のインパクトの」シナリオに基づいている。そこでは、

 「軍事行動は顕著な抵抗に出会う。しかし、空爆に援護された大規模な地上攻撃の結果として2ないし3ヶ月さらに長引いた後終わる。重要なインフラのかなりの破壊と、大規模な住民の国内的、国外的移動があるだろう。戦闘の継続の間、戦争の影響を受けた市民へのアクセスは極端に制限されるだろう。」

イラクの人道主義的状況

「戦争に先立つ制裁の12年間を超える諸効果は、住民の傷つきやすさをかなり増大してきた。」大抵のイラク人は彼らの現金そして物的資産を消費してきた。

「平均的な家計収入の80%は食糧配給で成り立っている」

「住民の60%(約160万人)が、すべての家計の必要品を満たすために月ごとの「フード・バスケット」にのみ頼っている、そして食糧配給システムの混乱によって直接的なそして深刻な影響を与えるだろう。」

軽い体重で生まれる赤ん坊の30%は「致死的なあるいは発育不全に至るより傷つきやすいもの」となる。

「5歳以下の420万の子どもと100万人の妊娠中の女性はかなり傷つきやすい」

「危機の事態の際、5歳以下の子どもの30%が死の淵に陥るだろう」

「はしかの発生の顕著な危機」




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