「国連極秘文書」−−−−−−−−−−−−
「イラク戦後復興」という名の侵略計画。
50万人の死傷者/303万人の栄養失調・栄養不足/200万人の国内避難民・難民。90万人はイラン、5万人はサウジへ/740万人に何らかの人道援助が必要。等々。
こんな「戦後復興」など不可能!開戦阻止こそ唯一の「人道援助」
○イラクの民衆殺戮と国土破壊の“尻拭い”を一手に引き受ける国連「戦後復興」計画
○「戦後復興」はブッシュのイラク攻撃をせき立て後押しする侵略計画に他ならない
○小泉政権が目論む「戦後復興」加担もこの侵略計画の一部

(1)こんなものは「人道」なんかじゃない。技術的にも財政的にも不可能。唯一の「人道援助」はブッシュの侵略を阻止すること。
 私たちがまず驚いたのは、こんな計画を平気で書ける神経です。この「極秘報告」については、もちろんとんでもない過小評価です。しかし仮にこの報告通りとしても事態は非常に深刻です。読んでもらえれば分かるのですが、膨大な死傷者、疾病にかかる者の多さ、食糧不足・栄養不足になる者の多さ、国内避難民・難民の巨大な発生等々、イラクという国を破滅させる結果として、およそ「人道援助」など不可能な状況が作り出されるのです。アメリカは国連分担金も出さない国です。日本もEUも財政危機で援助どころではありません。財政的にも国連にこんな巨大な援助が実施できるわけがないのです。

 特に湾岸戦争後のイラクは、長年に渡る経済制裁の結果として、人口の60%、約1600万人もが、政府の食糧・生活必需品の「配給制度」の中で、やっとのことで生きてきているのです。この「国家配給制度」を崩壊させることが、どんなに危険なことか、私たちはこの「極秘報告」を読んで、ゾッとしました。

 ブッシュのイラク攻撃はまさに「ジェノサイド」です。とにかく侵略を阻止しなければなりません。

(2)騙されてはならない。「戦後復興」はイラク侵略計画の不可欠の一部。
 1月26日朝の新聞報道によると、国連は米政府の意向を反映し、イラク問題については「開戦前提に対応」し、「平和解決」を「棚上げ」にすると伝えられています。こんな馬鹿な話はありません。これまで幾多の悲惨な戦争を経て人類が培ってきた国際秩序、内政不干渉の原則、国際法、国連憲章に明確に違反するイラク戦争に対しては、本来国連が率先して反対の声を挙げるのが筋です。しかし、国連はそのような道を放棄し、むしろ「人道支援」や「戦後復興」はまかせておけ、アメリカ政府や米軍はイラクを好きに蹂躙するが良い、という戦争挑発的な姿勢に転ずるというのです。

 また、「戦後復興」への協力がまるで「人道的行為」であるかのような宣伝が、国連だけではなく、小泉政権からも主張されています。「戦後復興」は小泉政権のイラク攻撃への加担の最大の柱になろうとしているのです。こうした日本政府批判のためにも、ここでその全体計画となる「国連イラク復興計画」を厳しく批判しておきたいと思います。
 私たちは、国連がこんな侵略計画の尻拭いをやるのではなく、対イラク戦争阻止を率先して全世界に呼びかけることをこそ望みます。開戦阻止こそが、唯一最大の人道的行為だからです。

(3)リークされた「イラク戦後復興」の“極秘文書”――イギリスのNGO(CASI)が暴露
 私たちがここに紹介するのは、昨年12月10日に国連が極秘裏に策定した「イラク戦後復興」計画です。世界中が、ブッシュの単独攻撃を批判し、国連の枠組みで平和的解決を目指そうとしているその真っ最中に、国連が戦争阻止よりも、戦争を前提として「戦後復興」や「人道支援」へ傾斜していたのです。それは、イギリスのNGO「イラク制裁反対キャンペーン」(CASI)によってリークされました。

 CASIのホームページに公開された「極秘文書」の全文邦訳は【資料3】の通りです。「起こり得る人道主義的シナリオ」と題され、2002年12月10日の日付をうたれたこの「極秘文書」は、【資料2】「『起こり得る人道主義的シナリオ』についてのノート」というCASIによる文書と共に今年1月早々に公開されました。
 この文書(草案)で国連は、イラク侵略による人的・物的被害評価を加えています。それは何よりも、国連によるもっぱら戦後の「復興」や「人道的」援助計画を立案するために必要だからです
−−直接的そして間接的な死傷者50万人の治療。
−−303万人への栄養補給が必要。それには202万人の重度のあるいは中程度の栄養失調の5歳以下の子ども、100万人の妊娠中と授乳期の女性が含まれる。
−−最弱者として保護が必要になる者:孤児、重度の障害者、留置中の子どもを含む施設にいる子ども5000人、2万1千人の老人、15万の単身者、13万のイラク内難民。等々。
−−地雷撤去の面では、18歳以下の子どもに不発弾が大きな脅威となっていること。国境線のあるいは国境付近の難民、北部三州を横断する国内難民にとっても地雷が脅威であること。
−−シェルターと食糧外の物品を要求する難民や国内難民に類する者は46万人、食糧外の物品を必要とする国内難民は97万人。

 国連による被害評価は物的な面にも及んでいます。インフラの破壊が最も深刻です。電力網、医療セクター、上下水道、港湾、鉄道網、道路、車両、発電所、石油生産、その輸出入へのダメージ。等々。
 イラク国民は都市部に住んでいる者が多く、イラク政府からのサービス提供を受けているものが多いので被害は甚大なものとなるでしょう。こんな中で食糧の確保、電力確保、燃料の供給が必要になります。飲料水も確保されねばなりません。伝染病等により医療部門も深刻です。水処理とそのための化学薬品が必要となります。下水道施設、シェルターも必要です。
 国連はあわせて「イラクの社会―経済的復興」、「負債の保護」「資源プログラムへの国連のアクセス」の問題について言及しています。最後には、何と「軍隊との関係と軍隊の役割」にまで触れ、その中で「人道援助」を行う国連機関は軍事力との連携が必要であるとしているのです。もはや失敗が明らかなアフガニスタンの傀儡政権を、成功例としてデタラメな紹介までしています。ここまでくれば、米の軍事占領への全面協力と言えるでしょう。

(4)“極秘文書”の策定経緯―アナン事務総長は率先してブッシュの尻拭いの指示を出していた!
  “極秘文書”にホームページ上でアクセスできることを示したCASIの文書(邦訳は【資料1】を見よ)、及び【資料2】によると、この秘密文書の存在を最初に明らかにしたのは2002年10月23日付のタイムズ紙(ロンドン)の記事でした。その記事の題名は何と「国連総長がイラク戦争のための秘密命令を発する」というものでした。

 このタイムズの記事は興味深いエピソードを紹介しています。それは「国連総長、コフィ・アナンは(引用者注:主に戦後復興の国連による)準備を秘密にしたがっている。なぜなら武器査察は無益なものであり、アメリカが主導する攻撃は不可避なものであるというシグナルをイラクに対して送ることを恐れるからである」と始まるくだりです。それはそうでしょう。査察を決定したばかりの時、査察の進行中に国連が「戦後復興」のための「人道支援」の準備だ、などと言っていては国連自身が安保理決議もないがしろにして、即開戦だなどと言っているようなものだからです。

 ところが事実はその通りでした。記事によると、アナンは安全保障会議でイラクへの査察再開が決まると時を同じくしてスタッフに緊急援助計画の作成をスタッフに命じたのです。カナダ大使ルイ・フレッチェが「人道主義的危機予想」に備える事務方の定期会合を統括しました。そして昨年12月13日にジュネーブで開かれた非公開会合で、イギリスも含む10ヶ国以上の国に、危機に備える準備基金3700万ドル(2300万ポンド)の拠出を求めたのです。
 このような経緯の中でこの文書は草案として準備されました。タイムズはこの草案に基づいて以下イラクで予想される被害について語ります。
 この文書がどのような過程で特定のNGOにリークされたのか、またそれは何のためかは明らかにされていません。CASIによればある個人によって提供され、ナサニエル・ハードなる人物が入手したことになっています。ただその個人の希望によって「いくつかの節や表がまるまる3ページ分も含み」削除されたと述べられています。そこに何が書かれていたかも不明です。ただイラクにとっては大変不幸なことが述べられていたこと、アメリカや国連にとっては大変不利な、公表が憚られるような内容ではなかったのかとあれこれ想像を加えるしかありません。
 日本ではタイムズの記事の内容も同時期にマスコミで報道されることはありませんでした。ただ1月になって初めて「イラク戦初期 50万人治療必要 国連が予測 難民は90万人」と、CASIが文書をリークしたことと、その文書に基づいた被害予測の記事が現れただけです。ただこの記事は、国連事務局が1月7日にこの文書の存在を認めたことを併せて報じています。

(5)国連“極秘文書”を厳しく批判する――「ドンドン戦争をやりなさい、あとは国連が全部尻拭いするから」!?
 ブッシュのイラク攻撃を未然に阻止できるのか否か。極めて緊迫した微妙な現在の局面で、国連の一挙一動が全世界から注目されている時に、このような戦争を促進しブッシュを勇気付ける“極秘計画”を策定することは、まさに犯罪的です。私たちはリークされたこの文書を、何重もの理由で批判したいと思います。

 第一に、ブッシュのイラク攻撃には何の正当性もないことです。国連が「不可避でないとは考えない」と言い放つこの戦争に何の正義、何の大義があるというのでしょうか。
 米が侵略の口実にしようとしている「大量破壊兵器の存在」についてはこれまでの査察によっても何らの「確たる証拠」は示されていません。「アルカイダ組織との関係」も問題になりません。結局残るところはアメリカの言うことを聞かぬフセインとその体制憎し、石油の権益が欲しい、自らの政権中枢を握る軍産複合体の利害のために戦争をしたい、そんな所でしかありません。そのために何の罪もないイラク民衆をこれまで経済制裁で痛めつけ、さらに今回は、足腰も立たぬほど弱った国と罪なき市民を軍事力で無茶苦茶に壊しまくり殺しまくろうと言うのです。国際秩序、内政不干渉、国際法に違反する侵略戦争以外の何ものでもありません。
 
 第二に、“極秘計画”の実施など不可能です。仮に文書のような援助が必要として、そんなことが可能だと国連は本当に考えているのでしょうか。米英が破壊しつくした国土と人民を元の姿に復興することが可能だと考えているのでしょうか。殺された人間は帰ってきません。傷ついた心と体がもとに戻ることはありません。破壊された国土が同じ姿に戻ることはありません。国連はイラクで劣化ウラン弾が使用されるかもしれないことを果たして予測しているのでしょうか。この大量使用はイラク国土とその人民に半永久的な被爆と汚染をもたらすのです。いわば「劣化ウラン戦争」後の世界に責任を誰が持つというのでしょう。国連が持てるとでもいうのでしょうか。

 第三に、侵略戦争の莫大な戦費と、いつまで続くか分からない米軍の占領費用を誰が財政的に支えるというのでしょうか。アメリカも世界も景気低迷、リセッション、デフレーションの真っ只中に苦しんでいます。いずれの国も膨大な財政赤字の前で国内対策でさえ十分な支出ができない状況なのです。こんな厳しい財政事情の中で一体誰が資金を出すというのでしょう。米英がしでかした侵略戦争の尻拭いを各国政府も、各国国民も黙って見過ごすわけがありません。ブッシュは「あとは野となれ山となれ」で、侵略に踏み出そうとしているのです。こんな無責任でひどい話はありません。

 第四に、自らの安保理決議による査察がなお進行中で、査察による何らの結論も出ていない最中に「戦後復興」や「人道支援」を国連が云々するのは、先のタイムズの記事がいみじくも述べていたように、米英にイラク侵攻への許可を与えるに等しい行為という他ありません。査察とは「国際」社会から米英の意向に合意を取り付けるための単なる儀式で、はなから無効なものであると宣言しているに等しいものです。米英軍よ、君たちはイラクを思いっきり好きなだけ破壊しなさい、僕たち国連が「戦後復興」や「人道支援」をしてやるからまかせておけ、という戦争挑発行為に等しい犯罪的行為なのです。

 ここまで述べれば結論は簡単です。そんなに莫大な費用を費やして「戦後復興」するならやめてしまえばいい。しかもイラクの「復興」などできっこないのです。必要なのは「戦後復興」でも「人道援助」でもありません。イラク侵略を中止することです。

2003年2月10日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


【資料1】
イラク制裁反対キャンペーン(CASI)−−−−−−−−−
国連秘密文書はイラク戦争時の人道主義的非常事態を予言する
「イラク制裁反対キャンペーン(CASI)」HP(2003.1.7)より

 イラクとの戦争の際の国連緊急計画の援助のために書かれた、「極秘」国連文書は、著しい市民の犠牲、現存する栄養危機の広がり、そして「広域的なものでないとしても伝染病の発生」を予言している。「起こり得る人道主義的シナリオ」と題され、2002年12月10日の日付をうたれた文書草案の存在は、2002年10月23日のタイムズ紙(ロンドン)で最初に報じられたが、今回が公にアクセス可能となった最初である。それはhttp://www.casi.org.uk/info/undocs/war021210.pdfで利用できる(この文書の要約、4nブックレットでも利用できる)。

 その文書は、予想される軍事的シナリオの範囲で、起こり得る人道主義的結果に焦点を合わせている。それは以下のように見積もっている:

● 10万人の直接的そして40万人の間接的犠牲者という世界保健機構(WHO)の評価【23節】に基づくと、「直接あるいは間接的な負傷の結果として多かれ少なかれ50万人もの人々が治療を要するだろう。」それは、いくつもの医薬品が不足していること、戦争によって増大した需要のために「現在のストックでは不十分なこと」【22節】、さらに「戦後情勢の中で機能的な初期医療システムが欠如すること」【24節】によって悪化するだろうことを示している。

● 電力網へのダメージは「医療【諸部門】と同様に上下水設備を」縮小するだろう【5節】。短期的に言えば「人口の39%は飲料水が供給される必要がある」【28節】。「広範囲なものでなくとも伝染病の発生が非常に起こり得る」ことによって、大変な数の間接的な犠牲者が生まれるかもしれない【25節】。

● 「全国で約303万人もの人々の栄養状態が悪くなり、さらに【ユニセフの評価によれば】彼らは病人食が必要となると見積もられている。この中には203万人の5歳以下の重いか中程度の栄養失調の子どもたちと100万人の妊婦が含まれる」【27節】。

● 「援助を必要とする難民は約90万人、そのうちの10万人は緊急援助を必要とするだろうと【UNHCRによれば】見積もられる」【35節】。推定200万人がシェルターを含めた何らかの援助を要するだろう【33節】。現在イラクにいる13万人の避難民のために「UNHCRが必要とされる援助を行うことは、たぶん初期段階では不可能だろう」【36節】。

その文書はまた、2001年アフガン戦争と1991年湾岸戦争両方との人道主義的結果との比較を拒否している。というのは現在の制裁が引き起こしているイラクでの人道主義的な情勢は、そのうちの1600万人(60%)が、月々の政府からの食糧配給以外には他の必需品を供給するための手段を持たないといった国民を生み出してきたからだ【2,4,11節】。




【資料2】
イラク制裁反対キャンペーン(CASI)−−−−−−−−
「起こり得る人道主義的シナリオ」についてのノート

 この文はCASIによって入手された「起こり得る人道主義的シナリオ」と題された国連文書についての説明ノートである。その文書の次のような諸バージョンが私たちのウェブサイトにある:

● 文書の複写コピー(HTMLフォーマット)
● 文書の複写コピー(PDFフォーマット)
● オリジナル文書のスキャナーコピー(PDF,1Mb)〔この最後のバージョンは上の二つのバージョンよりダウンロードするのにさらに時間のかかる大きな(1Mb)ファイルである。それは同じ内容であるが、オリジナル版をスキャナーしたものである。〕

 その文書を要約した4ページのA5ブックレットも利用できる。

 2002年12月10日の日付をうたれた「極秘」国連文書は、イラクで戦争が起こった場合の「起こり得る人道主義的シナリオ」を検討している。その文書が認めているように、必需品を政府の配給に「高度に依存」している多くの住民の幸福を守るために国連の緊急事態計画を援助するために書かれた。

 その文書は、予想される軍事シナリオの範囲で、インフラ、経済とイラク市民に起こり得る諸結果に焦点をあてている。予想は電力セクターの深刻な衰退を含む。それはすべてのセクター――医療、上下水道を含む――が能力を減じるというノックオン効果を伴う(5節a)。飲料水へのアクセスの広範囲の抑制が予想される(15節)。文書は軍事行動に対する人道主義的な諸結果に対して次のような評価を含んでいる:

● 治療を要する人数については、「直接あるいは間接の負傷の結果として50万人ほどの人々が多かれ少なかれ治療を必要とするだろう」(23節)。脚注は10万人の直接的犠牲者、40万人の間接的犠牲者という世界保健機構(WHO)の主張に基礎を置いている。間接的な犠牲者の非常な多さは、一部は、「広域的なものではないかもしれないが、伝染病のの発生が非大いにありそうだから」である(25節)。

● 「全国で約303万人の栄養状態が悪くなり、病人食が必要となると見積もられている。この中には203万人の5歳以下の重いか中程度の栄養失調の子どもたちと100万人の妊娠中あるいは授乳期の女性が含まれる」(27節)。脚注は、国連子ども基金(ユニセフ)が評価したものとして、このことを確認している。

● 「援助を必要とする難民は結局約90万人、そのうち10万人は緊急援助を必要とするだろうと見積もられる」(35節)。脚注は、国連難民高等弁務官(UNHCR)の評価としてこれを評価している。

 そのテキストは、人道主義的必需品と機構との格闘に焦点をあてている。その分析の一部として、文書は、現在のイラク内部の人道主義的状態に関する国連諸機関のデータを示している。制裁が引き起こした人道主義的状態の背景とは、すなわちダメージを受けた経済とインフラ、そして必需品供給のためにイラク政府にほとんど全面的に依存しているということである。文書は1600万人のイラク人が完全に毎月の食糧配給に依存しており、「彼らは他の必須の必需品を供給する他の手段を持たない」(11節)。1991年以来の長期にわたる失業は「最も特権的な人々を除いた全ての人々が、完全に現金資産を使い果たし、大抵の場合には彼らの有形資産もまた処理してしまった」(2節)。

 その文書は緊急用と長期のシナリオ両方の必要品の分析を示している。資金問題と、軍事との諸関係もまた討論されている。

 この文書の存在は2002年12月23日にタイムズ(ロンドン)で最初に報告された。「国連総長がイラク戦争のための秘密命令を発する」という記事の中でである。しかし今回が、この文書が公にアクセス可能とされた最初である。

 どうかこの文書は、一草案であることに注意していただきたい。評価や他の内容は以後修正されたかもしれない。加えて、いくつかの節や表が、まるまる3ページを含み、文書を公表した個人の希望で削除された。

 この国連文書はナサニエル・ハードによって入手された。彼もまたCASIのためにこれらのメモを準備した。

2003年1月4日




【資料3】
極秘
2002年12月10日
起こり得る人道主義的シナリオ

序論

1.この文書を提出するに際しては、戦争は不可避ではないということは前提とされない。しかし、様々な人道支援目的を計画するために、また要請されているように、戦争が勃発するという不測の事態に備えるために、ある想定がなされている。1991年の軍事介入の展開とは違って、来る衝突は、予備的で比較的短いインフラ・町・都市への空爆の後に、空からの通常兵器による爆撃支援を受けながら大規模で長期にわたる地上攻撃へ発展するかもしれないと予想されている。結果としての惨状は疑いなく大きいだろう。最初のうち、苦しんでいる人々へアクセスすることは、一人ないし何人かの指導者に認められなかったり、あるいは安保上、安全確保上の懸念から重大な妨害を受けるかもしれない。加えて、ロジスティックス、つまりどこまでも自由な形での移動能力には制約が加わるだろう。

2.来るイラクでの何らかの軍事的介入後の情勢を、1991年に格闘したイラク住民の能力と同列視する向きもある。そのような比較は何ら有効でない。なぜなら1991年の出来事の直前には、多数の住民は完全な雇用状態にあり、現金も、また危機に対処するために役立つ有形資産も持っていたからだ。今では、しばらくの間十分な収入のある雇用がなされてこなかったことは別として、この間、最も特権的な人以外は、みな現金資産を使い果たし、大抵は有形資産も処分してしまった。だから住民の大部分は、彼らの必需品を、全部とはいわないが大多数をイラク政府に依存している。1991年の情勢とは違って、政府にアクセスできなければ住民は対処する方法を持っていない。制裁体制は、むしろほとんど唯一の供給者としての政府への依存を強めさせる結果を生み出したのである。

3.また、2001/2002年の軍事介入に続くアフガニスタンの情勢と、戦後シナリオでイラクが直面しそうな情勢との比較をする向きもある。似たような人口――アフガニスタンは約2600万人、イラクは約2650万人――であることを除けば、そのような比較に説得力はない。アフガニスタンの住民はほとんどが農村に住んでいる。さらにアフガニスタン住民は久しく国家に頼らないことに慣れっこになってきた――アフガニスタンには全てを含む「国家機構」がなかった――だからアフガン人は一層自己依存するようになってきた。しかし、イラクの状態は逆になってきた。すなわち、イラク人は比較的都市化している。それはイラク政府が国の政策の問題として、住民に必需品を提供しているからである。制裁体制の中で、家計は一般により貧しくなってきたので、イラク人民は彼らの必需品を満たすためにより一層国家に依存するようになってきたのだ。

4.さらに、制裁体制下であるにもかかわらず、イラク人民のニーズは比較的洗練されている。きわめて単純に言えば、イラク社会は国家の保護の下で、あるいは国家によって直接提供される合理的で標準的なサービスに慣れてきた。しかしそれらのサービスが深く依存するところのインフラの衰退、ことに電力の衰退が予測されるため、これら多くのサービスが戦争の後は役立ちそうにない。

5.従って、戦後の情勢の中で、イラク人民の起こり得る人道主義的なニーズを検討した結果、次の想定が正しいと思われる:

〔2ページ〕
a) 電力網は、発電所と送電と配電網に対するダメージのために深刻に低下するだろう。電力網へのダメージはまたあらゆるセクター、特に医療と同様、上下水道にも二次的な能力低下をもたらすだろう。

b) ウム・クワスル港は、交戦の初期の段階で封鎖されるか、あるいはダメージを受ける可能性が高いので、全く役に立たなくなるだろう。従って同港のどんな能力が人道的活動に役立つかどうかについては、確実な形では予測できない。

c) 鉄道システムは、橋、渠、レールにダメージを受けた結果、著しく低下するだろう。

d) 道路輸送車両と発着所が相当のダメージを受けるだろう。そしてその結果、すでに貧弱な輸送システムが著しく衰退するだろう。

e) イラクは南北に流れる二つの大河システムで三つに分かれ、全部でなくても大概の橋が破壊されるかダメージを受けるので、商品と人間の東西への動きが制限されるだろう。さらに、川は歩いて渡ることができないような深さであり、はしけやフェリーやそれに似たものはまったくない。

f) 電力網へのダメージは、あらゆるセクター、特に医療と同様、上下水道にも二次的な能力低下をもたらすだろう。

g) あらゆる商品の現在の政府ストックが著しいダメージを受けるかも知れない。

h) 主に国内消費のための石油製品の生産と同様に、原油の生産と輸出はやむだろうし、現在備蓄している設備も著しいダメージを受けるだろう。

【3ページ保留】
【4ページ】
ニーズ・アセスメント

11. 先の2節で述べたように、人口の約60%――1600万人――が、月々の「フード・バスケット」(訳注:配給)にかなり依存しており、彼らは供給された商品のすべてを「消費する」(消費したり、他のニーズを軽減するために一部売ったりすることで)。彼らは他の必須の必要品を供給する手段を持たないので、そうする。

12. 北部三州においては、北部三州の人口、すなわち約370万人をこえる全人口のために、「フード・バスケット」で供給された品目の代替の供給源を即刻確立する必要があるだろう。戦争の展開しだいでは、モスルとキルククからの食糧スタッフや必要物の現在確立された配給システムが、分割ラインの南にあるというそれらの位置からして、交戦の初めから役立ちそうにない。北部三州の全人口のうち、約220万人がその食糧配給システムにかなり依存することになるだろう。

13. ダフクでの電力喪失は、世帯レベルでは大きな結果を引き起こすだろうが、人道的なサービス供給にはすぐには打撃がないだろう。北部三州での戦闘レベルが低いとすれば、またそれら三州での中小規模の発電機、さらには三州それぞれでの29MWの発電機に対する最近の国連の調査にもとづけば、十分能力を役立てることがきるように思われる。また「緊急」設備にバックアップ電力を供給するという、すでに結ばれた契約にもとづけば、追加的な発電機の送電線によって補完できるように思われる。これが、人道主義的プログラムの下ですでに利用されている中小規模の発電機の最終的なポジションを決める際に考慮に入れるファクターである。

14. しかし、燃料の供給ラインを確立することが必要となろう。北部三州での月間燃料需要は、ガソリンが約3000万リットル、ディーゼルが約3000万リットル、灯油(ケロシン)が4000万リットル、調理ガスが約1万トンと見積もられている。しかし、北部三州では貯蔵能力が限られており、利用可能な精製能力は取るに足らないだろう。

15. この国の他の地域、特に「中央地域」や「バクダッド」では、何らかの戦闘、とりわけ予備的段階そして初期段階で激しい戦闘がありそうなことから、インフラは、空と地上からの爆撃、政府軍の撤退の結果としてたぶん激しいダメージを受けるだろう。インフラ、特に石油生産関連、運輸、すなわち車両や発着所、港湾、鉄道、道路や橋、それに電力生産がとりわけ激しく攻撃されることが予想できる。結果として、飲料水の利用はかなり切りつめられそうである。依然利用でき得るインフラは、個人用と商業用の車両を含めて、政府によって、人道主義的目的というより他の目的に充当されるかもしれない。ともかく、人道主義的対応のロジスティックな側面にはかなりの量の特別な資産を要するし、たとえ一時的な性格のものでもある程度の復興が得られるまで、十分な資産がないというのは援助の制約要因となる。最悪の場合、燃料は輸入しなければならないかもしれない。

〔5ページの始まり〕
16.しかし、政府によって提供されるサービスが、全住民に対して同時に停止することはありそうにない。むしろ、日用品の配布とサービスの提供が徐々になくなり、ついには中止される可能性が高い。南と北から軍事介入が同時に密かに進むと仮定すると、南部のバスラ、メイサン、ティカル、ムサナ、ナジャフ、ケルバラとクバディシャの周辺州と、北部ニネバとタミームは即座に影響を受けるだろう。

17.人道的介入をすぐにでも必要とし、アクセスを期待している住民、すなわち南部の人々はトータルで540万人になるだろう(*2)。それに200万人の国内避難民と難民(*3)が付け加えられるに違いない。国内避難民と難民には、バグダッドと中央州からイランに向かうおよそ90万人と、サウジアラビアに向かう5万人がいる。従って援助を必要とする人々はトータルで740万人になるだろう。先に述べたように、他の州で申し込まれる必要のある援助があるが、アクセスが敵対勢力によって拒否されたり、支配的な安全の状態によっては実行不可能になることが考えられる。

19.一ヶ月に21日か22日の間食糧が分配されると、100万人の人々が、いずれかの日に配給を受けることができる。上記11節で述べた被援助者の60万人あるいは60%が、家庭用食糧の配給にかなりの程度頼っているということも、予想される。加えて配給サイクルは配給業者に関係していて、個人に関係していないから、関係業者が委託品を受け取らなかったり、正しい場所にいなければ、ある場所では日用品が入手できない。従って国中で公平に配給されるというより、これらの地域に要求は集中するだろう。そのような孤立地域が不幸にも各地域、各州に存在することになるだろう。

20.月2回のサイクルで月決め「フード・バスケット」を配給する政府の最近の傾向は、潜在的にはよりたくさんの食糧を世帯に置くことになる。しかし、うわさ情報に基づいて世界食糧計画(WFP)は以下のように信じている。すなわち、多くの貧しい家庭、それゆえ最低限の食糧保障しか受けていない家庭は、他の必須の必要物を得るために収入を得るべく、受け取った「余分の」食糧を売っている。「フード・バスケット」からの必需品で現在不足しているもの、特に豆類――主要なタンパク源――の不足もまた、食糧供給増の恩恵を減少させている。結果として、大抵の家族の食糧備蓄は、配給が妨げられるか滞ると2ヶ月と持たないだろう。

21.国全体で約4万3千の食糧および小麦粉業者(*4)がおり、月毎の食糧配給は非常に効率よく機能を続ける現在のシステムに依存している。この制度は巨大であり、その組織の何らかの崩壊は、上記19節で言及したように、食糧分配を深刻に妨害するだろう。月毎の食糧およびその他必需品の配給への全体としての住民の依存の度合いからして、食糧を配給する際、共同体のそれぞれの地域を直接目標にするのは実用的でない。従って食糧および小麦粉業者の継続的な使用が、戦後の局面での食糧配給のおそらく最も実用的な手段である。現在あるものを維持すること、戦闘段階で傷つくネットワークの一部を復旧することが優先的な課題となるに違いない。

22.医療部門に関しては、一般的に、通常の業務に見合う基礎医薬品や医療物品は約4ヶ月分のストックがあるだろう。

【6ページの始まり】
しかしこのことは、医療用品が全範囲で入手可能であることの一指標だとか、現在供給が不足しているかまたは存在しないのはある特定の物品だけであると解釈されるべきではない。例えば、超過密状態、心的外傷、冷蔵の不足等と同様、飲料水の不足、汚染された空気(例えばクウェートで起こったことと同様に油田火災の発生とか)など、戦後経験される状態の結果、下痢病や呼吸器系の伝染病の拡大が予想され、現在あるストックが足りなくなるほど医療用品や薬の需要と消費が増大するだろう。

23.直接戦闘に巻き込まれたか、荒廃の結果、心的外傷の治療を要するかなりの数の住民が初期の段階で生ずる。初期段階で概算すると、直接的あるいは間接的な負傷の結果として、50万人ほど(*5)が多かれ少なかれ治療を必要とするだろう。

24.戦後の状態の中では初期医療システムがはたらきそうにないので、5歳以下の子ども、妊娠中と授乳期の女性、そして国内避難民が、特に傷つきやすくなるだろう。中部と南部では、これらのグループはトータルで520万人(*6)、5歳以下が420万人、妊娠中と授乳期の女性が100万人で、さらに200万人の国内避難民が加わると推測される。単純に一人当たりの比率と「貧困と環境パターン」で計算すると、これらのうち123万人が南部の州におり、そこは国連がよりアクセスできそうなところであり、従ってすみやかな人道的介入を必要とするだろう。この数字は虚弱な人たち、慢性病の病人、老人を考慮に入れると、さらなる修正を要する。

25.さらに、全国的な規模ではないとしても、伝染性の病気の発生は非常にありそうである。コレラや赤痢のような病気が環境に広がれば、はしかや髄膜炎や類似のもののワクチン接種率が現在低い結果として、また生活状態の結果として、蔓延するだろうし常に存続することになるだろう。薬や医療用品の要求をどうするか決定する際には、これらの諸要素を考慮に入れねばならない。

26.他のセクターと同じく、医療への要求は時の経過と共に変化する。例えば戦争に関する傷害はある特定の地域で治療され、あるいは彼らのニーズを満足させるための代わりの解決法を見つけるといったように、医療への初期の依存は、時と共に減じていくが、他のものはそのシステムに依存するようになるだろう。近い将来において、追加的な受益者の数が別の解決法を見つける人々を上回ることがありそうである。従ってこの地域における要求は、一般的な環境と、住民が入手可能な代替物が限られているせいで、短期あるいは中期的には増え続けるだろう。

27.全国で約303万人(*7)の栄養状態が悪くなり、病人食が必要となると見積もられている。この中には203万人の5歳以下の重いか中程度の栄養失調の子どもたちと、100万人の妊娠中あるいは授乳期の女性が含まれる。上記24節で書かれた傷つきやすい子ども全部に病人食は必要でなくても、妊娠中と授乳期の女性全部には必要だろう。さらに、確かな人口比率を用いると、上記の住民のうち50万人を少し超えた人々が南部の州にいる。最も傷つきやすい人々は、孤児、重度障害、留置中の子を含む施設内の約5000人(*8)と、2万1千人の老人(*9)である。それらの数字に病院内の患者達――病院のベッドの全収容能力は約2万7千(*10)で、

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占有率は分からないが間違いなく高率であると仮定される――と囚人達が付け加わるに違いない。数は多くないが、彼らが現在置かれている悲惨な環境は、より悪くなるだけであり、それゆえ、彼らのニーズは重大になる。

28.水処理は電力を要するが、何らかの戦闘でひどく破壊され、しばらくの間しか残らないことが大いに可能性としてある。従って飲料水の使用は高価なものとなろう。ユニセフは住民の約39%が「予備」発電設備を持つ処理施設による――しばらくの間――飲料水の供給を受ける必要があるだろうと見積もっている。もちろん、水の供給は制限されるだろうが。現在飲料水へのアクセスは公平に配分されていない――地方の施設は11パーセントしか緊急用発電設備を持っていない一方で、都会の施設は70パーセントが持っている。

29.南部の州で被害を受ける住民を考えると――国内避難民やまだイラクを去っていない潜在的な難民を含んではいないのだが――(上記17節で示されたようにトータル540万人)、今すぐの要求は約407万の人々(*11)が清潔な水へアクセスできるようにすることである。水処理のために必要な化学物質、すなわち塩素や硫酸アルミニウムと、発電能力を伴った処理施設のための他の諸消耗品が、制限される可能性も銘記しておくべきである。

30.別の面として下水道施設にも重大な関心を寄せるべきである。現在50万メートルトンの未処理廃水が、毎日淡水の水源に垂れ流されている。現在下水道ネットワークにアクセスしているのが約500万人で、うち400万人はバクダッドにいる(*12)。下水道ネットワークは電力網に接続されたポンプ場に頼っている。ユニセフによるとこれらのポンプ場のわずか10パーセントしかバックアップ発電設備を持っていない。これが現在よりもより深刻な健康への危機をもたらさぬように、現在下水道ネットワークに依存している500万人の人々が、下水道設備への援助を必要とするだろう。

31.健康管理の場合と同じように、それへの依存度はおそらく増加し続け、住民の大部分が長期にわたって外部からの援助に依存するままになりそうである。電力網だけでなく、水の供給網の復旧に最も緊急な関心を払うべきである。

32.戦闘中、そしてそれに次ぐすぐの局面で、住民のかなりの部分が移動させられるだろう。建築物の破壊は相当なものになり得る。都市部では間に合わせの建築資材を利用することがより簡単であるように、破壊された建物を一部占拠することでシェルターを見つけることはより簡単だろうが、そのような選択は、地方の人々――都市や町から地方へ移動した国内避難民と同様に地方住民――にとって、「一時しのぎ」の家や再利用可能な建築資材がないことからすると可能でない。

33.非常事態の初期段階では、援助を必要とする人々へのアクセスは困難になるだろう。大きな割合の住民が最初に移動しているから、人道的なアクセスが実行可能になるまでには、移動した多くの人々が帰ってきたり、あるいは当座の家を見つけるだろう。そのような状況下では、何らかの形態の援助を必要とする「戦争被害」住民が25パーセントであるという数字が現実的なものと思える。この数字はさらなる確証が必要ではあろうが。そのような数字は、シェルターの援助を必要とする住民が約200万人ということを示している。この数字はより多くの人々が移動したり、他の人々が半永久的な家を見つけたり建設したりするにつれてもちろん変動するだろう。

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34.受益住民にはまた特別の関心を引く人々が存在する。移動した人々の中で、相当な数の「家族のいない未成年者」そして「女性が長である世帯」の存在が予測される。

35.援助を必要とする難民は結局約90万人、そのうち10万人は早急な援助を必要とするだろうと見積もられる(*13)。難民の数は実際にははるかに多くなるかもしれない。他のどこかで再定住する資産や技能を持つ人々の多くは、すでにそうしているから。イラク国境近くに、おそらく50万人もの人口(*14)を有する通過キャンプができそうである。

36.UNHCRが責任を持つ、現在イラクにいる難民の数は約13万人(*15)である。この人々が国内にとどまることは大いに可能性のあることで、その一方、おそらく移動した人々が加わることで、UNHCRが必要とする援助を提供するのが最初に不可能となる可能性が高い。

37.中部そして南部での地雷アクション計画の不在は、地雷危害と相対している住民に一層困難をもたらすだろう。現在中部そして南部では地雷識別の教育もまたない。地方住民が、地雷が密集する環境で住むための何らかの知識を獲得してきた一方、大概の都市住民は必要とされる情報を持っていないだろう。

38.イラク近隣諸国との国境に沿った諸地域、そしてクルド人地方諸政権のコントロール下に現在ある北部三州との分割ライン周辺のいくつかの地域は、地雷原で「保護されて」おり、それゆえ難民や国内避難民には恐ろしい危険となっている。加えて、戦闘は、ありふれたものになる――ことに町や都市では――不発弾を、かなりの犠牲者を生み出す不発弾(UXO)を作り出すだろう。

シナリオの要約

39.緊急:緊急の人道的介入に必要とされそうなもの:

a) 橋梁架設、物資取り扱いと輸送(*16)。
b) 約540万人への食糧品と必需品(*17)。
c) 約10万人の負傷者治療のための医療(*18)。
d) 123万人を上回る非常に傷つきやすい人々を治療するための医療(*19)。
e) 540万人の継続中の要求を満たす医療(*20)。
f) 54万人のための栄養補給(*21)。
g) 540万人のための水処理施設(*22)。
h) 540万人のための化学製品と消耗品(*23)。
i) 下水設備と化学製品(*24)。

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j) 200万人の国内避難民のためのトータルな範囲でのサービス、そのうちの何人かは難民になる可能性が十分ある。結局このカテゴリーにあるかもしれぬ数字は何ら自信を持って評価されるものではないかもしれない(*25)。
k) 140万人用の緊急シェルター(*26)。
l) 家族のいない未成年者のための家族再結合の手段。
m) 近隣諸国家での10万人のイラク難民のための諸設備(*27)。
n) 地雷アクション活動(地雷除去、UXO処理、地雷識別)。

40.長期の人道的要求:上記39節で言及された緊急の諸要求に次いで、ある長期の期間、間違いなく1年以上人道的介入が要求されそうであるし、以下のようなものが含まれるかもしれない:
a) さらなる橋梁架設、物資取り扱いと輸送(*28)。
b) 製粉とヨウ素化能力(*29)。
c) 少なくとも230万人のための食糧と必需品(*30)。
d) 約50万人の負傷者治療の医療(*31)。
e) 230万人を上回る人々を治療する医療(*32)。
f) 303万人のための栄養品(*33)。
g) 1824万人のための水処理施設(*34)。
h) 1824万人のための化学製品と消耗品(*35)。
i) 下水道施設と化学製品(*36)。
j) 200万人の国内避難民、そのうちのいくらかは難民になるだろうが、その人々に対するトータルサービス。結局このカテゴリーにあるかもしれぬ数字は何ら自信を持って評価されるものではないかもしれない(*37)。
k) 360万人用の緊急シェルター(*38)。
l) 家族のいない未成年者のための家族再結合の手段。
m) 140万人のイラク難民、近隣諸国に入る90万人と国境に沿っているがイラク内部に留まっている50万人のための諸施設(*39)。
n) 経済を活性化させる諸イニシアティブ。
o) 家畜と植物生産財。
p) 地雷アクション(地雷除去、UXO処理、地雷の識別)。

イラクの社会・経済的復興

41.復興の長い過程を始めるため、実現できるところから早くなされる努力が必要である。「国家提供者」を「人道主義提供者」に置き換えることは思慮深いとは思われない。一つかまた他の形態の雇用の諸機会を提供するために、早期に代替機構で置き換えることができる場合にのみ、これは可能だろう。農業部門が緊急に復興するかどうかも、何らかの人道介入の成功にとって重大であろう。

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負債の保護

42.経済の何らかの活性化のキーとなる面は、公共部門と諸個人を対外債務から引き続き保護することで、債務は1000億ドルと1500億ドルの間で様々に見積もられている。これは制裁下の政権の下でも一般にあてはまることである。安保理諸決議の関連諸条項は修正されるかもしれないし、あるいは現在の制限は戦後のシナリオの中で緩和されるかもしれないが――少なくとも初期段階の間――それらの諸条項の継続に積極的な配慮が与えられるべきである。それら諸条項は経済の回復を許すために必要な保護を与えるものである。

【10ページ余白、43−47節、保留】
【11ページの始まり】

資源プログラムへの国連のアクセス

48.国連に(国連機関とプログラムを含む)、決議986(1995年)とそれに続く諸決議の下で活動を続ける権限を与えるために、現在の安保理決議の幾つかを修正する必要がある。それら安保理決議は、国連の人道的介入の初期の段階で、継続的な基礎の上で、とりわけ資産にアクセスする能力が必要となるだろう。これが人道的介入の要求に合致する効果的な方法であるように思える。しかし、所有権に関する紛争に陥らないようにするためには、短期的にはそのプログラムの下で提供されるすべての資産が政府によって所有されるという基本的な位置づけが維持される必要がある。

49.先に述べてきたように、大体衝突の発生から、少なくともしばらくの間、石油の輸出は止まると予測される。システム、制度、さらにインフラの低下の一部として石油生産は止まるだろう。そして、非常に限られたものである(現在は100万バレルより少ない)トルコのシーハンの貯蔵場で備蓄されているものは別として、石油の輸出、それゆえプログラムの実行に役立つ収入の創出は止まるだろう。この状況の下では、資産プログラムにアクセスする能力が、資産が現金であれ現在配送パイプラインの中にある現物であれ、収入の代替源が動員されるまで必須のものである。もう一つ別のアクションの道筋は、湾岸戦争では国連加盟国が最終的に返済されるという了解の上で資金を提供したという、湾岸戦争直後の時期のそれに似ているかもしれない。

50.従って、安保理からの指示と、「食糧・石油交換プログラム」のパイプライン中のプログラム資産を国連が利用できる許可を得る必要について、緊急の配慮を要する。

【51−2節保留】

軍隊との関係と軍隊の役割

53.人道主義的援助を行う国連諸機関は、地上軍当局と連携する必要があろう。そのような連携は、攻撃が安保理によって承認されるかどうかに関わらず行われねばならない。しかしその状況は(訳者注:国連諸機関と地上軍の)関係に明らかに影響するだろう。これらの接触は戦闘の始まりに先立ち行われるべきであり、人道主義的作戦の側面での協調に関連した問題だけに限定されてはならない。

【12ページの始まり】

54.何年間も、「ポスト・モダンの軍」の役割に関する議論の一部として、軍隊は、人道主義的諸組織に対しての物資の調達や技術的援助という以前のスタンスの代わりに、援助を直接提供する中で、自分自身の地位を切り開こうとしてきた。これは、先天的に「賛成」よりも「反対」を受ける非常に未知の領域である。米国防総省はそのような役割の遂行における最も先取的な軍事体制である――アフガニスタンにおける「軍/民」スタッフの広範な活用を見よ。

【55節保留】

56.早期の手引きが要求される理由は三つある。すなわち:

a) セキュリティ面の関係で、「危機のスタッフ」を維持する要求とあわせた、「安全避難所」は、地方に位置することになろう、しかしそれはイラク外にあり、明示された安全避難所ではない。

b) V局面が宣言されるかもしれない事実に関わらず、ほぼ何としてもイラクの中で独立的存在を保ちたいという欲求。

c) イラクへの緊急事態が宣言されなかったという事実にも関わらず、緊急準備のための資金にアクセスできる必要。

d) もっぱら人道主義的問題ではないが、戦後政権に関する国連の、なにがしかの役割に関する早期の配慮を与える必要がある。

e) 最後の未解決の問題は、現在の予期される緊急事態プランと同時に、「B」プラン、すなわち戦闘が避けられ制裁が少なくとも一時停止された場合に、イラクに対して国連が果たすべき役割を、国連が展開する必要性である。


【13ページの始まり】
表1―人道主義的諸シナリオ
医療 ・直接的そして間接的な死傷者:50万人
・521万人の弱者
0.10
1.23
0.20
1.86
0.20
1.29

0.83
5歳以下の子どもと妊娠中及び授乳期の女性の人口をベースにしている。
栄養 ・303万人(5歳以下の重度にあるいはある程度衰弱した202万人の子ども;100万人の補助食を要する妊娠中と授乳期の女性)。
0.54 1.26 1.03 0.19 妊娠中、あるいは授乳期の女性のために、そして5歳以下のひどい栄養失調の子どもの予測人口のために要する栄養補給をベースとしている。
最弱者グループの保護 ・孤児、重度の障害者、留置中の子どもを含む施設にいる5000人。
・21,000人の老人。
・15万の家族のいない未成年者。
・13万の既存のイラク内難民。





地雷撤去 ・18歳以下の子どもへのUXOの大きな脅威。
・国境あるいは国境付近の難民。
・北部三州を横断する国内避難民。





シェルターと食糧外の物品 ・シェルターと食糧外物品を必要とする46万人の難民に近い国内避難民。
・食糧外の物品を必要とする97万人の国内避難民。




シェルターのための建物や学校の使用を期待するIDPs。
食糧外の物品、ことに暖房器具や調理設備の要求。