[解説]
「スマート」になった大量殺戮兵器=新型サーモバリック弾 BLU-118/B

新型大量殺戮兵器の開発と実戦使用をエスカレートさせる
米の戦争政策にストップを!

 米は、3月初めから開始したアフガン東部での新たな攻撃、アナコンダ作戦で、大量の爆弾とともに、新型のサーモバリック兵器BLU−118/Bを使用した。「サーモバリック」兵器とは、アルミニウム粉末などの混合燃料の「霧」(エアロゾル)を空気中に拡散させ、第2次爆発で点火することで非常に高圧の衝撃波を作り出す「サーモバリック効果」(炭鉱の粉塵爆発と同じ原理)を利用した兵器で、高熱と衝撃波で人間を殺傷する。さらに燃料の「霧」の範囲外にいる人間も急速に酸素を奪われ窒息するか、気圧差で内臓をつぶされるという、文字通り人間の大量殺戮を目的にした兵器である。同じサーモバリック効果を利用した超大型のBLU−82/B(「デイジー・カッター」)が既に昨年、カンダハルやトラボラ攻撃で、少なくとも合計4発が使用されている(「超大型の気化爆弾 BLU−82/アメリカの戦争犯罪を許すな!」参照)。
 今回使用されたのは、昨年アフガン攻撃開始後に開発された新型のサーモバリック弾である。BLU−118/Bは、洞窟攻撃用として2000ポンド級貫通弾頭にしたもので、レーザー誘導ミサイルに装填してF15戦闘機などから発射し、精密誘導により洞窟の入り口付近から洞窟内に撃ち込む。これにより第1に、洞窟内の人間を確実に殺傷することができる。サーモバリックによって生み出される衝撃波は、閉じた洞穴の中に誘導され、増幅し、一層破壊力を増す。第2に、デイジーカッターやバンカーバスターによる攻撃のように、洞窟そのものを破壊し潰してしまうのではないので、攻撃後に米兵が洞窟に入って、遺体の捜索ができるとされている。ビンラディン捜索と言いさえすれば米マスコミや国内世論を丸め込める。攻撃の非人道性をごまかすには重要な点だ。昨年、ラムズフェルドは洞窟攻撃で毒ガス使用をも示唆したが、それよりはいくらかスマートだと考えたのだろう。新型サーモバリックの使用を発表した記者会見で、米軍中央司令部のクレー海軍少佐は、「ジュネーブ協定のガイドラインに違反しないと確信する」とわざわざコメントしている。
 しかし「スマート兵器」(精密誘導兵器のこと)となり、名前もサーモバリックと、何となくスマートになったとはいえ、基本原理も目的も気化燃料爆弾(FAE)と何ら変わりない。それは、クラスター爆弾やナパーム弾、劣化ウラン弾などとともに、非人道的兵器として国連委員会や国際赤十字からも禁止が要求されている。明らかにジュネーブ協定に違反する大量殺戮兵器である。むしろ、より攻撃力を増し、大量の人間を殺すという使用目的が一層鮮明になっている。しかも使い易くなった分だけ、ますます危険で非人道的になっている。

アフガニスタンを新型兵器の実験場にするブッシュ政権

 バンカーバスター、BLU−82、昨年末トラボラ攻撃での、イスラエルと共同開発による空対地ミサイルAGM−142(ハブナップ)、そして今回のBLU−118/B。米は、従来の戦争では非公然にしていた大量殺戮兵器の使用を公然と行い、頻繁に使用し、次々と新型の兵器を使用するようになっている。明らかにアフガニスタンを新型兵器の生きた実験場にしている。そして、それはブッシュ政権が世界中に拡大させている「テロとの戦争」、非対称戦争のための兵器開発、兵器実験、実戦訓練であるかもしれない。このような新型大量殺戮兵器使用のエスカレーションの中で、ブッシュ政権が北朝鮮、イラクなどへの核攻撃の準備を指示したと伝えられていることは極めて危険なことである。特に、地下の生物・化学兵器貯蔵庫を破壊する新戦術核爆弾の開発を議会に提案したという報道(3/10日付、米ニューヨーク・タイムズ紙)(「アフガニスタン被害報道日誌」参照)には戦慄すら覚える。米は、既に北朝鮮での使用を想定したといわれる戦術核を利用したバンカーバスターを開発しているからである(「もう一つのバンカーバスター、戦術核B-61-11」)。

 米による新型大量殺戮兵器の開発と使用のエスカレーションにストップを。ブッシュの戦争政策にストップを。アフガン攻撃に補給・支援を続けている自衛隊・政府への批判を強めよう。

(2002年3月14日 K.TJ)

参照記事:
 http://www.globalsecurity.org/military/systems/munitions/blu-118.htm
 http://www.commondreams.org/headlines02/0303-06.htm

 「超大型の気化爆弾 BLU−82/アメリカの戦争犯罪を許すな!」
 「アフガニスタンに対する米の非人道兵器使用に反対する」
  (もう一つのバンカーバスター、戦術核B-61-11)

 「アフガニスタン被害報道日誌」




 アメリカの「報復戦争」と日本の参戦に反対する署名運動 事務局