<非暴力平和隊実現可能性の研究>

第2章 介入における戦略、戦術、および活動

2.2 平和チームと「市民平和活動」

2.2.2 平和チーム

ドナ・ハワード


2.2.2.2 特性と目標
「事件の現場に第三者がプレゼンスすることは、紛争当事者にとってふるまいと問題の解 決に向けて、より建設的な取り組みをしやすくする。紛争当事者が、彼ら自身の紛争のふ るまいに疑問を抱き、その問題へのいろいろな取り組みを求めての探索が支持されるため に、紛争の激化を方向転換することが可能となる。」

ここで調査した、チームを派遣している平和団体は、いろいろな意味で違ってはいるが、 すべて上述の引用文から導かれた目標、すなわち、紛争の激化を方向転換させ、激化に寄 与したかもしれないふるまいを評価し変更しようとする当事者を支持する、という目標を 掲げていると言っても差し支えない。あるいは、ミューラーとビュトナーが述べているよ うに、「紛争当事者が彼らの問題の生産的な処理、すなわち、市民的な一層の平和戦略、を 展開できるように、できる限り威嚇と暴力を振るうことなく、紛争当事者に影響を及ぼす こと」である。

研究したチームはすべて、特定の紛争や危機について「何かをやろう」という焦眉の急か ら発生した。 それは、PBIにとってはグアテマラであったし、WfPにとってはニカラグア、 CPTにとっては、中央アメリカおよび北アメリカ、その中で米国がエリート・グループと 結びつけられている国々における草の根戦争、SIPAZにとってはチアパス、そして、BPT とオシエク平和チームの両方にとっては、それは、クロアチアとセルビア/コソボであった。

PBIとWfPは、ここで研究されたグループの中の先行走者であって、両方とも1981年に 設立され、シャンティ・セーナ、世界平和旅団、平和活動家たち、およびクエーカー行動 グループの先行例から新しい平和チームの特性を創造した。 それぞれの団体の設立時に注 目すると、それらの団体の特性の考え方を知ることができるだろう。

PBIは、現地での経験を積み、グループとして国際的であり、主として世界平和旅団と国 際友和会(IFOR)および戦争抵抗者インターナショナル(WRI) の元のメンバーであっ た活動家たちによって結成された。 WfPは、ニカラグアの民間人に向けたレーガン政権の 「低強度戦争行為」政策に対して憤りを感じた米国の聖職者と平信徒たちの応答であった。 CPT(1986)は、メノナイト教会(Mennonite Church)、ブレザレン教会 (Chuch of Brethren)、フレンド派合同会議(Friends United Meeting)およびその他のクリスチャン たちによって、これらの教会への信仰告白のための手段として結成された。BPT(1993) は、IFOR、PBIおよびWRIを含む団体が、クロアチアとコソボから国際的な割り込みを 求める要請を受け取った時に結成された。 SIPAZ(1995)は、チアパス州における国際的 なプレゼンスが、その地における和平プロセスのためになるであろう、と国際的なプレゼ ンスを望んだメキシコの教会と人権擁護グループからの招聘に応ずる形で立ち上がった。 オシエク・ピース・チーム(1998)は、「平和のためのセンター」、「非暴力と人権オシエク」、 およびウプサラにある「生命と平和を求める協会」ならびに彼らのパートナー団体である スラボンスキ・ブロート(Slavonski Brod)の「平和の顔」と「オーストリア平和活動」 の共同行動による「非暴力の文化に基づく民主的社会の構築」と呼ばれるプロジェクトと して始められた。

いくつかのグループの間には、強いつながりがある。現地でそれ自身の団体と活動を進展 させることに加えて、PBIは、BPTおよびSIPAZとの連合体設立の一員であり続けた。 WRIおよびIFORは、PBI、SIPAZ、およびBPTの共同設立者であった。これらの3者に オシエクを加えたものが、17か国に部局を持つPBI、11のメンバー団体を持つBPT、お よび50を越えるメンバー・グループを有するSIPAZという連合体として設立され、構築 された団体である。

SIPAZ、WfP、およびCPTの活動は明らかにキリスト教の信仰から生まれている。WfPと CPTの使命は、他の国々で市民に対する不公正を作り出そうとする米国の政策への反対に 基礎をおいている。

すべてが何らかの形の中立性あるいは「政治的に立場をとらないこと」を主張しているが、 この用語がどのように使用され、適用されるかについてはかなりの幅がある。 オシエク、 BPT、およびSIPAZは、最もゆるやかに定義された形の「政治的に立場をとらないこと」 を表明している。 BPTとオシエクによっておこなわれた平和構築は、すべてに提供されて いる、そして、オシエク・チームには、メンバーとしてセルビア人とクロアチア人の両方 がいつもおり、そしてあらゆる活動は、紛争当事者間の対話をうながし、すべての人々に 奉仕することを目指している。 WfPは、いかなる国やグループの内部抗争にも巻き込まれ ない途を選んで、現地での「政治的に立場をとらないこと」を主張している。しかし、そ の国への米国の影響力に反対する彼らは、双方の党派ではなく、一方の党派の側に位置づ けられるかもしれない。 PBIは、彼らが紛争中の一方のグループの人々だけに同行してい るにしても、同行を非党派的な活動として定義するために、何年間にもわたって、難しい 活動を続けて来た。彼らは、そのグループ(あるいは個人)の活動からは距離をおくこと によって、これを実践しているが、この立場はいつも守られなければならないだろう。 CPT の党派性あるいは「政治的に立場をとらないこと」はさらに紛らわしい。 彼らは、たとえ ば、ユダヤ人入植地の中のパレスチナ人の家に同居して、トレーニングをやり、その家を 守っているのだが、彼らは、脅かされている人々には誰にでもこのやり方で守るであろう から、この活動はなおも「政治的な立場をとること」ではないのだ、と主張している。

これらのチームを派遣している団体の目標は、平和維持から紛争解決による平和構築に及 んでいる。 「社会正義と人権のために活動する地元の活動家たちのための環境を作り出す こと」というPBIの目標は、地元の活動を強調し、暴力の縮小に関連させている。CPTの 「邪魔をする」という意図は、平和維持の介入を含意しているが、紛争解決者を支援し、 米国と世界の政策に影響を与えることが、彼らの活動を紛争解決の範囲にまで広げている。 WfPの強調点は、アメリカの中で平和、公正、そして持続可能な経済を支持する、という 紛争解決にあり、「貧困と抑圧に加担している米国の政策と企業のやり方を変えることによ り、私たちは公正を求める人々の側に立つ」ということである。 戦争の政治の中で変更を 求めてロビィ活動をしているので、それは紛争解決である。彼らがそれらの国でプレゼン スを続けながら記述していることは、しばしば平和維持の活動となる、しかしながら、安 定した社会の構築を支援するという彼らの意図は紛争解決である。SIPAZは「暴力の機先 を制するか、あるいは暴力を減らすこと、そうして、サパティスタスとメキシコ政府との 間の対話が可能な、貴重な政治的環境を守り、拡大すること」という平和を維持する目標 を掲げてチアパスでその活動を始め、それ以来、平和構築の目標を追求している。ここに 代表されたBPTとオシエクは、その目標と活動がほとんど平和構築の範囲内に分類される 団体である。オシエク・プロジェクトは使命表明の中で「権限委譲、和解、協力、民主主 義」という言葉を用いて「寛容と受容によって、すべての人々が共に平和的に暮らせる正 常な社会の再建」を支援しようと努めた。 BPTが、その目標によってBPT自体を明らか にした目標は「紛争の平和的解決のために活動し、平和への国際的な関わり合いを実例で 示すこと」であった。

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