震災後の神戸での被災外国人への支援や,タオ・ヤーピンさん暴行事件のときの対入 管抗議行動など,これまで私たちとは何か行動を共にしてきた 李松さんが,この6月 4日,中国大使館前で逮捕された. 1989年に中国でおこった民主化運動のさい, 就学生として来日していた李松さんは,連帯しようとすかさず運動に参加.それから 8年,ずっと日本で運動を続けてきた.この不当逮捕事件は,天安門事件の記念日に 毎年つづけている,中国大使館前での犠牲者追悼と中国政府への抗議行動の中で起こ った.
李松さんが中国の未来についてどう考え,何を目標にして運動しているのかというこ とをちゃんとは知らない.でも,6月4日という日が李松さんにとって特別に大事な 日だったということはきっと間違いないんだろう.
事件についていま分かってきているのは,この日の警察の対応が,かれらの行 動を(事前に許可済みだったにもかかわらず)不可能にしてしまうほど厳しい ものだったということだ.また,車を運転していた李松さんが突然目に入った 車止めの前でブレーキを踏んだけどぶつかってしまった直後,いきなり警棒や 拳銃でフロントや窓ガラスを強打したことも異常としか思えない.
その後李松さんは粉々になったフロントから鍵を奪われ,無理矢理引きずりだされて 逮捕された.勾留状によると,「公務執行妨害」容疑とのことだった.李松さんは, 明らかに,警察による人権侵害の被害者だと言える.
にもかかわらず,23日間という最大限の勾留のあと,6月25日に検察は李松さん を起訴した.これから長い裁判が始まることになる.
そもそも李松さんには,難民としての資格が与えられていないという入管法に 関わる大きな問題がある.8年間というもの,在日中国人の中でも積極的に運 動している李松さんが中国へ帰ったら迫害されることは明らか.なのに難民と は認められていない.認定については結果待ちとなっているが,難しいのでは, と言われている.実際に投獄経験のある人でさえ認められていないからだ.
日本で外国人が政治活動を行なうことは難しい.入管法は,ありとあらゆる理由で外 国人を追放することができるようにできているのである.
難民としての滞在が保障されていないことが,この事件後の李松さんの将来を とても不安なものにしている.人として当たり前の表現の自由さえ脅かしてい る入管法の問題にますます迫っていかなければならない. そして,李松さんの 釈放と難民としての保障を求めて頑張りたい,と思っている.