入管法が改悪されました. 4月初めに閣議決定され,運動側の批判を全く黙殺 しながら,同28日には成立という超スピード.私たちもほとんど何もできま せんでした.改定された法律の内容は,ほとんどが罰則規定の強化であり,対 象は,密入国者やそれ以外の不法入国者,それを手助けする人,かれらをかく まう人,とあらゆる範囲.罰則がほかの刑事法の規定と比べて,異常に重くなっ ていることも改悪と言わねばなりません.主な内容をご参照ください.
これらについて,次のような点が問題になってきます.
「密入国者」や「不法入国者」の「蔵匿・隠避罪」は,表向きには悪質なブロー カーの取締が目的とされていますが,法文上名言されているわけではありませ ん.雇用先などで受けた人権侵害を救済する支援団体,行き場のない人を受け 入れるであろう教会など.あるいは一緒にくらす恋人や,友人などの個人的な 人間関係もたくさんある.摘発などからかれらを匿った場合,そういう人が処 罰されるかもしれないのです.
また,密入国,不法入国者のなかには難民申請をするために緊急入国する人も 含まれているはずです.かれらの難民申請を支援している人やグループにも罰 則の適用が可能になりました.また,不法入国者を入国審査前に退去強制でき るようになったことは,そもそも上陸時の難民申請を拒否し,むりやり送還し ている入管のやり方を認めてしまうことにもなり,ビザ免除協定などのない国 から保護を望んでくる人の入国をほぼ不可能にしてしまうでしょう.
また,これらの行為の準備と目的だけで罰せられる「予備罪」や「未遂罪」は, 判断基準がはっきしていません.
そして,罰則として最も厳しいのは,在日外国人にとっては退去強制事由にな るということです.つまり,正規の滞在資格を持った人でも,不法入国の友人 等をかくまったら,自分も強制送還されてしまうかもしれません.同国の友人 を家に止めることさえ危険な行為になってしまうのです.
全体的に思うことは,密入国や不法入国という,直接誰かに危害が加えられる のでもない問題に,管理の面からこれほどの重罰を課していいのだろうか,と いうことです.その裏には,様々な事情がふくまれているのに,この改定法は 密入国などの犯罪性を強調するあまり,人の基本的な人権を侵しかねないもの になっています.