平成9年5月11日
担当:法務省入国管理局
「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」の施行
「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」が平成9年5月1日に公布され(法律第42号),同年5月11日から施行されました。


T 「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」の概要
 1 法改正の趣旨
    近隣諸国からの船舶を利用した集団密航事案の激増,国内外のブローカー組織・暴力団関係者等の集団密航事案への組織的関与などの我が国の出入国管理をめぐる最近の状況に的確に対応するため,密航者を我が国に送り込む行為等について厳しく対処することができるよう,出入国管理及び難民認定法の一部を改正したものである。
 2 法改正の主な内容
  (1) 集団密航に係る罪の新設(第74条〜第74条の5)
   @  集団密航者を本邦に入らせ,又は上陸させた者を,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処し,営利の目的の場合,1年以上10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処することとした(第74条)。
   A  集団密航者を本邦に向けて輸送し,又は本邦内において上陸の場所に向けて輸送した者を,3年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処し,営利の目的の場合,7年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処することとした(第74条の2)。
   B  集団密航者を本邦に入らせ,又は上陸させる罪を犯した者からその上陸させた外国人を収受し,又はその収受した外国人を輸送し,蔵匿し,若しくは隠避させた者を,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処し,営利の目的の場合,1年以上10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処することとした(第74条の4)。
  (2) その他の関連規定の整備等
   @  外国人の入国に関する規定の整備(第3条第1項第2号)
 上陸の許可等を受けないで本邦に上陸する目的を有する外国人が本邦に入った場合には,その者が有効な旅券を所持していたとしても,不法入国に当たるとして,不法入国罪(第70条第1号)が成立し,また退去強制の対象(第24条第1号)となることとした。
   A  営利目的等不法入国等援助罪の新設(第74条の6)
 営利の目的で,又はいわゆる「他人名義旅券や偽造旅券」を提供して,外国人の不法入国又は不法上陸を容易にした者は,3年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することとした。
   B  不法入国者等蔵匿・隠避罪の新設(第74条の8)
 退去強制を免れさせる目的で,不法入国者又は不法上陸者を蔵匿し,又は隠避させた者は,3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処し,営利の目的の場合,5年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処することとした。
   C  必要的没収の範囲の拡大(第78条)
 第74条,第74条の2又は第74条の4の罪に使用された船舶等や車両を必要的没収の対象とすることとした。
   D  退去強制事由の追加(第24条第4号ホ)
 第74条から第74条の6まで又は第74条の8の罪により刑に処せられた外国人を退去強制の対象とすることとした。

U 改正法の全文
 (注:原文は縦書きです。表記は横書き用に改めてあります。)
    出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律
                  (平成9年5月1日法律第42号)
 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)の一部を次のように改正する。
 第3条第1項を次のように改める。
  次の各号のいずれかに該当する外国人は,本邦に入つてはならない。
 一  有効な旅券を所持しない者(有効な乗員手帳を所持する乗員を除く。)
 二  入国審査官から上陸許可の証印又は上陸の許可(以下「上陸の許可等」という。)を受けないで本邦に上陸する目的を有する者(前号に掲げる者を除く。)
 第24条第4号ハ,ニ及びホを次のように改める。
  ハ及びニ 削除
  ホ 第74条から第74条の6まで又は第74条の8の罪により刑に処せられた者
 第24条第4号チ中「第14章」を「第2編第14章」に改め,同号リ及びヨ中「ヘ」を「ホ」に改める。
 第46条中「から第3号までの一」を「(第3条第1項第2号に係る部分を除く。),第2号又は第3号」に改める。
 第70条及び第71条中「又は30万円」を「若しくは30万円」に,「処する」を「処し,又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する」に改める。
 第72条中「又は20万円」を「若しくは20万円」に,「処する」を「処し,又はこれを併科する」に改める。
 第73条中「又は20万円」を「若しくは20万円」に,「処する」を「処し,又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する」に改める。
 第73条の2第1項中「又は200万円」を「若しくは200万円」に,「処する」を「処し,又はこれを併科する」に改め,同条第2項及び第3項を削り,同条第4項中「第1項」を「前項」に改め,同項を同条第2項とする。
 第74条を次のように改める。
74条 自己の支配又は管理の下にある集団密航者(入国審査官から上陸の許可等を受けないで,又は偽りその他不正の手段により入国審査官から上陸の許可等を受けて本邦に上陸する目的を有する集合した外国人をいう。以下同じ。)を本邦に入らせ,又は上陸させた者は,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
2  営利の目的で前項の罪を犯した者は,1年以上10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。
3  前2項の罪(本邦に上陸させる行為に係る部分に限る。)の未遂は,罰する。
 第74条の次に次の7条を加える。
74条の2 自己の支配又は管理の下にある集団密航者を本邦に向けて輸送し,又は本邦内において上陸の場所に向けて輸送した者は,3年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2  営利の目的で前項の罪を犯した者は,7年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処する。
74条の3 第74条第1項若しくは第2項又は前条の罪を犯す目的で,その用に供する船舶等を準備した者は,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。情を知つて,その用に供する船舶等を提供した者も,同様とする。
74条の4 第74条第1項又は第2項の罪を犯した者からその上陸させた外国人の全部若しくは一部を収受し,又はその収受した外国人を輸送し,蔵匿し,若しくは隠避させた者は,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。当該外国人の全部若しくは一部を,これを収受した者から収受し,又はその収受した外国人を輸送し,蔵匿し,若しくは隠避させた者も,同様とする。
2  営利の目的で前項の罪を犯した者は,1年以上10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。
3  前2項の罪の未遂は,罰する。
74条の5 前条第1項又は第2項の罪を犯す目的で,その予備をした者は,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
74条の6 営利の目的で第70条第1号,第2号又は第3号に規定する行為の実行を容易にした者は,3年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。所持人について効力を有しない旅券若しくは乗員手帳又は旅券若しくは乗員手帳として偽造された文書を提供して,当該行為の実行を容易にした者も,同様とする。
74条の7 第73条の2第1項第2号及び第3号,第74条の2(本邦内における輸送に係る部分を除く。),第74条の3並びに前条の罪は,刑法第2条の例に従う。
74条の8 退去強制を免れさせる目的で,第24条第1号から第3号までのいずれかに該当する外国人を蔵匿し,又は隠避させた者は,3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2  営利の目的で前項の罪を犯した者は,5年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
3  前2項の罪の未遂は,罰する。
 第76条の次に次の1条を加える。
 (両罰規定)
76条の2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関して第73条の2から第74条の6まで又は第74条の8の罪を犯したときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。
 第78条中「第70条第1号」の下に「,第74条,第74条の2又は第74条の4」を,「船舶等」の下に「又は車両」を加える。
    附 則
 この法律は,公布の日から起算して10日を経過した日から施行する。

 
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