「李秀英さん、名誉毀損裁判」勝利判決
1.南京大虐殺の生存者、李秀英さんのこと
李秀英さんは現在81歳の中国人女性です。1937年南京に住んでいた当時、日本兵に銃剣で顔や体を37か所も切りつけられ、病院で危うく命をとりとめました。お腹の子どもは流産してしまいました。戦後、李さんは南京虐殺の語り部として証言を続けてきました。
2.名誉毀損裁判を提訴の経過
南京虐殺の事実は、「家永教科書裁判」や「731部隊・南京大虐殺・無差別爆撃事を認めようとしない人々から、南京虐殺の事実を否定する主張が繰りかえされてきました。出版物もたくさん出されています。そうした中の一つ、『「南京虐殺」への大疑問』(1998年展転社刊・松村俊夫著)という本では、現在「731部隊・南京大虐殺・無差別爆撃事件裁判」で日本国に対して訴訟を起こしている李秀英さんは被害を受けた当事者ではない、別人であると思われる記述をしています。李秀英さんは自己の名誉を守るため、1999年9月東京地裁に、この著者と出版社を提訴しました。これが李秀英さんの名誉毀損裁判です。李秀英さんは1937年当時の直接的な被害よりも、今回の精神的被害の方がつらい、と語っています。いわゆる「戦後補償裁判」とは性格が異なりますが、日本の歴史認識を正すという点では、敗けることのできない重要な裁判で、中国では大変注目されています。
3.判決の意味
5月10日、東京地裁において「李秀英名誉毀損裁判」の判決が言い渡され、原告の李秀英さんが勝訴しました。判決は李秀英さんの被害事実を詳細に認定し、松村氏の本が合理性にないこと認めました。そして、被告らに対して150万円の支払いを命じました。原告側の請求は1200万円なので額が低いと思われるかもしれませんが、日本における名誉毀損裁判の慰謝料としては決して低い額ではありません。しかも、請求額全額の1200万円には至らなかった理由としては、簡単に言うと、"こんなバカげた本は誰が見ても嘘だと分かるし、この本はそんなに売れていないので、被害の程度もそんなに大きくない"というものです。松村氏の本のレベルの低さが歯牙にもかけられなかったことをよく表しています。
この裁判は李秀英さん個人に対する名誉毀損を問うものなので、勝つことができました。被告側は法廷で「言論の自由」を主張していましたが、個人に対する攻撃が許されるわけにはいきません。しかし、「南京大虐殺はなかった」と書くことは自由です。日本では今、その種の本がたくさん出回っており、書店をのぞいてみると、その種の本の方がむしろ勢力を持っているように思えます。全体状況から見ると、私たちは「負け」つつあるのかもしれません。今回の判決を傍聴した中国人弁護士の康健さんは次のように述べました。「これはまだ初歩的な勝利です。右翼的な本はドイツでは出版できません。日本でできることがたいへん不思議でなりません」。
被告側は控訴し、高裁での審理が続くことになりました。地裁判決は勝ちましたが、これからもいっそう法廷の内外で闘い続けていくことが求められています。(文責 A)
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