今回は「グリーン・カレッジin高知」でご協力いただいた「情報交流館ネットワーク」の参加団体のひとつ、「物部川漁業協同組合」の岩神さんにお話しをうかがった。カレッジ当日には、アメゴの塩焼きをご指導いただいた。
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高知県の場合、県土の森林の占める割合も、降水量もおそらく全国トップクラスだと思います。ダムも3つあって。それにも関わらず、物部川の下流部は水不足で、絶えず川が海につながらない。いつも河口閉塞を起こしているわけです。
よく、「きれいな水があればいいな」とか「森もあればいいな」とか、感傷的なことで環境保全を行なっている方がいますが、私たちの河川漁業という業態にとっては、水なくしては何もできないわけで、実にそのものズバリの死活問題です。現実的な日常生活の中で、この切羽詰った状態があるのです。ですから、水の絶対水量を増やす、確保するということは至上命令なんです。
そこで私たちは森づくりにつながる運動を始めたわけですが、「森の保全」をしても1年や2年で森が水を生み出してくれるという期待はできませんよね?
当然私たちも、もっと長いスパンで考えていて、将来に向けた恒久的な対応として行なっているわけです。ですから、一方では応急的な対応も必要になります。それが、森づくりと同時進行で行っている、「水の無駄づかいはダメですよ」と言っていくことなんです。
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そもそもなぜ川が海までつながらないのか。その理由のひとつに、川の水に水利権が設定されている場合があげられます。この物部川の場合、灌漑用(農業用)の水利権と、発電用の水利権があり、中でも灌漑用の水利権が大きく影響しています。農業をしている方が、あるところから水を取ってしまうと、その堰から下流は水不足に陥ってしまいます。農業用水として取ってしまうと、その水は本流には帰らず、別のルートで海までたどり着くことになります。
だからと言って、私たちはその既得権を持っている方たちに、「あなたたちが水を使うからダメなんですよ」と言うつもりはありません。そんなことを言ったって喧嘩になるだけで、喧嘩になったら何も始まらないですからね。そうではなくて、既得権をお持ちの方たちも巻き込んで、「みんなで一緒に考えて、活動して、最終的な恩恵はみんなで共有しましょう」という考え方から「物部川21世紀の森と水の会」をつくったんです。森を保全して、きれいな水がたくさんできることによって、腹を立てる人はいないでしょ?
この会は、漁協から呼びかけはしましたが、主役は私たちではありません。役員もJAの方、林業家、大学の先生、公務員・・・と様々な分野の方々はメンバーになっています。
それと、今注目しているのが、国土交通省の動きなんです。四国には四万十川や仁淀川といった大きな川があるんですが、これらの川の中には、常にある一定量の水が下流まで流れていないといけないという決まりがある川もあるんですよ。しかし同じ一級河川にも関わらず、物部川にはこの決まりはありません。ちょうど来年の3月は、灌漑用水利権の更新の年になっていますので、既得権を主張される業態と水不足で困っているような業態の間に立って、この1年間で国土交通省がどのような上手な調整をするのか。また、この調整に関しては、県知事の意見が参考とされることも考えると、今後の行政の動きが興味深いですね。
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“森とともに暮らす社会”の実現にまず必要なのは、その必要性を感じるかどうかではないでしょうか。高知県の場合は、基本的に森にも水にも恵まれていて、水や森を特に意識しない生活をしてきたわけです。だからまず「何で川に水がないんだろう?」って不思議に思うことから始まると思います。そうすれば、否応なしに森までたどり着くじゃないですか。
あんまり難しく考えなくていいと思いますよ。まずは、今ある自分の周りの環境が、本当に自然が豊かなのかを考え、自覚することだと思います。
(編集部)
ATUHIKO
IWAGAMI
昭和22年、高知県生まれ。小さい頃からとにかく魚が好きで、小学校5・6年の時から川でアユ釣りをしている。大学卒業後、漁協に就職する。「昔から好きなことで仕事に就けて、私は幸せだと思っています」
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