タンポポの綿毛のように、フワリとどこまでも飛んでいく。“竹とんぼマスター”白鳥さんのつくる竹とんぼには、大人も子供も夢中になる魅力がある。今回は、森づくりフォーラムのイベントでもたびたびお手伝いいただいている白鳥さんにお話しを伺った。
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以前から、自然観察会とセットで竹とんぼづくりを行っていたのですが、これがよく飛ばなかったんです。なにか工夫する必要があるなと思っていた時、「よく飛ぶ竹とんぼをつくる変なおじさんが目黒にいる」と聞きまして、訪ねて行きました。その時は何も知らずに行ったのですが、その人は工業デザイナーの秋岡芳夫先生だったんです。そこで“国際竹とんぼ協会”に入会して現在に至るわけですが、それが私と竹とんぼとの出会いです。子供に教えることから始まっているのですが、ミイラ取りがミイラになってしまって、むしろ自分で楽しんでいます(笑)。
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竹とんぼは羽根と軸しかありません。すごくシンプルなのに、工夫をするところがたくさんあるのが魅力ですね。バランスを重視することと、両翼端を重くして回転モーメントを上げることが、よく飛ぶ竹とんぼのための工夫の基本です。また、ほんの少ない材料でつくれるのも魅力のひとつです。築370年の家を取り壊したときに、そこの煤竹をもらってつくったことがありますが、そんなものでできた竹とんぼって一体何なんだ、と考えただけでも面白いでしょう。そしてなんといっても、お金がかからない(笑)。
私が教えている竹とんぼは、親の世代が遊んだトラディショナルな竹とんぼとは全然飛びが違います。子供についてきた大人も「なんでこんなに飛ぶんだ」って楽しんでいますよ。また、子供たちは踏んづけたりしてよく壊すのですが、「おじさんのをあげる」と言っても「それよりも、これを直して」と、ほとんどの子供が言いますね。もちろん私のつくったものの方がよく飛ぶのですが、自分がつくったもの、ということに大きな意味があるんでしょう。
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クラフト教育では、いろんな木を組み合わせて動物をつくらせたりすることも、子供の創造力を引き出すという意味では大切です。しかし、自然素材の素晴らしさを感じてもらうためには、ひとつの素材をじっくりと観察しながらつくらせることが必要だと思います。そういう意味でも、羽根のバランスを取るために根気よく加工しなければならない竹とんぼは、うってつけなんです。
指導者の方は、材料の秘めたる性質を十分理解しておくことが大切です。例えば竹とんぼづくりでは、竹を手で曲げようとしても曲がらないけれど、それを火で炙って曲げるとクニャっと曲がるのですが、これで子供の目の色が変わるんですよ。これは竹の持つ性質ですよね。私はその時に、素材の持つ性質についての話をするようにしています。そして何をつくらせるにしても、一流デザイナーがつくったようなデザインを真似して欲しいと思います。一流のデザイナーがつくるものは、大概が素材を活かしたシンプルなものです。そういう意味でも、指導者の方たちは本当に良いものを、もっと見て欲しいですね。
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私は仕事で有機合成をやっていて、自然界にない物質をたくさんつくってきましたが、漠然と「化学物質にあふれた世の中には何か問題がある」と感じていました。「では化学製品にあふれていない世界は」となると、やはり森なんですね。森に接して生きていれば少しは動物として満足できる一生がおくれるかなと考えて、定年になった今、森と関わる活動をするようになったんです。
“森とともに暮らす社会”について深く考えたことはなかったのですが、案外“動物らしく暮らす”ということかもしれません。そして、動物として自然の中で暮らすには、やはり自然のものをよく見る能力が必要になるわけですよ。
(編集部)
MOTOMI
SHIRATORI
昭和16年長野県生まれ。東高根森林フォーラム代表、国際竹とんぼ協会神奈川本部・群馬本部顧問、環境カウンセラー、森林インストラクター、自然観察指導員、自然体験インストラクター等、多彩な肩書きを持つ。「実は私は、山師で建築屋で製材屋の親を持つせがれなんです。やはりそんなDNAが働いているんでしょうね」
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