ニュース第53号 00年2月号より

NPO法人「森づくりフォーラム」への期待

         (社)国土緑化推進機構

              専務理事 田中正則

 

 森づくりフォーラムが、わが国のグリーンボランティ アの先駆的立場を演じつつその活動の幅を広げ5年が経過しました。

 この間、「森林と市民を結ぶ全国の集い」の企画立案、 「緑の募金法制定記念事業」として立ち上げた「さがみの 森21」のマネージメント、昨年夏、飯能で開催された「グリーンカレッジ」の運営管理などなどその機能的実戦 力と柔軟な管理能力は、既存の公益法人も脱帽である。

 その「森づくりフォーラム」が、NPO法に基づく法人 として認定され、既にスタートを切られたこと、緑関係者 の一人として大変うれしく、かつ大きな期待を寄せるものであります。NPO法は現在のところ税制上のメリッ トがないため、その有効性に疑義があるなどとネガティブな評価がされています。しかし、法律上、権利と義務の 主体となることが認められたわけで、森づくりフォーラムの社会性は大幅にアップいたしました。契約の主体に もなれるし、寄付金を企業にお願いするにも税制メリットは、いまだないものの従来とは雲泥の差だと思います。 逆にそうした積極的かつオープンな行動が、NPO法人の寄付控除の実現を早めるものと考えます。

 複雑な要素がますます増えてきた森林・林業問題です。 「林野庁よりも森づくりフォーラムに森林整備をお願いし たい。森づくりフォーラムに寄付するので、その一部を税 額控除してほしい。」仮にこんなことが起こったら、NP O法の税制のみならず森林政策も変化するでしょう。NPOが世の中を変えることになります。市民が、NPOが 社会を運営管理することになります。

 NPO法人に認定された森づくりフォーラムの企業へ の寄付金要請という小さな行動が、社会の進歩発展を促す契機となりうるのです。

 ところで、21世紀は環境の時代といわれております。地 球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少、最近は北方林 の破壊もくわわっているようですが、地球全体がおかしくなっています。身のまわりを見ても、ゴミ問題、自然環 境の悪化があります。これらの問題は、だれがどう解決し ていくのでしょうか。問題解決が複雑になってしまったので、市民社会の出番であり、役割だと短絡的に言うつも りはありません。しかし、人類がつくった国家や企業とい う仕組みが問題となっているのだと思います。

 国家は国民の利益のために存在していますので、地球 全体の利益(地球益というらしい。)を守ることはできま せん。日本人の利益を守ることが、他国の人の不利益を招 き、「地球益」を損ねていることがままあります。

 また、企業は物質的な利益という単一な価値を追求し ます。人間は物質的な価値のみによって生きているわけではなく、多面的な価値によって生きています。国家、企 業という仕組みを変えうるのは、第三セクターである「市 民社会」しかありえません。市民社会の発言力を確保・強 化できるのは、NPO,NGOしかありません。そのため にはNPOは強くたくましくなければなりません。

そうなりますと、NPO、NGOを構成している私たち一 人一人が地球人として意識を保持しつつ、総合的な価値によって生きることを大切に日々行動することがとって も重要なことになってまいります。このことが、社会を改 造するNPO,NGOの強化につながるはずです。緑関係 者の一人としての立場からは、新しい森林政策の構築のためにも森づくりフォーラムが社会性を増幅しつつ強く・ たくましく成長してほしいと願っております。

 最近、ISO(国際標準化機構)14000という活字とと もにFSCという言葉が時おり新聞等に掲るのをご存 知だろうと思います。これは、森林管理協議会の略ですが、別の言い方では「環境に適した森林」の国際「称号」 のことです。

 もう少し敷衍いたします。926月の「地球サミット」 は「持続可能な森林経営」の方針を採択し、国際社会が一 体となって取り組む必要性を訴えたことはご案内の通りであります。FSCは、こうした背景をもとに、国際的基 準を作ろうと93年に設立されたメキシコに本部をもつ国際認証機関で、もちろんNGOです。「農薬の使用をどう 抑えているか」、「下刈りは」「環境に配慮した森林施業か」 「チェンソーのオイルの始末は」「野鳥の種類は」「森林生 態系を守る森林管理は」これらは、FSCの認証を受ける に当たっての審査チームの、経営者や労働者に対する質問の一つである。持続可能な森林経営という方向性に合 致しているかどうかというのが基本となっている。FSCから「称号」をもらえば自社の木材に、FSCのロゴ マークを貼りつけ、エコロジー商品として売りだせるということです。

 環境配慮の森林経営は一見難しそうですが、森づくり フォーラムの皆様が常日頃行動していること、そのものではないでしょうか。

 森づくりフォーラムの社会性”“公共性さらには国 際性をFSCに申請・認証してみてはいかがでしょうか。性格上、申請要件に難点があるかもしれませんが、森づくりフォーラムの行動そのものが、低迷・混迷する森林・林業に強烈なインパクトを与えること確実です。新千年紀ミレニアムにふさわしい森づくりフォーラムの新機軸をご期待申し上げます。

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