■県の原子力安全対策室長は保安院からの出向者 ■県の「事故専門委員会」は報告書も出さず ■「平均出力モニタが点検中だったのは問題」と県は保安院と異なる見解も |
6月1日、金沢市にある石川県庁で、臨界事故を引き起こし8年間も隠ぺいしていた志賀原発の運転再開を認めないように、県への要望書提出と交渉が行われ、参加した。 要望書と質問書は「志賀原発差止訴訟原告団」、「原発震災を案じる石川県民」等の県内6団体が提出し、全国の47団体から賛同が寄せられた。午後3時から約1時間、県庁の会議室で行われた交渉には、石川県や富山県、さらに東京、大阪から20数名が参加した。県からは、危機管理監・桶屋幸蔵氏、原子力安全対策室長の米山弘光氏、同室の酒井道則課長、上野幸作主幹が出席した。 はじめに、市民側から要望書を提出し趣旨説明がなされた。要望書では、(1)安全協定第12条にもとづいて、志賀原発の運転再開を認めないこと、(2)現行の安全協定が、住民の安全を守るために実効性のあるものになっていないことに対して、県の責任を明らかにするよう求めている。 これについて危機管理監は、北陸電力が3月15日に志賀1号機の運転を停止したのは、安全協定にもとづいて県が要請した結果だと語った。北陸電力の報告書では、国の指示によって停止したとはあるが、「県からの要請によって停止」というような趣旨は書かれておらず、初耳だった。参加者からはいつ要請したのか、文書はあるのかとの質問が出たが、3月15日に口頭で要請したとのことだった。また、運転再開については、「安全協定にもとづき、安全確保の措置などを確認して協議していく」と、現時点では一般的な言い方だった。県の責任に関しては、「北陸電力を指導していく」というにとどめ、隠ぺいしていたことが問題だと強調し、臨界事故そのものの危険性等についてはほとんど触れていなかった。 次に、質問事項に対する回答がなされた。回答した原子力安全対策室長は保安院からの出向者だった。参加者からは、県独自に安全性などを確認する体制が必要ではないかと意見が出された。危機管理監は、県独自にも職員を育成している、現在10年目の職員もいると答えるだけで、室長が保安院からの出向でも特段問題ないという風だった。 回答の内容は、ほぼ保安院の主張を繰り返すものだった。国の甘い処分に対しては、「現在の安全性が確認されているので・・・」と保安院と同じ事を述べ、「保安院が厳正に審査したものでコメントする立場にない」と付け加えた。質問書では、臨界事故の影響について、特に燃料の健全性について問うていた。北陸電力の報告書では、落下した制御棒回りの12体の燃料集合体の外観検査写真は9体分しか公表されておらず、それで健全性を確認したとなっているからだ。室長の回答は、地震が発生したため検査が遅れたが、5月29日付の北陸電力の報告書で12体全ての写真が公表されていること、その健全性は、5月28日から始まった保安院の特別な保安検査で確認することになっているとの回答だった。臨界事故の影響を確認するためには燃料の状態を確認することが必要だ。北陸電力の3月30日付報告書では、その一部しか確認されていないにもかかわらず、保安院は4月20日に燃料の健全性に問題なしとして、原子炉等規制法に基づく運転停止命令も出さなかった。それが、今になって、特別な保安検査で確認するというのだ。まったくデタラメな国の「安全確認」が石川県の回答でも明らかになった。さらに、それを鵜呑みにしている県の姿勢は、保安院のいいなりそのものだ。 1時間という短い時間の中、石川県内の方からは、「北陸電力には原発を運転する能力がない」と北陸電力への批判と共に、「県の安管協の場では、委員以外には質問もさせない。県が設置した『事故専門委員会』は文書の報告さえ出していない」と県への怒りが表明された。また「事故直後と、まったく雰囲気が違う。幕引きのための『事故専門委員会』ではないか。即発臨界についてどう評価しているのか。肝心の発電所長が出てこないのはどういうことか」等々厳しい批判の声が続いた。県は「北陸電力の体質に問題があるのはその通り。隠していたことが問題」と繰り返し、「今後は北陸電力と保安院はオンラインでつながるので隠したりはできない」などと述べるだけで、県の「事故専門委員会」の問題点などについては答えなかった。 原子力安全対策室長の回答の中で、唯一、保安院と見解が違うものがあった。臨界事故当時、臨界で発生する中性子線を測定する3つの機器の内、2つは振り切れており、「平均出力モニタは点検中でデータがない」とされている。このため、臨界事故の真相は闇の中となっている。この「平均出力モニタは点検中」だった事について、5月23日の保安院交渉では、保安院は「問題なし」と回答していた(5月23日の保安院交渉での回答2の(1))。ところが室長は、「問題があったと考えている」と回答。保安院の見解とは異なる。県民の立場に立てば「問題があったと考える」のが当然であり、保安院に対して異議を伝えてはどうかと質問した。すると、主幹が「国は安全性にとっては問題がないと言っているのだろう、県としては、県民の安心という意味で問題があったととらえている」と述べた。参加者からは、「安全性そのものの問題だ」と追及。結局、そのような意見があったことは伝えておくとのことだった。 石川県の情報公開の姿勢は驚くほど貧しい。県の「事故専門委員会」が報告書を出さないということはまったく無責任であるが、その委員会での配布資料・議事録などもホームページでは公開されていない(石川県の原子力安全対策室のhp)。他県の状況を見習って、まずは情報公開を進めるべきだ。 今後も協力して、保安院、北陸電力、県を監視し、運転再開を止めるため県内と全国の声を大きくしていこう。(S) |