2007年6月1日 石 川 県 知 事谷 本 正 憲 様 石川県原子力環境安全管理協議会 会 長 山 岸 勇 様 要望および質問書 3月15日に、志賀原発1号機において臨界事故が8年間も隠蔽されていたことが明らかになってから、すでに二ヶ月余りが経過しました。北陸電力が3月30日と4月6日に提出した報告書に対して、原子力安全・保安院は4月20日付けの「調査報告書」で、事故原因の究明と再発防止対策について北陸電力の報告書を基本的には是認し、法令違反と保安規定違反があったとして北陸電力に対して「行政処分」を行いました。しかし、この「処分」は、むしろ行政指導と言うべき内容です。 原発の安全運転の根幹にかかわる重大事故だったのですから、原子炉設置許可が取り消されても当然です。しかも会社ぐるみで隠蔽したという悪質さにもかかわらず、実質的には処分されないというのでは、このような事態を容認すれば、チェルノブイリのような大事故でも起こさない限りどんな事故を起こしても処分されないことになりかねないと、私たちは危惧しています。 一方、県は3月27日に原子力環境安全管理協議会(安管協)を開催し、北陸電力に事故の説明を求めるとともに事故等専門委員会を立ち上げました。この専門委員会は4月10日、4月23日、5月9日の三回の開催で、北陸電力と原子力安全・保安院の報告を追認する結論を出し、5月14日の臨時安管協では専門委員会の報告が了承されました。 原発の安全運転の大前提が崩れるような重大事故が起きていたというのに、まさに原発の安全確保の根幹にかかわる事故が、「隠したことが悪かった」とか「作業の手順を守らなかった作業員が悪い」などと矮小化されて、早くも幕引きが始まり、運転再開を前提として話が進められていることに、私たちは憤りと大きな不安を感じています。 さらに問題なのは、県の責任がまったく問われていないことです。県は志賀原発の運転開始以来、「安全協定は誠実に履行されると考えている。また、誠実に履行されるよう北陸電力に求めていく」と県民に説明してきました。県には、原子力災害から住民を守る責務があるだけでなく、安全協定の当事者としての責任があります。しかし現実には安全協定はいとも簡単に無視され、住民の生命と安全が脅かされる状態になっていたのです。にもかかわらず、県は北陸電力を非難するだけで、県が住民に対する責任を果たせなかったことに対する反省もなければ謝罪の言葉もありません。この問題は、安管協においてもまったく議論されていません。 そこで、私たちは石川県と石川県原子力環境安全管理協議会に対して、以下の項目を要望いたします。また、質問項目に対しては誠意ある回答をお願いいたします。 要望項目 1)安全協定第12条にもとづいて、志賀原発の運転再開を認めないこと2)現行の安全協定が、住民の安全を守るために実効性あるものになっていないことに対して、県の責任を明らかにすること 質問項目 1)事故の重大性の認識:この臨界事故で明らかになったことは、(1)設置許可の前提となる安全審査における想定が全く不十分であった(制御棒脱落は1本しか想定されていないし、脱落のメカニズムも想定外だった)、(2)北陸電力は原子炉等規制法第24条にいう「原子炉の運転を的確に遂行するに足りる技術力」を擁する事業者に該当しない、(3)沸騰水型原発の制御棒駆動装置には重大な構造的欠陥がある、(4)原子炉の制御に失敗した事故であり、ただ単に想定外の臨界状態というだけではなく局所的とはいえ即発臨界すなわち暴走状態になっており、住民の生命を危険にさらす可能性があった等々このうちのどれ一つをとっても、「原発の設置許可の取り消し」に相当するものではないか。 にもかかわらず、実質的には「お咎めなし」のきわめて甘い処分について、どのように考えているのか。 2)北陸電力の報告書に関して: 北陸電力の報告書は、事実関係に関しても不明な点が多く、疑問点だらけであり到底納得できない内容だが、この報告書で徹底的な原因究明がなされ、真相は解明されたと考えているのか。 疑問点のうち、主なものを以下にあげる。 (1)説明が極めて不親切で、とくに制御棒駆動装置・脱落防止の説明が不十分で分かりにくい。 また、ホームページ上で公開されたものは字が小さ過ぎて、判読不能のページもある。 北陸電力は、情報公開に対する基本姿勢があまりにも欠けているのではないか。 (2)本店の関与は本当になかったのか。「まだまだ隠していることがあるに違いない」というのが多くの県民の認識ではないか。 (3)メーカー日立製作所とその他多くの協力会社抜きには原発の運転管理は不可能だが、メーカー等の関与がまったく不明確である。これでは真相究明には程遠いのではないか。 (4)北陸電力は「事故当時の平均出力モニターのデータは計測器が点検中だったため存在しない」としているが、県はこのことを確認しているのか。事実であれば、制御棒の性能試験の際にこの計測器を点検すること自体が問題ではないか。 また、データがないのに、どのようにして「整定原子炉出力」を求めたのか不明である。 (5)制御棒が抜け落ちた当該燃料集合体12体のうち、報告書に外観検査が記載されているのは9体だけで、外観写真が添付されているのは、その中3体分だけである。残り3体については、調査は実施されたのか。もし調査が行われているなら、その結果について、県は確認しているのか。 3)安全協定について: 安全協定を踏みにじったことについて北陸電力の報告書はまったく触れていないし、安管協における説明でも北陸電力はこの点に関しては言及していないが、県としてはきちんと説明を求めるべきではないか。 また、安全協定にどのような条項が入っていれば、このような事態の発生を防止できたと考え ているか。 4)原子力安全・保安院の経済産業省からの分離・独立を、国に対して求めるべきだと思うが、県の見解を明らかにされたい。 以 上 提出団体:命のネットワーク 代表 盛田 正 志賀原発差止訴訟原告団 代表 堂下健一 原発震災を案じる石川県民 世話人 中垣たか子 北陸電力と共に脱原発をめざす株主の会 代表 八嶋 博 石川県平和運動センター 社民党石川県連合 賛同団体 青森県:花とハーブの里(六ヶ所村)、核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団、核燃止めよう浪岡会、 弘前脱原発・反核燃の会 福島県:脱原発福島ネットワーク 新潟県:原発反対刈羽村を守る会、プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク、 みどりと反プルサーマル新潟県連絡会 茨城県:脱原発かんそいも通信、脱原発とうかい塾、東海原発・再処理に反対する市民の会 埼玉県:東京電力と共に脱原発をめざす会 東京都:原子力資料情報室、原水禁国民会議、原水爆禁止調布市民会議、原発・核燃止めよう会、 原発を考える品川の女たち、「終焉に向かう原子力」実行委員会、 ストップ・ザ・もんじゅ東京、脱原発・東電株主運動、たんぽぽ舎、 チェルノブイリ子ども基金、都労連交流会、日本消費者連盟、ふぇみん婦人民主クラブ、 福島原発市民事故調査委員会、福島老朽原発を考える会、劣化ウラン研究会 神奈川県:郷里と地球の未来を憂える仲間 静岡県:浜岡原発を考える静岡ネットワーク 岐阜県:放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜 愛知県:反原発ネットワーク豊橋、核のごみキャンペーン・中部 京都府:グリーン・アクション 大阪府:ストップ・ザ・もんじゅ、日本消費者連盟・関西グループ、 ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、 奈良県:奈良脱原発ネットワーク 兵庫県:原子力災害を案じる阪神間住民の会、さよならウラン連絡会 島根県:島根原発増設反対運動、 広島県:原発はごめんだヒロシマ市民の会、プルトニウム・アクション・ヒロシマ、 佐賀県:からつ環境ネットワーク、唐津の海を守る市民の会、R-DANネットワークさがんもん、 (以上 47団体) |